○奥野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。重徳和彦君。
○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。本日もよろしくお願いいたします。
先般の参考人の堀江貴文さんが、今回の一連の刑事訴訟法案は捜査機関の焼け太りだということをおっしゃっていました。確かに、冤罪防止という観点から可視化の導入の必要性があるということで取り組んできたわけですけれども、それも対象範囲が十分広くないじゃないかという議論が続いているところです。
その一方で、今回の通信傍受については、これこそ本当に一般の国民の皆さんも不安に感じる制度だと思います。まして、プライバシーの問題ですから、一旦自分のプライバシーが外へ漏れたら、これを取り戻すといったって、知れ渡ったら取り戻しようがない、取り返しがつかない、このような案件であります。
そこで、まず最初に、通信傍受を行うに当たって、まず権限としては、条文上、検察官または司法警察員が判断し実行するというような書きぶりになっているんですが、通信傍受を行うに当たっての判断権限、それから、もしも、そのやり方が適法ではなかったとか、さまざま問題が出てきた場合に、一体どなたが責任をとるということになるのかについてお尋ねをいたします。警察組織に対してお聞きしたいので、山谷国家公安委員長にお願いします。
○山谷国務大臣 通信傍受の実施に当たっては、傍受令状の請求や実施の方針等につき、当該都道府県警察の警察本部長までの決裁を得て、都道府県警察の組織的責任を明確にして実施するものでございます。
また、一般論でございますが、責任のとり方については、その原因等に応じて判断されるものと考えておりますが、まずは通信傍受の適正な実施の徹底を図ってまいりたいと思います。
○重徳委員 一応、令状は裁判所の方から出てくる、これを求めるということになっておりますけれども、あくまで責任は裁判所じゃなくて、本部長を筆頭とする警察組織にあるということでよろしいでしょうか。
○山谷国務大臣 さようでございます。
○重徳委員 まずそこが確認できましたので、警察組織として取り組むということがわかりました。
さて、今回、この通信傍受については、午前中に鈴木委員から、平成十一年に成立した通信傍受法に基づくこれまでの運用について「Q&A」がホームページに載っているということで、これが法務省としての公式見解ということだと思います。
それを見ますと、「Q1 なぜ犯罪捜査のための通信の傍受を行う必要があるのですか。」という問いに対して、るる説明があった上で、「主要先進諸国のほぼすべてにおいて通信傍受制度に関する法整備がなされており、我が国においてもこれを整備することが国際的要請になっています。」というような表現がありますが、これも、よく言うなというふうに私は思うんですね。
私がこの委員会で再三取り上げましたように、国連などから、日本の刑事訴訟制度については、取り調べの可視化、弁護人の立ち会いなどなどおくれているという指摘がされている。あるいは、人質司法、代用監獄、さまざま言われている中で、国が、日本の政府がきちんと対応しなくちゃいけないだろうということに対しても、まあ一生懸命やりますぐらいの話で、このようにホームページに、先進諸国に追いつかなきゃというようなことがこの通信傍受については明示されているわけであります。
その一方で、私は、今回、この通信傍受については、やはり憲法との関係で慎重に考えなければいけないと思っております。現行法が成立するときにもそのあたりは大いに議論になって、立法府による修正が行われたわけですから、今回も、憲法との関係をきっちりと整理して、疑いのない法案にしていかなければ間違うと思っております。
そこで、林刑事局長、憲法十三条に由来しますプライバシーの権利、それから二十一条二項の通信の秘密との関係で、今回の法案は、特に前回と比べて拡大をします。今回の法案のその整合性について、まず御説明をいただきたいと思います。
○林(眞)政府参考人 通信傍受は通信の秘密等を制約するものでありますけれども、犯罪捜査という公共の福祉の要請に基づく必要最小限度の制約は許されると考えられるわけでございます。
本法律案における通信傍受法の改正は、一つには対象犯罪の拡大と、手続の合理化、効率化から成っております。
