○御法川委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。重徳和彦君。
○重徳委員 おはようございます。民進党の重徳和彦です。
きょうは、金融商品取引法の改正案について質問をさせていただきます。
まず一点目は、証券の高速取引への対応なんですね。この高速取引ですが、むちゃくちゃ、もう我々人類の域を超えるぐらいの高速取引、超高速取引と言ってもいいようなものだと認識をしております。
資料をお配りしておりますけれども、東京証券取引所、それから大阪の証券取引所も一部導入されているんですけれども、コロケーションエリアというのが設けられているんですね。東証の取引をするサーバーのすぐ隣に、近接する場所に、高速、超高速取引をしようという投資家のサーバーが置かれて、一刻一秒を争うというよりは、本当に何マイクロ秒という秒数を競って証券取引を行う、こういう時代であります。
資料をごらんいただきますと、二〇一〇年から、コロケーションエリアに置かれているサーバーからの取引、コロケーションエリア内の取引というのが、注文件数をごらんいただきますと、二〇一〇年四億七千七百万件だったのが、二〇一六年には七十八億九千九百万件という数になっています。それから、約定件数でも、一億一千六百万件だったのが七億一千七百万件であります。売買代金ベースでいうと、七十四兆円が三百三十二兆円。こういう、コロケーションエリア内からの高速取引に基づく件数あるいは金額というのは、これほどの勢いでふえているわけであります。
この七年間で高速取引が急増しているその理由、背景を金融庁から御説明をお願いいたします。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
東京証券取引所におきましては、従来、海外と比較いたしまして、注文の処理速度ですとか処理容量が劣っているという指摘がございました。これを受けまして、東京証券取引所では、二〇一〇年に売買システムの更新を行いまして、注文処理時間の大幅な短縮が図られたところであります。また、IT技術の進展により、投資家の発注システムについても、注文の処理速度の高速化が見られております。
そうした中で高速取引の割合が増加しているわけですけれども、そうしたことの背景としまして市場関係者の間では、一つに、証券取引のグローバル化といったこと、それから、情報通信技術の発達なども受けてアルゴリズムを用いた自動的な売買手法の進歩、そうしたことが背景にあると指摘されているものと承知をしております。
○重徳委員 そうなんですね。アルゴリズムに基づく自動的な売買システムですから、人間を介さないシステムなんですね。
今回、二〇一〇年から東証に、大証にも導入されているコロケーションエリアからの高速取引なんですが、確認なんですが、いわゆる高速取引とそれ以外の、それ以外の取引といっても回線を通じたそれなりの高速取引だとは思いますけれども、技術的にはどのぐらいのスピードの違いのことを言っているんでしょうか。
○池田政府参考人 東京証券取引所によりますと、投資家が注文を行いました後、その注文に係ります情報が取引所の売買システムに伝達されるまでに必要となる時間につきまして、コロケーションエリアから注文を行う場合は四・七マイクロ秒、マイクロ秒は百万分の一秒でございます、四・七マイクロ秒である一方、コロケーションエリア外から注文を行う場合には数ミリ秒の時間を要するというふうなこととされております。
○重徳委員 我々人間の感覚からすると想像もつかないようなスピードでありますけれども、四・七マイクロ秒、マイクロというのは百万分の一、外からだと数ミリ秒ですから、ここに千倍の差があるわけですよね。このぐらいの、そうはいってもその世界の中では千倍違うというわけでありまして、本当に超高速取引ということだと思います。
しかし、我々人間からすると、何マイクロ秒であれ何ミリ秒であれ、高速は高速だと思うんですよ。こういった、どこまで高速を競うのかというような世界だと思うんですけれども、基本的な認識として、速く取引を終えたいんだったらとことんその速さを競えばいいじゃないか、金融庁としてもこういう認識なんでしょうか。
この資料を見ても、やはり、高速取引が占める注文件数で見ても、全体が、金額で見た方がいいですよね、金額で七百三十一兆円のうち半分近くがコロケーションエリア内からの取引なんですよ。これはもう、やりたいんだったらどんどんコロケーションエリアの中でやったらいいじゃないか、こういうことなんでしょうか。どう認識されているんでしょうか。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
コロケーションエリアから注文いたしました場合に、そうでない場合と比べまして、注文が取引所の売買システムに到達するまでの時間が短いということは先ほど御答弁申し上げたとおりでございますけれども、この点については、個々の投資家の投資戦略、投資行動はさまざまであると思いますが、こうした取引の時間が短いことの重要性というのは投資者ごとに異なるという面がございます。
