しげとく和彦の国会論戦の会議録
平成25年5月14日 本会議
「『食品表示法案』に関連し、食物アレルギー、日本酒の振興、そして『増子化』について質疑」
(答弁者:森まさこ消費者担当大臣、田村憲久厚労大臣、山口俊一財務副大臣)
○議長(伊吹文明君) 次に、重徳和彦君。
〔重徳和彦君登壇〕
○重徳和彦君 日本維新の会の重徳和彦です。
食品表示法案に関連し、日本維新の会を代表して、政府のお考えを何点か伺います。(拍手)
まず初めに、食品表示の重要性について、近年増加傾向にある食物アレルギーの観点から、伺っていきたいと思います。
近年、日本では、食物アレルギーを持つ方の数が著しく増加し、乳幼児の五%から一〇%が食物アレルギーを持つとも言われています。
かく言う我が家も、息子が生まれつき小麦、卵、乳製品の強いアレルギー体質であり、赤ん坊のころ、初めてパンを口にしたとき、顔がぱんぱんに膨れ上がり、急いで病院に運び込んで点滴を受け、一命を取りとめたことがあります。
そんな息子に、私は、小麦粉のかわりに米粉、牛乳のかわりに豆乳、卵のかわりにサラダオイルを使って、チョコレートブラウニーケーキをつくることを趣味としておりました。
さて、我が国には、アレルギー体質の子供を持つ親が大勢います。どの親も、毎日の給食の成分表を注意深く見て、学校の先生にもよくよくお願いをして、不安な日々を過ごしているはずです。
アレルギーの子供を抱える家庭は、外食することもままなりません。小麦、卵、乳製品を食べられないとなると、ラーメンも、うどんも、カレーも、ほとんどの洋食料理も食べられません。和食料理の一部のメニューしか食べられません。それも、万が一のことを考えると、原材料を店員さんに確認し、重ねて店長さんや料理長さんにも確認するぐらい、念には念を入れ、心配しながら食べることも少なくありません。
外食産業においてアレルギー成分の表示が徹底していれば、こうした家庭でも、たまの休日には、みんなで外に食べに行きやすくなります。
子供たちの大好きなハンバーガーショップでも、中には、小麦などアレルギー物質抜きのライスバーガーを販売しているお店もあります。家族でそろってハンバーガーを食べに行くこともできるので、救われる家族も少なくないはずです。
外食へのアレルギー表示の義務づけは、家族で安心して外食を楽しむことのできる環境をつくり出すことができ、経済活性化につながるだけでなく、事業者に食物アレルギー問題への意識を高めていただき、消費者とのトラブルを回避することにつながると考えます。
そこで、今後の検討課題とされている、外食へのアレルギー表示の義務づけによって期待される効果と、現状における課題を、森消費者担当大臣にお伺いをいたします。
次に、甘味料のアレルギー表示についてお伺いします。
先日、テレビニュースでも話題になっていましたが、甘味料にも、アレルギー反応が出るケースがあるようです。
これは、国立病院機構相模原病院の医師や栄養士などのグループが、昨年十月、食物アレルギーの患者を診療している全国の医師などに調査をしたもので、加工食品などに使われている甘味料が原因と見られる食物アレルギーの患者が三十人余り報告されていたとのことです。
エリスリトール、キシリトール、ステビアなどの甘味料は、現行制度では表示義務はなく、含まれる量が少ない場合、原材料としての表示を省略することもできるそうです。
調査を行った医師は、テレビニュースのインタビューの中でこう述べられております。甘味料がアレルギーの原因になることは余り知られておらず、見逃されているケースも多いと見られる、ダイエットのための低カロリー食品がふえているので注意が必要で、今後は表示についても検討すべきだと。
この調査結果は消費者庁にも報告されているとのことですが、消費者庁として、どう受けとめ、どう対応していかれるのか、森大臣に見解をお伺いいたします。
ところで、アレルギーに関する表示義務づけは必要なことではありますが、あくまでも対症療法であって、この問題の根本解決にはなりません。
食物アレルギーに限らず、花粉症、ぜんそく、アトピー性皮膚炎など、症状の内容や程度の差こそあれ、近年、多くの国民の皆さんがアレルギーに悩まされています。
この原因としては、私たちを取り巻く衛生環境、食生活や生活環境の変化など諸説ありますが、そもそも、食物アレルギーの原因は一体何なのか、そして、根本解決に向け、日本社会に何が必要とお考えになるか、田村厚生労働大臣にお伺いをいたします。
次に、大きく二つ目の質問に移ります。
日本の食、とりわけ酒類、すなわち、お酒の振興に関する行政の問題点について指摘をしたいと思います。
