H26.6.18 厚生労働委員会
―国民を過労死から守る―
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○重徳委員 日本維新の会の重徳和彦です。きょうもよろしくお願いいたします。
労働安全衛生法の話に入る前に、去る六月十六日、おととい、月曜日の衆議院決算行政監視委員会におきまして、JEED、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構との間で不正入札問題が起こりました短期集中特別訓練事業について、田村大臣は、百四十九億円の予算のうち、事業の一部を断念して、七十億円を国庫に返納すると表明をされました。
我が党の清水鴻一郎委員が、これまで、そもそもJEED一者しか応札できないような事業なのであれば、無理な入札でなく、透明性を高めた上で随契にした方が国民の納得性は高いのではないか、根本的に見直すべきではないか、あるいは、消費増税による景気腰折れ対策として昨年度末ぎりぎりに組んだような筋悪の補正予算だったんだから、手続に手間取りながら無理に執行するようなことなく、国庫に返納すべきではないか、こういったことを再三指摘したにもかかわらず、大臣は、何の見通しもなく、JEEDを受注業者から外した上で再入札を行ったが不調に終わり、あげくの果てに、全国を六ブロックに分けて入札にかけて、結局、そのうち二つのブロックでは落札の見込みが立たず、さんざん時間を浪費した上で、七十億円を国庫に返納されました。
これは、もう既に厚労省の職員の不正などというレベルの問題を通り過ぎまして、ついた予算は意地でも使い切りたいという、本当に悪い、役人根性と言われたような根性が田村大臣に乗り移って、最高責任者である大臣の責任問題だと私は思います。余りに先を見通せていないのではないかと思います。
今後は、四つの事業者が受注したわけですから、これらの事業者が適切な事業執行ができるのかどうか、こういったことも含めて、国民の立場から私どもは厳しくチェックしてまいりたいということを申し上げます。
その上で、労働安全衛生法の改正案につきまして、質疑に入らせていただきます。
今後、日本維新の会は結いの党と合流をする予定になっております。まだ合流をしておりませんが、結いの党の小池政就議員が、これまで質問主意書という形で、ストレスチェックという問題につきまして何度か政府答弁を求めてまいりましたので、これについて、結党、合流を前倒しする形で、同じ立場から質問させていただきたいと思います。
まず一つ目に、ストレス検査の科学的根拠につきまして、小池議員の質問主意書は三月二十八日に答弁をいただいたものなんですが、ストレス検査により、労働者が高ストレス状態にあるか否かを客観的かつ正確に判定することはできるのか、判定することができることを示す科学的根拠があれば示していただきたい、こういう質問を出しましたところ、これに対して、科学的根拠を示すことは困難であるという答弁書が出されました。
科学的根拠は、本当に何もないんですか、それとも、あるのに示さない、示せないということなんでしょうか。田村大臣からの御答弁をお願いします。
○田村国務大臣 ストレスチェックの具体的内容は、これから検討させていただくことでございますので、そういう意味で、まだ精緻なものができ上がっていないので、そのような申し方をしたわけであります。
ただ、それならば何もないのかといいますと、実際のところ、職業性ストレス簡易調査票というのがございます。これは、五十七項目で、一万二千人を対象に、平成十一年までの旧労働省の委託研究において実施したわけでありまして、この五十七項目において、統計学的に信頼性、妥当性というものは確認されております。
でありますから、今申し上げました職業性ストレス簡易調査票の五十七項目の中から、関係者の方々、専門家の方々に入っていただいて、どのようなものになるかというのをつくっていくわけでございますので、全くないというわけではないんですが、まだ具体的にでき上がっていないものでありますから、そのような御返答をさせていただいたということで御理解いただければありがたいというふうに思います。