それから、コロケーションエリアの利用その他高速の取引を行うには、相応のコストもかかるということもございます。そうした中で、最終的には個々の投資家の方々の投資戦略、投資行動によって選択がされていくということかと思っております。
ただ、同時に、高速取引について、例えば、中長期的な投資家ですとか個人投資家等の間に、そういう高速取引について不公平感を与えているのでないかということは懸念されるところでありまして、そうしたことからも高速取引の実態についてはこれまで以上に情報を収集していくことが必要であると考えておりまして、今回の法案の提案をさせていただいているところでございます。
○重徳委員 高速取引ができるようになったということで、取引の件数も金額もたくさんになったということで、流動性が高まっているという前向きな評価もあるわけなんですね。
ちょっと確認したいんですけれども、コロケーションエリアにサーバーを置いている投資家の数はどのぐらいなんですか。それから、ちょっと気になるのは、国内の投資家と外国の投資家がいると思うんですけれども、数字もわかれば教えていただきたいんですが、どうなんでしょうか。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
コロケーションエリアに置いている社は、おおむね七十社程度ではないかと考えております。そのうち十社程度は証券会社が置いているというものでありまして、したがいまして、差の六十社程度が今回の法律案に基づきまして登録の対象として想定している社であるということでございます。
それで、国内、海外につきましては、この六十社の大宗は海外に存在している投資家であるというふうに考えております。
○重徳委員 国内、国外ということですが、最初の御答弁でも、やはり、東証のシステムが海外と比べて遅いということが問題だという指摘を受けて東証が対応したということだと思うんですけれども、外国の投資家のためにいろいろやっているという感じがするんですが、その辺はどうなんでしょうか。日本の投資家のためだったらやる気も出てくるんですけれども、何か外国の投資家のためにばかり、いろいろなサービスをよくしたり、あるいは対応を迫られたり。このあたりについての問題意識をお答えいただきたいと思います。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
証券市場におきましては、内外問わず幅広い投資家を呼び込み、厚みのある市場の中で公正な価格の形成を行っていくということがその重要な機能であると考えておりますので、国内の投資家の厚みということも極めて大事だと考えていますが、同時に、海外の投資家の厚みということも重要であり、したがいまして、証券取引所が国内の投資家のみならず海外投資家のニーズも踏まえて取引制度の見直しを行っていくことは、それなりの意義のあることであると考えているところであります。
ただ、同時に、取引の高速化に関する懸念などが存在していることも事実でございます。そうしたために、今回、必要なルール整備を提案させていただいているわけですが、こうしたものについては、国内の投資家のみならず海外の投資家の方々にも対応をいただくことが重要だと考えております。
したがいまして、今回の法律案でも、海外の投資家に対しても実効性ある形で今回提案しているルールが適用されていくように、例えば、外国籍を有する方が高速取引を行う場合には、この法律案に基づく登録に際しまして、国内における代表者あるいは代理人の設置をいただくですとか、高速取引を行う営業所が所在しております国の当局と私ども当局とであらかじめ覚書を締結するなど、我が国の調査協力に相手国の当局が調査協力に応じていただける旨の保証がある、そうしたことを要件として登録を認めることとしている等の措置を講じさせていただいているところでございます。
○重徳委員 ここで大臣にちょっとお聞きしたいんですが、今、池田局長からも、こうした高速取引、超高速取引じゃなくても通常の回線を通じた投機的な取引というのは、中長期的な、本来、株主として会社を育てていく、こういう観点を阻害するものではないか、こういった指摘がなされているわけでありますが、私は、本来的な投資の姿勢の観点から見ると、ちょっと、こうした高速取引、いかがなものかというようなところがあると思うんですが、大臣の御認識を教えてください。
○麻生国務大臣 これは、一秒間に数千回、機械が進歩していますから多分もっといくだろうと思いますけれども、こういう高速取引が中長期的な取引に与える影響。傍ら、多分、アルゴリズムに乗って、短期で一日のデートレードみたいなものがふえていますから。そういったことになりますので、与える影響というのについてはこれは必ずしも明確ではないんですが、少なくとも、他の投資家に比較すれば、先に売買しますので、他の中長期の投資家の売買の機会というものを制約しちゃうという点もありますでしょうし、取引のコストは当然のこととして上がります。
