平成26年4月18日 厚生労働委員会
「難病は難病でも”病名”だけで線引きしていいの?」
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○重徳委員 日本維新の会の重徳和彦でございます。
本日は、参考人の皆様方、お忙しい中、時間をつくっていただきまして、本当にありがとうございます。
私も、例えばアンジェルマン症候群の患者団体の方、一型糖尿病の患者団体の方、またチャーグ・ストラウス症候群の方など患者の皆様方、多くの方々から、難病の指定、特定疾患の指定というものを強く望んでおられる方が大勢お見えになるということを、直接間接にいろいろな形で伺ってまいりました。
その中で、本日、参考人の皆さん方が述べられた御意見の中で、少し深めていきたいと思う点につきまして御質問をさせていただきます。
まず、全国膠原病友の会の代表理事の森参考人に一つお聞きしたいのですが、この膠原病、実際にはさまざまな疾病があるというようなことでございますけれども、実際に、例えば同じような原因、症状、病態、あるいは治療法であるにもかかわらず病名だけ違うなというふうに感じられること、あるいは逆に、病名は同じなんだけれども、その病態とか治療法とか、やっていることは同じじゃないというふうに感じられること、このあたり、もし差し支えなければ、具体的にこんなことがあるよということを含めて御指摘いただければと思います。
○森参考人 ありがとうございます。
膠原病という疾患、先ほど表もお見せしましたそれらの疾患ですけれども、やはり共通する症状というものもあります。例えば発熱であったり関節痛であったり筋肉痛であったり、そして臓器病変もそうですけれども、肺が線維化していったり腎臓が悪くなったり、そのようなところというのは幾つかの病気によっても共通しております。
そしてまた、違うという点におきましては、私は全身性エリテマトーデスなのですけれども、私と同じ病気の方でも、日光過敏というものが非常に強い方、弱い方があります。例えば私は日光過敏症がございますので、もう今の季節、紫外線などを避けなければいけない生活を送っております。ところが、全く大丈夫で、海外で海に泳ぎに行って非常にレジャーを楽しんできたという方もいらっしゃいますし、ちょっと洗濯物を外に干しに行くだけでも熱が出てしまって皮膚も発疹が起こってという、そのような方も中にはあります。
症状については、レイノー症状というものも一つありまして、体の血流が非常に流れが悪くなって、例えば緊張したときとか、それから冬場、寒いときなんかに起こるんですけれども、手足に血液が流れなくなりますので、非常に強い痛みと、そしてしびれが起こって、ほとんど日常生活というものを一人で送ることができない、支援が必要になってくるというところがあります。これも私に非常に強く出ている症状ですけれども、通常は、混合性結合組織病ですとか強皮症ですとか、そのような病名の疾患に多く出る症状です。
このように、同じ病名でありながらも違う症状をあわせ持っておりますし、また、病気が違うのに同じ症状があって、そして、その対症療法しか今はないので、症状に対する治療になっておりますので、病名が違っても治療法は同じという方もあれば、病名は同じなのに治療法が違うという方もあります。その点で膠原病というくくりで行われているんだと思いますけれども、それらの中で制度が違うというのは矛盾を感じているところです。
○重徳委員 ありがとうございます。非常にわかりやすい御説明でした。
次に、今度は、医療を提供されている側という観点から国立成育医療研究センター理事長の五十嵐参考人に質問させていただきたいのですが、今、森参考人から述べられたことに象徴されるように、やはり、きょう皆さんおっしゃるように、病名で線引きすることへの懸念というか矛盾というか、そういったことにいろいろな御意見が寄せられました。
実際、もちろん、病名による区別も大事なときもあると思います。一方で、病態ベースでこの難病という問題を捉えること、もう少し今よりも病態ベースで、治療といいましょうか、ネットワークにしても情報収集にしても、いろいろな施策を実施するということができないものか。このあたり、先生のお立場からどのように感じられるか、御解説をお願いします。
○五十嵐参考人 病気というのは、もちろん原因がわからない病気はたくさんあるわけですけれども、一つの実態として捉えるためには、やはりある程度診断基準を持って、そして、どんなドクターでも、資格のあるドクターならば、どこでも誰でも診断できるというものがないといけないと思います。つまり、ある程度の客観的な指標があって初めて病気を捉えることができると思うんです。
今御指摘がありましたように、症状だけでいくという手ももちろんこれはあると思いますが、それが非常に客観性がない場合、なかなか、医療を提供する側としましては、どういう治療をしたらいいかとか、どういう対応をしたらいいかということがわからないわけですよね。ですから、通常は、難病であろうとも、できるだけ診断基準を、これは内外の、日本だけじゃなくて外国の知識も経験も全部総合的に判断しまして、やはり病名ベースでいくということが基本ではないかと思います。
ただ、同じ病名であっても、先ほどから御指摘いただいているように、最近はいろいろな治療法が改善してきましたので、その治療をやっている限りにおいては症状は非常に軽く済んでいる、例えば全く治療しないで軽い方もいらっしゃるわけですけれども、ある一定の最近の治療をしていくと、リウマチなどは数年するとまた薬剤を取りかえなきゃいけないなんということがございますが、しかし、その治療をやっていると、あるいは治療が合っている場合には、その患者さんにとって日常生活のQOLが大変改善するということも事実でございますので、単に症状という言葉にとらわれないで、たとえ軽くとも、その軽い状態を維持する上である一定の治療が必要な場合には、やはりそれは支援していくということが必要ではないかというのが、今までの委員会での参加している先生方の御意見だったと思います。