このうちの対象犯罪の拡大につきましては、新たに追加する対象犯罪は、通信の秘密に対する制約に見合うだけの重大性を備えており、かつ、その犯罪の捜査において、通常、通信傍受の必要性、有用性が認められること、現行法が規定する通信傍受の要件はそのまま維持されている上に、新たに追加する対象犯罪については加重要件を設けることとしていること、こういったことから、通信の秘密等の保障に反しないと考えております。
また、手続の合理化、効率化の面につきましては、まず、通信傍受の要件を改めるものではなく、裁判官の発する傍受令状が必要であることも現在と変わらないこと、また、新たに導入する手続のうち、いずれによる場合でありましても、捜査機関がその内容を知り得る通信の範囲は、現行通信傍受法による傍受の場合と変わらず、通信の秘密に対する制約の程度に実質的な差異は生じないことなどから、これについても通信の秘密等の保障に反しないものと考えております。
○重徳委員 先ほどの「Q&A」に立ち戻りますと、「Q2 通信の傍受を認めることは、通信の秘密を保障する憲法に違反しないのですか。」という問いが書かれています。
これに対して、答えは、今の局長答弁ほど詳しくありませんけれども、「憲法第二十一条第二項は、通信の秘密を保障しており、これについて最大限尊重すべきことは言うまでもありません。他方、憲法第十二条及び第十三条は、公共の福祉による制約を規定しており、通信の秘密の保障も、絶対無制限のものではなく、公共の福祉の要請に基づく場合には、必要最小限の範囲でその制約が許されるということは、憲法解釈の常識です。」と書いてあるんですね。「常識です。」というのも、何か、そんなことも知らぬのかと言わんばかりで、ちょっと感じが悪いんですが。
それから、「Q3 通信傍受が認められると、警察が、犯罪に関係のない一般市民の通話を自由に聞くおそれはないのですか。」という問いに対して、「本法案の通信傍受は、その対象となる犯罪が薬物関連犯罪、銃器関連犯罪、集団密航の罪、組織的な殺人の罪に限定されており、」というふうに堂々と書かれているんです。
何か、このように限定をかけているから大丈夫なんだよという説明が、最初の法案で何度も繰り返し説明されたと思うんですけれども、今回の、はっきり言って大きく広げる局面にあって、これまでと何ら変わりませんというような御説明というのは、これはなかなかしっくりくるものじゃないと思うんですね。
だから、このときから世の中どれだけ変わったのかとか、そういう立法事実の方がきっちりと説明されない限り、これは、国民的に納得できるなんて、この委員会においてもなるほどねというふうにはならないと私は思います。
ちょっと確認したいんですが、これは私の質問というよりは、午前中に黒岩委員が質問されていました加重要件について、ちょっと私からも、黒岩委員からの質疑を踏まえてもう一度確認をしたいんです。
今回の加重要件というのは、要は、これまでは「犯罪が数人の共謀によるもの」という要件だったところに加えて、何が加重かというと、「あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものに限る。」ということなんですが、少なくともこれまでの四つの類型に関して言えば、加重も何も、数人の共謀によって行われる以上は役割の分担ぐらいは事前に打ち合わせるだろうということで、加重というほどのことじゃないんじゃないかと思います。
今回加えられる九類型についても、確かに、単独犯とは違いますということは当然明示しなきゃいけないんですが、単独じゃないよと言っているにすぎないんじゃないかという、これも黒岩委員は指摘していたと思いますが、私もそう思うんですよ。数人の共謀ということに何が加重されているのか、現場で行き当たりばったりで一緒にやったということは含まれませんというのは、それはそのとおりですけれども、そんなことを通信傍受でやりとりするはずがないわけですから。
ですから、数人の共謀であり、それを通信傍受によって解明しようとする、それをするに当たって、この加重要件というのは何の意味があるんでしょうか。いま一度御説明いただきたいと思います。
○林(眞)政府参考人 現行法の対象犯罪については四罪種でございますが、四罪種については、その犯罪の性質上、組織的な犯罪、あるいはその構成要件自体から組織性が求められている、こういったものが対象犯罪となっております。
今回、対象犯罪を、例えば窃盗とか詐欺とか、そういった罪名の犯罪にも広げるわけでございますが、その際に、やはりそれらの罪につきましては、その犯罪の性質上、そういう組織性というものがあるわけではございませんので、あえてこの要件の中で今回の組織性の要件というものを加重したわけでございます。
