不平等な日米地位協定 H27.5.22
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○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。
間もなく刑事訴訟法の改正法案が提出されるところでありますが、その刑事裁判手続と密接というか、テーマそのものでもあります日米地位協定に関する質問をきょうはさせていただきたいと思っています。
私は、維新の党の中でも沖縄問題に関するプロジェクトチームというのがありまして、そこで、例えば参議院には儀間光男議員といった沖縄選出の議員さんもいらっしゃいまして、そういう方とともに沖縄問題に取り組んでいるところでございます。
言ってみれば、二十一世紀の治外法権あるいは不平等条約とも言えるような日米地位協定なんですけれども、御存じのとおり、これは昭和二十七年に日米行政協定が結ばれまして、昭和三十五年に現在の日米地位協定に改正されて以来、一度も改正がされたことはございません。
この間、五十五年間、世界の情勢も国内事情もいろいろと変わる中で、米軍人あるいは軍属の事件、事故が繰り返し発生をしておりますが、そこへの対応に対しまして、沖縄県民の皆さん初め基地周辺の住民の皆様方からは、大変な不満が高まっておるところです。政府はその都度、米国に対して再発防止を申し入れたなどといったコメントをされるんですけれども、やはり地元の方々から言わせれば、アメリカ側の綱紀粛正なんというのは名ばかりで、いまだに占領意識、支配者という意識が抜けていないんじゃないか、そういう声が上がっております。
資料一をごらんください。
問題は、日米の裁判権なんですけれども、やはり通常であれば、日本国内で起こった、しかも日本人が被害者であれば、当然日本で裁かれるべき、日本の司法によって裁かれるべきところを、この図でいうと、丸い緑色の中が、右側はアメリカ側に第一次裁判権があるんだ、こういうルールになっているんです。
まず確認ですが、第一次裁判権、この日米への帰属、どのように規定されているんでしょうか。
○冨田政府参考人 お答えをいたします。
日米地位協定において、両国の裁判権が競合する場合の取り扱いについてのお尋ねでございますけれども、この点につきましては、協定の第十七条第三項に規定が置かれております。
その規定によりますと、こうした裁判権が競合する場合に、米軍人軍属の公務執行中の作為または不作為から生ずる罪、それから、専ら米国の財産、安全や米軍人などの身体、財産のみに対する罪、これらについては米側が第一次裁判権を有するというふうにされております。
一方におきまして、これらの犯罪以外については日本側が第一次裁判権を有するとされているところでございます。
○重徳委員 公務執行中、公務の間の事件であればアメリカの方で裁判の手続に入るということなんですけれども、これはちょっと古いデータかもしれませんが、一九八五年から二〇〇四年の二十年間、公務中の事件は約七千件あったという数字がありまして、死者も二十一人出ているという数字もありますが、これがアメリカで軍法会議にかけられたのは一件のみとか、あるいは懲戒処分も全体で七千件中三百十八件しかない。ということは、大半は軽い処分だとか無罪放免というんでしょうか、そういうような扱いも受けているんじゃないか。
それから、通勤途中の交通事故も公務中だという取り扱いになっているようですし、さらには、米軍当局がこれは公務だというふうに言えば、日本側が反証を、もちろん異議申し立ての機会はあるといいますが、これまで二件しか異議申し立てもしていないということなんです。
今、北米局長、ルールは御説明されましたけれども、なぜ公務中のものについてはアメリカの裁判権になるんでしょうか。ちょっと理由が不明確だったんですけれども。
○冨田政府参考人 米軍の軍人等の公務執行中の行為が犯罪を構成するような場合、基本的には、軍の規律違反の問題として軍隊の法規範に照らして判断されるべきという考え方がございまして、そういう考え方に基づいて現在の規定に至っているというふうに理解をしております。
○重徳委員 そうですね。ですから、軍法会議にかけられて、きちんとした裁きがあってしかるべきということなんですが、必ずしもそうなっていないのではないかという指摘が絶えないところであるんです。
それから、資料二をごらんいただきたいんです。
これは東京新聞の記事でありますが、結局、駐留米兵の起訴される率というのが非常に低いということであります。
