○浜田委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。よろしくお願いいたします。
去る六月二十六日の金曜日、夜中、私はテレビ朝日の「朝まで生テレビ!」という番組に出演をさせていただきました。御存じのとおり、夜中の一時二十五分から三時間、朝方までしゃべり続けるという番組でございます。
番組が始まる一時間前に、打ち合わせでテレビ局の方に伺ったんですが、驚くべきことが起こりました。控室に行きましたら、そこには、本来、各党全ての若手議員が集まって、若手議員が日本を変える、こういうテーマの議論でありました。そのはずだったんですが、行ったら、民主党、維新の党、共産党、元気の党、この議員しかいないわけですね。何と、自民党、公明党の、与党の議員さん方が来ていなかったということであります。
田原総一朗さんもえらい怒ってしまって、番組が始まったら最初に、異例だと思いますが、プロデューサーを名指しして、説明をしろ、何でこんな状況になっているんだと言いますと、数日前から自民党の議員さんたちに打診をして一度は番組出演オーケーをもらっていたんですが、後になって、その日は地元の予定が重なっていたことを忘れていたということですが、そんな金曜日の夜中から土曜日の朝方にかけて何の地元の用事が重なっているんでしょうか。よくわかりません。
そして、最後に、出演する予定だった方も、直前の午後八時になって、体調不良になって夜中の番組への出演はとてもかなわないということで欠席されましたという説明がございました。これは、体調が悪くなったことそのものは場合によってはやむを得ないかもしれませんけれども、とてもプロの政治家の仕事の仕方とは思えませんね。
そして、自民党内ではマスコミを潰すとか懲らしめるとか、そういう威勢のいい発言がある一方で、せっかくその番組に、ほとんど自由に何でもしゃべれる番組ですよ、好き放題言いたいことを言えるような。客観的にこれは、そういうところから逃げているとしか言いようがありません。こんなことをやっていたら、それは自民党は感じ悪いよねと、自民党の中からも外からも言っている方もいらっしゃいますけれども、どんどんそういう状況が続くんじゃないかと思います。
ここで私ちょっと質問させていただきたいんですが、今回の法案、確かにこの第一委員室の国会審議はずっと精力的に、八十時間を超えたんでしょうか、やっておられると思います。中身はともかくとしてやっておられます。だけれども、表で、それはテレビ番組でも構いませんが、それからネット番組で安倍総理自身も始めたとはいいますが、各地元で与党の議員さんたちが表に出てどんどん、今この法案が必要だ、こういうような訴えを組織的、戦略的に政府・与党が一丸となってやっていくというようなことをどの程度やっているんでしょうか。まずお聞きしたいと思います。
○岸田国務大臣 済みません、党のことですので、今、私、直接担当しているものではありませんが。
党の方針としまして、各所属国会議員は地元でさまざまな集会を開催し、あるいは街頭に立ち、今回の平和安全法制について国民の皆様方に御理解いただくべく、丁寧にこういった取り組みを続けていくべきだという方針のもとに、各国会議員がそれぞれの地元で努力をしていると承知しております。
○重徳委員 全然努力不足という印象ですよね。本当に、国民的な理解が全然広まっていないわけですよ。これは別に国会審議だけじゃないと思います。やはり私たち政治家は、テレビ、マスコミを通じてのみでなく、地域ごとで自分たちの選挙区を抱えているわけですから、こういった努力をもっとしていかなければならないと思いますよ。自民党は、そういう意見があるのであれば、政府・与党の案をちゃんと説明する。
そして、本日午前中、私ども維新の党は独自案を国会に提出いたしました。この案は、政府案の非常に曖昧な存立危機事態に基づく集団的自衛権は認めない、こういう案でございます。日本が武力攻撃を受ける可能性がたとえゼロの場合も、そういう場合にも自衛隊の海外派兵を認める余地がある、こんな曖昧な法案では国民的な理解が広がるはずがないという認識に立ちまして、独自案を出させていただきました。そして、グレーゾーン事態に対処する領域警備法案につきましては、民主党と共同提案をさせていただきました。
