○谷委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 社会保障を立て直す国民会議の重徳和彦です。
先日、六月五日に、谷委員長を始め委員の皆さん方とともに、MRJ、三菱航空機の製造現場を視察に行ってまいりました。半世紀ぶりの国産機の製造、開発ということですから、本当にさまざま御苦労が多いということを実感してまいりました。
実は、日本には、航空機の製造、開発を促進する法律が一応あるんですよね。航空機工業振興法という法律があります。だけれども、これは非常に限定されているんです。国際共同開発に限定されているんですね。これは、国内産業の特定の企業を応援するということは自由貿易の競争を阻害する、こういう側面があるので共同開発に限定する、こういう法律になっているということなんです。
しかし、聞くところによりますと、例えばエアバス社は、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、こういった国が有利な融資を行っていたり出資を行っていると聞きます。また、アメリカの軍需産業でも、実質航空機産業を支援するという形につながるものになっていると思います。
確認ですが、こういったことはなぜ行われているんでしょうか。
○渡辺政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の国内産業支援とWTO協定の関係でございますけれども、WTOに補助金協定というのがございます。あらゆる場合に禁止される補助金、いわゆるレッドと言われる補助金と、それから、他国に悪影響を与える場合にWTO協定違反になる、いわゆるイエローという補助金がございます。
レッドに該当するものとしては、輸出補助金、それから国内産品の優先補助金がございます。
委員御指摘のエアバスへの支援でございますけれども、これはいわゆるイエローの補助金に該当いたしまして、特定の企業や産業のみを対象とし、補助金の供与の結果、他国の国内産業に対する損害をもたらすなど、他国に悪影響を与えるものと認められれば、WTO協定違反となるということでございます。
現に、欧州のエアバスへの支援につきましては、米国がWTOに提訴いたしまして、現在、WTOの紛争手続で二〇〇四年以降争われているところでございます。
それから、御指摘の軍需産業への支援ということでございますけれども、ガット二十一条、安全保障のための例外というのがございます。自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要と認める武器弾薬、軍需品取引などに関する措置をとることができると規定がございますので、これに該当すれば例外となるということでございます。
○重徳委員 安全保障の例外というのは一つあるということでありますが、欧州のエアバス支援というのは、いわば提訴されること覚悟で戦ってる、こんなことだと思います。まあ、いい悪いは判断はあると思いますけれども、こういう国もあるということが今確認できました。
そんな紛争になる以前に、私は、WTOのルールに違反する、あるいは違反するおそれがあるなんという領域まで行かなくても、もっと一般に、航空機をもっと速く、高燃費でもっと静かに飛ばすための基礎研究、基礎研究は、これは特定性とか他国への悪影響というものが直接あるとは言えないと思いますから、WTOルールにも抵触しないと思うんです。
この航空機産業振興の基礎となる技術開発支援、基礎研究というものをもっと積極的に行うべきじゃないかと思うんですけれども、現状を含めて、お答えいただければと思います。
○上田政府参考人 お答え申し上げます。
経済産業省では、エンジンの燃費向上のための高耐熱複合材に関する技術でありますとか、電気推進に必要な技術など、次世代航空機に必要となる基盤技術の研究開発に対して支援を実施をしております。
また、航空機を主たる対象にしたもののほか、構造材料の開発など、航空機産業にも役立つ汎用技術の開発に対する支援も実施をしております。
さらに、本年一月、経済産業省とボーイング社との間で将来の航空機に向けた技術協力に関する合意を締結するなど、日本の企業が既に有しているすぐれた技術の航空機への適用拡大を目指して、海外メーカーと協力促進などを行っているところでございます。
引き続き、こうした取組を通じて、我が国の航空機産業の拡大と競争力強化に向けて、しっかり取り組んでまいりたいというぐあいに考えております。
○重徳委員 しっかりと応援していくということではありますけれども、今の御答弁ですと、基盤技術はやっています、それから、航空機に限らず役立ちそうな技術も支援していきますということでありますけれども、明確に、国内の航空機産業を振興していくんだということを、もっとはっきりとさせていくべきではないかと思うんですね。
何か、何となくやっていると言うと言い方は悪いですけれども、戦略がはっきりしないわけであります。
