H.27.3.20「無戸籍の子どもたちを救え」
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○柴山委員長代理 次に、重徳和彦君。
〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕
○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。
○奥野委員長 ちょっと待って。入れかえに時間がかかるから。
○重徳委員 そうですか。
ちょっと自己紹介で、前国会までは経済産業委員会や厚生労働委員会の方でお世話になっておりましたけれども、今国会から法務委員会に配属となりました。
まだ、わからない分野もたくさんありますけれども、一つ一つ、法務行政は大変重要、かつ今たくさんの課題が山積をいたしておりますので、私も、そういった分野の問題解決に当たりまして、微力を尽くしてまいりたいと思っております。
よろしいでしょうか、委員長。
○奥野委員長 はい。では、重徳君。
○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。
そういう中で、先般の大臣の所信表明の中にも文言でいうと五行にわたって触れておられました、戸籍のない、親によって出生が届けられず無戸籍のまま、さまざまな不利益をこうむっている方々についてきょうは取り上げたいと思います。
この問題につきましては、NHKのクローズアップ現代においても、去年の五月二十一日、そして、ことしの二月十八日にも取り上げられました。DV、家庭内暴力の夫から逃れまして、離婚ができないままに、あるいは離婚から三百日以内に新たなパートナーとの間で子をもうけても、民法七百七十二条という規定がありまして、DVの夫の戸籍に入る、つまり、嫡出推定が働くという問題であります。子供がいることをDVの夫に知られたくない、そういう奥さんにとっては出生届を出せずじまいになってしまう、そうするとその子は戸籍がない、そうすると住民票など自己を証明するものはなくて、さまざまな行政サービス、契約行為に支障が出てくる、こういう問題でございます。
そこで、まず事実関係から入りたいんですが、法務省の調査においては、無戸籍の方々というのはどれだけいらっしゃると把握をしておられますか。そして、無戸籍の原因、事前に聞いたところでは約八割ぐらいが民法七百七十二条の嫡出推定に関連したケースだということなんですが、このうち、前夫との婚姻が継続しているケース、つまり離婚ができていないケースと、離婚後三百日以内のケースの内訳がわかりましたら、教えていただきたいということ。そして、この調査というものは、一体世の中の全貌の中でどのぐらいの部分を把握できていると認識をされているのか、お答えいただきたいと思います。
○深山政府参考人 今お尋ねのあった無戸籍者の調査の件ですけれども、法務省では、無戸籍者に関する情報を把握するために、平成二十六年の七月三十一日に課長通知を発出いたしまして、全国の市区町村や児童相談所などが業務の過程で無戸籍者の存在を把握した場合には、市区町村の戸籍担当者がその情報を収集して、さらに法務局においてその情報の提供を受けることによりまして、全国の無戸籍者の存在に関する情報を集約するということとともに、無戸籍者に対しては戸籍に記載されるための手続の案内をするという取り組みを行っております。
この取り組みの結果、直近の三月十日現在ですけれども、全国で五百六十七名の無戸籍者を把握しているところです。
この五百六十七名の無戸籍者のうち、民法七百七十二条の規定によって嫡出推定が及んで、戸籍上、夫あるいは前の夫の子供とされてしまうことを避けるために母親が出生の届け出をしなかったとする者が全体の七七%と大部分を占めております。
なお、この五百六十七名のうち、無戸籍者が、夫婦の婚姻中に出生した者が九十一名いる、これは全体の一六%です。離婚後に出生した者が二百三十三名いる、これは全体の四一%です。この点は確認できているんですが、その余の、二百四十三名おりますけれども、全体の四三%については、その出生が婚姻中なのか離婚後三百日以内なのかということが把握できておりません。
また、無戸籍者の全貌がどれくらい把握できているのかというお尋ねがございました。
法務省では先ほど述べた取り組みを進めているものの、無戸籍者の中には行政機関に一切接触がない、把握されていない方もおられるというふうに推測されますので、無戸籍者の全数を把握できている、あるいは把握することができるというのはなかなか難しいことでございます。
法務省としては、今後ともこの取り組みを継続して、これは毎月毎月少しずつふえていっていますので、一人でも多くの無戸籍者の方の把握に努めたいと思っております。