とにかく憲法適合性にこだわった案であります。政府案を違憲、違憲というふうにおっしゃる憲法学者の皆さん、歴代法制局長官の皆さん方も、維新案については合憲である、このような評価をいただいております。
このような中で、先週から、私どもが独自案を検討しているということにつきまして、そして提出をするということにつきまして、安倍総理も、それから中谷大臣も、敬意を表したい、大きな政策の方向性は一致している部分もあるんじゃないかとか、共通する部分もあるということをおっしゃいます。敬意を表するとおっしゃいます、提出することについては敬意を表しますと。ただ、中身についての評価は何もされていません。結局、政府案は通します、こういうことでは、そんな敬意なら別に要りませんよ。
私たちは、維新独自案、これは必ず国民の皆さんからも理解される、政府の案よりも数段すぐれた案だと思っております。政府案は違憲でも維新案は合憲だと言っている方が大勢いらっしゃいますが、どこがどう政府案は違憲で、そして維新案はどこがどう合憲かというふうに言われている方がいると認識されていますか。
○中谷国務大臣 維新の党が、多くの論点がありますけれども、党内で議論をされてまとめられて提案をいただき、また国会の方でもきょう提出されると聞いておりますけれども、これは大変いいことだと思います。非常に議論に深みを与えるということで、国会に両案を並べて議論するということは非常に、安全保障は超党派でやっていくべきでございますので、それぞれの政党ごとにこれをもとに協議も重ねられたらいいと思います。
私も報道で拝見いたしておりますけれども、共通の部分もございます。憲法的に見ましても、政府といたしましては、個別的自衛権で対応できない部分を、国際法的には集団的自衛権でありますが、あくまでも我が国の存立にかかわる昭和四十七年の見解をもとに憲法の範囲内で我が国防衛の必要最小限度という点で言っている部分と、維新が言われている自衛権の再定義というような部分におきましてはある程度共通の部分もあるのではないかというふうに見ておりますが、これから正式に提案されましたらよく検討させていただきますけれども、国会に提案されて議論されるということにつきましては心から評価をいたしたいと思っております。
○重徳委員 質問にきちんと答えていただきたいんですが。
これまで、憲法学者も歴代法制局長官の方もそれぞれいろいろなところでコメント、発言されていることは御存じだと思います。政府の案はこういう点が違憲で、それに対して維新の案はこういう点が合憲だということもちゃんと耳に入っていると思いますし、まして、きのうちゃんと通告しましたから、これに対して答えられないということはないと思います。どう認識されているんでしょうか。
○中谷国務大臣 一般の方々の見解については政府の立場でお答えすることは差し控えますけれども、政府といたしましては、平和安全法制、これは、累次説明をしてまいっておりますとおり、従来の政府見解の基本的な論理は最高裁判決の考え方の範囲内のものでありまして、違憲との御指摘は当たらないと考えております。
維新の党の案につきましては、まさにきょう国会に提出をされて、この委員会にこれからかけられるということでございますので、その評価については今後議論がなされるものと考えております。
○重徳委員 こういうやりとりだからずっと、八十時間審議しても全然かみ合わない、すれ違いの答弁ばかりなんですね。ですから……(発言する者あり)やじには答えませんが、この自民党のやじを何とかしてください。もういいかげんにしてほしいです。
私の質問にちゃんと答えてほしいんですよ。今までどういう批判が集まっているか、どういう批判が寄せられているというふうに認識しているかということであって、それに対して批判が当たる当たらないということを聞いているわけじゃないんですよね。
では、次にお聞きしますが、これまで政府の案は八十時間、これが十分かどうかというのは与野党で受けとめ方は全く違いますけれども、時間数だけは進んだと思います。これから維新の独自案と政府案を比較対照したりなんかしながら審議を進めていきますが、このために必要な審議時間は何時間だとお考えでしょうか。
