しげとく和彦の国会論戦の会議録
平成26年2月25日 予算委員会公聴会
「農業改革について、山下一仁・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹に質問」
○二階委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 日本維新の会の重徳和彦でございます。
きょうは山下先生に、お聞きしますときのうの夜アメリカからお戻りになられたということで、本当にお疲れのところ、我が党の関係者が無理やりお連れしたということで、大変申しわけなく、また心より感謝を申し上げます、山下先生に何点か御質問させていただきたいと思います。
農業は、本当に、従事者の平均年齢が六十五歳を超えてしまいまして、もう日本の農業は限界だ、改革が必要だということを言われて久しいんですが、なかなかそれが進んでこなかったということでございます。そういうこともありまして、やはり改革が必要だ。
安倍総理も、少し勢い余ってでしょうか、減反、廃止しますというようなことを施政方針演説においても述べられたところでございますが、これは、一般国民にわかりやすく、いわゆる減反を廃止するとおっしゃったようなんですが、関係者の中には、いや、これは減反廃止じゃないとか、非常に混乱をいたしまして、それで、この予算委員会でも、一体その真意はどうなんだということを何人かの委員の皆さんが問いただしたわけでございます。
それは、国、県による生産数量目標の割り当てをいずれやめるんだとか、あるいは農地をフル活用する、そういう意味なんだ、いろいろなことが言われましたが、いずれにしてもなかなか苦しい御説明で、これを改革ではないとまでは言いませんけれども、やはり、本質的な改革ではないんじゃないかというふうに思っております。
維新の会では減反の見直しということを公約に明言しておりますが、やはり、減反の見直しという以上は、最低限こういう結果が出なければ減反の見直しに値しないということをここで明確に山下先生からおっしゃっていただきたいんですが、よろしくお願いいたします。
○山下公述人 どうもありがとうございました。
減反の本質とは何かということであります。
減反というのは、農家に補助金を与えて、農家に米を減産してもらって、米の生産をしないでもらって、供給量を減らして米価を高める、これが減反政策の本質なわけですね。
今回の見直しは何かというと、これまで払っていた戸別所得補償を減額して、その分を餌米の米それから米粉用の米に、米をつくったら、農家にとっては麦や大豆をつくるよりも米をつくる方がはるかに簡単なわけですから、それに補助金を増額する。この十アール当たり十万五千円という補助金額は、実は、農家が主食用として米を売って得た収入と同額なんです。つまり、農家はこれから、餌か米粉用の米をつくったら、主食用として米の値段をもらうのと同じ額を政府からもらえるということになるわけです。
そうすると何が起こるかというと、農家が餌用に、あるいは米粉用に米を売れば何がしかの収入がありますから、そうすると、米粉とか餌用の米をつくった方が有利になってしまうということになります。そうすると、主食用の米の供給が減りまして、主食用の米の値段がさらに上がってしまう。
これは実は、戦後農政のコアなんです。これは岩盤中の岩盤なんです。だから、私は、去年十月にアメリカでシンポジウムで講演したときに、これは安倍内閣は絶対できないだろうと申し上げたんです。翌日、ワシントンの空港に行ったら減反廃止というふうに書かれていたのでびっくりして、私も失業するのかなと思ったんですけれども、よかったなと思っていますけれども、実は、それはできないんです。それぐらいできる根性があれば、随分できると思います。
実は、今回の見直し、減反、四十年間できなかったことをやったと言うんですけれども、実は、二〇〇二年に自民党は、二〇〇七年に生産目標数量の配分をやめると言ったわけです。二〇〇七年に戸別所得補償はありませんから、二〇〇七年の姿に戻したというだけの話です。二〇〇七年にもう、そういう意味での減反廃止ならやっているんですね。単に見直しをしただけ、むしろ害のある見直しだったというふうに私は思っています。
○重徳委員 ありがとうございます。
本当に、政府の農政改革、どうしても小出し小出しというような印象を全国民的に持っているんじゃないかなと思っております。
