○副議長(赤松広隆君) 重徳和彦君。
〔重徳和彦君登壇〕
○重徳和彦君 社会保障を立て直す国民会議の重徳和彦です。(拍手)
政府提出の女性活躍推進法改正案に対し、野党四会派が対案として提出している三法案には、我が会派の中島克仁議員も提出者の一人として名前を連ねさせていただいております。
野党案は、この社会の不条理で深刻な課題に正面から向き合い、就職活動中の学生やフリーランス等の個人事業者をもセクハラから守ろうとするものであり、取引先や顧客もパワハラ規制の対象にするなど、政府案より格段にすぐれたものと評価していることを冒頭申し上げ、政府への質問に入ります。
このたびの労働施策総合推進法改正案により、我が国で初めてパワーハラスメント防止に関する制度が法律で定められることになります。
本法案では、パワハラの三要件が定義され、事業主には、パワハラ防止のため雇用管理上必要な措置を講ずることとされています。
私は、実は、パワハラ対策は、日本の職場慣行や風土改善につながる、働き方改革の本丸だと考えております。
我が国における職場慣行の象徴は、働き過ぎです。長年にわたって形成し、定着してきたこの慣行は、一朝一夕に変わるものではありません。昔ほどではないにせよ、いまだに、自分の仕事が終わっても上司がいる間は帰りづらいとか、なかなか有給休暇を消化しづらいといった職場の雰囲気は、多分に日本社会に残っていると思われます。
また、働き方を規定するはずの労働法制は、原則として最低基準を定めるものです。
だから、近年、働き方改革として整備された一連の法制度を見ても、残業規制については月百時間の上限が定められましたが、これは過労死レベルと言われる水準を超えるものです。年次有給休暇を最低五日取得させる義務も設けられましたが、本来、労働者には年休を十日とる権利があり、繰り越した場合は最大二十日とれるのですから、これも最低限のルールにすぎません。結局、我が国の職場の慣行や風土を根本から変えるのは、それぞれの職場や労使間の努力に委ねられてきたのです。
その点、今回の法案に盛り込まれた規定は、これまでの各種労働法制と比べ、あらゆる人の働き方にかかわるものであり、職場の慣行や風土のあり方に幅広く影響を及ぼす可能性があるのではないでしょうか。まず、この点について根本大臣の認識を伺います。
具体的には、第一の優越的な関係要件は、上司など優越的な立場にある者自身が、その影響力の強さを改めて意識することにつながります。自分の言葉一つで職場の雰囲気が変わることを自覚するようになるでしょう。
第二要件の業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動についても、例えば、期限がまだ先の仕事をあすまでにやれと言えばパワハラに当たる可能性があると知れば、仕事の納期と指示内容に対する意識が高まり、きょうは早く帰って、残りの仕事はあしたやればいいからねと一声かけることにもつながるでしょう。
部下などに対する自分の言動が、第三要件の身体的、精神的な苦痛になっていないかどうかの意識が高まれば、過度な残業を避け、年休を取得しやすい職場づくりにつながるでしょう。
このように、パワハラ対策は、典型的な暴言やいじめ、嫌がらせの防止だけでなく、これまでの労働法制による最低基準では規定しづらい、長時間労働の抑制や有給休暇の取得を促進する側面があると考えます。長年にわたり形成されてきた日本型の職場慣行を改善するためにも、今回の法案の運用を有効に活用してはいかがでしょうか。
長時間労働の観点から、一点付言しておきたいことがあります。それは、勤務医の残業規制の例外についてです。
医師の働き方改革に関する厚生労働省の有識者検討会が三月二十八日に報告書をまとめ、地域医療を支える医療機関の勤務医などの残業時間上限は、例外的に、一般の医師の年間九百六十時間を大幅に上回る年間千八百六十時間とされ、月当たりに換算すると、過労死の労災が認められる目安である月八十時間の約二倍に相当する、月百五十五時間とされたのです。
報道によれば、医師の勤務時間が減れば地方の医療が立ち行かなくなるおそれがあるとして、厚労省も日本医師会も容認したとのことです。しかし、現場の医師からは、ネット上で、医師を殺すのかといった声が上がっているそうです。この案で当直なしの週休二日にするなら、平日は朝七時から午後十一時まで働くぐらいの計算になります。深夜も椅子で仮眠し、二、三時間ごとに患者に対応し、仮眠明けの手術をこなすことにもつながります。