今、公務のものについては裁判権がアメリカにあるということでありますが、公務外であっても、例えば身柄引き渡しに制約があったり、それから、この後ちょっと質問させていただきますけれども、裁判権を行使するのかどうかということも一定の期間内に判断しろとか、それから、実際、起訴、不起訴の判断が、なかなか起訴に持ち込むことが難しいような状況になっているのではないかという指摘があるんです。
まず、日本側に裁判権がある、つまり、主に公務外のものについて、身柄拘束のルール、身柄引き渡しのルールというのはどうなっていますか。
○冨田政府参考人 お答えをいたします。
お尋ねの点でございますけれども、日米地位協定の第十七条の5(c)というところに規定が置かれておりまして、これによりますと、日本側が裁判権を行使すべき事案について、米軍人等の身柄が米側の手中にある場合、日本側が起訴するときまで米側が引き続き拘禁する旨を規定しているところでございます。
他方におきまして、日米両国は、平成七年の日米合同委員会合意によって、凶悪な犯罪について、起訴前の日本側への身柄の引き渡しを可能とする枠組みを設けたところでございまして、このような枠組みのもとで、実際に起訴前の身柄の引き渡しが行われた例もあるということでございます。
○重徳委員 起訴されるまでは引っ張ってくることができないということなんですね。
ただ、平成七年からは、凶悪犯罪、これは殺人または強姦といったものだというふうに聞いておりますけれども、これもちょっと今理由がよくわからなかったんですが、なぜそういう取り扱いになっているかというあたり、御説明いただけますか。
○冨田政府参考人 米国はさまざまな国と地位協定を結んでおります。
その中で、身柄の引き渡しに関する規定があるもの、ないもの、さまざまございますけれども、起訴の時点での引き渡しというのを決めているのは、NATOとの地位協定、それから日米の地位協定、この二つの例だというふうに理解をしております。その他の場合、例えば米韓の地位協定におきましては、一定の凶悪犯罪については起訴時としておりますけれども、その他の犯罪については判決の執行時というふうになっているところでございます。それぞれ取り扱いはさまざまでございます。
その中で、もともとの規定に踏み込んで、凶悪な犯罪について起訴前の引き渡しを認めたということは、これは沖縄で起こりました事案、それに対する地元の皆様方の感情、そういったものを勘案いたしまして日米間で協議をした結果、合意に至ったものでございます。
○重徳委員 理由をお尋ねしたんですが、理由というよりは、他国との間で、むしろ日本は、起訴時の引き渡しというのも、まだ日本にとって有利な方だというような御説明だったと思うんですが、ほかにもいろいろ制約があるんですよ。
第一次裁判権を行使する、つまり、公務外のものであって、これは第一次裁判権は日本のものだということの判断を通告する期限が定められているというんですね。これについてもルールを御説明ください。
○林政府参考人 裁判権が、第一次裁判権、第二次裁判権とありますと、第二次裁判権の行使については、第一次裁判権の行使がなされるかどうかということがその前提となりますので、この間の調整のために、日米間で一定のルールがなされております。
その日米間の合意によりまして、裁判権行使通告期間制度というものが設けられております。これは、所定の期間内に、我が国として、当該事件について裁判権を行使するか否かを決定して、これを合衆国側に通告することとしまして、裁判権不行使の通告をした場合はもとよりでございますが、その期間内に行使または不行使の通告をしなかったときには、合衆国は当該事件について裁判権を行使し得るというものでございます。
具体的には、原則として、我が国の法令によって六月以下の懲役以下の刑に当たる罪等の一定の軽微な罪につきましては、犯罪通知というものがなされた日の翌日から起算して十日以内、その他の罪につきましては、同様の起算日から二十日以内に裁判権行使の通告をすべきものとされております。
ただし、我が国において裁判権行使の決定を留保することを欲する旨の通知をした場合には、十日以内に通告すべき事件についてはさらに五日、二十日以内に通告すべき事件につきましてはさらに十日を経過するまで、米国側は裁判権を行使しないということとされております。
○重徳委員 最長、もろもろ合わせて、軽微でない犯罪については三十日間以内に通告をするということでありますけれども、こういった期間制限があることによって、あるいは先ほどの身柄引き渡しに制約があることによって、取り調べも十分行えないような状況もあるんじゃないかという感じもいたします。