○中谷国務大臣 これは法案の審議のあり方でございますので、国会が御判断をされる事柄でございますので、政府としては申し上げる立場でもないわけで、差し控えさせていただきます。
いずれにいたしましても、政府といたしましても、御党等が国会に提案をされましたら、国会において法案についてしっかりと議論していくということが重要であると考えております。
○重徳委員 国会において決めていくということですが、であれば、この国会、特にこの委員会の理事会において必要な審議時間をきちんと確保していただきたいんですよ。
というのも、恐らく政府・与党は、敬意を表するとかなんとか言いながら、別に維新が独自案を出そうと出すまいと政府案を採決するべきときに採決するんだ、もう既にそういうことをかなり責任ある立場の方がおっしゃっているわけですから、これはもとから政府案しか通す気がないということだと思いますよ。そして、維新案なんかは、どうせ通さないんだからそんなに審議時間を確保する必要もないという御認識なんじゃないかなと、私は非常に強い疑念を持っております。
私たちは、維新の独自案こそ通すべき案だと考えているんです。そして、政府は政府案を通したいから、それに対して必要な審議時間を確保するわけでしょう。私たちの独自案は通すつもりでやっているわけですから、それに応じた、見合った審議時間を確保していただきたいんです。こういう思いでやらせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
現時点で、今の大臣の、まだ提出したばかりだからということで、先ほど辻元委員が撤回するべきだとおっしゃいましたが、私は、単に撤回するだけじゃなくて、維新の独自案と差しかえるべきだと考えております。
そして、なぜそれが必要なのかということについても、これから、メディア、国会審議を通じてのみじゃなくて、私どもの地元、全国キャンペーンを、九月いっぱいまで国会が延長されているわけですから、この夏、一夏じゅう全国で、私どもの案がどれほど政府案と異なり、そして憲法適合性にこだわった案かと。政府案はさんざん言われておりますが、私どもの案は現実にも向き合った対処を考えつつ憲法適合性もきちんとしている、こういう案であるということを国民の皆さんが理解する、これも十分な時間が必要だと私は思っております。国会審議、そして国民への周知、浸透というもの、大変重要な法案でございますので、いずれの意味においても時間をしっかりと確保していただきたいと思います。
さて、それでは少し中身に入らせていただきますが、まず、後方支援についてお尋ねをしてまいります。
これまでも御議論があったかと思いますが、確認的になると思いますけれども、我が国の安保法制におきまして後方支援という概念があります。これは、国際法上はそんな概念は存在しない、ただ、我が国憲法との関係でつくり出された概念であるという認識でよろしいでしょうか、岸田大臣。
○岸田国務大臣 国際的には、一般に、補給、整備、輸送等の支援活動を後方支援、ロジスティクスサポートと称している、このように承知をしております。
そして、国際法との関係で申し上げるならば、国際法における武力行使とは、一般に、国家がその国際関係において行う実力の行使をいうところでありますので、我が国が関連する法律に基づいて行う後方支援それ自体はこれに該当しないと認識をしております。
○重徳委員 それではお聞きしますが、一九九九年に周辺事態法が制定されたときに初めて後方支援という概念が法律上登場したと思いますけれども、このときは輸送、補給、医療などに限定された業務が後方支援だったかと思います。このときの理論的な根拠、また憲法との整合性について御説明を願います。
○中谷国務大臣 後方地域支援は、その内容が補給、輸送であり、戦闘行為自体に当たるものではなく、また、後方地域、すなわち、我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲において行うものでありまして、このような規定によりまして米軍の武力行使との一体化の問題を生じることがないということで担保して実施をされたものでございます。