今回の法案は、これまで、農水省のJAS法、厚生労働省の食品衛生法、健康増進法と、三つの法律でばらばらに規定されていた食品表示の仕組みを、包括的かつ一元的な仕組みとし、消費者が商品を選ぶ際にわかりやすい制度を目指すものとして、一定の評価をいたしております。
しかしながら、よくよく法案を見ると、条文の至るところに、農水省、厚労省のほかに、財務省の事務権限の規定が登場します。これはひとえに、酒類、すなわち、お酒に関する所管が財務省にあることによるものです。
お酒を所管するのが酒税法を所管する財務省であることは、知る人ぞ知る事実であり、行政の世界では、ある意味、常識化している面もあります。それは承知しております。
しかしながら、お酒は、単なる課税対象として捉えるより、日本人の食生活や、ビジネス、社会、文化に深く根づいた、極めて多面的な重要性を有する食品であることは言うまでもないことであって、税を所管する財務省が所管するのが最も合理的とは思えません。
私は、これまで、酒どころ青森県、山形県、広島県、そして地元愛知県で暮らし、各地でおいしい地酒に親しんできました。
青森には、田酒、菊駒、山形には、出羽桜、初孫、広島には、醉心、賀茂鶴、私の地元にも、長誉、尊皇、孝の司など、全国津々浦々に、郷土の誇り、地域ブランドである銘酒が数多くあることは、この本会議場にいらっしゃる議員の皆様に知らない方は一人もいらっしゃらないはずです。
お酒は、古来より、人々のコミュニケーションに欠かせないものであり、また、我が国では神事や儀式にも欠かせないものとして、日本人の心のよりどころでもあります。
キャベツやニンジンがどこの産地か関心がない方でも、日本酒を飲むときに、どこの地域のどこの酒蔵でつくられたものか、無関心な方は少ないと思います。
日本酒や焼酎に限らず、ビールやワインについても、地ビールや御当地ワインなど、地域活性化の起爆剤として、農商工連携の目玉商品として開発されることも少なくありません。
また、海外におけるすしブームや健康食など日本の食の進出に伴って、日本酒は、日本のソフトパワーとしても重要な戦略商品です。お酒を担当する省庁は、こうした戦略性を含めた総合的な政策を打ち出せる省庁とすべきです。
一方、地元の蔵元の方から話を聞いたところ、今問題となっていることとして、国の減反政策による米の生産調整により、酒づくりに使用される酒米までが生産されなくなり、仕入れが困難になっているとの話もあります。減反政策が、どこの蔵元のどの銘柄の酒米の確保を困難にさせているのか、財務省がきちんと把握し、農水省と連携して、日本酒の生産に支障を来さないように努力されているのでしょうか。
また、日本酒を製造する酒蔵の数は、農村地域の過疎化、高齢化など地域コミュニティーの衰退に伴って、近年、急激に減少しております。このことは、お酒を愛好する方だけでなく、酒蔵の存在を地域のシンボルとして誇りに思う多くの方々にとって、ふるさとの風景を変えていってしまう、非常に悲しむべき事態だと思います。
さらに別の視点から見ると、お酒は、生産や消費がふえさえすればよいというものではなく、酒にまつわる社会問題は、飲酒運転による悲惨な死傷事故は言うまでもなく、飲酒の上でのさまざまなトラブルや未成年飲酒の問題など、多岐にわたります。
お酒については、以上のとおり、さまざまな面において重要な行政課題であり、各省庁が連携して取り組むべきですが、その主務官庁が、現行では、国税庁の課税部酒税課であり、お酒の生産、流通、消費、さらには海外戦略に至るまで担当しているそうです。国税庁において現に担当されている職員の皆様方は、その持ち場で真剣に仕事に取り組んでおられるものと、心から敬意を表する次第ではあります。
しかし、財務省がお酒を所管していることについては、戦費調達のために酒税を徴収した歴史的背景があり、税の中でも少し特殊な位置に置かれていることは一応理解できたとしても、これまで述べた社会、経済、文化的な背景を考えると、やはり、食品全般または地域活性化や食文化を担当する省庁が戦略を持って政策立案、実行すべきと考えます。
お酒に税がかかるから財務省が所管するというのであれば、自動車税のかかる自動車産業も財務省の所管となるというロジックになってしまいます。
今回の条文を読むと、財務大臣の所掌事務が頻繁に登場します。
本法案第四条から十五条あたりまで、農林水産大臣の事務権限についての規定に続いて、お酒の担当についてだけ、財務大臣の事務権限として繰り返し定められているのです。この事務を農林水産大臣に一元化すれば、条文の量も半分になります。そして、単に条文の量の問題ではなく、実際の事務執行の非効率性、行革の観点から、所管省庁を見直す必要があるのではないかと考えます。
そこで、酒類はなぜ財務省が所管するのか、改めて財務大臣にお伺いいたします。