この例外規定が適用される医療機関は、全国で約千五百カ所に上ります。現状でも、救急救命機能を備えた病院の八四%、大学病院の八八%に、年間千八百六十時間を超える勤務をしている医師がいるとされています。
医師の勤務時間を短縮するための方策として、子供の病気や救急車の要不要の助言を行う短縮ダイヤルの活用など、さまざまな案が検討されているようですが、決め手がありません。もはや打つ手がないのでしょうか。
地域医療を人質にしているとまで言われるこの問題が残されたままでは、到底、働き方改革の名に値しません。
事ここに至れば、半世紀以上続いている現行の医療制度を抜本的に改革し、かかりつけ医を制度化し、身近な医師がいつでも予防、相談などに応じる体制を構築し、医療資源の極端な偏りを是正するとともに、国民にとって今以上に安心できる仕組みを導入すべきと考えます。
かかりつけ医の仕組みがしっかり地域に定着し、極度な長時間労働を強いられている勤務医にかかる負担を適切に分かち合うことができれば、医療分野における真の働き方改革が実現すると考えますが、大臣、いかがでしょうか。
以上で質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣根本匠君登壇〕
○国務大臣(根本匠君) 重徳和彦議員にお答えをいたします。
今回の法案が職場の慣行や風土に与える影響についてお尋ねがありました。
本法案では、パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務を新たに設けることとしています。
パワーハラスメントについては、職場における慣行や風土等の問題が背景にある場合もあります。これまでの労働法制の見直しにおいても、多くの労働者の働き方に影響するものがありましたが、本法案において、パワーハラスメント防止対策を進めることで、職場の慣行や風土が改善され、あらゆる労働者にとって働きやすい職場づくりにつながるものと考えています。
パワハラ防止対策と長時間労働抑制等の日本型職場慣行との関係についてお尋ねがありました。
パワーハラスメントについては、長時間労働が多い、あるいは有給休暇が取得しにくいといった企業風土等がその背景にある場合があります。このため、各企業に効果的にパワーハラスメントの防止対策を進めていただくためには、こうした企業風土、職場環境自体の改善を促すことが必要です。
このため、本法案では、事業主に対し、パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務を新たに設けています。また、昨年十二月の労働政策審議会の建議では、今後定める予定の指針において、職場環境の改善等についても望ましい取組として示すことが適当とされています。
このように、今回の法改正を通じて、パワーハラスメントの防止には、長時間労働の是正など職場環境自体の改善を図ることが有効であることについて積極的に周知啓発を行い、御指摘のような問題の改善にもつなげてまいります。
勤務医の長時間労働是正の観点から、かかりつけ医の定着についてお尋ねがありました。
御指摘のとおり、特定の医療機関に負担が集中しないようにする観点からも、患者が身近な地域でかかりつけ医を持つことができるように環境整備を進めることが重要です。
このため、都道府県が医療機関等の情報を集約し、わかりやすく提供している制度を見直し、新たにかかりつけ医機能に関する情報も提供することとしています。また、診療報酬においても、かかりつけ医機能の評価を推進しているところです。
さらに、かかりつけ医の普及を推進するため、二〇二〇年度までに、全ての都道府県においてかかりつけ医の普及に資する事業を実施することを目標とし、昨年度より、事業の実施、未実施を把握することにしています。
このような取組を通じて、都道府県や医師会等の関係団体と連携しながら、かかりつけ医の普及、定着を図りつつ、労働時間が長時間に及んでいる医師の働き方改革に取り組んでまいります。(拍手)
○副議長(赤松広隆君) これにて質疑は終了いたしました。
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○副議長(赤松広隆君) 本日は、これにて散会いたします。