○重徳委員 このときも相当な議論があった上で後方支援に規定される業務というものが定義づけられたかと思うんですが、今回、後方支援として新たに、弾薬の提供、発進準備中の戦闘機への給油が追加をされました。いわば武力行使、戦闘行為、本丸にまた一歩肉薄するようなことになったかと思うんですが、これは、これまでの法律の規定の仕方、あるいは憲法との関係から、どういった違いがある、どういう関係性だというふうに、九九年の法律の規定から今回の規定ぶりへ、どのように整合性のある説明になるんでしょうか。
○中谷国務大臣 周辺事態法の後、二回、特措法を制定いたしまして、同じように武力行使との一体化がないというようなことで対応を実施したわけでございますが、今回の法改正におきましては、いわゆる他国の武力行使との一体化につきまして、これまでの自衛隊活動の実経験、諸外国の活動の実態、現実に即して検討を行った結果、現に戦闘行為が行われている現場以外の場所で行う補給、輸送などの支援活動は他国の武力行使と一体化するものではないという判断をいたしました。
具体的には、重要影響事態法において、我が国が行う後方支援活動等は現に戦闘行為が行われている現場では実施しないということを明記いたしました。また、法律上、部隊が活動を円滑かつ安全に実施することができるように活動の実施区域を指定することといたしておりまして、今現在戦闘行為が行われていないというだけではなくて、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為がないと見込まれる場所を実施区域に指定することになります。万が一、状況の変化で自衛隊が活動している場所が現に戦闘行為が行われている現場となる場合は活動の中止、休止を行うことになりまして、こういった面におきましては、非戦闘地域で武力行使との一体化にならないといった原則を引き継いで実施しているということでございます。
○重徳委員 武力行使との一体化になる、ならないというのが一番わかりやすい言葉上での線引きのように感じますが、しかし、現に九九年のときに行われた業務が今回格段に広がっていくということになるわけだし、その区域の指定の仕方、戦闘行為あるいは休止、どういうふうな運用をするかということも随分変わってきております。ここがやはりわかりにくい部分でありまして、これは横畠法制局長官にちょっと確認したいんですが、一体、憲法との関係で、後方支援というものはどのような論理で認められる、認められないということになるんでしょうか。
今の中谷大臣の説明だと、やっているうちに、これも可能だ、これも安全だ、だからやっちゃおうというふうに聞こえるわけなんですが、どこまでが可能で、どこからはだめなんだというのはどのように説明されるんでしょうか。
○横畠政府特別補佐人 いわゆる他国の武力行使との一体化の考え方は、憲法第九条により武力の行使を行うことが許されない、そういう場合におきまして、自衛隊が武力の行使を行う他国の軍隊に対して補給、輸送等の支援を行うことは、それ自体は直接武力の行使を行う活動ではありませんが、当該他国の軍隊が行う武力の行使への関与の密接性などから我が国も武力の行使をしたとの法的評価を受ける場合があり得るとするものであり、そのような武力の行使と評価される活動を我が国が行うことはやはり憲法第九条により許されない、そういう場合が前提でございますので、憲法第九条により許されないという考え方でございます。これは憲法上の判断に関する法的な評価の問題でございまして、他国がどのように評価するかという問題とは別でございます。
我が国の活動が他国の武力の行使と一体化するかどうかの判断につきましては、従来から、戦闘活動が行われている、または行われようとしている地点と当該支援等の行動がなされる場所との地理的関係、二つ目として当該行動等の具体的内容、三つ目として他国の武力の行使の任に当たる者との関係の密接性、四つ目として協力しようとする相手の活動の現況等の諸般の状況を総合的に勘案して個々的に判断するというふうにしていたものでございます。
しかし、自衛隊の支援活動を実際に実施する都度一体化するか否かの判断をするということは実際的でないことから、平成十一年の周辺事態安全確保法においては後方地域、それから平成十三年のテロ特措法及び平成十五年のイラク特措法におきましては同様のいわゆる非戦闘地域という要件を定めて、そこで実施する補給、輸送等の支援活動については、類型的に、他国の武力の行使と一体化するものではないという整理をしたものでございます。