そして、今、林局長が言われたこの第一次裁判権行使の通告に関するルールですけれども、これは、私の手元では、刑事裁判管轄権に関する合意事項というので定められていると認識しておったんですが、今、局長はそう言われましたか。
○林政府参考人 そのとおりでございます。合意事項で定められております。
○重徳委員 では確認なんですが、日米地位協定はこれまで一度も改正を行われていないわけなんですけれども、この合意事項というものは、もう少し改正に当たってのハードルは低いんでしょうか。このあたりはどう認識しておけばよろしいんでしょうか。
○冨田政府参考人 地位協定につきましては、御指摘のとおり、地位協定自体については締結当時から一度も改正を行っていないところでございますけれども、他方で、地位協定の実施を行うためにさまざまなルールというものを随時、そのときの状況に応じてつくっていくという取り組みは、一貫して行ってきております。
そうしたルールについては、基本的には、日米間で行っております合同委員会の合意という形で今まで行ってきたわけでございます。
○重徳委員 ということは、合同委員会で、地位協定本体よりは弾力的な見直しが可能といえば可能だというふうに認識しておきたいと思っております。
そして、この新聞記事にも書いてありますけれども、起訴率、起訴というものが通常よりも低いんじゃないかという指摘がありますが、これは法務省の方に、どういう形の統計があるかによりますけれども、日本の検察が受理したもののうち、起訴、不起訴はどの程度の割合になっているんでしょうか。
そして、不起訴といっても、その中には、結局、公務中というような理由で第一次裁判権が日本にはないんだということで、いわば返上したような、そういう理由の不起訴もあると思うんですが、このあたりはどのような状況か、御説明をいただきたいと思います。
○林政府参考人 今回、法務当局におきまして、手元の資料をもとに計算した限りにおきますと、まず起訴率全体について申し上げますと、期間としては平成二十一年から平成二十五年まで、そして対象としては刑法犯全体で見ますと、受理した事件のうち起訴した人員数と不起訴にした人員数、これの合計に占める起訴した人員数の割合で申し上げますと、日本全国でいきますと約一七・三%、米軍関係者にしますと約一一・五%となっております。
また、米軍関係者の刑法犯全体の事件について、例えば公務中の犯罪などと判断されて裁判権がなくて不起訴となったことに着目しますと、これは、全国の検察庁が平成二十一年から二十五年の間に受理した米軍関係者の刑法犯の事件のうち、公務中犯罪であるために第一次裁判権なしとして不起訴にした人員数は四百四人となっております。この人数を前提に、同じ期間の刑法犯の起訴人員数と不起訴人員数の合計が二千二百五十人でございますので、その中に占める割合というのは約一八%になろうかと思います。
○重徳委員 この数字の評価はもう少し分析してみないとわかりませんけれども、いずれにしても、受理したものの中の二割近くは公務中だという理由で不起訴となったということでございます。
この内容は、もちろん正当化される部分もあるとは思いますけれども、本当にそういう扱いでいいんだろうかということを地元の被害者の皆さんからは思われるものもあるのではないか、こう感じますが、これは、もう少し詳細に分析をした上で、また指摘すべきは指摘していきたいと思っております。
こうした米軍関係者の起訴率、これは公務だからということも含めてではありますが、いろいろな数字が出ているんですけれども、公務だからということで除かれるのはある意味ルールだからということなんですが、そのほかを見ても、どうも、強姦罪だとか強制わいせつ罪については、起訴される割合が通常より低いんじゃないかというような指摘もございます。
この米軍関係者の起訴率、一般に低いなんと言われておりますけれども、これはどう評価されていますか。そして、問題じゃないかと言われたら、どうお答えになりますか。
○林政府参考人 先ほど、日本全国とそれから米軍関係者の起訴率について、取り急ぎの資料としての数字をお示ししました。
一つには、この比較をする場合、もとよりでございますが、日本全国では起訴人員と不起訴人員の合計数というのは四百二十九万八千人余りございます、これに対して米軍関係者については二千二百五十人でございますので、まず、数字の規模が非常に異なっております。これを比較して有意な傾向、特徴を見出せるものかどうかは、若干疑問なしとしないことがございます。