○重徳委員 ありがとうございます。
おっしゃるとおりで、調べるたびに数がふえていくというのが無戸籍の調査の実態のようでございます。
こうした無戸籍の方々が現に直面している生活上あるいは人生における問題は非常に大きいと大臣も所信で述べられておりますが、改めて、大臣、どのようにこの問題を捉えておられますか。
○上川国務大臣 今回、先ほど委員が触れましたNHKのクローズアップ現代も含めまして、無戸籍の子供がいらっしゃるということについては大変衝撃的な現実でございました。
私といたしましては、その把握にしっかりと取り組むとともに、一人一人の戸籍取得について、丁寧に寄り添いながらその実現を目指して応援をしていく、支援をしていくということが何よりも大事だということで、きめ細かく無戸籍者の方の実態ということについて把握できる限りの把握をしてほしいということで指示をしているところでございます。
これからも無国籍者の情報の把握に最大の努力を傾けますとともに、特に生活上あるいは人生上の問題、そういうことでございますが、教育の問題もございますし、そうしたサービスが十分に得られることができないような事態になってしまったならば個人の尊厳ということについても大変問題があるというふうに思っておりますので、このことについてはしっかりと取り組んでまいりたい、そういう決意でございます。
○重徳委員 今大臣、実態把握をして、寄り添って応援をしていく、そして、教育を初めとしたさまざまなサービスに支障が出ないようにということなんですが、やはり、根本的な問題は、戸籍ルールそのものにあると私は思います。
ただ、戸籍がなくても、確かに、当面直面する問題は、いろいろな工夫を凝らしながらある程度解決していくこともできる。だけれども、どうしてもできないこともある。このあたりを、きょうは、各省の幹部の皆さん、お忙しい中お越しいただきまして、ちょっと個別に詰めていきたいと思います。この後、個別の質問に、時間の関係もありまして、簡潔にお答えいただきたいと思います。
まず、無戸籍の方々というのは、身分の証明がなかなか難しいということが考えられます。身分証明というと、これは私の感覚でありますが、一般的には、住民票、旅券、パスポート、運転免許証、それから保険証、この四点についてお伺いしたいんです。
まず一つ目、住民票なんですが、平成二十年の七月七日の総務省通知、これは七年前にも同じような問題が取り上げられたという経緯もありまして、総務省から通知が出まして、出生届の提出に至らない子に係る住民票の記載について、認知調停手続など外形的な手続が進められている場合には、市町村長の判断により、職権で住民票の記載を行うことが可能だということとされました。この内容については、これでよければ特段何も触れていただく必要はありません。
この通知を受けて、その後実際に行われた市町村長の職権による住民票の記載は何件あったかということについて、総務省の方からお答えいただきたいと思います。
○時澤政府参考人 平成二十年七月の通知で示されました要件に該当するものにつきまして、住民票を作成した件数でございます。
全国で、平成二十年七月から二十一年三月までで三百二十四件、二十一年度に三百八十九件、二十二年度に五百二十三件、二十三年度に五百八十件、平成二十四年度は、外国人に対しても適用いたしましたので、これも含めまして六百五十六件、二十五年度七百二十六件となっているところでございます。
○重徳委員 ありがとうございます。
今お聞きした数字ですと、少しずつこれもふえていますけれども、五百、六百、七百、このぐらいの数字でありますので、仮に、先ほどの法務省の調査の結果、五百数十人、これがみんな職権で住民票を得られているのだとすれば、ほとんど住民票については解決されているんじゃないかということも考えられるんですが、実際には、なかなかそうじゃないと思われます。
法務省では、今の総務省の把握している数字、つまり市町村長の職権によって住民票を得た数と、先ほどの五百六十七人という数、ここの関係性ということについて把握はされていますか。
○深山政府参考人 実は、先ほど御紹介した課長通知に基づく市区町村に対する無戸籍者に関する情報提供の要請というのは、戸籍法第三条二項、法務局長が戸籍事務の処理に関して必要があると認めるときは市町村長に対して報告等を求める権限がある、こういう戸籍法の権限規定に基づいて、この権限の行使として報告を求めているものです。
今申し上げた要件、つまり戸籍事務の処理に関しということで報告徴求権限があるということから、住民票の記載の有無というのは戸籍事務と必ずしも直接の関係はないものですから、これまでは市区町村に対して報告事項としておりませんでした。