その際に、「あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により」というところの要件でございますけれども、一つには、単純に、役割の分担なくして行われた犯罪についてはこの要件を満たさないということが一つございます。さらには、その役割の分担も、現場において生じたものというものでは足りないわけでございまして、あらかじめそういった役割分担というものが定められている必要があります。この二つの要件によって、組織的な犯罪に対処するというこの法律の趣旨に沿うために、こうした加重要件を課すものでございます。
○重徳委員 あらかじめ要件とか、それから何となく組織性を言いあらわしているのかもしれませんが、こういうもの以外で通信傍受の目的にかなうものというのはないと思うんですよね。だから、何が言いたいかというと、加重要件というほどの要件じゃないんじゃないかということなんですよ。当然のことであって、この加重要件によって極めて何かを限定しているよということではないんじゃないか。
そもそも、通信傍受で本来の目的に沿って犯罪の解明をしようとする以上は、このぐらいのものにとどまるのは当たり前の話であって、だから、特段これによって厳しく限定をしたということではなくて、疑われるような、単独犯だろうと、単独犯のときに他人とやりとりするのかどうかわかりませんが、何か単に当たり前のことを規定しただけであって、特段意味のある規定ではないんじゃないかと思うんですけれども、ここに込められている特段の意味があるのであれば、そこをきちんと説明していただきたいんです。さもなくば、今回は加重要件を加えましたなんということを、そんなに胸を張って言えるような要件じゃないと思うんですよ。
もう一度、その点に絞って御答弁いただけますか。
○林(眞)政府参考人 今回のような加重要件を加えない場合には、数人共謀による詐欺罪、あるいは数人共謀による窃盗罪、こういった事件が通信傍受の対象となってしまうわけでございます。そこには何ら組織性というものはうかがわれないわけでございまして、数人共謀というだけでは組織性はうかがわれません。
その際に、やはり組織性というものの要件を加重する場合においては、数人の関与する者が、一つは、役割を分担して一つの犯罪に対して関与しているということ、さらに、あらかじめその分担が定められているということ、このことを加えることによって、窃盗でありますとか詐欺事件につきましても、そういった組織性というものが要件となると考えております。
実際に傍受令状を請求するに当たっては、「あらかじめ定められた」という点と「役割の分担」というものがあることを疎明しなくては令状請求において令状が出ないわけでございますので、そういった形で、この通信傍受の手続に、組織的な犯罪に対処するというこの法律の趣旨というものをそこに具現しようとしたものでございます。
○重徳委員 そうなると、組織犯罪処罰法という法律があって、そこに言う組織というか団体というんですか、そこの定義は、「共同の目的を有する多数人の継続的結合体」であるというようなことでありまして、かつ、ちょっと違うのは「反復して行われるもの」ということなんですが、きょう質疑の中でもあったように、反復する要件まで入れてしまうと一発目ができないじゃないかというような御答弁もありましたが、今回の法案に入れている役割分担というところが重要なのか、継続的結合体、組織であるということが大事なのか、ちょっとわからないんですよ。
それは、二人以上で一緒にやろうといったら、それは役割分担はしますよね。だから、そんなに大した要件じゃないと思うんですね。それよりも、組織性というところが重要なのであれば、そこをきちんと明記しなければ、何を言っているんだかわからないと思うんです。結合体という一言はありますけれども、これが組織だということなんでしょうかね。組織を狙い撃つんだという方が明確だと思うんです。
たまたま何人かで初めて共謀しようとしているところであればどこでも狙える、役割分担さえしていれば狙える、こういうことなんでしょうか。もっとかちっとわかりやすくしないと、みんな、別にみんなが犯罪者じゃありませんけれども、何か悪巧みのような話をしていたら全部通信傍受されるんじゃないか、こんなようなおそれすら生まれてしまう可能性があります。ここはやはりきちんと明確にターゲティングをしないと、非常にわかりにくい法案になると思うんですが、いかがでしょうか。