もう一つ、この差について考えますと、もちろん、先ほど言及しましたが、米軍関係者については、第一次裁判権なしなどという米軍事件特有の理由による不起訴処分が相当数ございます。
もう一つ、米軍関係者以外でございますと、日本全国において、検察庁に送致されずに警察段階で処理される、いわゆる微罪事件というのがございます、非常に軽微な事件。これにつきましては、検察庁にも送致されませんので、当然、起訴、不起訴の分母の部分に入ってきません。他方で、米軍関係者については、微罪事件についても検察庁に全件送致されているということになりますと、やはりそれは不起訴人員数の増加に寄与することとなろうと思います。
そのようなこともございますが、基本的に考えられる、今わかるところでは、そのような差があろうかと思います。
○重徳委員 現状はわかりました。
さまざま制約はある中でありますが、先ほどから申し上げております、地位協定そのものは改正はされておりませんけれども、今、北米局長からありました平成七年の運用見直しなど、随時、運用レベルでは見直しが行われているわけなんです。平成七年の、凶悪犯罪に関して起訴前も身柄拘束を可とするこの見直しは一つ大きな見直しだったと思いますが、その後、最近どのような見直しが行われているのか、ここで御説明いただきたいと思います。
○冨田政府参考人 お答えをいたします。
幾つか具体的な例を御紹介いたしますと、平成二十三年の十二月でございますけれども、公務の範囲に関する合同委員会合意を改正いたしました。それに伴いまして、公の催し事での飲酒の場合も含めて、飲酒後の自動車運転による通勤は、いかなる場合であっても公務として取り扱わない、すなわち、日本側が第一次裁判権を有するということを確保したという例が一つございます。
さらに、平成二十五年、二〇一三年十月でございますけれども、この合意におきましては、米軍人等が起こした事件について、米側による裁判や懲戒処分の結果の通報を受けまして、被害者や御家族にその内容を開示するための枠組みを新設したというふうな例がございます。
御紹介をしておきます。
○重徳委員 ありがとうございます。
公式なパーティーで飲酒をした場合はその飲酒運転は公務なんだなんという取り扱いがつい三、四年前まで続いていたというのも驚きでありますけれども、こうした見直しは引き続き、運用レベルとはいえ、行っていっていただきたいと思います。
さて、それで、若干切り口が変わりますが、こうしたアメリカ軍から見て日本で治外法権的な取り扱いがされるその理由の一つとして、たびたび、実は、日本において刑事訴訟制度が、アメリカと比べて被疑者の人権が守られないおそれがあるということが指摘をされるわけです。
国際的に見て、日本の、特に被疑者の取り調べなどにおきます人権、これが、例えばアメリカでいえば、平成二十五年四月に、アメリカの国務省の国別人権報告書なんていうのがあるんですね。それから、平成二十六年八月には、国連自由権規約委員会の最終見解があるんです。
起訴前の勾留について、日本では適正手続が欠如しているんじゃないかという指摘があります。例えば、起訴前の留置場における勾留が長過ぎるとか、保釈される権利が不十分だとか、それから長時間の取り調べ、取り調べの時間とか時間帯のルールが不十分だとか、それから弁護士さんの立ち会いがないとか、こういった指摘がされていると思うんです。
国際的にどのような指摘がされているか、少し正確なところを御説明いただきたいと思います。
○岡田政府参考人 まず、御指摘の自由権規約の関係でございますが、昨年七月に行われました自由権規約の対日審査を踏まえまして、昨年八月に国連自由権規約委員会から公表された最終見解がございます。
そこにおきましては、同委員会から我が国に対しまして、起訴前の保釈の権利や国選弁護人選任の権利がないこと、代用監獄での自白強要の危険性、取り調べに関する厳格な規制がないこと等に懸念が表明されております。その上で、我が国への勧告といたしまして、起訴前の勾留期間の保釈等代替手段の検討、被疑者の弁護人を依頼する権利の保障及び弁護人の取り調べ立ち会い、取り調べの時間制限、方法を規定する立法、それから不服審査メカニズムを保障するためのあらゆる措置をとるべきこと等が勧告されております。
また、御指摘の、米国国務省より二十五年四月に発表されました国別人権報告書についてでございますが、被勾留者に対する適正手続について、指摘がいろいろございます。