先ほどの五百六十七名のうち、その他欄に参考的に書いてきたことで把握している方は何名かおられます。住民票に記載をしてありますという人が三十一名。記載がありませんという人が二十七名。これはごくわずかですけれども、この方々は、いわば任意的に報告を市区町村がされたものですが、一律の報告事項にしていないものですから、全体の状況を把握しておりません。
ただ、今委員御指摘のとおり、住民の置かれた状況というのは、住民票がとれているかどうかということで非常に重要な影響を受けますので、今後、報告を求める際にこの点まで追加的に求めることにするかどうかということにつきましては、先ほどの戸籍法上の権限規定の解釈、運用で賄えるのかどうかという法律の解釈の問題と、それから住民基本台帳制度を所管する総務省さんとも御相談をして、今後の課題とさせていただきたいと思っております。
○重徳委員 今後の課題というのは、私がきのうの夜申し上げたことですので、きょう、今決めていないとおかしいとまでは言いませんが、戸籍がなくても住民票さえあれば、とりあえずは何とかなる、行政サービスも、あるいは身分証としても、非常に重要なところでありますので、ぜひこれは必ず報告を求めるようにしていただきたいと思いますが、もう一言お願いします。
○深山政府参考人 今の委員の御指摘はそのとおりだと思っております。ただ、法解釈の整理の問題と、それから所管省庁と連絡をつけた上で、法務省だけで勝手にやるわけにいかない、そういう意味で、報告の求め方を、非常に強制的な必要的な記載事項にするか、それともわかる限りというか、そのあたりのニュアンスの点を、最後、両者の検討の結果詰めたいと思っているので、報告を求める方向で考えるのはそのとおりにしたいと思っております。
○重徳委員 ありがとうございます。すぐお隣に担当の総務省の審議官がお見えになりましたので、ぜひよく調整をしていただきたいと思います。
それでは続いて、旅券、パスポートについてですが、これも、人道上やむを得ない理由、人道上といっても、これは実は修学旅行に一人だけ行けないのは困るだろうというぐらいでも人道上だという取り扱いだそうですが、その人道上やむを得ない理由により戸籍への記載を待たずに渡航する特別の事情がある場合は、これも認知調停手続などが進められていることが必要ではあるが、それさえ、つまり手続が進められているという外形的なものがあれば旅券を発給できるというふうに聞いております。
ただ、若干気になるのは、この場合に、推定がきいてしまう、前夫の氏がそのお子さんのパスポートに入ってしまうということだそうですが、これは、こういうことで正しいでしょうか。
○鈴木(哲)政府参考人 お答え申し上げます。
旅券法上、旅券は、戸籍謄本または抄本に記載される内容に基づいて発給されますが、戸籍がない方についても、人道的観点から例外的に旅券を発給することは可能でございます。
無戸籍の方が旅券の発給を受けるためには、申請者の方が日本国籍を有していることが明らかであり、戸籍への記載を待たずに人道上やむを得ない事情により海外渡航しなければならない特別の事情があると認められる場合に加えまして、御指摘のありました、認知調停を初めとする、戸籍に記載されるよう身分関係の形成のための人事訴訟などの手続が既に開始されていることが必要でございます。
また、発給される旅券に記載される氏についてでございますが、旅券法施行規則の規定によりまして、家庭裁判所の審判または裁判の結果が出ていない段階においては、あくまで民法の規定に基づき戸籍に記載されることになる氏、具体的には婚姻中の父母の氏、多くの場合は申請者、母の前夫の氏を記載することになります。
○重徳委員 これもちょっと不都合な点だと思われます。
時間の関係もありますのでどんどん行きますが、次に、運転免許証について、これは、戸籍がなくても住民票があれば取得できるということでございますが、住民票もない場合には取得はできますか。
○濱政府参考人 お答え申し上げます。
運転免許を新たに取得する場合でございますけれども、受験資格である年齢、それから過去の免許の取り消し処分等を確認するために個人の特定が必要でございまして、そのために住民票等の提出を求めているところでございます。
委員お尋ねの住民票がない場合にどうなのかということでございますが、一般論として申し上げれば、その他の書類等におきまして個人が特定できればよろしいかと思いますが、特定することが困難であれば運転免許の取得は困難であると考えております。
