「取り調べの録音・録画。いわゆる可視化について」 H27.6.12
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○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。
直前まで一時間ほど、この委員会も不正常な状態に陥っておりました。この委員会のテーマによらず、各委員会、そして国会審議、国会運営全体にわたって、今非常に、政府・与党と野党との間で、さまざま、国会運営上の不正常な状態が続いております。
これは、各委員会にわたってもこういう影響が出てくるわけですから、この委員会に限らず、政府・与党として、きちっと各党が納得して審議に臨むことができるように、最大限の御尽力を払っていただきたいということを冒頭申し上げたいと思います。
さて、きょうは、刑事訴訟法の改正の可視化について議論をさせていただきます。
まず、また基本的なところなんですけれども、これまでいろいろな議論、そして前回の参考人質疑を聞いておりまして、特に、当事者たる冤罪の被害に遭われた方などなど、さまざまな立場からの御意見を聞くにつけ、やはり、今回、なぜ、対象事件が絞られて、全事件、全過程の録音、録画ができないのか、ここを改めてお聞きしたいと思います。
○林政府参考人 本法律案の取り調べの録音、録画制度は、原則として被疑者取り調べの全過程の録音、録画を義務づけることなどを内容とするものでありますが、これを全ての事件に一律に制度の対象とすることは、その必要性、合理性に大きな疑問があり、制度の運用に伴う人的、物的な負担も甚大なものとなります。また、本制度は、捜査機関にこれまでにない新たな義務を課するものでございますので、捜査への影響を懸念する意見もございます。
そこで、法律上の制度といたしましては、取り調べの録音、録画の必要性が最も高い類型の事件を対象とすることが適当と考えられたことによるものでございます。
○重徳委員 必要性、合理性、これはさまざまな角度から検討する必要があるんだと思います。そして、新たな制度ですから、人的、物的な負担が、程度はどう見積もるかはありますけれども、新たな負担がかかるのは、これはもう当然のことではあろうかと思います。
やはり、差し当たり、当面、今回の、パーセンテージでいうと三%なんというふうに言われますけれども、全事件の中の三%からスタートをするけれども、これからは基本的には広げていく方向であるという理解でよろしいんでしょうか。
それから、この間、東京地検の方に視察に行き、意見交換をしたときにも、ちょっと腑に落ちなかったのが、可視化して録画されたビデオ、映像を上司の方が全部、スピード、速度を一・五倍に上げてチェックしているというようなことをおっしゃっていたんですが、そんなことが求められている制度ではないと思うんですよね。任意性が争われたときに、後で振り返ることができるような制度になることが可視化の本来の、本来というか、今回の想定されていることでありましょうから、だから、人的な負担といっても、全編チェックしてからじゃないと起訴ができないとか、そういうことではないと思うんですよ。
だから、今回はそこからスタートはするんだけれども、適切な人的、物的負担を考慮しながら、これからその適用範囲を拡大していくというふうに理解をしていきたいと思うんですが、この広げていくという話はこれからずっと続けていきますので、とりあえずこの点については御答弁不要です。
次に、例外規定、何度もここで議論になっております。やはりこれもちょっとおかしいんですよね。
四つ、第一号から第四号まで例外規定があって、私は、三号、四号は、組織犯罪によって報復される可能性がある、そういうことを防止するために例外を認める、この方が具体的でわかりやすいと思うんです。
それに比べて、一号は、「記録に必要な機器の故障その他のやむを得ない事情により、記録をすることができないとき。」なんてあるんですね。機器の故障をイの一番に想定すること自体、どうかしていると思いますね。
それから、第二号では、「被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。」とあるんですが、この間、取り調べの部屋を見て、録画の機器がこれですというのを見てきましたけれども、供述する方の目の前にどおんと威圧的にカメラが置かれて、これで記録を拒むなと言われても、拒みたくなるような環境だと思います。