○重徳委員 それにしても、これから全国の五十人以上の事業所全部に義務づけをするものでありますし、結局、大きな会社になればなるほど、ストレスチェックのための費用を負担するのは事業者なんですから、科学的根拠もろくに示せないようなものを義務づけるというのは余りに乱暴な議論で、今のような状況で、過去に、十年以上前にこういう統計的な妥当性みたいなものはあったんだということを言っても、実際、質問主意書なんかで出すと、いや、今の段階では何も示せませんということではなかなか、納得性が十分じゃないと思いますね。
なので、こういったことは、国民というか事業者に対して費用の負担も持たせながら義務づけをするわけですから、これが非常に的確なストレスチェックになっていくんだということも含めて、きちんと説明した上でこれを実施しなければ、これは何なんだというような、ろくな説明もないということでは本当にたまったものじゃないと思いますので、やるならば、きちんとそういったこともしっかりと示した上で行っていただきたいと思います。
次に、同じく小池議員の質問主意書で、ストレスチェックによりまして誤って高ストレス者と判定された場合、つまり、余り高いストレスじゃないにもかかわらず、高いストレスを抱えていると判定されてしまった場合に、労働者にどのような悪影響を及ぼすのかについて検証を行ったのかということにつきましても、これは行っていない、こういう答弁書が返ってまいりました。
これは本当に書面で一往復だけのやりとりなので、非常にすれ違いも多いのではないかと思うんです。少し聞き方をやわらかく言えば、本来、高ストレスと判定されるべきでない方が高ストレスと判定されてしまったようなケースも過去の研究においてあったのではないかと思いますが、どうでしょうか。その際、労働者本人にとって、何かしらの精神的苦痛というか、何かしらの影響があったのではないかとも思われるんですが、過去、どんなケースがあったのでしょうか。あったとしたら、お答えください。
○半田政府参考人 先ほど大臣からも御説明申し上げましたように、ストレスチェックの具体的内容については、今後、先ほど来御説明ございました職業性ストレス簡易調査票を踏まえまして、精神保健、産業保健の専門家の御意見を伺いながら、信頼性、妥当性、効果の高いものとなるような検討を行った上で、標準的な内容をお示しすることを考えてございます。
過去においてはそれなりの成果が出てございまして、何か不都合な判定があったという具体的なものは手元に持ち合わせてございませんが、基本的には、非常に信頼性の高い結果が得られているというふうに承知してございます。
それで、誤判定の件でございますが、これは自記式の調査票でございます。自分で書いていただくような調査票を考えてございますので、御指摘のように、回答する労働者の方の意思や意図の影響を受けることはあり得ると思います。
このため、新しい制度におきましては、ストレスチェックを、疾患スクリーニングではなくて、御本人に対してストレスへの気づきを促すものであること、そして労働者のセルフケアにつなげるものとして位置づけていること、それから労働者のストレスチェック受診義務を設けないこととしてございまして、こうした制度の趣旨を労働者の皆様にもしっかり周知して、御理解いただいた上で受けていただくようにするということで、御指摘のような問題が生じないように努めていきたいと考えてございます。
また、ストレスチェックを実施した医師などから保健指導、面接指導の勧奨を行います。その実施につなげることで、医師が、労働者との面談の中でストレスの状況を詳細に把握する、意図的な回答をしているか否かについても検証することが可能であると考えてございます。
私どもといたしましては、こういったことを考えながら、ストレスチェック制度の趣旨をしっかり周知させるように、必要な取り組みを行ってまいりたいと考えております。
○重徳委員 余りストレートなお答えではないんですけれども、質問主意書には、一言「お尋ねの検証については、行っていない。」とだけ述べられているのに対しては、少し丁寧な答弁だったと思います。
これから始まる制度について、多くの事業者や国民は、一体どういうことになるんだろうかということを不安に思っている方が大勢いらっしゃるわけですから、ぜひ、過去に行った研究成果なりそういうものが一定の信頼性があるのであれば、それなりのお答えを、質問主意書だろうと国会答弁だろうと、きちんとしていただく必要があると私は思います。
次に、四番を三番にひっくり返しますけれども、佐藤副大臣にお答えいただきたいんです。