○林(眞)政府参考人 委員の御指摘のあるところで、組織性の明確性を高めるために、特に、今委員御指摘ありましたが、組織的犯罪処罰法の三条一項の要件、こういう限定をかけるという御意見、こういったものは議論の過程ではございました。
これによりますと、組織犯罪処罰法三条一項は、「団体の活動として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたとき」こういった要件がございますけれども、一つには、この要件自体は、これは実体法でございまして、刑の加重のための要件でございます。したがいまして、まず、通信傍受という手続の実施要件をこれと同じにする必然性はないと考えております。
その上で、かつ、この場合には、もしこの三条一項の要件を付加するとなりますと、共犯者の間に縦の指揮命令関係がある事案に限定されることとなりますけれども、縦の指揮命令関係はないまでも、多数人が綿密に役割分担をして計画的に実行する犯罪、こういったものについてもやはり通信傍受の対象とする必要があると考えております。したがいまして、この組織的犯罪処罰法三条一項のような、「団体の活動として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたとき」、こういった要件を通信傍受の要件とすることは相当でないと考えられたものでございます。
したがいまして、今回、そうした指揮命令関係というところの要素は求めずに、あらかじめ相互の役割の分担というものが定められているという点に組織性を求めたわけでございます。
○重徳委員 ちょっとこだわるようですが、とすると、指揮命令がないような組織も対象にするということですから、それによってターゲットとなる組織はどのような組織のことなんでしょうか。
○林(眞)政府参考人 指揮命令のないものをターゲットとするという意味ではございません。当然、指揮命令のある組織による犯罪というものがターゲットとなり得るわけでございますが、組織的な犯罪の中には、そうした上下の指揮命令関係というものが明確でないものもございます。むしろ、フラットな形で多数人が役割分担をして一つの犯罪について敢行する、こういったこともございますので、そういった場合にはやはり通信傍受という手続を使うことができる、このようにする必要があろうかと考えたわけでございます。
○重徳委員 聞けば聞くほど、ちょっと曖昧な要件だと思うんですね。今おっしゃるようなことも、この条文を見るだけでははっきりはしないんです。だから、解釈によって、実はこうでしたというような説明が後づけで可能になるような条文というのは、私は非常によろしくないと思います。
今回、やはり当事者となり得る人というのは、潜在的にはいわば国民全員、そのぐらい広いと思うんですよ。司法取引とか可視化とか、今回の保釈とか、そういうものと違って、この通信傍受の世界だけは今回の刑事訴訟法においては非常に広い。多くの国民がもっと関心を、この話がもっと知れ渡れば、できるだけ知れ渡るようにはしたいんですけれども、こういう法律を政府が目指しているよということをちゃんと知ってもらった上で、本当に大丈夫かということも確認しながら議論をしていく必要があると思っております。
さて、次に、必要最小限という言葉がよく出ますね、憲法との関係で。これは安保法制もそうなんですけれども、その時々の政府の解釈によって必要最小限の範囲が変わってき得るのではないかなと思うんですね。
きょう午前中の議論の中で、立法事実は一体何かという話が何度か出てまいりました。私、通告では、今回の九類型の罪名ごとに全部それぞれ立法事実を説明されたしという通告もさせていただいておりましたが、それはちょっと改めてやりたいと思うんですが、きょう、特に、組織窃盗という名のもとに、窃盗という部分がクローズアップされておりました。私が通告しております九類型のうちの窃盗、強盗、強盗致死傷などありますけれども、その分野についての立法事実、つまり、具体的な通信傍受の必要性を改めて御説明いただきたいと思います。
○林(眞)政府参考人 まず、窃盗につきましては、人の財産を侵害する重大な犯罪である上に、法定刑の上限が懲役十年であって、法定刑自体重いものでございます。また、強盗致死傷、強盗につきましては、財産のみならず人の生命身体にもかかわる重大な犯罪である上、法定刑の上でも、その上限は、強盗致死が死刑、強盗致傷が無期懲役であって、いずれも最も重い犯罪類型かそれに次ぐものとして位置づけられて、強盗の法定刑の上限も懲役二十年でございまして、法定刑自体重いものであると考えます。