こうした例外規定、非常に違和感があるんですけれども、どうなんでしょうか、改めて御説明いただきたいと思います、この一号、二号について。
○林政府参考人 まず、本法律案の刑事訴訟法三百一条の二第四項第一号におきましては、記録に必要な機器の故障その他やむを得ない事情により記録をすることができないというときを例外事由として設けております。
この趣旨でございますが、これは、機器の故障等の外部的要因によりまして取り調べ時に録音、録画の実施ができないような場合にまでなお録音、録画を義務づけるとしますと、捜査機関に不可能を強いるということになるからでございます。
もとより、こういった形で、録音、録画の機器の管理というものは、当然、捜査機関において適切に行うべきでございますけれども、実際には、適切な管理等をしていたとしましても、故障の発生を完全に防止することは困難でございますし、また、機器が故障した場合において、他の機器も全て使用中であるというような事態も生じ得るわけでございます。
そういったことから、こういった機器の故障というのを、あくまでもやむを得ない事情の一つの例示といたしまして、例外事由として掲げているものでございます。
また、第二号におきましては、「被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。」ということが例外事由となっております。
これは、録音、録画をしたならば、その内容を問わず、本来、録音、録画をしなければ供述できるであろうことを十分供述することができない、こういったことがこの例外事由の要件でございます。ある特定の内容の供述を前提として、そのような供述ができるかどうかを判断するものではございません。
この場合にも、「被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、」という要件を設けてございまして、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないかどうかを判断する認定事情を、外部的にあらわれました被疑者の言動に限定しているわけでございます。
こういった形で、本来、録音、録画について、適正にその例外事由が定められたことによりまして、捜査への支障を極力減らすというための趣旨でございます。
いずれにいたしましても、こういった例外事由がございますが、例外事由に当たる場合には記録媒体を証拠調べ請求することは必要ないわけでございますが、他方で、それ自体で、その場合の供述調書の任意性が認められるわけではございません。あくまでも、任意性を立証する責任はその場合にも残っているわけでございまして、ただ、本法律案で定めております、供述調書を証拠調べ請求した場合に、当該取り調べの記録媒体も証拠調べ請求しなければ、供述調書自体が請求が却下されるという関係にございますが、このような例外事由に当たる場合に、そういった記録媒体の証拠調べ請求の義務が仮にないという、例外事由に当たる場合はないわけでございますが、それが任意性の立証というものを不要とするという関係にはなっておりません。
○重徳委員 それは、後段の部分は当然そうだと思うんです。供述調書だけでは不十分だから、録画された記録というものをもって任意性を立証する、補強するわけですから。だけれども、その任意性を立証するためのツールをそう簡単に手放しちゃっていいような例外規定になっていることが問題だと思うんですよ。
つまり、機器が故障しているんだったら、直してから取り調べるべきですし、それから、井出委員がよく言われているICレコーダーだって、ICレコーダーだけで済まそうということばかりじゃなくて、基本的な録画機能は本来の録画機器でやって、バックアップとしてICレコーダーを使うとか、そういうことは幾らでもできるわけですから。
機器が故障していたからやむを得ません、しかし、そのときには取り調べ官は供述調書のみをもって勝負しなきゃいけない、これは非常に厳しいことだな、何か非常に矛盾したことだと思うんですね。法律上例外として認められているにもかかわらず、その場合、検察官側からしても非常に厳しい状況に追い込まれるわけですから、矛盾していると思いますけれどもね。
