○副議長(赤松広隆君) 重徳和彦君。
〔重徳和彦君登壇〕
○重徳和彦君 社会保障を立て直す国民会議の重徳和彦です。
所得税法等の一部を改正する法律案について質問します。(拍手)
今国会では、統計の調査手続上の不正がクローズアップされ、一刻も早い真相究明が求められますが、本来、より大事なことは、統計をきちんと政策立案に使うことです。
統計がいいかげんなのは使われないからと言われます。我が国では、とかく局所的な事例や体験、エピソード、過去の慣行に基づく非科学的な根拠で政策が立案されることが少なくなく、統計データが十分活用されていないと感じられます。
今こそ、限られた政策資源を効率的、効果的に利用して実効性を上げるため、統計データなどの根拠に基づく政策立案、EBPM、エビデンス・ベースド・ポリシー・メーキングに本格的に取り組むべきと考えますが、総理、いかがでしょうか。
また、EBPMの観点から、今回改正される事業承継税制についてお尋ねいたします。
これまで法人事業主を対象に認められてきた事業承継税制について、個人事業主に対象を拡充することとされていますが、これまでの法人対象の事業承継税制はどの程度効果があったのか、これを個人に拡充することでどのような効果が見込まれるのか、統計データを用いてお答えください。
次に、車体課税について伺います。
現行の車体課税は、車を買うのは担税力のある富裕層と言われた時代から、いまだに複雑な重複課税が存続していますが、時代は変わり、今や車は地方では生活必需品です。複雑で過重な税体系を整理し、車体課税は全体として引き下げるべきと考えます。
こうした観点から、今回の改正により、自動車税を恒久的に最大四千五百円引き下げるなど、車体課税全体で実質五百三十億円引き下げることになったことは評価をしたいと思います。
そこで、改めて政府の見解を伺います。
国際的に見て我が国の車への重複課税がユーザーの過重負担となっていることと今後のさらなる引下げの必要性について、政府はどう認識していますか。
また、交通まちづくり政策について現場の自治体が権限と責任を持つ体制をつくるため、車体課税の地方税源化が必要と考えます。今回の自動車重量税の地方譲与税化と地方揮発油税への税源移譲といった方向性を今後更に進めるべきと考えますが、いかがでしょうか。
さて、我が会派、社会保障を立て直す国民会議は、消費税増税を前に、これまで先送りされてきた社会保障制度の改革をリードすることを志して、旗上げをしました。
そこで、医療制度について質問します。
国民医療費は毎年一兆円規模で増加しており、過重な財政負担も限界に来ています。そして、そもそも現行の医療制度が果たして現在の日本人の健康を支えるのにふさわしい制度なのかどうかも検証が必要です。
現行の医療制度が創設されたのは半世紀以上前のことですが、その後、日本人の疾病構造は随分変わりました。創設当時は、結核を始めとする感染症に罹患する国民が多数いましたが、現在は、生活習慣病に伴う糖尿病、高血圧、がんなどや、老化に伴う認知症などの疾病が圧倒的に多くなっています。
感染症など外因性の疾患を治療するのが医療のミッションだった時代と異なり、生活習慣病や老化など内因性の疾患は予防が可能であり、医療のミッションもおのずと変化が求められるはずです。
患者の健康問題全体を予防段階から継続的に把握するため、いわゆるかかりつけ医を制度化し、医療のミッションを予防医療に比重を移したものへと再定義する必要があるのではないでしょうか。
医療財政の構造改革と国民の健康保持のためには、医療制度の根本的な改革に取り組むべきと考えますが、政府の見解を求めます。
また、保健医療データを複数の医療機関が共有し、各機関の連携により、患者にとって最適な医療を提供できる仕組みを強力に進めるべきと考えますが、いかがでしょうか。
次に、消費増税対策についてお尋ねします。
軽減税率は、小売の現場の混乱を招き、インボイス導入による中小零細事業者への負担が大きく、しかも低所得者対策にならないという批判が強いですが、この批判に対する政府側からの反論が全く国民に浸透していません。
しかも、我が会派の野田佳彦代表が指摘したように、いわゆるポイント還元制度は、三、五、六、八、一〇%と、実質的に五段階の複数税率が発生し、しかも、カードを持たない低所得者や高齢者などに恩恵が及ばないという致命的な問題があります。
改めてお聞きします。本気で軽減税率を実施するのですか。総理、お答えください。
参議院の定数六増についてお尋ねします。
参議院の合区で議席を失う議員を救済するために、自民党は、いよいよ時の権力を行使して都合のよい選挙制度を導入するゲリマンダー政治へと大きな一歩を踏み出し、議員定数を六つふやし、比例区特別枠を設けるという奇策に出ました。権力の腐敗そのものであります。