精神科におけます薬剤投与の問題につきまして、これも小池議員が、ここにいらっしゃるわけではないので、余り小池議員、小池議員と言ってもしようがないのかもしれませんが、予算委員会の分科会でことしの初めに指摘をしましたところ、佐藤副大臣の次のような御答弁がありました。
我が国の精神科医療では、諸外国に比べまして多種類の薬剤が大量に投与されているという実態がある、この指摘は、まさに本当に我々としても大変問題があるという問題意識を持っているわけでございます、厚労省としても、平成二十二年度に行われた向精神薬の処方実態によると、九割以上のケースで二種類以下の処方である一方、一部の患者でやはり多種類の薬剤が投与されているケースがあったと。そして、それへの対応として三つある、一つは、向精神薬処方実態に関する継続的な調査を行います、二つ目は、当時はまだ二十六年度の改定前の段階だったので、二十四年度の診療報酬改定で、睡眠薬または抗不安薬を三種類以上処方した場合の減算、二割減を行う、それから三つ目は、かかりつけ医等を対象とした抗うつ薬の使い方等の研修を行いますといったような御答弁がありました。二十六年度からもさらなる減算を行ってきているというところであります。
ですから、厚労省として、多種類の薬剤が大量投与されていることについて問題意識を持っているということはわかりましたし、診療報酬上の減算とか研修を行うということもわかりましたが、逆に、こうした薬剤投与のやり方の結果、患者さん側の身にどういうことが起こっているのか、このあたりについてどういう御認識をお持ちでしょうか。薬がたくさん投与された結果、症状がなおさら重くなったとか、実はもともとそんなに大した疾患じゃなかったのに重度の精神疾患になってしまったとか、いろいろな声があるわけなんですが、厚労省としては、患者さんに立って、どのように認識をお持ちでしょうか。
○佐藤副大臣 今、重徳委員、小池議員が予算委員会の分科会でされたときの私の答弁を引いてのお話でございました。
その上で、多剤大量処方による患者への影響については、今まで厚労省の中医協なんかでも何回か議論されておりまして、一定量を超えた処方を行っても効果は乏しい一方で副作用、副作用というのは、具体的には手の震え、体の動きにくさ、眠気、だるさ等、こういう副作用のリスクはふえていく、そういう報告がある。患者への影響という点では、そういう点があるというように我々としては認識をしております。
○重徳委員 そういった副作用が患者さん側にも出てき得るというような話でございます。
小池議員の質問主意書の引用はこれで最後にしますが、政府として、精神科、心療内科、メンタルクリニックは、現状において、ストレス検査の結果が思わしくなかった者にとっての受け皿として十分信頼に足りる環境を整えているものと考えるか、つまり精神科医療というものがきちんと行われているか、受け皿としてちゃんとなっているのかという質問主意書に対しましては、ストレスチェックが「直ちに精神科等への受診につながるものではないと考えている。」とした上で、精神科医療の質向上のための「研修及び診療ガイドラインの作成等の取組を行っている」というような答弁書がございました。
どの世界でもそうですけれども、精神科医の世界だって、一部に余り適切な治療をしていないお医者さんもお見えになるという指摘がなされておりますが、大抵の方はしっかりやられていると思うんですよ。だから、問題は、研修だとか診療ガイドラインの作成等の取り組みを行っているといっても、一部の不適切な診療をしているような医師に対してそれが行き届くのかというところが問題だと思うんですが、その点をどのように認識されていますか。
○佐藤副大臣 一部の人まで行き届くのかということですが、我々厚生労働省としては、今取り上げていただいた質問主意書への答弁のとおり、平成二十年度より抗うつ薬の使い方等についての研修を開催しているわけでございます。平成二十年から、今数字が上がっているところで二十四年度までの受講者で、かかりつけ医等を中心に二万三千八百七十三人の方にこの研修を受講していただいております。
さらに、医師向けの薬物治療ガイドラインとして、これは平成二十二年から二十四年度の厚生労働科学研究に基づきまして、抗精神病薬及び睡眠薬等のガイドラインを策定いたしまして、関係学会等を通じてその普及を図っているところであります。