それで、先ほど先生から、時間の関係で、農地政策と農協の改革につきましてはちょっとはしょられたわけなんですが、この二点につきまして御質問をしたいと思います。
まず、農地政策についてですが、これは、いわゆる株式会社の参入ということをどこまで、どのように認めるかという議論、これも長らく続いてきましたけれども、これもやはり、いまだに、リースでないとだめだ、それから、農業関係者が議決権の四分の三以上だとか、役員の過半を占めなきゃだめだとか、いろいろな規制がありまして、誰でも参入できるという状況にはありません。
一方で、もちろん、株式会社が入ってしまうと、本当に農業を続けてくれるのかとか、あるいは、ほかの目的にこの土地を使ってしまうんじゃないかとか、そういう懸念があるからそういう規制があるということではあると思うんですが、こういうことも、逆に言えば、行為規制と言われるらしいんですけれども、必ずこの土地はこのように使ってくださいね、そういう規制をかければ、別に、どういう法人じゃなきゃだめだというような、そういう種の規制でなくてもいいんじゃないか、こういう議論も長らく続いてきているわけでございます。
また、山下先生は、ゾーニングという規制をかけるべきだという御主張をお持ちでございますが、土地所有者も、農地の所有者からしても、下手に農地を貸し出してしまいますと、何か、転用してもうかるチャンスを逃してしまうんじゃないか、こういうこともあって、なかなか、いろいろな意味で土地の集約が進まないとか、株式会社が参入しづらい状況があると思いますが、こういった点につきまして解説をお願いしたいと思います。
○山下公述人 株式会社の話なんですけれども、一番問題なのは、トヨタとか日産が入ってくるという話じゃなくて、普通の人がベンチャーで、友達から株式を出してもらって、それで一千万ぐらいの出資金を集めて農地を取得しようとしても、それは実はできないことになっているわけですね。
出資できる人は、スーパーとかレストランとか、そういう、その農産物の、その農業生産法人のものを使うという人じゃないと出資できないという規制が、これは四分の一ぐらいまでしか認められない。そういうことで、普通の人がベンチャーで参入するということは一切認められないという規制になっているわけです。
これは、後継者がいないいないといって、実は、農業に後継者の参入を認めていないのは、ほかならぬ農地法だということなんです。農林省が農業の後継者の新規参入を抑制している、こういうことになっています。
それから、ゾーニングなんですが、ヨーロッパはゾーニングだけであの農地を守っています。農地法というのはないわけですね。日本には、ゾーニング、農振法という法律と、農地法という二つの法律がありますけれども、残念ながら両方ともざる法なものですから、水を上から流しても全部ざあざあ流れてしまう。本当にきっちりとしたヨーロッパ並みのゾーニングが必要だというふうに思っております。
○重徳委員 それでは次に、話を農協の方に移したいんです。
農協という組織が、今、収益の多くの部分を金融の関係で稼ぎ出しているということは、いわば世の中の常識になっていると思うんですけれども、その意味で、このあり方のままでいいのか、改革が必要なんじゃないか、これは多くの国民、あるいは農協の職員の中にもそういうことをおっしゃる方は大勢いらっしゃいます。
一方で、やはり歴史のある、地域に根差してきた団体なものですから、今のJAバンクとか共済とか、あるいはAコープといったスーパーなんかも、非常に地域で愛されている、密着している、こういう信頼を得ている存在でもあると思います。
その意味で、さまざま法律上の課題があると思うんですが、そういう改革の方向性、また、今こうして地域に定着している現状からして、どのように、どこから手をつけていくべきか、こんなことも含めて御説明いただければと思います。
○山下公述人 農協については、基本的には、農業のための組織なのか、それとも協同組合としての原則を守っているのか。
協同組合の原則というのは、利用者が所有して利用者がコントロールする、これが原則なわけですね。ところが、実態を見ると、農家に高い農産物資材価格を押しつけるとか、あるいは融資で、言うことを聞かないなら融資をしないとか、いろいろなところで、組合員である利用者を若干阻害するようなこともやっている。
それから、協同組合というのは、利用者が所有者ですから、そんなに規模は大きくならないわけですね。ところが今は、日本の農協は第二のメガバンクだし、保険についても第一に迫るような巨大なものになっている。
