人口減少の経済への影響と「増子化」社会づくり
○大島委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。
今、世論調査でも、景気回復の実感がない、相変わらず八割方の皆さんが実感できていないという状況です。そこで、前回の国会から、地方の景気回復のための地方創生が必要だということが言われ始めました。
○大島委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。
今、世論調査でも、景気回復の実感がない、相変わらず八割方の皆さんが実感できていないという状況です。そこで、前回の国会から、地方の景気回復のための地方創生が必要だということが言われ始めました。
また、格差が問題だという指摘もなされ始めました。格差、もちろん問題は問題ですけれども、完全平等ということはあり得ないわけですから、どこかで折り合いをつけていくというんですか、どこまでの格差なら許容できるか、こういう話なんだと思います。
ただ、私、これから当面の日本が絶対に正さなきゃいけない問題、これが、国の存立そのものの危機を招いている人口の問題だと思っております。
生産年齢人口が減少しております。少子化対策という、ちょっと寂しい言葉なものですから、私、子供がふえるということで、増子化社会を目指そうということを勝手に申し上げておりますが、こういう増子化を進めていくという観点から、きょうは経済政策を論じてまいりたいと思っております。
資料二枚目をごらんいただきたいんですが、生産年齢人口の全体に占める比率が、実は不動産のバブルとリンクしているという分析があります。
左側が日本で、赤いラインが生産年齢人口比率、これのピークが一九九〇年なんですね。まさに日本の不動産バブルはピークが一九九〇年でありました。また、アメリカは、生産年齢人口のピークが二〇〇五年なんですが、サブプライムのバブルもピークが二〇〇七年。ほぼ一致するじゃないか、こういう話でありまして、アイルランドとかスペインなどでも同様の数字が出ているところであります。
こういうことが資産インフレの大きな要因なんだとすれば、その後、バランスシートの問題が解決された後もデフレが長く続いている、これは人口の構造的な要因が大きいのではないかという分析もできるわけであります。
甘利大臣にお尋ねいたしますが、この長らく続いているデフレの問題、これを人口の問題と捉えてお考えになったことはございますでしょうか。
○甘利国務大臣 全く人口減が関与していないとまでは言い切れませんけれども、それが本当に主要因かということについては、必ずしもそうではないというふうに思います。
デフレと人口減少、これが継続的に今のグラフですと起きている。しかし、雇用者数自身は、少なくとも今の内閣ではふえているわけですね。それは、労働市場に参加していない人たち、つまり、お年寄りとか女性をどんどん参加させることによって人口減少下でも労働人口をふやしていく、それから、生産性を上げること等で量と質をふやしていくことによって労働寄与度も上がってくるということ等々を考えますと、人口減少とデフレ、デフレの原因は人口減少であるとは必ずしも言い切れないのかなというふうに思います。
○重徳委員 この問題そのものも深掘りしていきたいところなんですが、きょうはちょっと問題提起をしていきたいと思います。
実は、この人口の問題は一つ大きな要因だと私は考えております。特に、高齢者の消費者がふえておりますし、そういう方々が車や土地をどんどんどんどん買うかというと、これまたそのような傾向は薄いと思いますし、それから、そもそもこの日本という国がかなり成熟段階を迎えているということで、資料三をごらんいただきたいんですが、主要耐久消費財の世帯普及率の推移なんですね。
これは、戦後間もない時期、一九五五年から直近の二〇一三年までのグラフになっておりますが、いわゆる戦後の三種の神器、誰もが欲しがっていたテレビとか冷蔵庫とか電気洗濯機、こういったものは発売が始まったら急速な勢いで、つまり、お金を手にした国民はみんな必ず買いたがった。
これが高度成長期の発展の原動力でもあった、消費意欲の原動力でもあった。ということで、カラーテレビ、乗用車、エアコンという三Cというものもありますし、こういったものが急速な勢いで、高度成長期、あるいは物によっては八〇年代ぐらいまでは普及をしているわけでありますが、この一番右端に至りますと、主要なものはほぼ八割以上の普及をしておりまして、これ以上は、新製品、新商品が出てきても、お金がちょっと手に入ったからといって、百万円あったら何に使うかと今どきの若い人に聞いても、とりあえず貯金しておくかとかいう方も結構多いと私は思っております。
そういう意味で、こういう時期に金融緩和をして、需要を前倒すというようなことをやっても、なかなか効果が出ないんじゃないかということ、あるいは、財政出動をどんどんしても、かえってこれは財政悪化を招くんじゃないかなんという将来不安もまた増長する、こういう影響もあると思います。
さらに言うと、次の資料四をごらんいただきますと、これは最近の日経新聞の「経済教室」に引用されたデータですが、貨幣の量はぐんぐんと右肩上がりにふえておりますけれども、貨幣の流通速度、お金が実際に回っているか、このスピードは逆にどんどん下がっている、こういう数字もあるわけでございます。