また、中長期的な企業の価値というものに基づいて価格形成というのがされて、この会社は今はだめでも来期、再来期、この投資の分が見合ってというようなことを考えてやっている分を、そのときの数秒間の話でうわっと動いていくということになりますと、いわゆる中長期的な企業の価値というものに関する価格形成を阻害し得る要因にはなると思いますよ、私どもは。
したがって、こうした懸念がありますから、今回、高速株式取引を行う方々に対してはいわゆる登録制というのを導入させてもらって、体制の整備とかリスクの管理とかいろいろありますけれども、そういったものをやるとともに、高速取引の実態というのが正直いまだよく確認できておりませんので、そういったものができるように、ルールの整備をさせていただこうと思っております。
どういう影響が出てくるかということに関しましては、今申し上げたようなところまではわかるんだけれども、ほかにもいろいろな影響が出ておるのではないか等々、懸念は幾らでもありますけれども、そういったのが今現状だと理解しております。
○重徳委員 まずは実態を把握して、どういう懸念に対応していくべきかということをまず把握をするということでございます。
そもそも、超高速といいましょうか、四・七マイクロ秒とかこういう世界はどこまで進んでいくんでしょうね、大臣。どこまででも進んでいくんでしょうか。どう予測されていますか。
○麻生国務大臣 来年、多分世界一になるコンピューターがありますけれども、それが今のスーパーコンピューター「京」と言われる、よく言われるコンピューター「京」ですけれども、あのスーパーコンピュータの「京」の大きさが大体丸ビルぐらい、昔の旧丸ビルぐらいあった大きなコンピューターだったんですが、今既にでき上がっておりますのは、電気洗濯機で五台ぐらいですかね、あの大きさからいったら。その角にぽいっと入る、もっと小さかった、このくらいの高さで、数台で入ります。
電気がやたら食うからといって、何で一番じゃなきゃだめなのとか、とぼけたことを聞いていた人がいましたけれども、いましたけれどもってまだ死んでないですよ、まだ死んでないけれども、生きておられると思いますけれども。
その方の話をおちょくるわけじゃありませんけれども、電気代は、原子力発電所の十分の一、十万キロワットぐらい要るという話で、何でという、電力の無駄じゃないのと言うんですけれども、そのコンピューターは空冷じゃありませんから、水冷ですから。そういったものが既にこれは日本製でできております。
去年の、省エネ電力スーパーコンピューター、グリーン五〇〇の一番、二番は全部この会社ですから。そういったものができてくると、今のコンピューター「京」のさらに百ペタとか百五十ペタと言っていますから、それはちょっと数字がむちゃくちゃなことになってきますので、それは幾らでも出てくるということになり得ると思いますので。
そういった処理速度が高速化したということがもう実現していますので、IT技術のさらなる進歩ということは、まずコストが相当ふえてくるということも、やられる方はあるところだと思いますので、投資家としては、その利益に見合ったようなものになるのかという問題はこれは全然別の話で、やられるのは御自分でなされればいいだけの話ですけれども、実際にどれだけ高速化されていくかということを見通すことは、今のコンピューターの技術の進歩の方に少々、知識があるものだから、これはちょっと、さらにもっといく可能性があるんだと思いますので。
気をつけておかなければならないのは、その安定性というのは大丈夫ですかという話とか、いろいろなことを考えなきゃなりませんし、また、金融庁としては、公平性はどう確保するのとかいろいろなことを考えておりますので、今回の法案によって、少なくとも取引というのの実態というものについてはある程度把握をさせていただいておかないと、大きな問題が起こってからということになりかねぬというのが、我々この法案を提出させていただいておる背景です。
○重徳委員 大臣の問題意識はわかりましたし、どこまでも高速化が進んでいく可能性がある、ただし、コストとか安定性とか、そういった、それに伴う課題はあろうかということでございます。
ちょっとここで整理しておきたいんですが、今回の法改正によって問題がすかっと解決されるというよりは、これからいろいろなことを把握していくということだと思うんですが、ちょっと改めて局長から、本改正によって何がどう改善されていくのか、特に、フラッシュクラッシュとか、それから大規模な数億ドル規模の損失を出すような誤発注というのがこれまであったわけでありまして、そしてその会社が破綻する、こういった事件も起こっておるわけなんですけれども、こういうことを防げるというようなことなんでしょうか、その辺の認識をお願いします。
○池田政府参考人 取引が高速化している、そうしたことも念頭に置きながら、取引所におきましては、これまでもさまざまな制度的な対応は行われてきていることでございます。
例えば、投資家に冷静な判断を行うための機会を設けるなどの観点から、価格急変の増幅を防止するための措置として、例えばサーキットブレーカー制度ですとか制限値幅の制度などが導入されているところでございます。あるいは、誤発注という御指摘がございましたけれども、市場に混乱を来す注文の排除といった観点から、誤発注が起きた場合に、一度成立した売買を取り消すことができる誤発注取り消しルールといったものも取引所では導入をされておりますし、また、証券会社に対して、システム管理体制の整備や顧客注文の審査なども求められているところでございます。