防衛産業を支援することだって大事なことだと思うんですね。やはり、国内で戦闘機をつくれないから、FMSでやむなくアメリカからF35を購入せざるを得ない状況ですね。そうすると、何か、爆買いとか、アメリカに依存しているとか、こんな批判すら受けてしまうということでありますから、もっと航空機産業をしっかりと、明確に、支援していく姿勢を国として示すべきではないかと思います。
現に、国内では、例えばJAXAでは、ソニックブームと言うらしいんですけれども、超音速の飛行で衝撃波によって物すごい爆音がするんですけれども、その爆音を低減させる、ソニックブームを低減させる技術も、これは世界トップレベルだと聞いております。
こういった技術も、せっかく持っているんだから、明確にこれを、国産の航空機、戦闘機だっていいです、そういったものに生かす、こういったこともはっきりさせるべきじゃないかと思うんです。
だけれども、そのための法律すら今はないということでありますが、きょうは、経産省、滝波政務官にお越しいただいております。お忙しいところありがとうございます。何か、こういった法律を、これは一議員でもあられます滝波政務官、政府として、あるいは国会として、こういった法律の整備というものは必要じゃないかと私は思うんですけれども、どのような御見解をお持ちでしょうか。
○滝波大臣政務官 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、航空機産業の育成のためには、基礎技術の育成から出口としての産業化まで、一貫した支援が必要であると認識してございます。
こうした発想のもと、関係省庁共通の認識を持って、航空機産業の発展に向けて統合的に取り組むため、平成二十七年に、内閣官房取りまとめのもとで、関係省庁で航空産業ビジョンを策定してございまして、これを戦略的に、各省庁で密接に連携をしながら、それぞれの支援策を講じているところであります。
具体的には、経産省では、先ほど政府参考人からも御答弁させていただきましたが、電動推進に必要な技術の研究開発支援などを行っているほか、ほかの省庁でも、例えば内閣府では、次世代航空機への適用に向けたさまざまな材料の研究開発に取り組んでいると承知しておりまして、こうした関係省庁の取組の状況については、定期的に情報交換、意見交換を行っているところであります。
御指摘のソニックブームの関係、JAXAの方で研究をしておりますとか、また、構造技術なんかについてのこういった研究開発、これは、さまざまな、超音速飛行も含めての先進的なものについての重要な要素であるとは認識してございます。
それで、現時点で例えば国内企業が超音速旅客機の開発に取り組んでいる事例というのはまだちょっと承知してございませんけれども、関連する技術の開発が進展すればビジネスとして成立することも容易になる、こういった効果もあるかと思いますので、しっかりと関係省庁また企業等とも連携をしながら、航空機産業の育成に戦略的に取り組んでまいりたいと思ってございます。
○重徳委員 法整備の必要性についてはどうお考えですか。
○滝波大臣政務官 お答えします。
航空機産業における支援、航空機工業振興法というものがございますけれども、このほか、先ほど申した航空産業ビジョンなどについて、各省庁連携して支援を行っているところであります。
今、現時点でちょっと航空機の研究開発等に特化した法律が必要であるとは考えておりませんけれども、例えば研究開発税制など、要件を満たせば航空機産業も対象となる支援策も講じてございますし、さまざまな予算措置を含めて、現行の法律、予算税制をしっかりと活用して、航空機産業に対して戦略的に支援をしてまいりたいと思ってございます。
○重徳委員 今は滝波さんは政府の方ですから、政府の公式答弁となると、そういう御答弁になるんじゃないかと思いますけれども、やはりこれは、立法府に置かれております我々としても、国の進むべき方向として、航空機産業支援というものを明確に立法するべきではないかと思っております。
これは、今、経産省の御見解を中心に述べていただきましたけれども、やはり国交省も大いに関係あることでありますね。省庁横断で、国を挙げて応援していく必要があると思っております。
先般、四月にも私、この委員会で触れさせていただいたんですが、航空機も、MRJをつくっている三菱航空機、こういう一定の規模の会社のみならず、最近ではドローンでも、有人ドローン、人を乗せたドローン、これも技術的にはもうできていると思います。それから、小型の飛行機もベンチャー企業がつくる技術を持っています。こういうところを国交省としても、耐空証明なんかをきちっと出さなきゃいけないのは国交省が審査するわけですから、国交省も応援いただけないかと思うんですね。
四月の石井大臣からの御答弁では、昨年十二月にできた官民協議会のロードマップの目標においては二〇二三年の事業スタートを目指す、こういう御答弁をいただきました。