やはり、こういうふうな巨大な連合会組織についてまでも独禁法の適用除外を、実は独禁法の二十二条の要件を満たさないものですから、農協法九条というのをわざわざつくって、農協を独禁法の適用除外としてみなすという規定を置いているわけですね。それは明らかにおかしいので、やはり農協法の九条というのを廃止するとか、そういうふうな、根本的な、農協と独禁法の関係を見直す必要があるというふうに思います。手をつける最初のところはそこかなというふうに思っております。
○重徳委員 さまざま構造的な課題があるという点につきましては、今お話しいただきました。
もう一つ、二つぐらいだと思いますが、やはり今、私の地元は愛知県の西三河の方なんですけれども、農業関係者、農業の方が大勢お見えになります。政府が、これからは日本の農産物をどんどん輸出していくんだというようなこともおっしゃっているし、もちろん、そうあってほしいと私も思いますけれども、いまだに、これからは農産物を輸出しようとか、あるいは六次産業化がこれからの時代の潮流だということを話をしても、なかなかぴんとこない方が多いですね。
これは、もちろん御高齢の方が多いので、今から新しいことをやるということにはどうしても消極的になってしまう方もいらっしゃいますが、一方で、中国のよく言われる富裕層は物すごく大勢いるので、中国では、日本の質の高い農産物を、たとえ価格が高くても好んで買い求める、こういう状況だから非常にビジネスチャンスが海外にあるんだという話を力説しても、若い方々も含めて、どこからどう手をつけていいのか、また、農業を取り巻く環境がなかなか、先ほどから小出し小出しと言っているように、大幅に変わってこないことから、何か踏み切れずにいる、そういう感じがするんですね。
これから、まさにTPPのそろそろ決着がつくべき時期に来ておりますし、また、減反見直し、減反廃止ではないようなんですが、生産調整の見直しということもこれからもっともっと加速させていかなければならないと思います。
その意味で、TPPとか価格支持政策の転換ということをするのかしないのか、さらには、現実問題として、輸出をする体制、それは国内の生産現場から、そして海外に、中国なら中国の受け入れ体制などなど、いろいろとあると思うんですが、こういう輸出に向けた取り組みについて、必要な環境整備について御所見をお聞かせいただきたいと思います。
○山下公述人 プレゼンテーションで申し上げましたように、輸出をしないと日本農業は生き残れないわけですね。
そのときに何をするのか。今まで、確かに輸出を倍増するというふうな声はあったんですけれども、何せ価格競争力がないものがマーケティングをしただけでは売れないわけですね。
日本の米は世界一おいしいんです。間違いなくおいしい。それにもし減反を廃止して直接支払いをして価格競争力をつければ、これこそ本当に鬼に金棒なわけですね。
それから、TPPの話も、実は、関税を撤廃することだけに目を奪われていますけれども、アメリカが今回のTPP交渉で何を一番重要視しているかというと、国営企業に対する規律なんです。
実は、日本のキロ三百円する米が、中国の北京、上海のスーパーマーケットでは一千三百円で売られています。この差を事実上の関税として取っているのは中国の国営企業なんです。これにアメリカは規律をかけようとしている。つまり、アメリカのTPP戦略というのは、将来、中国も入れるというふうなことを見据えて、極めて壮大なビジョンのもとにアメリカはTPP戦略をやっているということですね。これに日本としても積極的に参加していく。
それから、輸出の仕組みなんですけれども、輸出の協同組合というのをつくることも可能性としてはある。今まで、実は、農林省は、協同組合を農家が実質的につくれないという規制をずっとやってきたわけです。昨年、この規制が撤廃されましたので、今後は自由に協同組合を農家がつくれるようになる。こういうふうな仕組みを積極的に活用すべきだというふうに思います。
○重徳委員 どうもありがとうございました。
政府・与党がなかなかスピード感が出てこないものですから、私ども日本維新の会がどんどん前に引っ張っていきたいと思っております。ぜひともこれからも御助言、御指導のほど、よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。