その考え方は、戦闘行為が行われている場所と一線を画する場所で行うという先ほど申し上げた地理的関係を中心といたしまして、活動の内容につきましては、補給、輸送といった戦闘行為とは明確に区別することができる異質の活動であること、関係の密接性につきましては、自衛隊は他国の軍隊の指揮命令を受けてそれに組み込まれるというものではなく、我が国の法令に従い、みずからの判断で活動するものであるということ、四つ目の協力しようとする相手の活動の現況につきましては、まさに現に戦闘行為を行っているものではないということを考慮したものでございます。
今般の法整備におきましては、その後の自衛隊の活動の実経験、国際連合の集団安全保障措置の実態、実務上のニーズの変化等を踏まえまして、支援活動の実施、運用の柔軟性を確保するという観点から、これまでの、活動が行われる期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域という一体化の回避と安全の確保の両方を兼ねた仕組みを見直しまして、自衛隊の安全を確保するための仕組みとは区別して、純粋に憲法の要請である一体化を回避するための類型としての要件として、我が国の支援対象となる他国軍隊が現に戦闘行為を行っている現場では支援活動を行わないということ、それから、仮に状況変化によってそのような戦闘行為が行われることになる場合には直ちにそこでの活動を休止または中断するということで再整理したということでございます。
〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕
○重徳委員 懇切丁寧な説明をありがとうございます。
結局、日本の自衛隊がどこまでのことができるのかということを、今回は特に非常に大きな法案なものですから、そこに乗じてどんどん広がっていくという感がやはり拭えないわけでありまして、この議論もずっとこの委員会でされているわけなんですけれども。維新の独自案におきましては、そういった本当にどこまでが必要なのかという実態のこともさることながら、法的に安定的に線引きをするということがやはり必要だろうということから、もっとシンプルにわかりやすい線引きを行っていこうということで、これまでどおり弾薬の提供などは認めないという法案になっているわけでございます。
もう一点、再三議論になっておりますホルムズ海峡の機雷掃海の関係でございます。
これは以前、中谷大臣に確認したとおり、海外派兵なわけでありまして、非常に大きな風穴をあけることになるわけでありますが、そこについて何遍聞いてもしっくりした説明がないというのが、説明不足、説明不足、わからない、わからないと言われている要因でございます。
改めてもう一回聞きますが、今般の安保法制の見直しに必要だと言われている東アジアの安全保障環境の変化とホルムズ海峡での機雷掃海に何の関係があるんでしょうか。
○中谷国務大臣 まず、先ほど発言の中で、非戦闘地域を引き継いでと発言しましたが、これは武力行使との一体化がないという原則を引き継いでいるということで、訂正させていただきます。
今回の状況の変化におきましては、まず、パワーバランスが変化してきた。東アジア等におきましては、北朝鮮また周辺における中国軍やロシア軍の活動の活発化、東シナ海、南シナ海の中国の活動の活発化、中東、北アフリカにおける邦人のテロの犠牲など、ISILを初めとした暴力的な過激主義の台頭。これは東アジアのみに焦点を当てたものではなくて、あくまでも我が国を取り巻く安全保障環境が大きく変化しておりまして、今や脅威は容易に国境を越えてやってくる時代となっております。もはやどの国も一国のみでは自国の安全を守れないということも説明をしております。
