平成26年11月6日 消費者問題に関する特別委員会
「消費者をないがしろにしない社会へ-不当表示に対する業者の課徴金制度-」
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○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。
きょう、先ほどまでの民主党の大西委員からの質疑の中にありましたように、この課徴金制度につきましては、これは当然のことながらですけれども、事業者側、経済界側からはかなり警戒する懸念の声というものは当然出てこようとは思います。
ですけれども、私が思うに、やはりこれから消費者がふえてくる社会なんです。高齢社会というのは、つまり、生産年齢を終えて、高齢者として年金を中心とした所得を持って暮らす、すなわち、高齢者は消費者であって生産者ではない、そういう立場に立っているわけですから、高齢社会におきましては、消費社会の充実というものが非常に重要なテーマになってこようかと思います。
まして、今回の課徴金制度、それから前国会におきます景表法の改正などについては、一連の大手のホテル、レストランの非常に重大な偽装メニューの問題から端を発していることでありますので、ここは、有村大臣は所管を七つもお持ちだということで、それぞれの立場立場でなかなか難しい面もおありになるのかもしれませんが、この消費者の問題については、特にその立ち位置がほかの省庁と全く違うということを強く御認識いただいた上で当たっていただきたいというのが、冒頭に私からの要望でございます。
その上で、質疑に入らせていただきます。
まず、先ほどから少し話題になっております主観的要素、いわゆる相当の注意についてでございます。
今回の改正後の法案の第八条一項におきましては、違反事業者が相当の注意を怠った者でないと認められるときは課徴金を賦課しない、つまり相当の注意を払っていれば賦課しないということですね。
この場合の相当の注意を払うべき者というのは事業者というふうに言われておりますが、これは、前回の景表法改正で、表示等の適正な管理のため必要な体制をしっかりと整備するという内容の改正が行われたところでもあります。ですので、そこの管理体制において誰が相当の注意を払うべきかということが求められるのだと思います。
そのときに、少し考えてみますと、先ほどから例に出ていますバナメイエビをもってシバエビだと称していた事例を例にとりますと、大手の大きなホテルで、その中にあるレストランでそのようなことが起こったというときに、事業者として相当の注意を払うべき人物がそのホテル全体のオーナーさんである場合、経営者である場合と料理長である場合とで、その注意の内容とかその度合いというのは随分違うんじゃないかなと思うんですね。
今やバナメイエビもすっかり有名になりましたのでどの経営者もわかるかもしれませんが、また新たな、こんなもの同じようなものですよと言われてしまったらごまかされてしまうような経営者と、そういうことももう百も承知で違うものをシバエビと称する料理長とでは、おのずとその責任の内容とか度合いが違うんじゃないかなと思うんですが、これも、法律成立後ガイドラインなどで詳細は決定していくんだと思うのですが、現時点でのお考えをお聞かせください。
○菅久政府参考人 お答え申し上げます。
この相当の注意でございますが、これは、いわゆる事業者として行うべき注意義務に基づく確認行為ということでございますので、その事業者の構成員であります料理長やオーナーなどがそれぞれ不当表示を防止するために行う行為とかその内容、これはそれぞれ異なることがあるかと思われますけれども、事業者全体として相当の注意を果たす必要があるということでございます。
さきの国会におきまして、不当表示を防止するために必要な措置を講ずること、これを事業者に義務づけます景品表示法の改正がなされたところでございますが、これに基づいて、表示を管理するための責任者を置くということになろうかと思います。この責任者が注意すべき内容でございますが、これは、事業者として表示を管理するために必要な措置が適切に適用されているかどうかということでございます。
それぞれの事業者によってそれぞれの構成員の方々がやるべきことというのは異なることになるかと思いますが、管理する責任者の方は、その事業者全体として注意すべき内容というのをきちんと決めていただいて適用していただくということになろうかと考えております。