こういったデータをごらんいただいて、経済が成熟段階、人口減少で将来不安もある、こんな日本で、貨幣の量がふえてもなかなか消費がふえない、こういった、金融緩和、財政出動によります
消費刺激効果というものが以前と比べて弱まっているんじゃないかな、こう思われるわけですが、甘利大臣、いかがでしょうか。
○甘利国務大臣 先生の御指摘は、いわゆる貨幣流通の方程式でいうと、超長期をとるとこういう図式になるということはよく言われていますけれども、必ずしもそれが全てに当てはまるわけではない。先ほど、消費のグラフでも、事実、これに示されているとおり、カラーテレビが満杯になったときに薄型テレビというのが出てくる、薄型が行き渡ったときには今度は4Kが出てくるとか、つまり、消費というのはイノベーションと関係してくるわけです。その市場にないものが出たときに新たな需要が生まれる。ですから、スマホがないときにはスマホの需要はないですね。電話は行き渡ったけれども、携帯電話という便利なものができて、それが新しい需要をつくる。これが行き渡ったら、今度はスマホが来て、情報端末になる。つまり、市場にどうやって新しい需要を喚起していくかということは、イノベーションとかかわってくるわけであります。でありますから、日本としては、常に需要を生み出すようなイノベーションに取り組んでいかなければならないというふうに思っております。
一般論として先生の議論があるということはよく承知の上で、必ずしもそれが一〇〇%、例外なくあることではないという点から、我々は、確かに人口が減っていく、そういうときには労働力人口をふやす努力をする、そして、もちろん中長期的には人口をふやすための施策を徹底的に打っていく、それから、イノベーションを起こして国内外に新しい需要をどんどん生み出していくということに取り組んでいっているところでございます。
○重徳委員 ありがとうございます。
もちろん、イノベーションで新しいものを生産、開発していくというのは、物づくり企業にとっても非常に大きな命題でありますので、日本国内の数ある物づくり企業に頑張っていただく必要ももちろんあろうかと思っております。
ただ、人口問題とここで絡めますと、高齢者の方々が新しい商品が出たからどんどん買っていくかというと、やはり相対的には若い人たちの方がそういった消費意欲はあります。
それから、とりわけ今子供の数が減っていると、もちろん一人当たりの子供にかかるお金は昔よりふえているとは言われておりますが、それにしても、絶対数が減っているわけですから、そういった子供の数がふえることによる消費の量というものは、以前と比べてどうしても縮小しているのではないか、こう思われます。ということは、そこの部分に、子育て世代にもっともっとお金が手に入ること、そして将来を見通せるような社会にしていくことが、若い人たちの、結婚したいな、あるいは子供が欲しいな、もっと欲しいな、こう思えるところに結びついていくんだと思います。
ここで、今進んでいるアベノミクスがどうかといっても、まだこれからだというような議論もありますので、二〇〇〇年代前半にちょっと立ち返ってみたいと思うんです。
二〇〇〇年代前半も、実は、リーマン・ショックの前の時期は、世界的なバブリーな状態で、そして日本でも、イザナギ景気を超えたなんて言われております、好景気だと言われていた時期であります。そして、金融緩和も量的緩和が空前の規模で当時行われていたということで、今と似たような状況だなというふうに捉えることもできると思うんです。
そのころの経済財政白書を見ますと、二〇〇二年から二〇〇五年の平均で見ると、キャピタルゲイン、いわゆる資産の所得というもの、金融所得というものが十四兆円余りと非常に大きな規模になっているということなんですが、金融資産がふえた割には消費の弾力性が低い、つまり消費に結びついていない、こんな分析がありました。
これは、私は推測するに、こうした金融所得をたくさん手にしたのは高齢層、富裕層であると思うんですが、この金融所得というものは消費に回らずに一体どこに行ってしまったのか。このあたり、どのように分析をされていますでしょうか。
○甘利国務大臣 バブルが崩壊して、若干その以降の時期も入っていますよね、それは。確かに、その時期に金融資産価格が十四兆円、今も同様な状況になっている。当時は確かに消費が伸びておりません。実は今は消費が伸びております、GDP統計でいうと伸びております。
その違いは何かといいますと、企業が、企業ももちろん金融資産を持っていますから、それが賃金改善に向かっていないんですね。つまり、バブルの崩壊がもう始まっていますから、そこでバランスシートを改善するということに明け暮れていて、賃金改善に向かっていないわけです。
今との違いは、バランスシートが非常に健全になっていて、いわゆる内部留保が三百二十八兆、そのうちの設備投資に回っている分野、長期、つまりMアンドAで他の会社を買収しているというような方に向かっているものを除くと、一年以内に処分予定の金融資産と現預金を合わせると、二百一兆円になります。