こうしたことに加えまして、今回の法律案では、株式等の高速取引を行う者に対して登録制を導入して、取引システムの適切な管理運営や適切な業務運営体制の整備等を求めることとしているということでございます。
私どもとしては、今回の法律はもとより、取引所でとられているさまざまな取り組み、こうしたことを全体として行うことによって、市場の公正性、透明性、安定性の確保を図っていきたいというふうに考えているところでございます。
○重徳委員 まず、この高速取引については大体そんなことだということで理解いたしました。
ちょっと変な時間割りなんですけれども、この後、十時十五分からもう一度私の出番があるようですので、最後の一問として、フェア・ディスクロージャー・ルールについて、インサイダー取引規制とどう違うのか、どういう関係にあるのか、これについて御説明を願います。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
フェア・ディスクロージャー・ルールは、上場会社が重要な情報を証券アナリストなどに提供した場合、他の投資家にも公平に情報提供することを求める、そうした企業の情報提供に関するルールであるということが言えると思います。
具体的には、上場会社の役員やIR担当部門の従業員など、通常の業務遂行において、投資家等に情報提供を行う役割を負う者から、証券会社、投資運用業者、機関投資家等の有価証券の売買に関与する蓋然性が高いと想定される者に対して、当該上場会社等の運営等に関する未公表の重要な情報であって、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼすものが伝達される場合に、上場会社に対して、その情報を同時または速やかに一般に公表することを求めるものであります。
これに対しまして、インサイダー取引規制は、上場会社と特別の関係にある者が当該企業に関する重要な情報を知った場合に、当該情報の公表前に取引等を行うことを禁じるという、企業の関係者等から情報を受けた者の取引に関するルールであるということでございます。
また、これらのルールについては、例えば罰則の適用につきまして、今回、御提案申し上げていますフェア・ディスクロージャー・ルールにおきましては、このルールに基づく情報開示がなされない場合には、まずは、企業に速やかな公表を促し、これに適切な対応がとられなければ、行政的な指示、命令を行った上で、それでもなお、正当な理由なく命令に従わない場合に、初めて罰則の対象とするということとさせていただいております。
他方、インサイダー取引規制につきましては、五年以下の懲役または五百万円以下の罰金といった形での刑事罰等が規定されているということでございます。
○重徳委員 一旦終わります。変な時間割りですけれども、この後、十時十五分から私の質問を再開させていただきます。
ありがとうございました。
○御法川委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 重徳和彦です。再び登場いたしました。
きょうは、日銀の雨宮理事にもお越しいただいておりますので、先に日銀関連の質問をさせていただきたいと思います。
皆さん御承知のとおり、黒田総裁は就任から四年を経過いたしました。残り任期一年を切りました。そして、物価安定目標、当初、二年で二%を達成するということに置いておりましたけれども、四年を経過した今なお、民間の予想を見ても、一%も到達していないんじゃないか、こういう状況でございます。
そんな中で、きょうはちょっと財政再建との関係、財政規律との関係でお尋ねをしたいと思います。
要するに、国債をどんどん日銀が買い入れるわけですから、そして、その目的も、まさに国債の金利を低く抑えるということでありますから、政府からすれば、これは明らかに財政規律を緩めることにつながることを四年間ずっと続けてこられているわけであります。
本来の目的は、金融緩和を通じて物価上昇を目指すということではありますが、しかしながら、最初は二年でその目標を達成するという状況だったわけですから、もう四年ずっとこういう状況を続けて、そして、財政規律は本来政府の役割だといっても、日銀がやっていることが大分寄与する状況になっているわけですから、この点について、財政規律の観点も含めた国債の購入を心がけるべきではないかと考えるんですが、雨宮理事のお考えを教えてください。
○雨宮参考人 お答え申し上げます。
私どもの日本銀行の国債買い入れあるいは量的・質的金融緩和、イールドカーブ・コントロールでございますが、これらはあくまでも二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するという金融政策運営上の目的のために行っているものでございまして、財政ファイナンス、あるいは財政を支援するということを目的で行っているものではないわけでございまして、この点は、量的・質的金融緩和、二〇一三年導入時の公表文においても明確に指摘申し上げているところでございます。