ホルムズ海峡を擁する中東地域を取り巻く安全保障環境もますます厳しさ、不透明性を増しておりまして、中東地域のみならず、国際社会の平和と安定を脅かす事態が生起しないとは断定ができない。東アジアから地理的に遠く離れたホルムズ海峡で起こった事態でも我が国の存立を脅かすといったものが起こり得るということでございまして、累次御説明はしておりますが、中東におきましては、エネルギー、石油等の供給が滞ることによって、単なる経済的影響にとどまらず、生活物資の不足、電力不足によるライフラインの途絶が起こることなど、国民生活に死活的な影響、すなわち国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が生じるかというようなことを総合的に判断いたしまして、ホルムズ海峡で機雷の敷設を契機として存立事態に該当する場合もあり得るというふうに考えているわけでございます。
○重徳委員 ここは、恐らく永久に説明し切ることのできない部分だと思います。これは、一つ非常に細い線でつながっているホルムズ海峡の論、いわば限界事例のようなものなんですね。これを幾ら説明しようとしても難しいと思います。
そして、もっと深刻なのは、非常にニッチというかナローパスと言われる、こんな事例が本当にあり得るのかという説明を延々と繰り返さなきゃいけないその背景には、実は、どうにでも解釈できてしまう法制上の問題点があると思うんです。というのは、わかりやすく言えば、典型的に説明されているホルムズ海峡の事例というのは、日本が武力攻撃を受ける可能性はゼロなんですよね、武力攻撃を受ける可能性は。ゼロなんだけれども海外派兵ということを行おうという、非常に細い線なんですよ。
だけれども、これは一般的に考えてみれば、武力攻撃を受ける可能性はゼロ、もちろん他国はやられているんですが、日本が受ける可能性がゼロなのに、日本は海外派兵、つまり武力行使の目的を持って他国の領土、領海、領空に行くということが許される。これは、今のホルムズ海峡事例などというのは実際にこのとおり起こることはほとんど可能性が低いというふうに思いますが、ほかのいろいろな事例が考えられるわけでありますし、そして何よりも、必要最小限度の説明も何度もされていますが、新三要件における第三要件の必要最小限度という部分以上に、均衡性という点で問題があるんじゃないかと思うんです。
武力攻撃を受ける可能性がゼロなのに我が国が、自衛隊が海外派兵、武力行使を行う、ここは明らかに均衡を失していると思うんですが、ここの部分はいかがお考えなんでしょうか。
○中谷国務大臣 機雷の除去というのは武力行使の一環としてみなされて、停戦前の処理におきましては武力行使となります。
したがって、我が国に対する武力攻撃が発生していない場合におきましても国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であることを前提とするならば、敷設された機雷それ自体が国民の生死にかかわるような深刻、重大な被害を及ぼす元凶となっておりまして、機雷は一旦敷設されれば、除去しないとそこを通過することができません。被害を及ぼし続けて拡大していく性質を有していることから、できる限り早くこれを除去する必要性が高い。しかも、我が国の機雷掃海の能力が高いということで、これはそこに行かなければ除去できないということでございますので、我が国による自衛のための必要最小限度の武力の行使として機雷の掃海を行うことは許容されるのではないかということで、新三要件を設けまして、そういった条件に当たるものについては必要最小限度を超えることではないということでございます。
○重徳委員 私は均衡性のことをお聞きしているんですが。
武力攻撃は受けないんですよ、日本は。だけれども、他国に行って武力攻撃をするわけですよ。新三要件の中では受動的、限定的かもしれませんが、それは武力攻撃なんです。ここが明らかに均衡していないんじゃないかということです。その意味で、国際法上の定義上の必要最小限度ということを破っているんじゃないかということなんです。この点、いかがなんでしょうか。
○岸田国務大臣 国際法上の集団的自衛権の要件としましては、武力攻撃を受けた国からの要請、同意とあわせて必要性と均衡性が要件として求められています。
そして、均衡性の部分が必要最低限というふうに表現をされているわけですが、我が国が武力を行使する際には、こうした国際的な要件に加えて、憲法との関係において新三要件を満たすことが求められています。そして、新三要件における必要最小限というのは、我が国の存立そして我が国国民の命、暮らしに対する明白な危険が存在することを取り除くために必要最小限として求められるものとされます。
