○奥野委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。
一昨日に続きまして、資料の提出をいただきましたので、これに基づいて少々補足の質問をさせていただきます。
提出資料一をごらんください。三枚出していただきましたが、資料一に基づいて質問させていただきたいと思います。
これが、「殺人罪(未遂を含む)の起訴率の推移について」の法務省から提出された資料でございます。ここ三十年間、昭和五十九年からの起訴、不起訴、そして起訴率が記載をされております。
起訴率のところが太枠で囲ってありますので、これをごらんいただきますとわかりますように、ずっと数字を追っていくと、この間、二回ほど、極端に起訴率が減少した時期があるんです。それを除くと、起訴率はおおむね五〇%から六〇%台前半であります。
二回というのは、昭和六十二年、六十三年、ここで大きく下がっています。三七・九%、二二・一%まで下がっている。極端ですね。それから、平成五、六、七年、この三年間が、三五・六%、三九・三%、四三・九%という形ですね。あとはずっと安定した数字で推移しているんです。
そして、今回問題にしたいのが、二十一年以降急激に下がりまして、平成二十五年は三〇・一%に落ち込んでいるということでございます。
このあたりの要因につきまして、特に近年五カ年は裁判員裁判の影響との見方もありますけれども、どのように分析をされていますでしょうか。
○林政府参考人 御指摘のとおりに、起訴率というものが、昭和六十二年、六十三年、あるいは平成五年、六年、七年において、その前後の年と比較して低下している、そういう事情がございます。
これについて、その原因やいかんということでございますが、まず、基本的にはこれは、検察当局において、起訴、不起訴の判断、個別の事案に即して判断した集積であるところの統計でございますので、なかなかその原因を一概に述べることは困難であろうと思います。
もっとも、これらの年におきましては、不起訴の件数がその前後と比較して相当数増加しておりまして、その中でも、嫌疑なしを理由とする不起訴の件数が特に増加しておりまして、これが全体の不起訴件数の増加及び起訴率の低下というものの一因になっていることはうかがわれるのではないかと思います。ただこれが、では、これらの年において具体的にどういう類型の事案があったかという中身の問題についてまでは、ちょっとここでお答えすることが困難な状況にございます。
なお、一点付言いたしますと、昭和六十三年の数字につきましては、関連する平成元年版の犯罪白書におきまして、「殺人の新規受理人員四千二百三十四人中二千二百八十三人は、同一受刑者が多数の矯正職員を殺人未遂で告訴・告発した事件であって、事実自体が犯罪とならないもの」だった、こういった指摘がなされておりまして、このあたりについては、六十三年の特殊な事情というようなことをうかがわせているかもしれません。
以上でございます。
○重徳委員 今局長は、不起訴の数がどんとふえたということが大きな要因だというふうにおっしゃいました。確かに、昭和六十三年なんかは、他の年と比べて二千人規模で不起訴の人がふえているわけでありまして、ここは特殊なケースだったと言えると思います。
一方で、ここ五年間の状況を見て、不起訴がふえているというのもあるんですが、一方でさらに顕著なのは、起訴の件数が急激に減っているということなんですよ。だから、起訴率というのは不起訴の数がふえればもちろん下がるんですけれども、一方で、起訴の数が減ったことによって起訴率が下がっていると見られるのは、特にこの五年間が顕著だと思います。このあたりをちょっと御説明いただきたいんです。
ちなみに、せっかくいただいた資料の一番右側に認知件数というのがありますね。警察が出している数字です。警察が殺人事件というふうに認知した件数です。この件数は、先ほどの、この年だけ何千件ふえているとか、そんなようなことはありませんで、認知件数は比較的安定しております。
私は、この認知件数に占める起訴の割合というものを、分子と分母が必ずしも関係ない部分もありますが、おおむねの傾向を見るために、分母を認知件数、分子を起訴数として、パーセンテージをこの三十年間で独自に計算してみたんですが、ここ五年間に至るまで、実は一貫して五〇%を超えています。五〇%から六〇%台前半の間に全ておさまっています。それが、平成二十年からなんですけれども、四五・六%、二十二年は四〇%を切りまして三五・五%、さらに平成二十五年に至ると三三・二%と、ここは本当に顕著だと思いますよ。
起訴率の低下の原因を、不起訴がふえたというふうに局長はおっしゃいましたが、起訴がここ五年間著しく減っているということについては、何かコメントはありますか。
○林政府参考人 御指摘のとおり、起訴の人員についてはここ数年のところで減少傾向にあるわけでございますが、その原因、これが何によるものなのかということについては、一概に述べることが困難であります。
○重徳委員 今の御答弁では誰も納得しないと思うんです。一概に述べてほしいとまで言いませんが、少なくとも裁判員裁判の影響がゼロではないんじゃないかということは、誰がどう見ても推測されます。