具体的には、一つには、警察による同一被疑者の再逮捕の手法が使われていること、それから取り調べ時の心理的な強制による自白獲得が行われていること、それから取り調べが当局により選択的に録画、編集され、裁判所が心理的強制を確知できない場合があるといったこと、さらには、二名の誤認逮捕は強制による自白であったこと、そういう指摘がなされているところでございます。
○重徳委員 相当さまざまな指摘をされているわけなんですけれども、時々取り沙汰されます平成二十一年の読谷村における米兵のひき逃げ事件なんかにおいても、やはり被疑者側は、確かに犯罪を犯したわけなんだけれども、しかし、取り調べにおいて人権が保障されていない、自白を強要されるんじゃないか、ちょっときつく言えば拷問的な取り調べが行われるんじゃないか、こういう懸念から供述を拒否する、こんなような状況になっているわけです。
こうなりますと、犯罪者もそれはもちろん悪いんだけれども、日本の制度も悪い、こういう話になってしまうわけでありまして、このあたりから今回の刑訴法改正の内容と関連してくると思っているんです。
今回の刑訴法改正において、可視化導入というものがあるわけなんですけれども、今まで、裁判員制度の対象に限るとか、いろいろな理由で制限的で、これをもっと広げるべきじゃないか、与野党問わず、いろいろな声が上がっています。今の国際的な観点から見て、対象事件をより拡大し、また事件の全過程を可視化する、こういう取り組みを、あるいは日米地位協定、あるいは沖縄基地を初めとする基地周辺住民の本当につらい悲しみの観点からも、もっと可視化を広げていくべきじゃないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○上川国務大臣 取り調べの録音、録画制度ということの対象事件を拡大する、そういう御指摘でございます。また、国際的な見地にのっとってということでございました。
今回、法制度の対象としている事件につきましては、捜査への影響に対する懸念というものも踏まえまして、制度の対象外の事件について運用によりましての録音、録画が行われるということも考慮しながら、必要性が最も高い類型の事件としたものでございます。法律上の制度としてより広い範囲の事件を対象として制度化する、こういうことにつきましては、運用とのバランスの中で今回の提案をしているところでございます。
検察の運用上でございますが、録音、録画が必要な事件につきまして、罪名を限定しないで、積極的に録音、録画を実施しているというところでございますので、制度と運用をあわせて考えますと、相当な件数の事件で録音、録画の実施が見込まれるというふうに考えておりまして、範囲は広いというふうに考えております。
○重徳委員 非常に曖昧な答弁だと思うんですね。
ルール化されているものは非常に限定的で、ただし運用でやっていますとか、積極的にやると警察あるいは検察当局が言っていますとか、そういうことをもって、例えば今も私が申し上げている米軍兵の言い逃れを許している結果を招いているんだと思います。
ほかにも、先ほどの国際的な指摘を踏まえて、幾つかあるんですが、日本における留置場での勾留が期間が長過ぎるとか、あるいは再逮捕を繰り返すことでずっと勾留されるような運用になっている、こういうことなんですけれども、今の現行におけるルールをまず御説明いただけますか。
○林政府参考人 現行法上、被疑者の勾留につきましては、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、かつ住居不定、罪証隠滅のおそれ、または逃亡のおそれがあると認められる場合に限り、裁判官の決定によりまして、原則として十日間、そして、やむを得ない事由があるときは、裁判官の決定により、さらに十日間を限度として延長が認められることとなっております。
その際、被疑者側としましては、勾留決定あるいはその延長決定に対して不服申し立てをすることができるということとされております。
○重徳委員 これもよくわからないんですね。
つまり、取り調べのために勾留するわけではないんだと。つまり、証拠を隠滅するとか逃亡するおそれがあるから勾留するんだけれども、言ってみれば、その期間に便乗して取り調べを厳しく行っている、こういう不透明なルールだと言われても仕方がないような感じがするんです。
これはまさに国際的に指摘されている点ですが、例えば期間を短縮するとか保釈を認めるとか、これに対するいろいろな解決方法はあると思うんですが、ちょっと政務官にお尋ねしたいと思います、どのようにお考えでしょうか。