また、今年度から、そういうものに加えて、日本精神神経学会と連携しまして、向精神薬の薬物療法にかかわる研修制度を新たに設けることといたしました。
このような取り組みもあって、具体的に今、直近の数字では、抗うつ薬、睡眠薬を処方された人のうち、三種類以上の処方である患者の割合は低下傾向にございます。
具体的に言うと、睡眠薬の三剤以上の処方については、二〇一〇年で六・四%だったのが二〇一三年では五・九%と少し低下している。抗うつ薬も同様に、二〇一〇年で七・二%だったのが二〇一三年で六・二%。
そういう低下傾向にありまして、今後も、やはりこういうガイドラインと研修を通じて、一部にそういう徹底できないようなことのないように、向精神薬の適切な処方を推進するための取り組みをしっかりと行ってまいりたいと考えております。
○重徳委員 ぜひ、患者さんといいましょうか、ストレスチェックで受診を勧められるようなことがあった場合にも安心して受けられるような環境を、厚労省として責任を持って整えていただきたいと思います。
それでは次に、先週の参考人質疑のときに私が参考人の方から一部いろいろな御意見をいただいたことに基づきまして、幾つか質問させていただきたいと思います。
まず、ストレスチェックが、本来の使われ方とは異なる、使用者側の人事権の行使というか、おかしな形で使われるようなことがないようにするべきだということに対しまして、前回、半田部長も、労働者に受診義務は課していないんだとか、そういうことをもって不利益な取り扱いを法律上禁止しているというようなこともおっしゃいましたけれども、参考人では、近畿大学法学部の三柴教授にこのようなことをお尋ねしたところ、ストレスチェックというのは、使う人間次第という面がどうしてもあることは否めません、だから十分な啓発が必要だということをおっしゃいました。やはり必ず適切に用いられるとは、人間、限りませんというようなのが常識的な話だと思うんです。
こういう悪意がある事業者というのは目に見えてはわからないんですが、どのようにしてストレスチェックというものの使用方法を徹底していくのかということについて、田村大臣から改めてお伺いしたいと思います。
○田村国務大臣 もう何度も申し上げておりますけれども、ストレスチェックというのは、ストレスというものへの気づきということでございまして、それによってメンタルヘルス不調の未然防止、こういうものに資していきたいということであります。
あわせて、これは本人の合意がなければ事業主にも情報は個別には開示していかないわけであります。ただ、集団としてのいろいろな分析において職場環境等々の改善に資していくという部分はあるわけでありますが、ストレスチェック、面接指導、こういうものはしっかりと適切に使っていただくという理解をまず事業主にしていただかなきゃならぬわけでありまして、そういう正しい理解を我々は求めていくわけであります。ただ、どうしてもそういう理解をされない。
情報自体を漏らすのは漏らした者の責任でありますが、それを使っていろいろな不利益な取り扱いをするというのはやはり企業側に責任があるわけでありますので、そのようなことがないように我々としてはしっかり指導してまいりたい。あわせて、このストレスチェックがどういうものであるかということは理解をいただくように周知啓発してまいりたい、このように考えております。
○重徳委員 繰り返しになりますが、事業者が費用負担してストレスチェックをやらせるわけですから、本人の同意なしにその結果を知ることができないというのは、その部分だけ見れば少し理不尽な感じもしなくはないわけですよ。要は、お金を出してチェックをさせているのに、その結果は金を出している側に見せられない、法律の趣旨は、それはそれとしても、そう受けとめられることだってあり得ると思うんですね。ですから、よっぽどこれは徹底しないと、おかしな使い方が横行するようなことにだってなりかねないと思います。これはぜひしっかりと行っていただきたいと思います。
それから、過労死の関係で、全国過労死を考える家族の会代表世話人の寺西笑子参考人が、次のような御意見を述べられておりました。
労災認定というのはこれまで過労死に行われましたが、実際に認定されているのは過労死の氷山の一角であります、産業医等が第三者的にストレスチェックの結果を評価し、適切な対応を事業者にアドバイスできなければ、せっかくのストレスチェックも意味がありませんということをおっしゃいました。