そして、組織的な窃盗事件は依然として後を絶たない状況でございまして、密入国した外国人が、日本国内で不法残留していた同国人から成る窃盗組織を、組織体を構成した上で、関西以西の西日本一体にグループを分散させて、三年以上もの間、被害総額約十億四千四百万円相当の侵入盗を敢行していた事案、こうした事案などが発生している上に、こうした窃盗の事案というものは、強盗とか強盗致死傷にも容易に発展し得るものであると考えております。
また、組織的な犯罪として敢行された強盗といたしましても、そういった実行犯グループまた情報提供グループ、さまざまなグループに役割分担をした上で、警備会社を襲撃して現金六億円を強取した、こういった建造物侵入、強盗傷人の事案などが発生しているわけでございます。
こういった事案につきましては、一般国民にとって重大な脅威になっておりまして、やはり首謀者等の背後関係を含む事案の解明が強く求められるところでございます。
こうした組織的な窃盗、強盗、強盗致死傷の事案におきましては、実行犯とか見張り役とか、あるいは盗品の運搬あるいは処分役、こういった役割を分担して共同して行われる組織的な犯行でございますので、なかなか組織の犯行の全容解明が困難でございます。また、組織において行うために、報復を恐れて供述を拒むというような場合もございまして、犯人を含めた関係者からの供述を得ることが困難でございます。
こういったことから、通信傍受以外の捜査手法におきましては、背後関係を含む事案の解明が極めて困難である場合があると考えられます。その上で、こうした犯罪につきましては、役割分担をした関与者相互間で、携帯電話などの通信手段を用いて相互連絡、指示等を行う場合が多くございますので、やはりこうした場合においては、通信傍受によって客観的証拠を収集する必要性、有用性は極めて高いと考えられます。
そういったことから、犯罪の重大性及び通信傍受という手続を使うことの必要性、有用性が極めて高いと考えられたことから、窃盗、強盗、強盗致死傷、こういったものを対象犯罪に追加することとしたものでございます。
○重徳委員 個別の話を聞けば、物によっては重大な犯罪があって、国民も有用性を感じるようなものも当然あろうかと思います。しかし、この案件は、何といっても憲法の要請との兼ね合いでございます。
上川大臣に確認したいんですが、必要最小限だよということを、ずっとこれまで、平成十一年から現行法について説明をしてこられたわけですよね。今回、九つも類型がふえて、それはこういう重大犯罪があってと、それは、今のように局長もるる答弁されていましたけれども、だけれども、余りに広がりがあると思うんですよ。しかも、この不明確な加重要件でですね。
きょう午前中にも、さらに今後、テロだとかマネーロンダリングとかいろいろな課題があるんだ、場合によってはこういうことも含めていきたいというようなこと、これはもう必要最小限というものが、いわば政府から提案の法案ですから、政府の解釈によって際限なく広がっていくというおそれがあるんじゃないかと思うんですが、ここは責任を持って、今の法案も問題だと思いますよ、だけれども、今、どのようにこの状況を御説明されるんでしょうか、お答えください。
○上川国務大臣 平成十一年に現行通信傍受法がスタートしたということでありますが、その前からの議論におきまして、やはり憲法の求める通信の秘密に対する制限ということがございまして、その意味で、必要不可欠なものに限定されるということで、四対象犯罪というところに絞られたというふうに考えているところでございます。
この考え方につきましては、現在の改正におきましても同様でございまして、この間十六年たっているわけでありますが、こうしたこれまでの運用の状況を勘案した上で、現時点におきましての犯罪情勢等を踏まえた形で、通信傍受の対象とすることが必要不可欠なものに限定して追加をするということでございます。
現時点の犯罪情勢等をしっかりと踏まえた上で、この通信傍受の対象とするということが必要不可欠と考えられる、先ほど局長が御答弁したような、そうした判断にのっとって対象犯罪に新たに加えるということ、そしてそれにつきましては、通信の秘密を保障する憲法の要請に反するものではない、そうした限定の中で今回改正をお願いしているところでございます。