○大塚大臣政務官 国際的に見て、いろいろな制度のたてつけが国によってあるんだと思うんです。
日本の勾留原則、請求をして、裁判官によって決定をされれば十日、さらに最長二十日まで延びるという制度ですけれども、身柄を拘束し続けるということについて、例えば、ヨーロッパの国などでは数カ月とかあるいは年に及ぶ単位でこうした勾留がなされるような国もあるわけでございます。
あるいは、短いような国においては、例えばイギリスなどは令状なしで逮捕ができるとか、要するに、入り口のところが非常に緩やかに逮捕ができるようなバランスになっているような国もある。あるいは、アメリカなどですと、かなり高い確率で起訴をしていく。これは、黙秘のようなことが積極的に利用されているので、取り調べようと思っても、弁護士がやってきて、あなたは黙秘権があるからしゃべるのをやめてくださいよ、こういうようなことでなかなか取り調べが進まなくなる。よって公判にすぐに行く。こういうようなさまざまな制度のバランスが国によってございます。
日本の場合は、逮捕に至るまでにかなり厳密に調べて令状をとって逮捕していくということになっておりますので、その前段階で相当絞り込みをされているということがあろうかと思います。
こうした制度の全体のバランスを考えたときに、やはり、十日から二十日といったような期間というのは取り調べで必要ではないか。その場合にも、裁判官がしっかりと、これは必要があるかどうかということをよく吟味して決定をしていくということですし、不服がある場合には準抗告という手続も設けられているということですので、全体として日本の制度はバランスがとれていないとは私は言えないのではないかというふうに思っておるところでございます。
○重徳委員 つまり、今、国際的な批判は当たらないということを大塚政務官は言われたんですかね。そう言われても、いや違うんだ、常にバランスがちゃんととれた制度だから、そういう批判は当たらないんだよということでしょうか。
○大塚大臣政務官 当たらないとまで言うかどうかということもありますけれども、日本の制度なりにバランスがとれたものになっていると思いますし、ほかの制度で運用している国の方から見ると、いろいろと気になる点も出てくるのかなという気もいたします。
○重徳委員 もう一つ、私もまだ法務委員会に所属して日が浅いので、いろいろと思い至らない部分があって、本人への取り調べの時間数だとか取り調べる時間帯というものが、一体、ルールはどうなっているんだろうと。警察は、今言われた十日とか二十日の間、いつでも、体力が尽きるまでずっと取り調べができるようなイメージもあった一方で、でも、そんなことできるわけないなと思ったり。
まず、ルールはどうなっているんでしょうか、教えてください。
○林政府参考人 法的な意味での取り調べの時間数という形での制限というようなものはございません。あくまでも、先ほどの勾留の期間というような形での制限はございますが、その中での取り調べの時間数といった形での制限はございません。
もとより、どのような取り調べをするのか、あるいは一日の時間数、あるいは深夜に及ぶ場合についてどのように考えるのかというのは、それぞれ、検察、また特に警察において内部的に方針を決めていると考えております。
○重徳委員 ということは、別に夜中にやろうと朝方にやろうと、それは取り調べる側の都合はあるかもしれませんけれども、あるいはコンディションはあるかもしれませんけれども、そこには全く制限がないということなんですね。時間帯については制限なし、もちろん、時間数も制限なしと。
○林政府参考人 特に時間帯について、殊さらに深夜に及ぶような取り調べはしないというようなことでの方針というのはあると承知しております。
他方で、警察の場合、特にありますけれども、実際の任意同行がなされた時間が深夜であった場合、あるいは逮捕が深夜になったような場合というのもございますので、一律にそういった場合の取り調べを除外するというような形での取り決めにはなっていないと考えております。
○重徳委員 要は決まっていないということですよね。
まさにそこが指摘されているんじゃないかなと思うんですが、大塚政務官、このことも批判には当たらない、日本の制度はバランスがとれているというふうに言えるんでしょうか。あるいは、改善すべき点はないんでしょうか。