これをどうやって賃金改善に向かわせるか、下請代金改善に向かわせるか、それが今取り組んでいる課題で、それが動きつつありますので、消費は、いわゆる小売でいくと、委員御指摘は余り伸びていないと。しかしサービス消費がありますから、それまで入れたGDP統計でいくと、伸びているのは間違いないということで、要は、賃金そして下請代金の改善にしっかり取り組んでいくということが鍵になっているんじゃないかというふうに思っております。
○重徳委員 今大臣言われたとおり、まさに賃金、若い人たちの雇用者所得というもの、雇用者報酬というものにつながるかどうか、ここが本当に鍵だと思います。
五枚目の資料をごらんいただきますと、これは前回もお出しした資料でありますが、株価がここ二年間、物すごい勢いで上がっておりますが、小売販売額が伸び悩んでいる。大臣は、サービスの方は伸びているんだということをおっしゃいましたので、実際にはトータルしなくちゃいけないとは思いますけれども、問題はここの点にあるんですね。
子育て世代にお金がもっと回れば、子供が一人ふえたら、それはチャイルドシートに子供を乗せなきゃいけないわけだから、ちょっと大き目の車を買おうかとか、あるいは子育て環境にいい家を買おうかとか、そういう消費にすぐ結びつきますし、それから中長期的には、もちろん生産年齢人口の減少にもブレーキがかかるわけですから、内需の拡大にもつながるであろうということで、今、政府が一生懸命賃金アップを経済界、労働界に働きかけているというのは、これは筋としては正しいと思うんですが、働きかければ賃金が上がるなら、そんな簡単なことはないわけであります。
したがって、今、税制でも、所得拡大促進税制というものを設けていろいろなことをやっているんですが、ひいては、もう配当にお金を回すよりも賃金の方にお金を回す、こういう傾向をもっと、昔の日本型資本主義と言われて、それはいい悪いはいろいろあると思いますが、日本が直面している課題というのは本当にグローバルな、株主資本主義と言われるものに対応してばかりいると、かえって日本にとっては不都合だ、こういう面もあるわけですから、こういった意味からも、日本としてはかなり思い切った経済政策をとるべきだと思っております。
少子化担当の有村大臣にきょうはお越しいただいておりますが、経済政策を、こういった増子、私が勝手に言っております増子化という観点からも立案していくべきではないか。それも含めて、少子化大臣、有村大臣の御担当となっていなくちゃいけないんじゃないかな、こう思うんですが、いかがでしょうか。
○有村国務大臣 大事な御指摘をいただきました。お答えいたします。
正規雇用労働者と非正規雇用労働者には、婚姻割合に大きな違いがあります。例えば、三十代前半の男性の婚姻環境を見ますと、正規雇用では六割近くの方々が結婚しているにもかかわらず、その一方で、非正規雇用の就業形態の方々では、その半分に満たない約二五%に結婚がとどまっているという調査もございます。
まさに委員御指摘のとおり、経済的な安定が、結婚をしやすくて子供を育みやすい、そういう上で重要な要素であることが含意として読み取れます。そういう意味では、少子化対策の推進に当たっても、若い世代の結婚、妊娠、出産、子育ての希望が実現できる環境の整備が大事であり、その主軸として、まさに若者の雇用の安定や経済的な安定が極めて重要な要素だと少子化担当としても認識をしております。
政府としては、昨年十二月閣議決定をいたしましたまち・ひと・しごと創生総合戦略においても、若い世代の経済的安定に向けて、若者雇用対策の推進、正社員実現加速プロジェクトの推進等を掲げ、取り組みを進めています。
先ほどからお答えされています甘利大臣御担当の政労使会議における合意文書でも、賃金体系のあり方について、まさに委員御指摘のように、「子育て世代への配分を高める方向へ賃金体系を見直すことが一案」と、政労使の合意によって明記をされています。少子化対策担当としては大変ありがたい表明だと認識をいたしておりまして、また、このデータを活用させていただきたいと思っています。
従来の少子化対策の枠組みにとらわれず、まさに雇用や産業政策を含めて、あらゆる分野の制度、仕組みが、子育てしやすい環境になっているか、持続可能な社会の活性化に資するかどうかという観点から見詰め直して、実効性のある少子化対策を関係省庁、大臣とも連携して進めていきたいと考えております。
○重徳委員 きょう、黒田総裁にもお忙しい中お越しいただいておりますが、時間がなくなってしまったものですから、大変申しわけありません、ちょっとコメントだけさせていただきます。こういった、今申し上げましたような構造的な改革を進めるということを前提に、今、金融緩和政策をとっておるわけですから、二〇〇〇年代、そういった資産、金融所得がふえたけれども、それは実質賃金につながっていない、こういう状況が今も続いておりまして、恐らく、日銀としては、金融緩和をずっとこれからも続けていきたいとばかり思っているわけではないと思います。一刻も早く政治がきちんとした覚悟を決めて構造改革に取り組んで、そして、ひいては子供がふえる社会をつくっていかなくちゃいけないというふうに考えております。
この議論はまたさせていただきたいと思っております。
本日はありがとうございました。
○大島委員長 これにて重徳君の質疑は終了いたしました。