○重徳委員 これはもう安保法制と同じような論理のぶつかりだと思うんですね。広く認めておいて、実際、立法事実は何だといったら、非常に限定的で重大な犯罪の例を挙げられます。だったら、最初からそのぐらい限定する条文にちゃんと書き下したらいいじゃないかというのが、今、安保法制でも維新案はそういうことで限定的な要件をかけた対案を出しているわけでありまして、これと同じ話だと思うんですね。
憲法には全く抵触しない、必要最小限度というのも全く考え方は同じだと言いながら、今まで四つだったのが、さらに九つ、しかも、誰がどう見ても身近な犯罪です、そういう類型まで加える。これは非常に大きな問題があると私は思います。
最後に、立会人の話についてちょっと確認をしたいんです。
これも「Q&A」にしきりに書いてあるんですね。いろいろな心配事に対して、大丈夫です、立会人が常時立ち会って、そのもとで実施されますと。「立会人は、何のために立ち会うのですか。」というと、「傍受が令状に従って行われていることを確認したり、記録の封印」、これは今回はないかもしれませんけれども、「などによって、傍受が適正に行われていることをチェックする役割を果たします。」「立会人は、傍受の実施に関して、意見を述べることもできます。」意見は余り述べていないらしいですがね、実際には。
だけれども、やはり立会人がいるから問題のない捜査が行われ、立会人も意見を述べる必要もなかった。だけれども、これから立会人がいなくなって、それでも今までの状況を本当に維持できると思われますか。
山谷大臣にお伺いします。
これは、警察の言い分は警察の言い分、捜査の必要性も、それはあるといえばあるでしょう。だけれども、それと、個人のプライバシーの問題、通信の秘密の問題、そういった非常に重要な国民一般の利益と捜査上の必要性、この大きなぶつかり合いなんです。だから、これはもう本当に一政治家としてもバランス感覚が非常に求められる問題だと思っております。山谷国家公安委員長の御答弁を求めます。
○山谷国務大臣 現行制度においては、立会人は、傍受のための機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いないか、許可された期間が守られているかなどを外形的にチェックするとともに、傍受結果の記録を封印するなどの役割を担っているものと承知しております。
新たな方式による通信傍受においては、暗号技術を初めとする技術的措置を用いて、現行の立会人の機能にかえて、通信事業者みずからが傍受対象の通信を捜査機関の施設に設置された正規の傍受装置に確実に暗号送信するとともに、裁判官による事後の正確な審査が可能となるよう、特別な機能を有する特定電子計算機を用いて傍受を行い、傍受結果の全てを、直ちに機械的に暗号を記録いたしますこととなり、現行制度で立会人が果たしている役割は技術的措置により確実に代替されることから、通信傍受の適正は十分に担保されると考えております。
○重徳委員 今、私がお聞きしたかったのは、立会人がいることによって、いわば運用の抑止力になっていたんじゃないかということなんですよ。その機能はこれからちゃんと果たされるのか。まして、今回は警察署内でやるわけでしょう。だから、そこの部分をお尋ねしているんです。その点をお答えください。
○山谷国務大臣 新たに導入する特定電子計算機を用いる通信傍受では、捜査官が傍受または再生をした通信は、特定電子計算機により、全て自動的に改変不可能な形で記録媒体に記録され、裁判官に提出されることとなります。この記録媒体を通じて、捜査官がどのような傍受を行ったかは全て明らかとなることから、捜査機関により恣意的な傍受が行われる余地はないわけでございます。
このような仕組みによりまして、新たな制度のもとでも、立会人がいる場合と同様に、傍受の手続の適正が担保されることから、御懸念は当たらないというふうに考えております。
○奥野委員長 重徳君、時間です。
○重徳委員 あらゆる分野で刑事訴訟手続が先進的である国ならまだいいんですよ。だけれども、あらゆる分野でおくれている国が、ここだけは先進国並みに信頼しろというふうに言われても、ここはやはり、いきなり立会人を取り除くような、そういうところから入る、通信傍受を広げるところから入る、こういうことに対して非常に大きな疑念があるんです。こういったことをきちんと受けとめていただきたいと思います。
また引き続きやらせてください。