二〇二三年、もう四年後ですから、耐空証明の審査基準、こういったものも準備しておかないと、せっかくつくった飛行機が実際実用化できるかどうかもテストできないということになります。耐空証明をとる前に試験飛行も必要ですから、そのための体制といいましょうか環境を国として整えていくべきじゃないかと思います。
大臣、現状、事業者の準備状況も含めてですけれども、国として、いつでもチャレンジを待っていますよ、こういう姿勢で行っていただきたいと思うんですけれども、現状はどうなんでしょうか。
○石井国務大臣 有人ドローン、いわゆる空飛ぶ車の実現に当たりましては、その実現に取り組む事業者の技術開発や構想の具体化と並行いたしまして、機体の安全基準の整備等の安全確保や離着陸場所の確保等といった環境整備が必要となります。
こうした観点から、昨年末に空の移動革命に向けた官民協議会におきましてロードマップが取りまとめられまして、二〇二三年の事業スタートを目標とされたところであります。
現状といたしましては、事業者がまずは無人の状態で飛行方法や飛行場所を限定して安全性を担保することによりまして、耐空証明を受けずに飛行を行うための航空法第十一条ただし書きによる特別な許可を受けて試験飛行を行う制度は整っておりまして、順次、試験飛行が行われております。
国土交通省といたしましては、ロードマップに掲げられた目標を踏まえつつ、空飛ぶ車の実現に向けまして、技術開発の状況に応じて、審査基準の策定を含めた必要な環境整備について、引き続き官民で連携を図りながら取り組んでまいりたいと考えております。
○重徳委員 聞くところによりますと、耐空証明審査基準、ヨーロッパではもう昨年出されている、そう聞いております。あと、ドバイなんかも今月には出すと。かなりスピード感を持って各国取り組んでいると思います。国も、官民ともに力を合わせてということでありますが、日本もしっかりと、もっとスピードアップして取り組んでいただきたいと思います。
最後に、この間、視察に行かせていただきましたMRJの開発に関連して。
やはりこれは、MRJ開発、大変苦労していて、型式証明がなかなかとれない、納期ももう現時点で七年おくれているということなんですが、半世紀ぶりの飛行機製造ですから、人材もノウハウも大変不足して苦労してきたということなんですが、このMRJの型式証明を取得するための三菱航空機さんのノウハウとか国の検査官の知見、こういったものをどのように確保したのかという事実確認と、それから、今後、今お話し申し上げましたように、航空機産業をどんどんと推進していかなきゃいけない、こういう中で、航空機、それから空飛ぶ車、これを実用化、量産化していくために、型式証明、耐空証明、必要なノウハウ、検査官の人員、どのようにふやしていくのでしょうか。このあたりのお考えをお聞きしたいと思います。
○蝦名政府参考人 お答え申し上げます。
国土交通省では、約半世紀ぶりの国産旅客機となりますMRJの安全性審査を行うために、開発拠点である県営名古屋空港に航空機技術審査センターを新設するとともに、開発の進捗に合わせて審査体制を大幅に拡充してまいりました。
また、安全性審査を行う職員として、航空機開発経験者や航空機運航経験者を採用するとともに、宇宙航空研究開発機構、JAXAや航空会社を始めとする研究機関や民間企業との活発な人事交流を行うことによって、専門知識を有する人材を確保してまいりました。
さらに、MRJに対する安全性審査能力向上を図るために、米国の航空当局と連携して専門研修を拡充するとともに、米国、欧州の航空当局の安全性審査担当者と密接に連携して安全性審査を実施してまいりました。
一方、今後、MRJに続く国産旅客機やいわゆる空飛ぶ車など、我が国の航空機産業の発展のためには、官民双方にとって、航空機の設計技術の能力を有する人材のさらなる育成や審査ノウハウの継承は非常に重要な課題であると認識をいたしております。
このため、民間におきましては、外国人技術者の採用と既存日本人技術者への知識経験の伝承、国においては、研究機関や民間企業との人事交流や技術者の中途採用、専門研修の充実等を通じて、引き続きその対応を図ってまいります。
国土交通省では、今後とも、官民が一層協調してノウハウの継承や人材確保に努め、今後の新たな航空機開発に向けて的確に対応してまいりたいと考えております。
○重徳委員 これで終わりますけれども、航空機産業は本当に、基礎研究から人材、ノウハウ、大変長期の期間、戦略性が必要だと思います。こういったことを、国としての方向性をしっかりと定めていく必要があるということを最後に申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○谷委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
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