○大塚大臣政務官 これは、制度というよりも運用の中でということになってくるんだと思うんですけれども、非常に圧迫的な、例えば時間の使い方にしても、深夜にわたり、また早朝からというようなことでやれば、当然、得られた供述の任意性というものにも疑問符がついていくということになるんだと思うんです。そうすると、当然、それは不服申し立ての対象になってこようと思います。
どれぐらいの確率で起きるかというのは、人間がやることですから全く間違いが起きないということはないわけですけれども、例えば、聞いている範囲では、警察では、しっかり内部で通達を出して、夜の十時以降あるいは早朝五時以前に取り調べをするようなことはしないようにという通達を出しているというふうに聞いております。また、検察でも、過度に遅い時間に極力ならないようにするし、前の日に余り遅くなるようだったら翌日はそんなに早くからやらないような、そういう配慮は運用ではされていると思います。
にもかかわらず、やはり人間のすることであるということで、時として任意性が争われるような事態に至るということもあるわけです。
しばらく前の調査だったと思います。ちょっと数字は正確でないですけれども、千件に三件ぐらい任意性が争われるというようなことだったと思いますので、やはりその限りにおいて問題はあるんだと思います。実際に任意性が否定されたケースは一万件に一件、信用性が否定されたのは一万件に一件ぐらいだったというふうに記憶をしておりますけれども、ちょっと不正確だったら、また後ほどお知らせをいたします。
いずれにしろ、こういう件は、しかしそうはいっても、一件でも起きれば、万に一件でも起きれば非常に人権問題でもあるということですから、こういうことが断じて起きないように、運用面でこういう手だてを講じてきて、厳しくしてきているわけですけれども、さらに不断の努力を重ねていく必要があるというふうに思っております。
○重徳委員 非常に力強い政務官の決意を今述べていただけたと思っております。
これはもうちょっと私自身も調べてみたいと思いますけれども、やはり問題があるんじゃないかと思いますね。
それから、もう一つ指摘された点があります。
取り調べに弁護士を立ち会わせる、これはアメリカではミランダ・ルールと言うらしいんですけれども、こういったことも日本ではまだ取り組まれていないわけであります。この点、大臣、いかがでしょうか、弁護士の立ち会い。
○上川国務大臣 被疑者取り調べにおける弁護人の立ち会い制度ということで、法制審議会の新時代の刑事司法制度特別部会におきましても、この点については議論がなされたということで承知をしているところでございます。ただ、問題点も御指摘がございました。取り調べのあり方を根本的に変質させるものであるということで、機能を大幅に損なうおそれが大きいというような御意見もございました。
そこで、具体的な検討対象としてはなされなかったということで、その結果として、答申にも盛り込まれなかったというふうに伺っているところでございます。
御指摘の、被疑者の取り調べに弁護人を立ち会わせる権利を認めるかどうかということでございますが、この点につきましては、さらに慎重な検討が必要ではないかというふうに考えております。
○重徳委員 これももちろん日本の司法ルールの全体的なバランスの中でということでありますので、ここの部分だけ切り取って導入するということではないとは思いますが、例えば、先般の裁判員制度の議論の中でも、これまでの供述調書中心の裁判の仕組みから、もっと公判を中心、つまり口頭弁論を中心にした裁判におのずと変わっていくだろう、あるいは変えるための環境整備の一環として、可視化もそうですけれども、この弁護人の立ち会いというものも指摘をされる有識者も、参考人の中にもそういう方がおみえになりました。
そして、きょう私が申し上げております、これはやはり国際的に見て理解されない部分があるわけですね。少なくとも、日米間では、ここの部分が問題があるから、だから取り調べには応じないなんという、そういう米軍の容疑者が登場するぐらいでありますから、これは非常に揚げ足をとられるような状況に陥っていると思います。
しかも、これは平成十六年の運用改善合意の中では、先ほど局長からの御紹介はありませんでしたけれども、起訴前の身柄引き渡しに伴いまして、米軍の被疑者の取り調べに米軍司令部の代表者が同席をすることが認められるようになったと。これは外務省のホームページに認められるようになりましたと書いてあるんですけれども、認められるようになったのはアメリカ側の話でありまして、何で日本が認められるなんて言う必要があるんだと思います。これはむしろ、例外的にアメリカの兵士だけを、容疑者、被疑者の人権を守るということでありまして、日本人の方は一体どうなっているんだということにもなります。