○重徳委員 次に、保険証ですが、被用者保険であれば、これは民間の契約でありますが、まず雇用されているということが前提になりますので、それすらままならないという方のことも考えますと、国民健康保険についてお聞きしたいんです。これも戸籍がなくても住民票があればもちろん加入できるんですが、これについては、住民票がない場合、加入できるんでしょうか。
○武田政府参考人 お答えいたします。
国民健康保険でございますけれども、市町村の区域内に住所を有し、他の公的医療保険に加入していない方が被保険者でございますので、戸籍や住民票の有無は国民健康保険制度上の適用の要件とはなっておりません。
したがいまして、お尋ねの住民票に記載されていない場合でございますが、その場合であっても、その者の生活実態に照らして当該市町村内に住所があると認められる場合につきましては、被保険者として適用する取り扱いになっているところでございます。
○重徳委員 国民健康保険については、そういう証明がなくても、生活実態に照らして加入できるということでございます。
さて、身分証明以外にも、無戸籍の方々には権利行使、行政サービスへのさまざまな制約があるのではないかと思われる一方、住民票なんかがなくても何とかなるようなものもあると見受けられます。
まず一つ目に、生活保護について、これは戸籍も住民票もなくても受けられるんでしょうか。
○鈴木(俊)政府参考人 生活保護制度におきましては、戸籍や住民票の有無は保護の要件とされておりませんので、戸籍や住民票がない方でありましても生活保護を受けることは可能でございます。
○重徳委員 次に、選挙権について、これは若干住民票というものが重視されるような感じなんですが、戸籍がなくても住民票に記載された者であれば選挙人名簿に登録されるが、住民票にも記載されなければ登録されない、つまり選挙権を行使できないということでよろしいでしょうか。
○時澤政府参考人 選挙権を行使するためには、選挙権を有するとともに、選挙人名簿に登録されていることが必要でございます。
この選挙人名簿の登録につきましては、公職選挙法第二十一条におきまして、「当該市町村の区域内に住所を有する年齢満二十年以上の日本国民で、その者に係る登録市町村等の住民票が作成された日から引き続き三箇月以上登録市町村等の住民基本台帳に記載されている者について行う。」というふうに規定をされております。
したがいまして、戸籍の有無にかかわらず、住民票に記載された日から引き続き三カ月以上登録市町村等の住民基本台帳に記載されている者でなければ選挙人名簿には登録されず、投票することはできないということになっております。
○重徳委員 次に、義務教育についてですが、これは戸籍がなく、かつ住民票がなくても、実態として当該市区町村の区域内に住所があれば就学できると考えてよろしいでしょうか。その場合、就学通知はどのようになるんでしょうか。
○中岡政府参考人 義務教育諸学校に就学すべき年齢の児童生徒につきましては、その保護者に当該児童生徒を就学させる義務が課せられておりますため、戸籍の有無にかかわらず、小学校、中学校等の義務教育諸学校に入学させなければならないこととなっております。
また、市町村は、戸籍や住民票等の有無にかかわらず、域内に居住している学齢児童生徒の名簿である学齢簿を編製することとなっておりまして、居住の実態の把握に努め、学齢簿に記載されている小中学校への就学予定者の居住の実態のある場所に向けて入学期日や就学すべき学校の指定の通知を行うこととなります。
○重徳委員 ありがとうございます。
次に、児童手当、児童扶養手当、保育所、母子保健、これらも、戸籍がなく、かつ住民票がなくても、実態として当該市区町村の区域内に住所があって、かつ医師の出生証明等があればこれらのサービスを受けられると考えてよろしいでしょうか。
○木下政府参考人 お答え申し上げます。
児童手当、児童扶養手当、保育所、母子保健につきましては、先生今御指摘の戸籍及び住民票に記載がない児童につきましても、居住の実態等を確認することにより、サービスを受けることが可能でございます。
○重徳委員 次に、介護保険でございます。これも、戸籍がなく、かつ住民票もなくても、実態として生活の本拠地である住所を有していれば加入できるんでしょうか。
○苧谷政府参考人 介護保険につきましては、国民健康保険制度と同様の取り扱いになっておりまして、生活実態に照らして当該市町村内に住所があると認められる場合には、被保険者として適用する取り扱いになってございます。
○重徳委員 次に、国民年金なんですけれども、これも、戸籍がなく、かつ住民票もなくても、実態として当該市区町村の区域内に住所があれば加入できるんでしょうか。
○樽見政府参考人 国民年金の適用につきましても、日本国内に住所を有することということが条件でございまして、戸籍や住民票は必ずしも要件とはなってございません。