ちょっと大臣にお聞きしたいのですが、今の局長の御答弁、いかがでしょう。起訴率低下そのものが、それ自体が必ずしも問題とは限りません。もちろんいろいろな事情があるとは思いますが、これは一般論ですけれども、検察が本来起訴すべきでない人を起訴しちゃうのもそれは問題ですけれども、よく問題になっていますが、逆の問題もありますね。重大犯罪ですから、本来起訴すべき、この起訴に過度に慎重になってしまう。こういうことによりまして、重大犯罪に対して適切な処罰が行われない、そういう可能性だってあるわけですよ。
先ほど山尾委員がおっしゃいましたが、内心というものが立証の肝であるというケースがかなり多いんですね。私は元検察官の方にちょっと個別に意見も聞いたんですが、例えば、未必の故意というのは非常に難しいようですね。ついかっとなってしまったというケースが多い中で、実は心臓部分に包丁を深く刺しているんだけれども、ついかっとなってやってしまったんだということに対して、本当に故意、つまり殺意があったのかどうかを裁判員の方が認めるかどうかというのは、すごく難しいことだと思います。それによって殺人罪なのか傷害致死罪なのかという非常に大きな違いが出るわけでありまして、このあたり、本当に難しいものであります。そういう判断が裁判官裁判と裁判員裁判でちょっと違うんじゃないかとか、そういうことを予見して、今、起訴するかしないかというところに影響しているんだとすれば、これは非常に重要なところです。
いわば、ちょっと言い方が適切かどうかわかりませんが、起訴するかどうかでそこをコントロールしてしまっているのが今の状況だとしますと、逆に言うと、今まで、裁判官裁判のときと同じような率で起訴されていたとしたならば、もしかしたら有罪率が逆に下がるかもしれませんね、裁判員裁判をやった結果。
今、裁判員裁判による有罪率は九九%を超えているんですよ。変わりません、これは。裁判官裁判だった時代も九九%以上、今も、裁判員裁判でも九九%以上、この有罪率は維持されているんです。
これは、言い方は悪いですが、起訴率によって有罪率をコントロールしているんだとすれば、それは非常に裁判員裁判における大問題でありまして、もし今までどおり起訴していたら、有罪率が下がっていたかもしれない。
このあたり、非常に検証が必要な問題だと思いますが、大臣、どのように認識されていますか。
○上川国務大臣 先ほど、殺人罪等について、内心について問いかけるというのは非常に難しいと。そういう中で、法と証拠に基づいて裁判をするということでありますので、そういう意味では、有罪率とかそういうことも含めまして、やはり裁判所において適正に判断され、また、起訴におきましても、そうした問題意識でしっかりと取り組んでいるというふうに思います。
コメントを私からということでございますけれども、今、事実としてデータを示していただきましたし、いろいろなデータがクロスしながら比率について出していらっしゃるということもございまして、そういう意味では、そこから、裁判員裁判においてはこうかというような形で導き出すというところまでは、私としては十分なる判断ができないということでございます。
いずれにしても、法と証拠に基づいて的確にやっていくということについては、いかなる場におきましてもそうすべきであるというふうに思いますし、運用としてもそういう方向でやっているというふうに思っております。
○重徳委員 これは、先ほど委員長御自身もおっしゃいましたけれども、明らかに検証が足りない部分だと思います。刑事局長も、一概には言えないという御答弁ですし、今大臣も、十分判断できない、そういう御答弁でございました。一体、この五年間、六年間の裁判員裁判をどこまで検証したのか。そして、明らかに著しい変化が出ている数字に対して、十分な検証が行われないままに今回の法改正に至っていると思います。
今回の法改正の中に、本来は、そのあたりも含めて検証した結果を、その課題に応えた内容として法案に盛り込むべきであると思いますし、今後も、引き続きこの部分については不断の検証が必要であると私は考えます。
いずれにしても、現時点で、このことについて、起訴率の低下について、検証が全く不十分であるということはお認めいただきたいんですが、大臣、いかがでしょうか。
○上川国務大臣 委員御指摘ございました、起訴率の低下の要因の分析についてということで、検証につきましては不断にしていくべきだという、私も、その問題意識は大変重要であるというふうに考えておりますので、そういう意味で、必要性の有無も含めまして検討してまいりたいというふうに思っております。
○重徳委員 今のは、つまり、この委員会においてもしっかり検証を行っていくという御答弁と理解してよろしいでしょうか。
○奥野委員長 理解していいと思います。
さっき申し上げたとおりで、データだけ出てきていて、読みがないわけですよ。だから、その読みを、二週間時間がありますから、その間にしっかりやっていただいて、ここで議論していても前へ進まないから、もう少し時間を置いてからやったらいかがですか。ちゃんと仕切りますから。
○重徳委員 ありがとうございます。ぜひとも、法務省、裁判所あわせて、きちっとこの場でも、委員会においても検証してまいりましょう。よろしくお願いいたします。