財政運営につきましては、二〇一三年一月の政府、日本銀行の共同声明で、デフレ脱却に向けた日本銀行の努力を明確に規定すると同時に、政府におかれましても、成長力の強化に向けた構造政策を進めるとともに、機動的な財政運営を行いつつ、中長期的に持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進することというふうにされておりまして、私どもとしては、政府におかれまして、この方針に基づき財政運営を行われているものというふうに承知してございます。
○重徳委員 雨宮理事、きょうは黒田総裁じゃなくて、ポスト黒田もにらんで、雨宮理事にあえてお越しいただいたわけですが、今引用されました二〇一三年の共同声明、もう四年前の話なんですよ。しかも、繰り返しになりますが、二年で物価安定目標を達成するという前提といいましょうか、それを想定して、政府は持続可能な財政運営をするべし、こういう共同声明が出されたわけであります。
もう四年たちました。私、今、本当にお尋ねしたかったのは、日銀が国債を買い入れるに当たって、あくまで二%を達成するためだとか、財政支援ではない、それはそう言い続けられると思いますけれども、しかし、現に、どう考えても、国債の金利が安いということは、財政運営をする側、政府側からすれば、これは非常に好材料なわけであります。
ですから、今後どういう形で出口を見据えていくか、そのタイミングもあると思いますが、しかし、出口に至るその前、出口戦略のことは次にお聞きしますが、現時点においても、国債の買い入れを、財政規律をゆがめないという観点からも抑制的に、今、八十兆円という金額ベースで国債の買い入れをするという方針ではないわけですから、ですから、金利を見ながらも、金利だけでなく、財政規律に与える影響も勘案しながら国債の買い入れの規模についても考えていくべきではないかと思うんですが、もう一度、再度お聞きしたいと思います。どうでしょうか。
○雨宮参考人 お答え申し上げます。
今、私どもが行っております金融政策、イールドカーブ・コントロールという、適切なイールドカーブの姿を実現するために国債購入をしておるわけでありますけれども、私どもとしては、まず二%という物価安定の目標を実現することが、物価安定のもとでの持続的成長を実現する早道であり、それが、結局は、国民経済全体、あるいは財政運営の健全化にも資するものというふうに考えておりますので、まずは、中央銀行といたしましては、この二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するということを目的に金融政策を運営していきたいというふうに考えてございます。
○重徳委員 御答弁はそういうふうになるのかもしれませんが、しかし、そういう今私が申し上げました視点からも、財政規律をやはり無用に緩めるようなことにならないような、そういう国債の買い入れ政策を実施していただきたいということを要求したいと思っております。
それから、もう一つは出口の話なんですが、これも、基本的には決まり切った御答弁しかないと思ってはおりますが、しかし、今申し上げましたように、なかなか物価安定目標は達成できないし、もう永久に達成できないんじゃないか、こういう見通しもあるわけでありますし、そういう中で、アメリカの金利は上昇局面を迎えておりまして、今、国際的な環境からしても、やはり日本における金利もこれに引きずられるということは当然想定しておかなきゃいけない。そうなると、なおさら今の金融緩和の政策の持続性というものに疑問もついてくるという環境に今追い込まれているんじゃないかと思っております。
そこで、黒田総裁もあと一年でということでありますから、当然、出口については、出口戦略に入れるかどうかも、正直いつになるかわからないし、そういう段階をどういう形で迎えるのかもわかりません。しかし、ちょっとその先を見据えると、出口戦略と言われる期間というのは相当な長期間にわたるんじゃないかということを思います。
要するに、一気に国債を放出するようなことをしたら金利に与える影響も甚大になるわけでありますから、この物価目標をいつ達成するのかというのは、その目標時期もどんどん先延ばしになっているわけでありますが、その後の、出口戦略にかかる期間というのは、私は相当長期間になるんじゃないかと思うんですが、その見通しについて御見解をお知らせください。
○雨宮参考人 お答え申し上げます。
出口に関する御質問でございますけれども、出口がどういう状況で、どういう格好で私どもが迎えることになるかというのは、やはりその時々の経済、物価、金融情勢に依存するわけでございますので、現段階で出口の時期、あるいは出口に要する、出口を終了するまでの期間について、あらかじめ予断を持ったシナリオ等々を申し上げるのは、やはり時期尚早であり、適当ではないというふうに考えてございます。