それから、被疑者が記録を拒むということについても、この条文の書きぶりも、「十分な供述をすることができないと認めるとき。」というのは非常に簡単なんですよね。普通は、十分な供述をすることができないやむを得ない事情があると認めるときとか、書きぶりそのものも、非常に、当然のように認められるような例外規定だと思います。
ここがやはり、前回の参考人質疑において桜井さんが、機器が故障していたらやらなくていいんだとかいうそんな簡単なものじゃないだろうというふうな、やや憤りも感じながらのお話だったと思います。
こんなことでは、検察官のためにもならないし、もちろん、本来の可視化の目的も遂げられないと思いますけれども、何かもう一言ありますか。
○林政府参考人 今回の例外事由につきましては、捜査官、取り調べ官において、まず、その例外事由に当たるかどうかを認定するわけでございますが、当然、実際に例えば被疑者が十分な供述をすることができないと認められるということに当たるかどうかということは、後の裁判におきまして司法的なチェックを受けるわけでございます。その場合には、被疑者が十分な供述をすることができないと認めるということを立証しなければなりません。したがいまして、今回の例外事由の判断、取り調べ官における判断におきましても、それを恣意的に運用することはできないということになろうと思います。
実際にそれをもし恣意的に運用したという場合におきまして、結局のところ、取り調べ官は例外事由に当たる、そして録音、録画をしなかったにしても、裁判におきまして例外事由には当たらないと判断された場合には、やはり任意性の立証という手段、記録媒体というものを、それは存在しないわけでございますが、そういった立証の手段を失ってしまうというリスクをこの取り調べ官、捜査機関は負っておるわけでございますので、そういったことからも、こういった捜査機関が恣意的に運用することは困難であろうかと思っております。
○重徳委員 最初の質問で申し上げたとおり、ただでさえ三%の事件に絞られているわけですから、その上、例外規定を余りに認めていくというのは、いずれ、取り調べにおいては録音、録画当たり前、こういう状況にしていかなければならないと思うんです。このときに、あのとき、最初恐る恐るで、何を恐れてか、例外を簡単に認めてしまうような規定がある、そのこと自体、後で見返したら非常に恥ずかしいこと。
というのは、前々回議論しております、国際社会から見ても日本は立ちおくれているというのは再三指摘をされているわけですから。いまだこんなことすらできない、やろうとしたら例外規定が非常に大きな穴として設けられている、その結果、可視化もフルでは実現できないばかりか、その例外だと思って裁判に臨んだ検察官自身も、任意性の立証をほかの方法で立証していかなくちゃいけない、こんな何かすっきりしない理屈ではないかなと私は思います。
そして、次に参りますが、今回の可視化は、過去の、最近もありました冤罪事件の反省を受けて、大いなる見直しが必要だということで取り組んでいるわけですけれども、例えば選挙違反事件の志布志事件とか、氷見事件、これは強姦罪でしょうか、こうした裁判が今回の可視化の対象外となる。こういうことについては、まず、過去の反省に立ち返って、こういった事件がちゃんと含まれるような組み立てにするべきではなかったかと思うんですけれども、こうした事件が今回の可視化の対象外となるのはおかしいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか、大臣。
○上川国務大臣 ただいまお触れになっていただきました公職選挙法違反事件であります志布志事件でありますとか、強姦事件としていわゆる氷見事件ということでございますが、本法律案の録音、録画制度の対象とならないということについては、御指摘のとおりでございます。
法律上の制度といたしましては、この録音、録画の必要性が最も高い類型の事件を対象とするということで、裁判員制度対象事件と検察官独自捜査事件が挙げられているわけでございます。それ以外の事件につきましては、録音、録画の必要性が個別の事案によりまして異なるということでありますので、法律上の義務の対象とするということにつきましては困難であるというふうに考えているところでございます。
検察におきましては、被疑者取り調べの録音、録画が必要と考えられる事件につきましては、罪名を限定しないで、積極的に録音、録画に取り組んでいるところでございます。
