○議長(大島理森君) 重徳和彦君。
〔重徳和彦君登壇〕
○重徳和彦君 社会保障を立て直す国民会議の重徳和彦です。
早速質問に入ります。(拍手)
昨年十二月十八日、次期中期防が閣議決定されました。平成二十八年三月の安保法制施行により、自衛隊の任務は拡大し、武力攻撃事態に加え、存立危機事態、重要影響事態などへの対処が求められることになりますが、安保法制という観点から、こうした自衛隊の新たな任務に伴って新たに整備される防衛装備品があるのかどうか、答弁願います。
古来より、戦時の戦費調達は当事国最大の課題でした。財源が底をつけば、その国の国防力は損なわれます。財政の制約は防衛力の制約なのです。厳しい財政状況に置かれる我が国が昨今の安全保障環境の変化に対応するためには、今まで以上に国家の財政構造に気を配り、適切な防衛費の水準や効果的な調達方法について議論が必要と考えます。
かつてはGDPの一%枠などの目安がありましたが、現在、防衛当局として、我が国の防衛力への制約要因としての財政に対する認識をお尋ねいたします。
また、戦後の日本は、日米安保体制を基軸に抑止力を強化し、有事においては日米が共同で対処することになっているため、防衛力の整備に当たっては、完全なる自主防衛に比べれば低い負担で済んできたと考えるべきだろうと思います。
我が国の防衛費の水準は、日米安保体制下における軽武装、経済重視によってどのような影響を受けてきたと認識しているか、また、日本の防衛費は世界第八位の高位にあると言われることもあるようですが、それでも、日米で共同対処する分、日本の防衛費から除かれたコストが米国の国防費に含まれていると考えてよいのか、お尋ねします。
財政制約がある中で、自衛隊の装備の水準と数を満たすには、装備品の価格引下げが必須であり、発注者も受注者も限られる独特の市場で、防衛省と産業界が一致して努力しなければなりません。
今回改正される長期契約法などにより、平成三十一年度に削減される経費三百五十六億円の積算根拠をお示しください。
また、私は、こうした削減努力の一部を研究開発費に回し、低価格、高品質の国内技術力を強化すべきと考えますが、防衛大臣は、これらの経費削減が、我が国の防衛力の向上、すなわち装備品の整備水準の観点から、どのような意味があると認識しておられるか、答弁願います。
次に、中期防に定める装備品それぞれの単価が、ことし一月八日、初めて一般に公表されましたが、今までなぜ公表していなかったのか。また、これらの単価の決定方法はどうなっているのか。今回の中期防で初めて公表されることになったことを契機に、決定方法に変更点があればお示しください。
ここ数年、防衛費全体が増加していますが、米国政府からのFMS調達など新規の高額装備品の購入の影響により、既存機の維持整備費などの経費の増減状況はどうなっているのか。最低限必要な経費にしわ寄せが行っていないのか、お尋ねします。
FMS調達の主たる増額要因となっている航空機については、従来から、米国内と対日本で売り値に差があるという指摘がありますが、現状はどうなのですか。
また、F35AのFMS調達について、国内企業が最終組立てや検査を実施した機体、いわゆるFACO機の価格上昇要因を確認すべきとの平成二十九年の会計検査院の指摘に対し、どう対応してきたか、お伺いします。
欧米ではメーカーの統合による体力強化が進んでいますが、日本ではなかなか再編が進まず、各メーカーが国内で競合する状態が続いています。今の業界体制のまま長期契約を続けることは、各メーカーのラインや人員、資材などの確保の見通しが立つことで、調達の安定化と低廉化に結びつくでしょうけれども、同時に、各メーカーの再編意欲を損なわせ、競争力低下により海外依存が高まるのではないか、懸念しています。
国内の防衛産業の再編を政府が主導し、世界トップレベルの技術力を維持向上させることによって、防衛装備品の対米依存を抑制すべきと考えますが、いかがでしょうか。
また、我が国が高度な科学技術力を抱えることによって、経済上はもちろん、安全保障上も、諸外国から無視し得ない国家として、国際社会で存在感を高める技術安全保障に国家戦略として取り組むべきと考えますが、いかがでしょうか。
あわせて、経済産業大臣に、国内の防衛産業の再編による国内外での産業競争力の強化と、我が国の技術安全保障への取組についての見解を求めます。
以上で質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣岩屋毅君登壇〕
○国務大臣(岩屋毅君) 重徳和彦議員にお答えいたします。
まず、平和安全法制の整備に伴う防衛装備品の取得についてのお尋ねがありました。
国民の命と平和な暮らしを守り、国際社会の平和と安全に貢献することは、自衛隊の重要な責務であります。平和安全法制は、このような任務を切れ目なく、より効果的に果たすことを主眼とするものであります。