ただし、私どもといたしましては、いずれ出口というときは、やはり経済・物価情勢が改善しているはずでありまして、二%の物価安定目標も達成されているはずでございますので、それに応じて金利は自然な格好で、整合的な格好で上昇していくということになろうと思いますが、日本銀行は各種の政策手段は有しておりまして、そうした局面におきましても市場の安定を確保しながら適切に金融政策を運営していくということは、時間がかかろうとも十分可能であるというふうに考えてございます。
○重徳委員 日銀に対する質問は以上としたいと思いますが、そろそろポスト黒田もにらみながらいろいろなことを考えていかなくちゃいけないんじゃないかな、こんなことを思っている次第でございます。
そして、もう一つ、財政再建との、というか財政運営との絡みなんですけれども、資料の三ページ、四ページをごらんいただきたいと思います。
日本は、消費税増税について、今後、これも先延ばし先延ばししておりますが、しかし、消費税についての増税のことばかり世の中では言われているわけであります。しかし、所得税についても、少し改めて実情を理解しておく必要があると考えております。
この資料の三をごらんいただきますと、個人所得課税、国、地方を合わせた税収の対GDP比は、日本は大変低いんですね。一九九〇年ごろは八%ぐらいまでいっていましたけれども、ここのところずっと四%、五%といったところであります。アメリカ、独、英、仏は、八%から一〇%ということであります。
これは低いんですけれども、この要因をちょっと見ますと、次の資料の四をごらんいただきますと、これはやはり限界税率ブラケット、その構造が、日本は、いわゆる最低税率五%が適用される納税者が六割である、そして、その次の一〇%以下の適用税率を合わせると八割を超えるわけですね。国際比較をいたしますと、〇%から一〇%は、日本は八四%なんですが、アメリカは二七%、イギリス二%、フランス三三%であります。そして、一〇%超から二〇%以下、これが日本は一三%にすぎませんが、アメリカ四二%、イギリス八一%、フランス五〇%であります。
こういった所得税の累進構造、非常に日本はフラットになっているんですけれども、このことによります財源調達機能をどう考えておられるか、これをお聞きしたいと思います。
○大塚副大臣 重徳先生の問題意識はまことにごもっともだと私も思っておりまして、御指摘のとおり、日本の所得税において個々の納税者が適用されているブラケットの税率を見ると、御指摘がありましたように、納税者のうち約八四%の方が五%または一〇%というブラケットに入っているわけでございまして、ほかの主要国と比べても、こうした低い水準の税率が適用されている納税者の割合は非常に大きい状況にあります。
御参考までに御紹介申し上げますと、日本は今申し上げたように八四%ですけれども、アメリカが二七%、イギリスは二%、フランスは三三%ということで、極めて顕著な差があるという状況になっていると思います。
こうした状況によって、御指摘のように、租税の最も基本的な機能である公的サービスの財源調達機能というものが低下をしているという面があることは否めない事実だろうというふうに思っております。
一方、財務省としての公式見解としては、所得税が果たすべき財源調達機能の水準は、公的サービスの規模や、消費税や法人税など他の税目が果たしている財源調達機能とのバランスにもよることを留意する必要があるというふうなこととか、所得税は、累進税率や控除の仕組みを通じて所得再分配機能についても重要な役割を担っており、経済社会の構造変化を踏まえながら、負担構造のあるべき姿について検討していくことが重要であるというような考え方もあるわけでございます。
基本的に、尋常じゃなくほかの国と差があるということは紛れもなく事実でありまして、なかなか、所得税のこのあたりのブラケットをいじるというのは、多分いろいろ政治的に難しいところもあって、過去の経緯でこうなっているんだろうと思いますけれども、私としても非常に問題意識を持っておりますので、ぜひ、重徳先生にもがんがん突き上げていただければというふうに思っているところでございます。
○重徳委員 大塚副大臣、尋常じゃないほど差があるということであります。一目瞭然なんですけれども、おっしゃるとおりで、過去、消費税を増税するときに、税収中立ということで、この所得税率ブラケットをいじって所得税を軽減してきたという経緯もあると思うんです。
いきなり、低所得層、中所得層を増税するぞというわけにはなかなかいかない、だけれども、日本の所得税の状況が国際的に見てこういう状況にあるんだということは、事実として広く国民に知っていただく、これはやはり、事実は事実なんですから、そういう努力が必要なんじゃないかなと思います。
そして、財政再建する見通しが、これも国民的にもう相当難しいというふうに思われているわけであります。ですから、消費税の増税論がある中で、大変厳しい状況ではありますけれども、こういった所得税の累進構造はこうで所得税収がこうだということは、やはり、よくよく、なかなか消費税と違って伝わりにくいメッセージでありますけれども、いろいろな工夫をしながら伝えていかなきゃならないんじゃないか、こう思うんですが、いかがでしょうか。