制度の対象とならないそうした事件であっても、検察の運用で必要な録音、録画が実施されることとなるということでございまして、御指摘のこの二つの事件のような事件につきましても、被疑者の供述が立証上重要なものであるなどにつきましては、検察において、必要に応じて録音、録画を実施しているものというふうに承知をしております。
○重徳委員 それでは、今後は制度上も法律上も拡大していくんだ、任意の話はわかりました、これまで再三御答弁いただいておりますが、今後、制度上も拡大していく方向で検討していくんだというふうに考えてよろしいでしょうか。
これは、附則の九条なんかもあるわけなんですけれども、対象とされる事件、そしてその全過程、今回は大分絞られていますけれども、どうも附則九条の書きぶりが気になるんですよね。前向きな部分も書きつつ、捜査上の支障その他の弊害が生じる場合があること等も踏まえて今後検討していくということなんですが、今後は、その対象となる事件は拡大する方向である。まさか縮小される、そんな可能性はないというふうに考えてよろしいんでしょうか、大臣。
○上川国務大臣 御指摘にございます附則の第九条で、施行後三年が経過した後に必要な見直しを行うということで検討条項を設けているところでございます。
制度そのものが、これまでにない新しい制度であるということで、実際にその制度を運用してみないと、なかなか、その効果あるいは課題等につきましてわからないところもある、こういう問題意識のもとでこの条項を設けているということでございます。
今の段階で、この見直しの方向性について定めるということをしているわけではございませんが、いずれにいたしましても、捜査機関の運用によるものも含めまして、この制度も含めての実施状況をしっかりと検証し、そして、制度の趣旨にしっかりと検証を加えた上で、さらなる見直しに向けての取り組みということになろうかというふうに思っております。
これまでの経緯等も含めますと、取り調べの録音、録画についての取り組みにつきましては、後退をするというようなことにはならないというふうに思っております。
○重徳委員 後退することにはならないという今御発言がありましたけれども、幾らでも、効果、課題、カメラが大き過ぎるとか、視察に行った委員は全員感じたような課題も既にあるわけであります。
そういったこともどんどん解消していって、捜査当局側としては、これはもう現場の声として、それは今までのやり方が変わっていきますから、供述が引き出しにくいとか、検察官の取り調べのスキルが、果たして調書作成能力が維持できるかどうか、いろいろな懸念はあると思いますけれども、やはり、難しいから次はちょっと縮小、後退させるというようなことは、あってはならない方向性だというふうに思います。
これまでの質疑の中でも、裁判所においても、録音、録画というものを前提とした裁判というものが既に行われつつある、裁判所の証拠の採用としてもそういう傾向があるというような指摘もありますし、前にとにかく向かっていくという決意は、大臣今おっしゃったとおりでありますし、我々もきちんと前に向かっての課題の指摘などをしていきたいと思っております。
ところで、同様の趣旨の質問を山谷国家公安委員長に申し上げたいんですけれども、先般から、視察のときに、警察官、警視庁の方が、心のキャッチボールということをおっしゃっていました。心のキャッチボールがカメラの前ではやりにくくなるというような趣旨だったとは思うんですね。
ただ、そのときに、私は、両面においてあれっと気がついたことがあるんですけれども、一つは、キャッチボールと言うけれども、そもそも取り調べ官と被疑者というのは対等な関係でキャッチボールをやるわけではないですから、信頼関係、友情関係が生まれるような関係にはないと思うんですね。それは、巨大な国家権力をしょった個人、そして組織に対して、ずっと一人で拘束状態にある被疑者でありますから、対等なわけがない。
そして、長期間孤独に身柄拘束をされれば、早くその状態から解放されたい、できるだけ罪は免れたい、こういう思いに置かれている被疑者が、警察官、取り調べ官の示唆することに対して、この人の言うとおりにすれば罪が軽くなるかもしれない、早く解放されるかもしれない、そういう期待を持って、ある意味すがるような思いになってくるというのは、これは想像がつくところだと思うんです。まして、早く自白をすれば楽になるよなんというふうに言われたら、自白した方がいいのかなというふうに思う。