ただ、国民年金は長期にわたって加入していただく制度ということでございますので、市町村窓口に加入の相談があったときに住民票がないという場合には、まずは住民登録の手続について市町村の方で案内を行うというのが通例であるというふうに承知をしています。その上で、例えばDVなどのケースで特別な事情によって住民票がないという場合には、実質的な住所があると確認されれば適用する、そういうことになります。
○重徳委員 最後に、これは民間取引の分野に入りますが、銀行の預金口座ですね。いろいろな社会経済活動の基盤となると思いますが、銀行の預金口座を開設するには、犯罪収益移転防止法に定める公的証明書がないとだめだというふうに書かれておりまして、一般的には、戸籍がない、住民票もない、運転免許証もないというようなことであれば本人確認もできないし、口座開設もできないんじゃないかというふうに受けとめられますが、いかがでしょうか。
○氷見野政府参考人 お答えいたします。
住民票の写し、運転免許証に限るわけではありませんが、御指摘のとおり、犯罪収益移転防止法に定める各種の公的証明書がいずれもない場合には本人確認ができませんので、銀行口座を開設することはできないということになります。
○重徳委員 今お聞きいただいたとおり、相当支障もある一方で、住民票がとれるケースも、認知調停手続に入れば、外形的な手続に入れば一応可能である。そして、住民票がなくても受けられるサービスも一定程度ある。こういう全体をきちんと掌握した上で市町村との連携だとか支援というものを具体的に、大臣も先ほど寄り添って応援していくんだという決意を表明されましたので、できないことはもちろんあります、だけれども、できることはできるんだから。
クローズアップ現代でも、教育を受けずに大人になってしまった、こういう方のことも報道されていました。これは戸籍以前の問題という言い方がいいのかわかりませんが、戸籍が仮になくてもほかのいろいろなやりようがあったはずだ、こういうことでありますから、これは法務省だけの問題ではありませんが、各省としっかりと連携して、どういう方策を施していくのか。これはかなり横断的なテーマだと思いますので、できることはできるんだということをきちんと周知していただく必要があると思います。
その上で、そういう行政サービスさえ受けられればいいんだという問題ではもちろんありません。戸籍のないままに生涯過ごすということは、もうこれは極めて、大臣の所信にありましたけれども、まさに、国民としての社会的基盤が与えられないという、人間の尊厳にかかわる重大な問題であると思います。
したがいまして、もちろん、嫡出推定を打ち消すために、通常のケースであれば、裁判手続に前夫をかかわらせる、前夫を相手とした裁判手続にかけるという趣旨は一般的には理解されますが、しかし、世の中は大分変わっております。民法なんて百年以上前の法律ですから、離婚とかDVとかいろいろな実情がある中で、お母さんが子供がいるということを前夫には知らせたくないというような場合、前夫が亡くなるまで問題が解決しないんだというような状況の中で、あくまで二択だ、前夫の戸籍に入るかあるいは裁判手続をするか、どっちかだ、これは余りに酷な問題だと思います。
それから、前夫がかかわらず実父のみによる強制認知という手法もあるんだというふうに思ったんですが、思ったというかそのようにお見受けしたんですが、しかし、その場合にも、前夫との間の別居の状態が長く続いているということを客観的に、海外に行っているとか刑務所に入っているとかそのぐらいまでに別居しているということが客観的に明らかじゃないといけないとか、あるいは、結局どうなのかというのは裁判所に前夫を呼んで一応確認しておかないとという運用を家庭裁判所でも行っているのが通常だという話も聞きます。これは余りに酷であって、事実上、そんなことはできないじゃないかというふうに思います。
したがいまして、離婚後三百日のことはちょっとこの後お話ししますが、離婚していない場合にも、つまり妻は夫の戸籍に入ったままの状態であっても、子供の単独戸籍をつくるというようなことも認めるような、そんなルールをつくるべきではないか、法改正をすべきではないか、こういう考え方があると思うんですが、いかがお考えでしょうか。
○上川国務大臣 ただいま委員から御指摘がございました戸籍をどのようにつくるかということでございまして、先ほどの単独の戸籍をつくるということにつきましては、これは母親の方が無戸籍の場合に限定し、この場合には子が入るべき戸籍がないということでございまして、この就籍の許可の手続、これは戸籍法の百十条をとった上で子の単独戸籍が編製される、こうした手続になっております。