また、日本の重要な食文化としての日本酒の振興に当たり、財務省としてどのような取り組みをしてきたのか、減反による酒米確保の問題を含め、お伺いをいたします。
そして、日本酒の消費量が減り、酒蔵が急激に減少している現状を見て、今までの取り組みは十分だったと思うか、財務大臣にお伺いをいたします。
さらに、地方分権の観点からも問題点を指摘したいと思います。
法第十五条によると、お酒以外の食品に関する農林水産大臣の事務権限は、都道府県知事が行うこととすることができ、地域の実情や県の施策とあわせて総合的に仕事ができる仕組みとなっていますが、お酒に関する財務大臣の事務権限については、都道府県知事が行うこととすることができる規定がありません。地域におけるお酒に関する事務権限は、国税庁の出先機関である地方支分部局の長に委ねることとされているのみです。
地方分権の時代にあって、地域の仕事は都道府県など地方自治体が行うこととするのが原則と考えますが、財務大臣の権限はなぜ知事に委ねることができないのか、財務大臣にお尋ねをいたします。
こういう質問を財務省の役人の皆さんに尋ねても、現状を肯定し、正当化する答弁しか出てこないんです。
日本維新の会の石原慎太郎代表は、常々、役人の仕事は継続性と一貫性だが、政治家の力量が問われるのは、これを打破する発想力だと言っております。
財務省がお酒を所管しなければ、財務省の職員は、権限や仕事が減って、困るかもしれません。しかし、こうした省益レベルを超えた議論ができるのが政治家です。ぜひとも、山口副大臣には、政治家として、大所高所の観点から、継続性と一貫性のみにとらわれない、改革マインドあふれる御答弁を期待いたします。
残りの時間を使って、私が日々、常々考えている日本の問題についてお話を申し上げたいと思います。
株価、円安に沸くアベノミクス効果の陰で、課題先進国と言われる我が国の構造的な課題は、いまだ何も解決されていません。
最大の構造的な課題は少子化です。
この問題を放置すれば、今後数十年にわたって人口が急速に減少し、経済も、産業も、財政も、社会保障も持続困難となる見通しの中で、今を生きる私たちが早急に根本的な手だてを講じなければ、手おくれとなります。
予算委員会でも指摘をしたのですが、例えば農業について言えば、農業の後継者不足の問題は、三十年前の、私が小学生だったころの教科書にも既に載っていたほど昔からの問題であったにもかかわらず、これに有効な手だてを打てずに事実上放置をしてきたのが、日本の政治です。その結果、今や、農業従事者の平均年齢は六十六歳。限界集落、耕作放棄地が全国にあふれ、日本の農業は限界まで来ています。
私たち政治家は、将来世代への責任を果たさなければなりません。
今国会では、衆議院において、当初予算における莫大な国債発行は言うに及ばず、高齢者の医療費負担のあり方、地方財政制度のあり方、民間経済への官の過剰な介入など、さまざまな指摘が行われ、こうした財政運営に対する問題点を改めるため、野党から当初予算の修正案も提出されましたが、いずれも否決されました。
財政運営一つとっても、今の世代の都合で、減り行く将来世代にツケを回す施策を漫然と続けることは、余りに無責任なことです。
大胆な改革は来るべき選挙に不利との判断からか、安全運転に徹した従来型の財政運営には、将来への責任を全く感じません。
私たちは、将来世代に責任ある国家運営をするとともに、一刻も早く少子化問題を解決すべきです。政治の舞台では、少子化、少子化だなんて先細りの暗い言葉を使うべきでなく、政治家は、学者や評論家と異なり、国民意思の代弁者なんですから、強い意思で子供をふやすんだという意味で、子供をふやす、増子化という言葉を使って、増子化に向け、全ての政策資源を動員し、ありとあらゆる手を尽くして、思い切った政策を打ち出すべきです。
将来世代から、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんは一体何をしていたんだと言われないように、目先の選挙よりも、将来世代に対する責任をしっかり果たさなければなりません。
本日申し上げた、アレルギーの問題にしても、日本の食文化の発展にしても、将来にきちんとした国と地域を引き継いでいくこと、これが私たち政治家の最大の使命だと考えます。
以上、思うところを述べまして、私の質問とさせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣森まさこ君登壇〕
○国務大臣(森まさこ君) 外食へのアレルギー表示の義務づけについて、期待される効果と現状における課題についてお尋ねがありました。
現在、外食にはアレルギー表示義務はありませんが、仮にこれを義務づけした場合、食物アレルギーをお持ちの方に安心して外食を利用していただけるという効果が考えられます。