これは、だから、決して、友情関係、信頼関係というよりは、中にはそういう関係を構築するような取り調べ官もいらっしゃるかもしれませんけれども、基本的にやはりベースが違うと思うんです。
そういう意味でのキャッチボールという言葉に対する若干違和感があったという一方で、やはり、犯罪者、真の犯人であることも当然多い被疑者でありますし、再犯を繰り返すような人物もいるわけですから、そういう被疑者に対して、そう生易しいことでは十分な供述が引き出せないことも、これは一方で容易に想像がつく。時に言葉が厳しくなったり、あるいは、どうなんでしょう、取り調べ官も少し被疑者に対して歩み寄るというか、同調する、あなたの言うこともわかるよ、その気持ちもわかるよというようなこと、厳しく当たる、あるいは少し同調するような言葉、こういったことも恐らくキャッチボールの中の一つだと思うんです。
だけれども、それは非常にカメラの前ではやりづらい、こういう心理というのは取り調べ官には必ずあると思うんです。そういったことも含めて心のキャッチボールと言われていたんだろうな、こう想像するわけなんです。
私は、仮に、少し乱暴な言葉で追及するとか、あるいは、俺もあんたの気持ちはわかるよ、こんな犯罪者の気持ちがわかるようでは被害者が浮かばれない、そういう見られ方もするでしょうけれども、しかし、そういったことも含めて、可視化が当たり前になってくれば、見る側にとっても、それはわかる、取り調べというのはこういうものだというふうにわかると思うんです。そういう段階に至るぐらいまでに、本当の意味で被疑者側も取り調べ側も萎縮しないような、そんな可視化の将来像というのを描くべきではなかろうか。
そういうことも含めて、やはり、この可視化というものがどんどん制度化し、そして、今、任意でなされている部分も必ず拡大していく方向でやっていくんだ、こういうふうに捉えてよろしいでしょうか。
○山谷国務大臣 先日の答弁でも申しましたけれども、カメラと機材の改善というのはこれから考えていきたいというふうに思います。
録音、録画の制度化に当たっては、事案の真相解明への影響についても留意が必要でありまして、録音、録画の有用性を生かしつつ、一方で、取り調べや捜査の機能に過度の支障が生じないバランスのとれたものとすることが必要だと考えております。
このような観点から、制度の対象は、裁判員にわかりやすい立証が求められるなど、類型的に録音、録画の必要性が高い裁判員裁判対象事件とすることが適当と考えております。
なお、対象範囲を含めた今後の録音、録画制度のあり方についてでございますけれども、全事件、全過程の録音、録画についても、将来の議論の対象としては必ずしも排除をされるものではないと思いますが、裁判員裁判対象事件の録音、録画の実施状況を丁寧に検証しながら検討をすべきものだと考えているところでございます。
○重徳委員 山谷国家公安委員長からも、必ずしも排除されるものではないと、やや消極的ながらも、拡大していくことをお認めになる発言がありました。
やはり、やるからには、可視化というのは当たり前にしなくちゃいけないと思うんですね。この間から私も、こだわるようですけれども、国連からもさんざん指摘をされています。ですから、最初、林局長にも申し上げましたように、例外規定というのを余りに簡単に認め過ぎるような規定になっているんじゃないか、こういうことを思うわけでございます。
そして、弁護人の立ち会いについてもこれまで申し上げてまいりました。
これまでの冤罪事件、例えば氷見事件でも、身内が間違いないと認めているんだということを密室で言われたら、やはり俺が悪かったのかなと思う、それから、罪を認めざるを得ない状況に陥って、同意する以外のことは、意見を述べることは刑事から禁じられて、刑事の言うことだけを事実だというふうに認めて署名をさせられるとか、こういう状況があるわけです。
可視化というのは、私は、事後的な、あるいは間接的な、ある意味抑止力だとは思うんですが、弁護人の立ち会いというものも、それはフルで、十日間、二十日間の取り調べの間ずっと弁護人が隣についていたら、さすがにこれは取り調べもやりにくいだろう、しかし、ルールを決めて、一時期だけ、何時間に十何分、まあ、ちょっと決め方はわかりませんけれども、やはり今のやり方はフェアじゃないんじゃないかというようなことを、本当に限りなく孤独な被疑者の立場から、少しアシスト、サポートをするような立場で、フェアな取り調べが行えるような、そんな、取り調べに弁護人が立ち会う余地というのは全くないんでしょうか。