ですから、国際的な要件に加えて、我が国の場合は武力行使をする際に新三要件という要件を満たさなければならない、必要最小限という要件も満たす必要があるというように整理をしております。
○重徳委員 大臣、それは違うんですよ。今大臣がおっしゃるのは、均衡性に加えて新三要件とおっしゃいますが、新三要件の方は一応いいんですよ、受動的、制限的という説明を一応受け入れるとすれば。
むしろ均衡性を満たしていないんじゃないかと言っているんです。均衡性に加えて新三要件を満たす必要があるとおっしゃいますが、新三要件の方はもういいんですよ。均衡性を満たしていないんじゃないか。武力攻撃を受けていない日本が海外に出かけて、海外派兵です、武力攻撃を加えることが国際法上の均衡性要件を欠いているんじゃないかという、こっちの問題なんです。いかがでしょうか。
○岸田国務大臣 国際法上の均衡性で申し上げるならば、機雷というのは除去しなければいつまでもそこにとどまることになります。ですから、機雷を除去するということが均衡性との関係においても求められると考えております。
○重徳委員 違うんです。それはずっとありますから、それだったら停戦後に粛々と処理をすればいいだけの話で。
今議論しているのは停戦前の話ですから、明らかにいわば戦闘状態の中で、現に戦闘行為は行われていないかもしれませんが戦争は終わっていない、停戦していない、そこで武力行使、武力攻撃をするということが、武力攻撃を全く受けていない、受ける可能性のゼロである状態でもできる、これは理屈としておかしいじゃないかということを申し上げているわけであります。
何かつけ加えることがありますか。今までの説明では、多分もう説明し切れないというふうに断じざるを得ません。
○岸田国務大臣 正式な停戦が行われる前の段階において我が国の存立や国民の命に明白な危険が存在する、それを除去するために対応しなければならない、こうした事態は想定されます。こういった事態に対してしっかり対応することを考えなければならないのではないか、こういった議論を国会で今お願いしております。
そして、国際法との関係で申し上げるならば、我が国の国民にとって死活的な深刻な影響が存在するわけでありますので、こうした事態に対応するということは国際法上も認められるのではないかと考えます。
○重徳委員 これはホルムズ海峡の一点突破をされようとしていると思うんですが、実際には法律上は広く認めることになるんですよ。法律の枠組みなわけですから、ホルムズ海峡なんて一言も法律上は書いていませんから。だから、そんなにホルムズ海峡をやりたいんだったら、ホルムズ海峡だけのための、機雷掃海のためだけの法案を別途つくるべきであって、こんなに何でもありの枠組みをつくっておいて、具体的に想定できるのはホルムズ海峡の機雷掃海だけだと。しかし、その内容は明らかに均衡を失しているわけですよね。
こんな法案をどれだけ説明しても、これ以上は多分もう無理だと思いますね。独自案をちゃんと提出いたしましたので、その土俵の上でもう一回議論する必要があると思いますが。
大臣の手が挙がっていますので、一言。
○岸田国務大臣 いま一度整理をさせていただきたいと存じますが、今、政府としましては、国の存立や国民の命や暮らしに明白な危険が生じた場合に対応することを考えなければならないのではないか、そうしたことから存立危機事態に対応することを考えるべきではないか、こういったことを申し上げております。
そして、存立危機事態は公海を初めさまざまな場面で発生することが想定されます。ホルムズ海峡を唯一の例というふうにおっしゃいましたが、これは、海外派兵は原則として憲法上認められていない、その中にあって唯一、海外派兵が認められる例外の一つの例としてホルムズ海峡の例を申し上げているということであります。
ですから、存立危機事態の全体の中のホルムズ海峡の例の位置づけということについていま一度整理させていただいた上で、ぜひ御議論をお願いしたいと存じます。
○重徳委員 時間が来ましたので、次の同志に任せたいと思いますけれども、この均衡性の部分は今の説明では全く理解できません。また引き続き議論させてください。
ありがとうございました。