安倍総理御自身も、参議院自民党が主導した改正内容を尊重し、定数増法案に賛成したと先日の参議院予算委員会で答弁されました。
身内の議員への配慮を、国会議員が身を切るという国民との約束よりも優先させたことについて、与党議員の皆様がどう説明するのか、国民は見ています。答弁を求めます。
最後に、地方自治にかかわる問題を指摘します。
安倍総理が総選挙直前に突然言い出した幼児教育無償化政策ですが、巨額の費用の半分は地方が負担することになりました。以前なら、こうした政策については、保育サービスの範囲、基準、費用負担のあり方も含め、国と地方で丁寧に協議しながら進めていたはずです。最近の政府は地方をないがしろにしていませんか。
地方への財政負担についての政策決定過程を具体的に説明してください。そして、地方自治への安倍総理の思いをお述べください。
以上で質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 重徳和彦議員にお答えをいたします。
EBPMの推進についてお尋ねがありました。
統計データなどの根拠を用いて政策の課題把握、立案、検証等を行うEBPMは、行政機能や政策効果の向上を図るための重要な取組であり、国民により信頼される行政を展開する観点から推進してきたところです。
今年度は、各府省におけるEBPMの取組を総括する政策立案総括審議官を新設したところであり、今後とも、データに基づく合理的な思考で課題を解決できる職員の育成、府省間のデータの相互利用等を進め、EBPMの浸透、定着を図ってまいります。
消費税増税対策についてお尋ねがありました。
軽減税率制度は、ほぼ全ての人が毎日購入している飲食料品等の税率を八%に据え置くことにより、消費税の逆進性を緩和しつつ、買物の都度、痛税感の緩和を実感できるという利点があることから、低所得者への配慮として実施することとしたものです。
また、ポイント還元については、前回、八%への引上げの際、予想以上に消費の低迷を招き、その後の景気回復にも力強さを欠き、中小・小規模事業者は、大企業に比べて体力が弱く、競争上の不利もあるといった点を踏まえ、中小・小規模事業者に限定した上で、消費をしっかりと下支えするため実施することとしたものです。
今回の実施に当たって、ポイント還元の対象となる店舗に還元率を明記したポスター等を張り、消費者の皆さんが一目でわかる工夫を講じます。さらに、キャッシュレスの決済事業者とも連携しながら、中小・小規模事業者、消費者双方に積極的な広報も行っていきます。
いずれにせよ、今回の消費税率引上げへの対応には、各施策の周知徹底を図ることにより、国民の皆様に御理解いただくことが極めて重要であると認識しており、引上げ前後で事業者に混乱が生じないよう、また、消費者が安心して購買できるよう、引き続ききめ細やかな対応を行ってまいります。
参議院選挙制度改革についてお尋ねがありました。
政権交代後、まず、平成二十五年に衆議院の定数の〇増五減が実現し、さらに、さまざまな困難を乗り越え、調査会の答申や各党各会派の議論等を踏まえ、平成二十九年には衆議院の定数十削減が実現しました。国会議員が身を切るという国民との約束を果たしていないとの指摘は、これは全く当たりません。
その上で、さきの国会で成立をした参議院の選挙制度改革については、参議院特有の事情も踏まえ、投票価値の平等とともに、都道府県の単位がどれぐらい尊重されるべきかという点も含めて、各党各会派による検討がなされ、結論が出されたものであると承知しています。
また、附帯決議として、この定員増に伴う参議院全体の経費の増大を生じないよう、しっかりとその節減に取り組んでいくという参議院としての決意が示されており、これを実行に移すため、自民党、公明党及び無所属クラブは、参議院議員の歳費を削減する法案を今国会に提出しているものと承知しています。
いずれにせよ、選挙制度のあり方を含め、議員の身分にかかわる問題は、議会政治の根幹にかかわる重要な課題であり、各党各会派において真摯に議論が行われるべきものであると考えています。
幼児教育の無償化についてお尋ねがありました。
幼児教育の無償化の財源については、消費税率引上げに伴い国と地方へ配分される増収分を活用することとしており、国の責任において、必要な地方財源をしっかり確保します。
地方の財政負担については、昨年、教育の無償化に関する国と地方の協議において国から地方団体に提案し、その内容について御了解をいただいたものであります。
もとより地方自治の重要性については十分に認識した上で、児童教育無償化の円滑な実施に当たっては、国と地方が適切に役割分担しつつ、両者が連携、協働していくことが重要であると考えており、引き続き、実務を担う地方自治体の皆様の御意見をしっかり伺いながら、本年十月からの実施に向け準備を進めてまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇〕
○国務大臣(麻生太郎君) 重徳議員からは、車体課税のさらなる引上げ、さらなる地方への税源移譲について、計二問お尋ねがあっております。
まず、車体課税のさらなる引下げについてお尋ねがありました。
平成三十一年度税制改正案に盛り込んだ車体課税の見直しにつきましては、消費税率一〇%への引上げに伴う対応として、自動車税を恒久的に減税するとともに、環境性能割の臨時的軽減を行うことにより、自動車ユーザーの負担軽減を図ることといたしております。
他方、車体課税は、道路損壊の社会的費用の原因者負担、また、道路整備等の利便性向上の受益者負担の考え方で自動車ユーザーに御負担をいただいているものであり、国、地方の貴重な財源となっておりますのは御存じのとおりです。
また、日本の自動車に関する税負担につきましては、車体課税、燃料課税、消費税を合わせたベースで見れば、欧州諸国と比べて必ずしも高い水準にはなっておらないと考えております。
現時点の国の厳しい財政状況や今後も道路の老朽化対策のための多額の財源を確保していく必要があることを踏まえれば、さらなる軽減負担については慎重に検討する必要があろうと考えております。
さらなる地方への税源移譲についてもお尋ねがありました。
平成三十一年度税制改正案に盛り込んだ車体課税の見直しにおきましては、車体課税の多くが地方財源であり、地方財政に影響を与えないよう配慮する必要があります。
国税である自動車重量税の税収を地方に譲与する割合を段階的に引き上げることなどにより、今般の自動車税の引下げに伴う地方の財源不足につきましては、国費でその全額を補填することといたしております。
その上で、議員御提案の車体課税のさらなる地方への税源移譲については、先ほどの繰り返しになりますが、現時点の国の厳しい財政状況や今後とも道路の老朽化対策のための多額の財源を確保していく必要があることを踏まえれば、慎重であるべきという考えでおります。(拍手)
〔国務大臣世耕弘成君登壇〕
○国務大臣(世耕弘成君) 重徳議員にお答えいたします。
事業承継の支援策についてお尋ねがありました。
中小企業の経営者の高齢化が進む中、円滑な事業承継を促進することが必要です。
このため、事業承継時の課題とされていた重い税負担を軽減するため、昨年、法人の事業承継税制を抜本的に拡充しました。その結果、拡充前は、十一年間で二千五百件の利用でしたが、拡充後は、本日時点の集計で、昨年四月から本年一月末までの十カ月間で二千二百二十六件の申請があり、大きな効果を上げています。
平成三十一年度税制改正大綱では、個人事業者の集中的な事業承継を後押しするため、十年間の時限措置として、土地、建物、機械、器具備品などの承継時の贈与税、相続税の一〇〇%納税猶予制度の創設を盛り込みました。これにより、約三百五十八万者の中小企業のうち五割以上を占める個人事業者の方々にも税制を利用していただくことが可能となります。
また、税制以外にも、全国四十八カ所の事業引継ぎ支援センターにおける後継者不在の事業者へのマッチング支援や、事業承継補助金による事業承継後の事業者の支援などの施策も講じています。
これらの施策についても、その効果を検証しつつ、必要に応じ各施策の強化、見直しを行い、事業承継という待ったなしの課題に取り組んでまいります。(拍手)
〔国務大臣根本匠君登壇〕
○国務大臣(根本匠君) 重徳和彦議員にお答えをいたします。
疾病予防の推進の観点から、かかりつけ医と医療情報連携についてお尋ねがありました。
国民一人一人が健康づくりに取り組み、疾病の発症予防につなげるために、厚生労働省としても、第二次健康日本21に基づき、健康寿命の延伸に向けた取組を進めています。
また、御指摘のとおり、患者の健康問題を予防段階から継続的に把握することは有用であり、患者が身近な地域でかかりつけ医を持つことができるように環境整備を進めることが重要です。
このため、都道府県が医療機関等の情報を集約し、わかりやすく提供している制度を見直し、新たにかかりつけ医機能に関する情報も提供することとしています。また、診療報酬においても、かかりつけ医機能の評価を推進しているところです。
引き続き、これらの取組を通じて、予防、健康づくりを推進するとともに、かかりつけ医の普及、定着に取り組んでまいります。
また、効率的な医療連携を実現するため、ICTを活用した情報連携は重要と考えています。
このため、未来投資戦略二〇一八に基づき、費用対効果の観点を踏まえつつ、個人の健診・診療・投薬情報が医療機関等の間で共有できる全国的なネットワークについて、必要な実証を行いながら、本格稼働を目指してまいります。(拍手)
○副議長(赤松広隆君) これにて質疑は終了いたしました。
――――◇―――――