私としては、では、本当に悲しいことですが、過労死という事態が起こってしまった、振り返ってみれば、どのタイミングでどのようなアドバイスを事業者に対して産業医等が行うべきだったと考えますかということをお聞きしたところ、寺西参考人は、大企業であっても、メンタルで休職していても会社都合で引っ張り出されてしまう、それも、産業医さんがそれを判断するんじゃなくて、本人任せにその判断はなっている、だから、真面目な人に限って、会社が君が必要なんだと言ってきたら頑張りますと言って出ていってしまう、こうやって、優秀で真面目な勤勉な方に限って死に至らしめてしまう、このようなことに対して、国もきちんとした対応を方針として定めていただきますよう切にお願いしますというようなお言葉がありました。
このような休職中の社員などを過労死から守るため、国として、寺西参考人が言われている国としての方針をどのように示していかれますでしょうか。
○佐藤副大臣 今回の労働安全衛生法の改正案はメンタルヘルス不調の未然防止を主たる目的とするものであって、今御指摘いただいたのは、本当に、メンタルヘルスが不調になって仕事を休まれている、その方が復職するのにどうしていくのかという、そこの問題だと思うんです。
極めて心身に不調を抱え、休職している労働者等が円滑に職場復帰しまして就業を継続できるように事業者が適切に支援していくことは、厚生労働省としても極めて重要だと考えております。
そこで、メンタルヘルス不調により休業した労働者の円滑な職場復帰を支援するための事業者における体制整備等の取り組みが適切になされるように、局長通達で、職場復帰支援の取り組みを示す「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」、いわゆるガイドラインを平成十六年から事業者に対してきちっと策定して示しているところであります。
これは、例えば病気休業中のケアであるとか、二段階目は主治医による職場復帰の可能の判断であるとか、あるいは事業者による職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成等、大体五段階に分けて、その段階ごとに事業者がどういうところにきちっと気をつけないといけないのかということをガイドラインで示しておるわけでございまして、こういう事業者による職場復帰のための支援が今後も適切に行われるように、各地の労働局あるいは監督署の方から、このガイドラインをしっかりと周知、指導してまいりたいと考えております。
○重徳委員 確かに、段階として、ストレスチェック、今回は一次予防が中心だということですが、やはりあくまで主に一次予防なのであって、当然、その後の段階の方も全体として国がサポートしていかなければならないと思いますし、そのための過労死の防止の法案でありますので、ぜひともトータルでしっかりと進めていただきたいと思います。
次に、前回、私、産業医の活用というのをもっとストレスチェック制度においてもきちんとすべきではないかということを申し上げまして、田村大臣は、指針の中で、産業医さんにやっていただくのが望ましいということも書いていきますということをおっしゃいました。ただ、産業医の方々も数が限られているわけでとか、しっかり手当てしていただける限りは産業医が望ましいと、歯切れは悪いが前向きといえば前向きというような御答弁だったという印象を受けております。
その一方で、前回、参考人の日本産業衛生学会の圓藤理事長に同様の質問をさせていただいたところ、実際には日本医師会の認定産業医は九万人在籍している、まだまだ産業保健を提供する能力は備えているんだ、だから、地域ごとのチームをつくるとか、地域産業保健センターの仕組みを活用するなど行いながら、さらに、法律上は五十人以上の事業場というふうに限定していますが、確かに、毎月一回五十人未満の事業場まで行くのは大変かもしれないけれども、それに準ずる形で産業医が勤務することは十分可能であるということをおっしゃっていました。