○重徳委員 ということは、事業者全体ということですから、経営者は経営者なりの相当の注意、そして現場の担当者は現場の担当者なりの相当の注意、その役割分担、責任分担というものをしっかりと決めた上で、総体としての相当の注意を払うことという理解でよろしいですか。
うなずいていただければそれでいいです。はい、わかりました。
次に、返金措置ですね。つまり、消費者に対する返金措置をとれば、その分、課徴金が減額されるという制度があるわけなんですけれども、この返金措置をとろうと考えたときに、どうしても何か一部の人に偏ってしまうということは大いにあると思うんです。
つまり、これも先ほどからの質疑の中に出てきていますけれども、例えば、会員制のサービスとかあるいは通信販売とかで、完全にどこのどなたということがはっきりしているという場合もあれば、一般的な飲食店だとか小売店なんかでは、完全に不特定多数の人が物を買っていくということになります。その場合、レシートに基づいて本人確認だという話も先ほどありましたけれども、それも限度があろう。
それから、例えばですけれども、レストランに予約を入れます。そうすると、電話番号ぐらいは確認されますので、名前と電話番号ぐらいはわかるけれども、あとはよくわからない。名字しかわからないとか代表者しかわからないとか、そういうこともあったり。支払いがカードだった場合は、カードの番号を初めとした個人情報は持っているけれども、それ以上のことは、逆に言うと、それに基づいてどこまで踏み込んでいいのかということも、ちょっと個人情報との関係でいろいろ問題が出るかもしれないというようなことで、一生懸命返金しようとしても、なかなかみんなに行き渡らないということも大いにあるとは思います。
一方で、返金措置の対象者が特定の者について不当に差別的でないものであれば、こういう返金措置は認定しますよということでありますから、余り簡単に、不当とまでは言えないよねといってほいほいと認めてしまったら、本当に、好きな人にだけ返して、これでいいだろう、返せばいいんだろうということで終わってしまう懸念もあるわけです。
その意味で、私は、基本的には、今回この法案が生まれる発端となったのが、非常に重大な、大企業による不祥事でありましたので、ここは事業者に対して厳しく当たるべきだというスタンスに今立っているわけなんですけれども、そういう意味では、不当に差別的でないものであることというのをどのように解釈するべきだとお考えでしょうか。
○菅久政府参考人 お答え申し上げます。
事業者の返金措置につきまして、今御指摘いただきましたように、「不当に差別的でないものであること。」というのが十条五項二号に規定されております。
この認定要件を設けた趣旨でございますが、違反事業者が恣意的な返金措置を実施した場合には課徴金額の減額を認めず、返金措置の適正性を担保するという点にございます。
この不当に差別的な返金措置でございますけれども、例えば、違反事業者の従業員などに対してのみ高額な返金措置を実施するでありますとか、それから、返金合計額が課徴金額に達した時点で、消費者からさらに申し出があるにもかかわらず、返金措置の実施をやめてしまう、そういう場合が該当するものというふうに考えております。
したがいまして、返金措置の中で、返金対象者が、把握できる人とできない人が、そういう人もいるわけでございますが、そのことについては不当というふうには考えていないということでございます。
○重徳委員 今、菅久審議官のおっしゃった、把握できるできないということについても、簡単には把握できないとか、でも努力すれば把握できるとか、その辺の程度もあると思いますので、そう簡単に諦めずに、ここはできるだけ、そもそもそういう不当表示をした事業者に対する措置なんですから、そう簡単に認めることなく、できるだけの努力をしていただくということを促していただきたいと思います。
さて、ここで大臣に確認したいことがあるんですが、今の返金措置について、これは、言ってみれば、例えば、二百万円の課徴金が課されるケースにおいて、二百万円以上の返金措置をすれば、課徴金がいわば免除されるわけですよね。ところが、百万円にとどまれば、課徴金は百万円ちゃんと課されるということになるので、この分かれ目というのは非常に重要だと思うんです。課徴金額を超えるだけの返金ができるかできないか、ここの分かれ目は非常に大きいと思うんですね、社会的制裁だとか、そういう意味でも。課徴金を少しであれ課される場合と、全くゼロで済まされる場合、これは企業にとっても非常に大きな問題だと思います。