○大塚副大臣 まことにおっしゃるとおりだというふうに思っております。
個人所得課税の税収、対GDP比というものを見ても、米、英、独、仏が八%から一〇%程度、アメリカ一〇・二%、ドイツ九・六%などとなっているのに対して、日本は五・七%にとどまっている。
これは、御指摘がありましたように、消費税の導入から引き上げという過程の中で、レベニュー・ニュートラルという考え方に基づいていろいろ議論がされ、調整されてきたところだと思いますけれども、所得税の財源調達機能が低下してきた、これは事実でございますので、ぜひ、やはり国民の皆様にも事実を知っていただいた上でいろいろお考えいただくということがまことに重要だろうというふうに思っております。
財源調達機能のみならず、所得再分配機能、いろいろな重要な役割を担っていることも踏まえる必要があるわけでございますけれども、経済社会の構造変化、それから財政構造、こういったものを踏まえつつ、負担構造のあるべき姿を検討していく必要がありまして、政府税調において、これまでもさまざまな角度から分析を行い、所得税をめぐる環境について広く一般にもお示しをしながら検討を進めてきたというふうに認識はしておるわけでございますけれども、まだまだ所得税の構造については十分認知されているとは私も思っておりませんので、こうした委員会での御議論を深めていただくこともまた国民の皆様に知っていただくよい機会になろうと思いますので、ぜひ、引き続き重徳先生には御指導いただきたいというふうに思っております。
○重徳委員 私も頑張りますので、ぜひ大塚さんも頑張ってください。
さて、話を戻しますけれども、金商法のフェア・ディスクロージャー・ルールについて話をしていきたいと思っております。
資料の二をごらんください。これは、金融庁の方から示された、未公表の企業情報の伝達が問題となった近年の事例であります。例えば、二〇一五年十二月に行政処分を受けた例ですけれども、東証の上場会社が、公表前の四半期の業績に関する情報を、公表前に証券会社のアナリストに伝達をしました。そして、当該アナリストがその会社の営業員にその情報を伝えたことによって、公表前の情報をその営業員が顧客に伝えてその株の売買を勧誘した。こういうことであります。
ちょっとこれは確認なんですけれども、行政処分をこれによって受けたということですが、どの部分について誰がどんな処分を受けたということなんでしょうか。ちょっと、御答弁できたらお願いします。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
ここで示されております事例におきまして、「証券会社」とありますこの証券会社につきまして、情報管理に問題があったということで、証券会社が行政処分を受けておるということでございます。
○重徳委員 このことは通告してなかったので、どう答えたらいいかということかもしれませんが。
要するに、未公表の情報をアナリストに伝えた、だけれども、そのアナリストが営業員に伝えちゃって、営業員が顧客を売買勧誘しちゃったわけですね。だから、これは、そもそも、今回の法案によって、アナリストに伝えたんだったら、ほかの人にも、つまり公表しろよ、こういう法案なわけですよね。だけれども、今の状況では、未公表の情報を受けたアナリストが営業員に伝えちゃったり、あるいは営業員が勧誘しちゃったり、この取り扱いが問題になっているという理解でいいんですよね。そういうことでいいと思います。
ただ、このときにどんな情報だったのか中身は知りませんけれども、今回の法律、フェア・ディスクロージャー・ルールによって、では、アナリストに伝えました、その内容いかんを問わず、伝えちゃったんだからもうホームページなんかで全部公表せよというのは、場合によっては適切でないこともあるんじゃないかと思うんです。おかしなルールだと言われかねないことも出てくるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
このフェア・ディスクロージャー・ルール導入と申しますのは、こうした事案があったことが導入の契機にはなっておるわけですけれども、そのルールの趣旨を申しますと、証券アナリストが公表直前の決算情報などを入手して、そういう情報に基づく短期的な売買を推奨していくということではなくて、公平に開示された公表情報を活用して企業の中長期的な分析を行い、その分析に基づく推奨を行う、そうしたことを通じて中長期的な視点に立った投資が促進される、そういう期待を持って導入を検討したということでございます。
また、海外では、企業と証券アナリストの間では、未公表の決算情報等の提供を伴うということなく、企業の中長期的な経営戦略ですとかその進捗状況などについてやりとりが行われるという実務が広く一般化しておりまして、我が国でも、情報管理のしっかりとした上場会社や証券アナリストの間では同様の実務が行われているものと認識をしているところでございます。