改めて、産業医をもっと活用できるのではないか、積極的に活躍していただくべきではないかという観点から田村大臣に御答弁いただきたいんです。そもそも、産業医の意義、能力をどのように評価されているのかなと思っています。大臣、前向きに評価されているんでしょうか。何となく切れが悪かったものですから、こういうような、九万人もいるんだからもっともっと使ってくれとおっしゃっている立場の方も踏まえて、改めて御答弁をお願いします。
○田村国務大臣 産業医の方々は、我々は大変期待をいたしております。ただ、産業医の方々もいろいろとお忙しいという現状があることも事実であろうというふうに思います。
五十人未満の小規模事業場に関しては義務づけていないわけでありますけれども、そういう意味で、今回もチェックリスト等々は義務づけなかったわけでありますが、ただ、一方で、やはりメンタルヘルス不調を未然に防いでいくということは重要であるわけであります。そういう意味からいたしますれば、ストレスチェックをしっかりやっていくということのみならず、例えば従業員の方々に対する研修でありますとか、また相談窓口の設置でありますとか職場復帰支援、こういうものもやっていただかなきゃならぬ。そういうようなメンタルヘルスの総合的な対策というものはやはり組んでいただかなきゃならぬ。
そこで、いつもの話なんですけれども、こういうことをやっていくためには、例の産業保健総合支援センター、三つの機関を一つにいたしましたけれども、これが小規模事業場等々に対する地域窓口というものを設置する中において、今言われた産業医に関しても、産業医の有資格者に登録をしていただくということにしております。その中において、面接指導を実施していく体制の整備でありますとか、あと管理監督者の方々向けのメンタルヘルスの教育でありますとか、事業主やまた労働者の方々、こういう方々に対してのメンタルヘルス等々の相談の体制、こういうものもしっかり整備していくことが必要でありまして、私は、決して産業医の方々をないがしろにしておりません、御活躍いただけるような環境を整備していければ、このように考えております。
○重徳委員 最後に、同じ日本産業衛生学会から、前回、参考人の意見陳述のときに資料として提言がなされました。ストレスチェックについて得た情報を、プライバシーに配慮しながら、産業医さん、産業保健専門職の方が適切に加工して事業者に伝えていく、そういう体制が必要だというような指摘があったわけなんですが、厚労省として、こういった提言に対しては、どのように捉えて対応していかれるのでしょうか。
○半田政府参考人 委員御指摘のとおり、メンタルヘルスに関する情報というのは極めて機微の情報であると考えてございまして、慎重な取り扱いが必要だと考えてございます。
前回も御説明申し上げましたとおり、ストレスチェック制度では、その結果は労働者に直接通知されて、労働者の同意なく事業者には提供されない仕組みとする。加えまして、これも前回御説明いたしましたが、実施の事務に従事した者に対してもきちっとした守秘義務を課しているところでございます。
また、「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン」というものがございまして、これを踏まえて、私ども、「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」、ちょっと長いタイトルになってございますが、こういう通達を出してございます。この中で、診断名、検査値等のいわゆる生データは産業医などの産業保健従事者に取り扱わせることといたしまして、他の者に扱わせるときは適切に加工することが望ましいとしてございます。生データがそのまま事業者に提供されることのないように指導することとしてございます。
こういった制度の導入に当たりましては、事業者や産業医、それから外部のメンタルヘルスサービス機関などのストレスチェックや面接指導の実施者に対しまして、ストレスチェックなどの実施方法に関する研修などをしっかりやっていきたいと思っています。こうした制度の趣旨、内容をしっかり周知するとともに、適切に実施されていない場合には、事業者やストレスチェックの実施者に対して、法令や留意事項に基づいて確実に実施するよう指導するように努めてまいります。
○重徳委員 ストレスチェックについては、さまざまな義務づけの前に、不安の声だとか心配の声が寄せられておりますので、事業者への趣旨の徹底、産業医さんの活用を含めて、しっかりと国として責任を持って進めていただきたいと思います。
以上で終わります。