この点は次回以降また議論していきたいと思っておりますが、まず、上川大臣に、こういった被疑者の人権に関する日米間の刑事訴訟制度上の考え方、違いをどうごらんになっていますか。先ほど大塚政務官も、日本は全体的にはバランスがとれているんだから問題ないと言いつつ、改善すべき点もあるというふうにおっしゃっていただいたので、それは非常によろしいかと思いますけれども、全体的に日米でどちらがどうなんでしょうか。大臣の認識をお伺いします。
○上川国務大臣 各国の刑事司法制度につきましては、その国のよって立つさまざまな要因、それまでの経緯、犯罪の事情、あるいは刑事政策そのものということで、制度全体のあり方を俯瞰しながらということであると私は思っております。
先ほど、大塚政務官の方から、制度の一部分を捉えてそこで単純に比較するということについては、全体のバランスの中で刑事司法が成り立っているという大原則からすると、それは意義についてはどうかというような指摘もございましたけれども、日本は日本の中で刑事訴訟手続における権利の保障をしっかりと組み立てていく、こうした基本的な考え方にのっとって対応していく必要があるのではないかというふうに思っております。
日本の特徴ということでございますが、権利に配慮した制度ということにつきましては、これまでもいろいろな努力をしてきているわけであります。例えば、身体拘束あるいは捜索、差し押さえにつきましての令状主義ということにつきましては、国によっては、令状なくして、無令状のままで逮捕が幅広く認められている。この点については、アメリカにおきましては、まさにその典型的な例でありますが、逮捕者の人口比で見てみますと、何と我が国の三十九倍というような、そうした数値もあるわけでございます。
そういうことを比較しながらも、全体としてそれぞれのバランスの中で、しかし、個々の制度の部分につきましては、やはり権利保障という観点からも十分に見直しをしながら、よりよい制度になるように努力を重ねていくということが必要ではないかというふうに思っております。
今回の刑事訴訟法の改正におきましても、そのような立場で、被疑者の権利利益の保護というようなことも含めましてお願いをしているところでございます。
○重徳委員 きょうは、お忙しい中を中根外務大臣政務官に出席をいただきました。
最後にお尋ねしたいんですが、きょうの議論をお聞きいただきまして、日米地位協定、これはやはり改正していかなくちゃいけないという声は非常に強いんですね。そのときに、この可視化を初めとしたさまざまな日本の刑事訴訟制度がネックになっている、こういう意見もあります。
ここをきちんと、今はまだ不十分だと思いますが、これをもっと改善、改革していくことを通じて、日米地位協定の改正に向けた、日本にとっていい影響が出していけるんじゃないか、交渉していくに当たって前進につながることも今後見込んでいける、あるいは期待されるのではないかという感もあるんですが、その点、どのように捉えていらっしゃいますか。
○中根大臣政務官 まず、御指摘の法律案は、日米の裁判権の分配や身柄の引き渡しといった日米地位協定に基づく両国間の権利、義務を変えるものではありません。
もっとも、日米地位協定上、日本側が裁判権を行使する米軍人等の公務外の犯罪については、これまでも関係当局において、我が国の法令に基づいて適切に処理、対処してきているところでございます。この点、米軍人等による事件とそれ以外の事件との差異が今までもあったわけではございません。
したがって、この法案が国会で可決され成立した場合には、これらの米軍人等の被疑者、被告人についても、改正法に従って取り調べ等が行われることになると思っております。
○重徳委員 もう少し、政治家としての、前に向かっていくお気持ちも出していただきたかったなと思います。
問題は、日米関係の中でも、やはり今非常にゆがみがあると思うんですね。沖縄など基地が極端に偏って立地している地域に住んでいる方々とそうじゃない方々は、全然捉え方が違うんです。やはり、いわば基地周辺住民の皆さんのそういう負担の上に日米の安全保障という体制があるわけですので、我々は、そこに対する思いをもっと、外務省はもちろん法務省の方にも認識をしていただきたい、こういう思いでございます。
これからもこういった議論を続けさせていただきたいと思います。
本日はありがとうございました。