その意味で、恐らくこれまで、例えば特定個人に対する返金がなかなか難しい場合には、供託なのか、あるいは国民生活センターに対してお金を払うとか、いろいろな検討がなされた結果、今回はそのようなものは認めずに、特定個人に対して支払って、それでできなかった分については課徴金で、いわば制裁的なものが課されるという仕組みになったと思うんです。
今申し上げましたように、非常にこれは重要なところだと思いますので、この返金対象者が必ずしも明確でない、不明である場合、あるいは返還しようと思ってもできない、そういう場合にどうしたらいいかというようなことについてどんな検討がこれまで行われたのか、その経緯についてお伺いいたします。
○有村国務大臣 確かに、委員御指摘のようなことは想定し得るというふうに認識をしております。課徴金制度に被害回復の観点を盛り込むということは極めて大事だと認識をしておりました。
当初は、消費者委員会の答申等も踏まえて、自主返金によって被害回復を行うことをしつつ、自主返金し切れなかった部分は国民生活センター、国センに寄附を行うということで、不当な利益を一般消費者に還元したものとみなし、課徴金の納付を命じないということも、一定の時期までは真剣に検討されておりました。
しかしながら、パブリックコメントなどで出されたさまざまな意見、また与党における御意見なども踏まえまして、所定の要件が満たされている場合は、やはり課徴金を賦課することで不当表示規制の抑止力を高めるという本制度の趣旨に鑑みて、また、寄附によって被害者の回復ということは直接図られるわけではないということから、今回の制度設計については導入しないということを判断した次第でございます。
この法案においては、給付制度にかえて、自主返金によって、そもそもの被害者の皆さんの救済、回復を図るという趣旨を徹底することで、この課徴金減額制度を導入いたしました。
○重徳委員 ありがとうございます。
広く返金の方法を認めればいいという、必ずしもそういうことを申し上げているわけではございませんけれども、何しろ、返金額が課徴金の金額を超えるのか超えないのか、これが極めて事業者にとっても重要なラインだということを御認識いただいて臨んでいただきたい、こういうふうに思います。
さて、次に、越智政務官にお尋ねいたしたいんです。
今回、自主申告という制度もございます。つまり、非常に美しい話をすれば、ホテルのオーナーさんが、その中で経営しているレストランの料理長が不当な表示をしていたということにある日気がついた。長年そういうことをやっていたということに気がついた経営者、オーナーさんが、これはいかぬと、恥を顧みずに自主申告をして、納めるべきものは納めて、もちろん半額になりますね、半額の課徴金を納めて、いわば制裁を潔く受けようという方がお見えになるかもしれませんけれども、基本的には、そんなことをしたい事業者なんかいないでしょうから、場合によっては、もう追い詰められるだけ追い詰められて、間もなく課徴金が命ぜられるということも、法律上は予知された場合はだめだというんですけれども、予知の直前ぐらいで、いろいろな報道とか同業他社とか、そういうところがやられまくっている、そういうのを見て、うちはやむなく申し出るしかないというようなケースが多いと思うんです。
こういうものを認めるというのは、そういう自主申告をしたら半額にしますよというのは、本来、全額納付して当たり前のところを、何かいたずらに甘い処分で済ませる、こんなようなケースがふえてしまうような気がするんです。
自主申告を誘導するという趣旨はわからぬでもないのですが、実際にはそんな、そもそも全額課せばいいところを、何か下手に自主申告制度があるがゆえに半額になってしまうとか、そんなようなことが想定されるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○越智大臣政務官 重徳議員から自主申告制度について御質問いただきまして、この自主申告制度のたてつけについての御質問だというふうに理解をいたしました。
本法案におきまして自主申告制度を設けている趣旨は、事業者がみずから違反行為を発見した場合に、可能な限り早期に、みずから不当表示をやめて、表示を改善するインセンティブを与えるということが趣旨でございます。というような趣旨に鑑みまして、本法案の中では、自主申告が認められる要件として、事業者の故意あるいは過失などの主観的要素は問わないということとしております。
ですので、御指摘のように、仮に事業者が不当表示であるということを認識している場合であっても、時期がいかんであっても、自主申告をすることは可能であるというたてつけにしております。