この辺を局長にお聞きしたいと思います。
○林政府参考人 取り調べへの弁護人立ち会いということが議論されるときには、取り調べには必ず弁護人が立ち会うということ、これを制度化する、このことの是非はいかん、こういうような形で議論が必ずされてきております。
それについては、これまでも法制審議会等での議論でもございましたが、基本的に、取り調べの録音、録画ということとの対比でいきますと、弁護人が取り調べに立ち会うということになりますと、まさしく取り調べ自体の性格が変わってしまう、取り調べの機能を大幅に損なうおそれが大きいという意見がございまして、これを制度化するということについては、今回、取り入れられていないところでございます。
他方で、制度という意味ではなく、例えば検察官による被疑者の取り調べへの弁護人の立ち会いを認めるかどうかというのは、もちろんこれは現行法上でもそれが禁じられているわけではございません。
取り調べを行う検察官において、今申し上げました取り調べの機能を損なうおそれでありますとか、取り調べにおける関係者の名誉とかプライバシー、あるいは捜査の秘密というものもございますけれども、こういったものが害されるおそれなどを考慮して、事案に応じては適切に判断していくべきものと考えております。
○重徳委員 もちろん、現行法上も禁じられているわけではないので、やろうと思えばできるんですけれども、それは大体取り調べ官側から、立ち会ってくれということは禁じられていないけれども、そんなことを積極的にやるような現状ではないということでありましょうから、まだまだ不十分な御答弁だとは思います。
あと、最後に、きょうは中山副大臣にもお越しいただきましたけれども、例えば、米国国務省がつくっている国別人権報告書、こういったことに対して、今の日本の刑事訴訟手続が全然野蛮で不十分なものであるというふうに指摘されていることに対して、前回、副大臣が、特段回答の義務がない、国務省の指摘に対する回答の義務がない、そういう中で、しっかりした戦略に基づかずに回答することによって、かえってその問題が必要以上にクローズアップされて、うそが流布するような形で世界じゅうに伝播されてしまう、そういうリスクもあるんだから、いわば慎重にやらねばということだったと思うんです。
しかし、もう既に日本の現状が、うそかどうかは、それはやりとりする中でしかわかりませんが、相当悪いメッセージが世界じゅうに伝わっているわけですから、今さらそこを気にする段階じゃないと思うんですね。
ですから、今回のこの見直しも、ちょっと十分な御答弁とは受けとめられないんですが、可視化もこれから拡大していくんだというようなメッセージもきちんと海外に伝えていくことによって、より理解が深まる方向にしか行かないと思いますが、中山副大臣、どうでしょうか、さらに、きちんと海外にこの取り組み、そして、まだ不十分な御答弁なので、まだまだ、この審議を通じてですけれども、これからもっと日本の刑事訴訟制度を高い次元に持っていくんだということをぜひ国外にも伝えていっていただきたいと思うんですが、そのあたりを含めて御見解をお願いします。
○中山副大臣 ありがとうございます。
まず、御指摘の九日の本委員会での答弁に関しましては、我が国の立場及び現状を必ずしも正確に反映していない指摘が他国の報告書等でなされる場合には、必要に応じて適切な発信をしていくことを検討する必要があるとの趣旨を申し上げたものであります。
同時に、具体的には、御指摘の米国務省国別人権報告書に含まれる刑事裁判手続に関する指摘については、関係省庁と協議の上、我が国の立場及び現状への理解を得るのに何が効果的な方法なのかということをしっかりと検討してまいりたいというふうに考えております。
○重徳委員 国内問題であるとともに、国際的な問題でもあると思いますので、ちょっとここは私もこだわっていきたいというふうに思っています。
その意味で、最初の、こだわるようですけれども、例外規定が緩過ぎると思います。この点は、引き続き、議論してまいりたいと思います。
以上です。