他方、注文等に応じてさまざまなメニューを手早く調理することも求められる外食においては、調理器具等からのアレルギー物質の意図せぬ混入防止対策を十分にとることができるかなどが、大きな課題となると考えられております。
外食へのアレルギー表示については、食品表示に関する一元的な法律の制定に向けて検討を行うために開催された食品表示一元化検討会の報告書において、専門的な検討の場を別途設けて検討を行うことが適当とされたところであり、同報告書の趣旨も踏まえ、今後、しっかりと検討してまいります。
エリスリトールなどの甘味料によるアレルギー症例が報告されたことへの受けとめ及び対応についてのお尋ねがありました。
我が国のアレルギー表示については、その対象となる物質を、おおむね三年ごとに行う実態調査等の結果を踏まえて定めており、現在、表示義務がある品目は、卵、乳、小麦などの七品目、表示を奨励する品目は、大豆など十八品目があります。
御指摘のエリスリトールなどによるアレルギー症例については、昨年度、甘味料に特化して、初めての全国調査により報告されたものであり、症例の恒常性や重篤な症例の多さなどを確認するため、引き続き実態調査を行っていく必要があると考えております。
消費者庁といたしましては、このような新たな発症例等を含め、最新の科学的知見等も踏まえつつ、食品のアレルギー表示制度が我が国の実情に即したものとなるよう、引き続き、しっかりと対応してまいります。(拍手)
〔国務大臣田村憲久君登壇〕
○国務大臣(田村憲久君) 重徳議員からは、アレルギー対策についての御質問をいただきました。
我が国においては、国民の多くが何らかのアレルギー疾患にかかっていると言われておりますが、アレルギー疾患の増加要因については、いまだ十分に解明されておりません。
今後とも、関係省庁と連携し、アレルギー疾患の根本解決に向け、病態の解明や治療に関する研究を初め、総合的な対策を推進してまいりたいというふうに考えております。(拍手)
〔副大臣山口俊一君登壇〕
○副大臣(山口俊一君) それでは、お許しをいただきまして、私の方から答弁をさせていただきたいと思います。
財務省が酒類業を所管する理由というふうなお尋ねがございました。
もう御案内のとおりでございまして、財務省設置法の十九条におきまして、財務省の外局であります国税庁の任務として、内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現、これに加えまして、酒類業の健全な発達が掲げられております。
この酒類業の健全な発達という国税庁の任務につきましては、酒類が実は高率の酒税を負担しておるいわゆる財政物資であり、酒類業の発達が酒税の保全と関連性を非常に高く有するというふうなことから、酒類業を産業として所管しておるというふうなものでございます。
また、日本酒の振興のための取り組み等についてのお尋ねもございました。
それぞれ消費の方で御努力はいただいておるわけでありますが、いかんせん、国民のライフスタイルの多様化などによって、近年、日本酒の消費量及び清酒の製造業者の数が減少傾向になっております。中小企業が大多数を占める清酒の製造業者の経営を取り巻く環境は、非常に厳しいというふうなものでございます。
国税庁としましても、経営の革新のための取り組みの紹介あるいは経営革新計画等の作成支援等を通じまして、酒類業界の活性化のほか、酒類に含まれる、これは三・一一以降でございますが、放射性物質の分析等によりまして、酒類の品質、安全性の確保、醸造技術の研究開発などに取り組んでおります。
また、酒米についてもお話がございました。
これも、より安定的な確保がなされるように、農林水産省ともしっかりと連携をして、酒類業者に対するより一層の情報提供に取り組む等の対応をしてまいりたいと考えております。
さらに、関係府省とも連携をして、日本酒を初めとする日本産酒類の輸出環境の整備も図っておりまして、引き続き、酒類業の健全な発達に総合的に取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。
三点目に、権限の委任等についての御質問がございました。
これは、食品表示法案におけます酒類に関する事務は、国税である酒税の保全及び酒類業の発達等に関する事務の一環でありますことから、国が行うべきものであり、そして、国税庁が行うというふうなことにしております。
したがいまして、食品表示法案におきましては、酒類に関する財務大臣の権限は、国税庁長官を通じて国税庁の地方支分部局の長に委任をすることができるというふうなことにしておりまして、都道府県知事等への権限の委任はなじまないのではないかというふうに考えておるところでございます。
以上でございます。(拍手)