先ほど、本来は全額払うべき状況が半額になるのではないかという御指摘もございましたが、このたてつけとしましては、課徴金は全額免除されるわけじゃない、半額であっても課されるということになるために、不当表示を故意に行って不当利得を得ようとする事業者にとっては制度は悪用しづらいものになっているというふうに考えております。
○重徳委員 ちょっと最後の部分がよくわからなかったんですが、悪用とまで決めつける必要はないんですが、不必要に救済する、救済する必要のないところまで救済するようなことにならないかというのが私の指摘でありまして、質問はしませんけれども、この自主申告という制度も、本当にうまく機能するかどうかというのはしっかりとこれからウオッチを続けていただきたいというふうに思います。
最後に、この課徴金制度に関する消費者庁全体のスタンスとして、もちろん、三%で本当にいいのかとか、売り上げが五千万以上というような大きなところだけでいいのかとか、そういうこともありますが、私、今回、いろいろと政府、消費者庁からの説明資料をめくって読むに当たって、やはりちょっと気になるんですよね。表現ぶりが気になるんです。全体的に、業界側に非常に配慮が過ぎるんじゃないか。
課徴金の対象となる事案が百五十万円未満の場合は、かつ相当の注意を怠っていない場合は、あるいは自主返金額が課徴金額を上回った場合は課徴金は課されませんとか、だから措置命令事案の半分以下となる見込みだとか、あるいは、課徴金算定の基礎となる売上高は不当表示に係る部分のみだから事業者にとって過大な負担とはなりませんとか、相当の注意とは通常の商慣行にのっとった注意をしていれば足りるとか、何か、だから心配しないでね、皆さんという、本来心配する必要のない事業者は別に心配もしないと思うんですね、ちゃんとやっているんだから。
だけれども、何かちょっと自信がないというか、もちろん間はいろいろあるでしょうけれども、本来もっと心配して気をつけてやっていただきたいところにまで、無用に、心配ないからねなんというメッセージを出す必要は私はないと思いますし、そういう心配はむしろ経済産業大臣が代弁していただければいいわけです。
そういう意味では、消費者担当大臣としては、もっとリーダーシップを持って、消費者中心の豊かな、心まで豊かな社会をつくっていくために邁進していただきたいというのが、私、最初、冒頭申し上げました思いなんですが、今回の課徴金制度導入に当たっての消費者庁あるいは有村大臣としてのスタンスを改めてお伺いしたいと思います。
○有村国務大臣 お答えいたします。
消費者庁のリーダーシップということについてお問い合わせをいただきましたけれども、そもそも、前回、同趣旨の法改正が本年六月に行われました。それから半年もたたないうちにこの法改正を試みるということ自体が異例のことだというふうに思います。
これは、不当表示が後を絶たないという現状、現下の課題に対して消費者庁のリーダーシップ、イニシアチブを発揮した一つの、それでも現状が直らないなら法改正も辞さないという姿勢を実行したということで、それ自体が私たちのファイティングポーズだというふうに認識をしております。
そして、やはり不当表示というのは、消費者の自主的かつ合理的な選択を阻むものであり、これを許してはならないという私たちの思いをしっかりと法改正の哲学に入れていきたいというふうに思って、このような改正案を提出させていただいております。
課徴金制度の制度設計に当たりましては、不実証広告規制を、効果、性能に関する表示について導入いたしました。また、相当の注意を怠った過失の場合であっても課徴金を賦課の対象とすること、また、自主返金を行った場合には課徴金額を減額するということで、自主返金による消費者の被害回復を促進することなど、消費者行政が前進するものだというふうに認識をしております。
そういう意味では、経済産業省あるいはその関連の方々がどう動かれようと、私たちはぶれずに消費者を守っていくという視点を実践していくことが大事だという思いで提出をさせていただいております。
○重徳委員 大臣がそういう力強いスタンスであれば私も応援してまいりたいと思っておりますので、ぶれずに、ここは戦う気持ちでやっていかないと、本当に、消費者がないがしろにされがちな、特に高齢者がですね、そういう社会に今なりつつあると思いますので、しっかりとこれからも頑張っていただきたいと思います。
以上です。ありがとうございました。