今回の法案を策定するに当たっては、その結果生じる、企業あるいは証券アナリストの方に対して過度の負担にならないように制度的な工夫はできる限りさせていただいているつもりですが、基本的にはそういう考え方に基づくルールで、これは必ずしも我が国特有のものではなくて、かつ一般的に定着している実務だというふうに私どもは考えているところでございます。
○重徳委員 つまり、この事例でいうと、アナリストに伝えた情報はどういう場合であっても公表せよということになるんですか。どういう場合がそうじゃないとか、何かそういうルールは、例外的なルールとか、その辺を教えてください。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
今回の法律案では、そうしたことに関係しまして、幾つかの取り扱いに関します規定が置かれております。
まず、上場会社と証券アナリストとのやりとりの中で、通常は適切な情報管理が行われていても、何らかの理由で決算情報等未公表の重要な情報が提供された、されてしまったという場合には、両者の対話を通じて一部の者に情報提供がなされた以上、既に情報提供が可能な状態になっているとして、その情報を広く公表するという方策もあろうかと思いますが、そうではなくて、当該情報が公表できるようになるまでの間に限って証券アナリスト等に守秘義務を持っていただくというような対応の仕方も考えられようかと思います。
あるいは、そうした守秘義務があることを前提に情報提供が行われたものの、その守秘義務契約が遵守されなかったということを上場会社が知ったような場合には、その情報をその時点において公表することが求められるわけですけれども、そうした場合に、何らかやむを得ない理由により当該重要情報を公表することができない場合その他の、これは内閣府令で定める場合には、当該情報の公表を求めないということができるような規定を置かせていただいているところでございます。
○重徳委員 ちょっとわかりにくかったんですけれども。
この事例で、本来、売買を勧誘しちゃいけないようなそういう未公表の情報を証券会社が注意しなさい、つまり、証券会社はその情報がどういう情報なのか、未公表の情報なのかとか、場合によってはインサイダー取引につながるような情報なのか、こういうことを証券会社が注意しなさいよ、証券会社はその取り扱いに気をつけなさいよ、こういう行政処分だと思うんですね。
だけれども、今回、基本的に未公表の情報を伝えるというのはない世界をつくるというようなものですよね。誰かに言ったからには全部みんなに伝えなさいというルールですから、証券会社にかかる負担が、そういう意味では軽くなるというか、基本的にどんな情報も未公表情報であるはずがないというような世界になるというふうに理解していいんでしょうか。その場合に、今おっしゃった例外というのは、どういうことを具体的に想定されているか、もう一回御答弁いただきたいと思います。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
今、先生御指摘のありましたように、証券会社におきましても、しっかりとした証券会社においては、情報管理として、そのような情報が仮に提供された場合、それは分析などには入れない、あるいはもうアナリストとしての意見の推奨は対象から外すというような取り扱いがされていることが一般かと思いますし、また、企業サイドについても、特定の方にはしゃべらないという取り扱いがされているのが一般であり、それを今回、法令上も担保している。
したがいまして、証券会社サイド、企業サイド、いずれからもそういう情報はやりとりしないという形で対応がされるというのは、先生の御指摘のとおりでございます。
ただ、やりとりの中で、何らかの拍子にそういう情報がやりとりをされたときも、これも、そういったものは重要情報になる、そう思うものを証券アナリストが例えば受けた場合には、今のは重要情報ですねということで、企業に公表を求めるか、あるいは、企業がそれを公表しない場合には、みずからそれを推奨銘柄から外すというような対応を、これは一般に、実際にそういうふうに対応がされていると理解をしております。
それから、お尋ねのありました、やむを得ないケースというのは、内閣府令で定めることにはなりますけれども、例えば、重要情報の公表を行うことによって、何らか、進行中の重要な交渉が決裂するおそれがあるですとか、上場会社の競争上の利益を害する場合など、かえって投資家に不利益を及ぼすことになるような場合、そうした場合に、一定の時点までそういう公表を差し控えてもらうというような取り扱いがされるというようなときに例外に扱うというようなことが考えられようかというふうに考えているところでございます。
○重徳委員 わかりました。
わかりましたが、アメリカやヨーロッパでは、二〇〇二年とか二〇〇三年ぐらいにはもうできたルールなんですよね。それを、十数年たって、日本でもこれから、それも、こういった行政処分の例が出てきたからというような背景もあるというふうに伺っておりますので、恐らくいろいろなケースへの当てはめというのがこれから試される部分もあるんじゃないかなということを思いますので、適切な運用をしていただければというふうに思っております。
以上で終わります。ありがとうございました。