ですから、そういう対応をしたいというふうに今考えているところです。
○重徳委員 ありがとうございます。
今の点を少し、もう一つの観点から御質問したいんですが、私もアンジェルマン症候群の患者団体の方から伺ったときに、やはり、いわゆる希少性ゆえに、自分のところの子供がアンジェルマンなのではないかというふうに疑いが持たれた、あるいはそれのような症状じゃないかと言われたときに、一体、日本のどこに類似した同様の病名あるいは症状の方がいるのか、これがもう本当に途方もない困難であったと。たまたま御縁があって、同じような患者さんのグループを形成していくことができたということではあるんですけれども。
これは逆に、医療機関側から、病名がはっきりしているとか、ぴたっと固まっているものであればわかりやすいと思うんですが、こんなような症状かなと、必ずしも専門のお医者さんばかりではありませんので。そういう意味でも、全国の非常に希少な病気に対応するためにも、そういう情報を収集するためにも、病名だけじゃなくて、こんな症状でというような収集の仕方ができないものなのかどうか。ちょっとこれは素人の浅はかな考えかもしれませんが、このあたり、いかがお考えでしょうか。
○五十嵐参考人 大変貴重な御指摘だと思います。そういうことができると非常にいいと思うんですが。
今、例えば指定疾患の方は研究班がございまして、それぞれホームページをつくり、そこにアクセスすると、病気の全貌がわかったり、治療法がわかったり、あるいは治療をどこでお受けになることができるかということまでわかっていると思います。
それに対して、今御指摘の疾患につきましては、非常に頻度も少ないし、研究班はあったりなかったり、一時あってもなかったりとか、こういうのはいろいろな研究費が出るんですけれども三年たつと終わってしまうとか、そういうようなこともございまして、現実に、ホームページをつくって国民の皆さんに情報を伝えるような、そういうものが今までなかったと思います。
それで現在、日本小児科学会は、小児慢性特定疾患の研究班の先生方と協力して、できるだけ診断基準をつくって、公表し、そしてできれば、これはお金のかかることですので簡単にはいかないかもしれませんけれども、将来は、難病の研究班のような、何か国民の皆様が比較的簡単にアクセスするようなメディアというかホームページ等をつくることも、今、計画はしているところでございます。しかしながら、残念ながら、まだ十分な状況にはないということは認めざるを得ないというふうにお答えしたいと思います。
○重徳委員 ありがとうございます。御尽力に大変感謝と敬意を申し上げます。
最後の質問になると思いますが、稀少がん患者全国連絡会の松原参考人に一点お伺いしたいと思うんです。
がんに限らずですけれども、難病ですとか希少がんというのは、早期発見により、早期完治に向かう、早期回復に向かうということがもちろん理想ではあると思うんですけれども、必ずしも完治に至るものばかりではありません。
ゆえに、治療法の研究とかそういうことも重要なんですが、クオリティー・オブ・ライフという意味で、早期に発見、あるいは病名が明らかになるということによって、生活のサポートを充実させることによってその患者さんの人生がより豊かになっていくとか、そういう観点から早期のさらなる対応が必要だというような、クオリティー・オブ・ライフの観点から、早期の発見、そして早期のある意味での解決ということが重要だというように私は感じておるんですが、この点について、何か関連するようなお話があれば開陳願いたいと思います。
○松原参考人 ありがとうございます。
おっしゃるとおりでございまして、がんの場合は、早期発見、早期治療というのが原則ということになってございます。
乳がん検診とか、いろいろな形で早期発見の施策を皆さん打っていただいているんですが、なかなか患者サイドが、外国に比べまして受診率が低うございます。例えば乳がん検診なんかは、こういうチケットを出しまして行きやすいようにしたりとか、工夫もいただいているんですが、それでもなかなか行かないということなので、啓蒙運動を患者と一緒になってもっとやる必要があるんじゃないかというのが一点でございます。
それから、早期発見して早期に治療しますと、治る、もしくは寛解状態とかで、がんと共存できますので、生活の質、生きている質をよくしまして、やはり社会復帰をして働くということが非常に重要なことでございます。本人自体も、病院や家でじっとしておけば免疫力が下がりますので、できるだけ患者も含めて家族さんで一緒に出るとか、そういうことが非常に大切です。
今、厚労省のがん対策推進協議会というのが、がん研有明の門田会長さんがやられているんですが、第一期の五年間で、第二期目、特にその辺を強調していこうじゃないかということで、社会復帰ですね、就労ということを患者もやはりやっていこうと。
がんも、治りはしないですが、共存できます。共存して、クオリティー・オブ・ライフをよくしておれば働くこともできますので、そういうことを一緒に患者もやっていきたい。患者会で盛んに今そういうことを、全国的に、一緒に社会に復帰しようじゃないかということを考えてございます。
○重徳委員 貴重な御意見、ありがとうございました。