平和安全法制の整備によりまして、さまざまな事態への対処が新たな任務として付与されましたが、こうした事態への対処は、我が国の防衛などの従来の任務に必要な装備品によって基本的に対応できるものでありまして、平和安全法制の整備に直接的に起因して導入を決定した新たな装備品はございません。
防衛省としては、我が国を取り巻く厳しい安全保障環境を踏まえ、新たな防衛大綱及び中期防のもとに、着実に防衛力の強化を図ってまいりたいと存じます。
次に、防衛関係費の制約要因についてお尋ねがありました。
防衛省・自衛隊としては、我が国を取り巻く厳しい安全保障環境を踏まえ、これに対応するために必要な防衛力の強化のための取組を検討し、必要となる経費を積み上げております。
他方、格段に厳しさを増す財政状況と国民生活にかかわる他の予算の重要性等を勘案し、防衛力整備の一層の効率化、合理化を図り、経費の抑制に努めるとともに、国の他の諸施策との調和を図ることも重要だと考えております。
この点につきまして、中期防において期間中の所要経費を定めるとともに、各年度の予算編成においては、概算要求を行い、その後、財政当局の査定を受けるという一連の予算編成プロセスを通じて、政府として適正な防衛関係費のあり方が形づくられていくものと考えております。
なお、御指摘のいわゆるGDP比一%枠については、昭和六十一年に撤廃をされているところでありまして、GDPと関連づけた数値目標を設定することは適切ではないと考えております。
次に、日米安保体制下の防衛関係費のあり方についてお尋ねがありました。
我が国は、民主主義などの基本的価値を共有する米国との間で同盟関係を継続し、その抑止力と我が国みずからの防衛力によって、すきのない体制を構築して、我が国の安全を確保することを防衛の基本としております。
このため、我が国の防衛関係費は、日米安保体制を前提としたものになっておりますが、その上で、一般論として申し上げれば、仮に米軍が有するような装備品などを全て我が国自身で整備するとなった場合には、所要の防衛関係費は大幅に増加することになると考えます。
また、米国は、国防政策上、我が国を含む同盟国の防衛も考慮しつつ、自国の国防費のあり方を検討しているものと認識しておりますが、御指摘の日本の防衛費から除かれたコストについて、一概にお答えすることは困難だと思っております。
次に、長期契約による縮減額についてお尋ねがありました。
平成三十一年度予算案におきましては、PAC3ミサイル用部品の一括取得及びE2D早期警戒機の九機調達によりまして、約三百五十六億円の縮減額を見込んでおります。
その具体的内容と積算根拠について申し上げれば、PAC3ミサイル用部品については、今後の修理で必要となる部品を、米国等も調達する時期に合わせて十年間の包括契約で一括調達することによって、約三十一億円の縮減を見込んでおります。また、E2Dにつきましては、米海軍の調達にあわせて発注し、七年間の契約で九機を調達することによって、約三百二十五億円の縮減を見込んでおります。
いずれの縮減額につきましても、過去の契約実績、企業見積りを含む各種のデータを考慮の上、適切に算定をしたところでございます。
次に、長期契約による縮減額の意義についてお尋ねがありました。
厳しい財政事情のもとで防衛力の計画的かつ確実な整備を行っていくためには、装備品取得や維持整備の効率化を推進し、コスト縮減を図ることにより、限られた予算を有効に活用するとともに、安定的な調達を実現していくことが不可欠です。
こうした基本的な考え方のもとに、平成三十一年度予算案におきましては、PAC3ミサイル用部品及びE2Dの調達を長期契約の対象とするとともに、引き続き、国内の技術基盤の維持等にも資する研究開発を始めとした我が国の防衛に必要なさまざまな事業を計上しているところでございます。今後とも注力をしてまいりたいと存じます。
次に、中期防の主要装備品の単価についてお尋ねがありました。
中期防におきましては、従来から、その期間中の所要経費全体をお示ししており、中期防別表に掲げている主要装備品の単価については、これまで一般に広く公表したことはありませんが、必要に応じ、個別に説明してきたものでございます。
今回の中期防策定に当たりましては、装備品の効果的、効率的な取得について国民の皆様の関心が高まっていることを踏まえ、説明責任を果たすために公表をしたところでございます。
この単価は、過去の調達価格や企業等による見積価格等を参考に、中期防の決定年度の価格に置きかえるなどの措置をした上で設定をしております。このような設定方法は従来と変更はございません。
次に、FMS調達の増加による影響についてお尋ねがありました。
FMSは、一般では調達できない機密性の高い装備品や、米国においてしか製造できない能力の高い装備品を調達できる点で、我が国の防衛力を強化するために非常に重要だと考えております。