今委員からは、母に戸籍がある場合にもこのような手続をとるということがどうかというような御指摘がございましたけれども、戸籍制度の本質に係る非常に重要な問題というふうに考えておりまして、現時点、困難であるというふうに思っております。
○重徳委員 さもなくば無戸籍を選べというようなことではいけないと思うんですね。
確かに、重要なことです。ですから、軽々に、絶対それがいいんだということまで、結論まではいろいろな議論を経た上でやらなきゃいけないと思いますが、今、実情として、戸籍がない状況、つまり出生届を出せないという状況を選ばざるを得ない状況になっておるわけです。
ここは重大な問題であるというふうに大臣も捉えていらっしゃるわけですから、先ほどからの議論の中で、一般の行政サービスは割と、住民票も、余り簡単にではないかもしれませんが、とる方策もある、あるいは住民票がなくても住民サービスを得られる、そういう方策もあるという中で、法務行政だけが進んでいかない、つまり戸籍だけがつくれない、こういう状況にこのままだと陥ってしまう可能性があると思います。
ぜひとも前進させていただきたいと思うんですが、今の単独戸籍というのは、生涯単独戸籍というよりは暫定的な単独戸籍で、一定の条件、あるいは期間を過ぎたら本来の戸籍に戻すということも含めて検討すべきではないかというふうに思います。
あと十分程度ですので、今度は三百日ルールの話に移したいと思うんですが、現状、いわゆる三百日ルール、つまり離婚後三百日以内に子供が生まれたらそれは前夫の子であると嫡出推定が働くということなんですが、離婚後三百日以内に実際に生まれる子の数は把握されていますでしょうか。それから、離婚後懐胎の医師証明書提出ケースというものについてもちょっと言及していただきたいんですが、お願いします。
○深山政府参考人 今お尋ねのあった離婚後三百日以内に生まれる子の総数というのは、実は、統計をとっておりませんので、把握しておりません。ただし、平成十九年にこの問題が問題になったときに法務省が調査をしたことがありまして、これは推計的な調査ですけれども、離婚後三百日以内に出生した子は年間三千人近く存在する可能性があるというのがその推計の結果でございましたので、おおむね現在も同じような状況ではないかと推定をしているところです。
他方で、平成十九年五月の民事局長通達で、今お触れになった離婚後三百日以内に子が出生したときでも、妻が前夫との婚姻中に懐胎した子ではない旨の医師作成の証明書が提出されれば、前夫との関係で嫡出推定が及ばないものとして出生届を受理できるという扱いをしておりますが、この通達の取り扱いに基づいて出生の届け出がされた件数は、この通達を発出した平成十九年五月から平成二十五年十二月三十一日まで、六年半ほどありますが、この間の累計で二千百五十九件、また、直近の平成二十五年の一年間では二百八十二件となっております。
○重徳委員 推計の数字ですので一〇〇%正しいかどうかはともかく、年間三千人ぐらい、そのうち三百人ぐらいは婚姻中の子ではない、離婚後の前夫でない方との間の子であるということを証明する医師の証明書を出したということであります。つまり、前夫の推定が働かないという状況。
単純に言って三千引く三百で二千七百人の方は、逆に言うと、前夫の嫡出推定が働いているということなんですが、これはこれで、そのとおりだということももちろんあるでしょうし、あるいは、そうじゃないんだけれども、まあ、いいかという方ももしかしたらいるかもしれない。だけれども、本当はそうじゃなくて、ただし、婚姻中だったので証明もとれないという方もやはりいるかもしれない。ましてや、前夫がDV夫である場合には本当にそこでまさに苦しんでいる方がいらっしゃる、こういう状態なんだと思います。
それで、一方で、婚姻後二百日以内に生まれる子は夫の嫡出推定がきかない、つまり婚姻後二百日以降の子供にしか嫡出推定が働かない、こういうルールもあるわけですね。
最近は、いわゆる授かり婚というんですか、結婚前に妊娠をするというケースもかなり多くて、婚姻後二百日以内に誕生する子も我々の感覚的にも相当いると思います。しかし、このルールは、そもそも結婚もしていないのに二百日以内に子供が生まれるはずがない、あるいは生まれるべきではないというような民法の当時の明治時代の想定があったと思うんです。だけれども、その部分については、もはや我々は、おめでたいじゃないかと言うぐらいに、受け入れるような時代にもうなってきていると思います。
そういう意味でも、民法が想定していた、結婚してから二百日以内に子供が基本的には生まれないよねとかいう社会の通念自体が相当変わってきていると思うんですが、こういった社会の変化というものについては、大臣もそのように認識されていらっしゃいますでしょうか。