一方で、維持整備費等の経費も、自衛隊の活動の持続性、強靱性を強化するために重要でございまして、自衛隊の活動に支障が生じないよう措置するとの観点から、平成三十一年度予算案において、維持整備費は、契約ベースで対前年度約四百一億円増の八千九百五十三億円を計上しているところであります。
今後とも、安全保障環境が厳しさを増す中、全体としてバランスのとれた防衛力を構築すべく、維持整備費を含め、必要な経費を確保してまいります。
次に、FMSで調達する航空機の米軍との価格差についてお尋ねがありました。
FMSは、米国の経済的な利益を目的とした装備品の販売ではなく、我が国と米国との間では、FMS調達に当たって、米国政府が、米軍自身が使用する装備品等に適用するのと同じ契約条項、契約管理及び品質、監査検査手続をFMS購入国が使用する装備品にも適用する旨を確認しておりまして、米国の調達制度と同等の公正性が担保されているものと考えております。
その上で申し上げれば、FMSによって防衛省が米軍と同機種の装備品を調達する場合であっても、例えば、我が国の独自仕様に基づく価格差や、米国政府の管理等に係る費用、米国政府との価格算定方法の相違など、さまざまな要因がございまして、米軍の調達価格と必ずしも同一の価格になるわけではないと認識をしているところでございます。
次に、会計検査院によるF35Aの価格上昇に関する指摘についてお尋ねがございました。
平成二十九年九月の会計検査院の随時報告において、本体価格が変動した場合には、引き続き適時適切に合衆国政府に要因を確認することとされております。
我が国が取得するF35Aについては、大幅な円安となった為替の影響や、平成二十五年度以降、国内企業が製造に参画し、少数しか製造しないといったことから、製造作業に習熟するペースが遅いこと等の理由によって価格が上昇していることを確認いたしました。
平成三十一年度以降は、F35Aの取得は完成機輸入に切りかえることといたしましたが、防衛省としては、引き続き、我が国が取得するF35Aの価格の変動について、その要因を米国政府に確認をしてまいりたいと存じます。
次に、防衛産業の再編による装備品の対米依存の抑制についてお尋ねがありました。
装備品の調達に当たりましては、米国製であれ国内製であれ、今後の我が国の防衛に必要な装備品を個別に評価、検討し、我が国の主体的な判断のもとに決定をしているものであります。
その上で、国内の防衛産業は、装備品の生産、運用、維持整備に必要不可欠な基盤であることから、今後、防衛産業がすぐれた技術力を確保し、競争力の向上を図れるよう、新たな防衛大綱、中期防において、技術基盤の強化と産業基盤の強靱化について、優先事項として取り組むことといたしております。
この際、個々の企業の組織のあり方はあくまでも各社の経営判断によるものではありますけれども、新たな中期防に明記しているとおり、防衛省としても、各企業に対して効率化を促す各種施策に取り組み、この結果生じ得る企業の再編、統合も視野に、産業基盤の効率化、強靱化を図ってまいります。
最後に、技術安全保障についてお尋ねがありました。
我が国の高い技術力は防衛力の基盤であり、安全保障環境が厳しさを増す中、安全保障にかかわる技術の優位性を維持向上していくことは、将来にわたって国民の命と平和な暮らしを守るために不可欠だと考えております。
新たな防衛大綱におきましては、我が国のすぐれた科学技術を生かし、政府全体として、防衛装備につながる技術基盤を強化することがこれまで以上に重要になっていると認識しております。
このため、防衛省・自衛隊においては、新たな領域に関する技術や、人工知能等のゲームチェンジャーとなり得る最先端技術を始めとする重要技術に対して、選択と集中による重点的な投資を行い、技術基盤の強化に努めるとともに、技術管理や知的財産管理を強化することなどによって、我が国が持つ重要技術の海外への流出防止にも万全を期してまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣世耕弘成君登壇〕
○国務大臣(世耕弘成君) 重徳議員にお答えいたします。
国内の防衛産業の再編についてお尋ねがありました。
防衛産業基盤は、防衛装備品の生産、運用、維持整備に必要不可欠で、この分野の効率化、強靱化は重要な課題です。
このため、政府として、中期防衛力整備計画等に基づき、製造プロセスの効率化や徹底した原価の低減などに取り組んでいます。
こうした取組の結果、防衛関連企業が再編や統合を目指すことになれば、経済産業省としても、事業再編の円滑化などの支援を行い、生産性の向上などを促進していきます。
これにより、国内防衛産業の競争力、技術力が更に強化され、国際社会における存在感が高まり、日本全体の安全保障にも貢献できると考えております。(拍手)
○議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。