○上川国務大臣 ただいま御指摘の、婚姻後二百日以内に生まれるお子さんということでの御指摘でございます。
婚姻の成立の日から二百日以内に出生した子には嫡出推定が及ばないということでございますが、婚姻中の夫の子として出生届が受理されるということでございます。この取り扱いにつきましては、婚姻の成立の日から二百日以内に出生した子であっても、内縁関係が先行しておりその子が内縁中に懐胎したと認められる場合には、民法中の親子に関する規定全般の趣旨に照らして嫡出子となることとした、これは昭和十五年の大審院の判決ということで出されているところでございます。それを踏まえた上で、戸籍の窓口におきまして、内縁関係が先行しているか否かということにつきまして判断するということが窓口でできないということでございますので、その意味で、婚姻成立ということを機に、二百日以内に出生した場合には、その子につきましては嫡出子としての出生届を受理するということにしたものであるというふうに思っております。
今、婚姻に関しての社会通念が民法の制定当時からさまざまな変化があるというふうには考えているところでございますが、戦前からされているからといって、そのことについて直ちにということにはならないということでございまして、社会通念の変化と関連するということについては、この件につきましてはそのように考えていないということでございます。
○重徳委員 では、もう少し迫ってみたいと思うんですが、結婚して再婚するまで百八十日、女性は間をあけなきゃいけないというルールが今ありますね。では、百八十日たったのですぐ結婚、再婚をしましたと。ただし、離婚から数えて三百日以内、つまり結婚してから百二十日以内に生まれた子は、今の夫の子だという推定が働かないわけで、逆に、前の夫との子であるという推定が三百日ルールでかかるわけですね。そういう場合にまで今言ったようなルールを働かされるというのはちょっとどうかなという感じがいたしませんかね。
こういう場合、つまり、離婚後百八十日で結婚しました、その後百二十日以内に生まれました、こういう子については、さすがに前の夫との嫡出推定を外すか、あるいは、さらに言うと、後の方の夫との嫡出を推定する、こういうふうにルールを改正した方が、さすがにこういうケースについては社会通念に合うんじゃないかと思うんですが、いかがお考えですか。
○上川国務大臣 そもそも、この嫡出推定制度ということでございますけれども、妻が婚姻中に妊娠した子を夫の子と推定するものであるということでございまして、妻の懐胎時期につきまして、妊娠したことについて、婚姻中であるか否かということについて必ずしも容易に判断することができないということでございまして、そこで、一般的な妊娠期間につきましては、婚姻成立の日から二百日を経過した後、また離婚などの婚姻解消の日から三百日以内ということで、その間に生まれた子供さんについての嫡出推定をする、そうしたルールを定めたところでございます。
子の安定した法的な基盤をつくるということの中で、この制度について、一定の期間の設定については合理性があるというふうに考えております。
○重徳委員 もう今はDNA鑑定でも何でも後で幾らでも確認をし得るわけですから、もう少し法務行政というか民法ルールをいじらなければ解決しないと思うんですけれども、大臣、結局、何をされようと、今回の問題についてどう対応されようとしているんですか。あくまで、今の民法のルールのまま全く何も変えずに、運用だけで何とか解決に当たろうというお考えなんでしょうか。今回の所信に対するお考えを最後にお聞きして終わりたいと思います。
○上川国務大臣 先ほど来御指摘がございましたけれども、社会が大変大きく動いているということは事実でございます。
そういう中にありまして、戸籍を持たない方がいらっしゃるということ、そして、その戸籍を持たないことによって大きな不利益を長年にわたって生じていらっしゃる方もいらっしゃるということ、まずこのことの実態を把握する。先ほどその理由についてはいろいろ数字もございましたけれども、そのことにつきましてもしっかりと調査分析をしていく必要があるというふうに思います。
そして、やはり、直ちに戸籍を取得していただくということについて、これは寄り添うということで申し上げましたところでありますけれども、戸籍の取得をしていただくということについては、情報あるいは知識、そういう面についてサポートをしっかりとして寄り添いながら、戸籍の取得において、この無戸籍者の方をゼロにしていくという方向で取り組んでまいりたいというふうに思っております。
○重徳委員 非常に重要な問題なので、また引き続き議論させていただきたいと思います。
本日は、どうもありがとうございました。