H27.4.22
法務委員会「裁判員制度になってから起訴率が減っている!?」
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○奥野委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。
きょうは、裁判員の法律の改正案につきまして審議をさせていただきます。
この裁判員制度は、平成二十一年に始まりまして、法律がつくられた当初から、附則九条に検討規定があったんですね。「政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、」云々「所要の措置を講ずるものとする。」というところから今回の改正がスタートしていると思うんですが、そうであれば、これまで三年、現時点まででいえば五年以上が経過したこの裁判員制度について、問題点、課題を全てきちんと整理して、それに対応した法改正というものをやっていかなくちゃいけないと思うんです。
そこで、何点か指摘をさせていただきたいんですが、まず、裁判員裁判が始まって以来、重大な性犯罪、傷害致死罪について量刑が重くなっている面がある、そのように見られます。
資料一をごらんいただきますと、裁判官裁判のときと裁判員裁判のときで、求刑を上回る判決、求刑どおりの判決、これがどう変わったかというのが裁判所の検証報告書の中で示されています。
求刑を上回る判決は、裁判官裁判のとき、四年ほどの間に二件しかなかったんですね。それが、裁判員裁判になってから二十二件にふえている。それから、求刑と同じ、つまり求刑どおりという判決は、裁判官裁判では四十五件。それが、同じぐらいのパイの中、二千数百件の中で、裁判員裁判になると百二十六件というふうに大幅にふえています。
このような意味では、量刑が重くなっている部分というのは間違いなくあると思うんですが、これは裁判員が参加する裁判が始まったことによる成果といいましょうか、効果といいましょうか、結果といいましょうか、そういうふうに評価していいんでしょうか。
〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
量刑傾向は個々の事件におけます裁判体の判断の集積でございますので、その評価について事務当局としてはお答えする立場にございませんが、客観的なデータを申し上げますと、御指摘の性犯罪、すなわち強姦致傷罪及び強制わいせつ致傷罪と傷害致死罪につきましては、裁判官裁判と裁判員裁判で量刑分布を比較しますと、三つの罪のいずれにおきましても実刑とされた場合の刑期のピークは裁判員裁判の方が重くなっておりますが、傷害致死罪におきましては裁判員裁判の方が執行猶予に付される率がやや高くなっているというところが出ておるところでございます。
○重徳委員 全般的に厳罰化傾向があるというようなこと、一方で執行猶予がついているということで、もちろん何でもかんでも重くなっているとは思いませんが、確実に、裁判員が参加することによって判決の傾向が変わっている、変化が生じているということは言えるのだろうと思います。
その意味で、裁判員として参加をする国民の立場からすれば、せっかく参加したんだから、やはり我々の感覚、我々の社会常識というものが、これまで裁判官が常識がなかったとは言いませんが、裁判官だけの常識じゃなくて国民の常識も取り入れた裁判結果が出るということが期待されることであり、また結果として出ているということでよろしいんじゃないかとは思うんです。
一方で、ここのところ、高裁、最高裁で裁判員判決が覆されるケース、こういうものも出てきていますね。去年ですか、強盗殺人事件などで、高裁、最高裁で覆されるケースが出ております。そのときの理由の一部を抜粋すると、過去の裁判例を検討すべきなのは裁判官だけの裁判でも裁判員裁判でも変わらないんだとか、死刑がやむを得ないとの説得的根拠を示していないんだ、だから覆さなきゃいけないんだというようなこと。
理由はそれぞれあるとは思うんですが、しかし、要は今までの裁判官裁判の常識、ルールが正しいんだとして、最高裁が、あるいは高裁が次々とひっくり返していくということは問題があると思うんですけれども、大臣、いかが認識されていますでしょうか。
○上川国務大臣 さまざまな事件につきまして今御指摘がございましたけれども、これは裁判所の判断についてということでございます。そういう意味では、一般論として、裁判員の関与した裁判につきまして上訴審で破棄されるということはあり得るというふうに考えております。
上訴審におきましても、同種事例等も参考にしていると承知をしているところではございますが、司法に対する国民の理解増進、信頼向上、こうした裁判員制度の趣旨については十分に踏まえているというふうに認識をしているところでございます。
上訴審が判決を覆したとしても、裁判員制度そのものの存在意義につきまして否定することにはならないというふうに考えております。
○重徳委員 もう一度大臣にお伺いをしたいんですが、先ほど申し上げましたように、裁判員裁判が始まってから、やはり国民感覚が入っていって、判決結果というものも変化が生じているわけですよ。
それで、そこに対して、当然、裁判官はプロという意識もありますから、もちろん、過去の例とか公平性から見て、やり過ぎじゃないかとかいうことでひっくり返すことが絶対あってはいけないとは言いませんけれども、しかし、裁判員は、ふだんの自分の仕事、生活を多少よそに置いてまでも、もともと関係なかったような裁判に参加しているわけでありまして、しかも、多くの場合、重大な犯罪が多いわけですから、もう本当に凄惨な写真を、遺体の写真を見せられたり、心的ストレス障害、PTSD、こういったものにさいなまれる、そういう方もいらっしゃるわけですね。
そこまでしてでも裁判員裁判をやるんだということでやっているわけですから、今の大臣の御答弁だと、これは上級審がひっくり返すことは当然あり得ることで、別に裁判員裁判の趣旨を否定することにはならないんだ、全然問題はないんだというように聞こえたんですが、何の問題もないということをおっしゃっているんでしょうか。
先ほど階委員からも指摘がありましたけれども、上級審でも裁判員の地裁における意見を少し聞くとか、少し見直しをする余地はあるんじゃないか、問題は全くないとは言えないんじゃないか、こう思うんですけれども、大臣はどうなんでしょうか、問題は全くないとおっしゃるんでしょうか。
○上川国務大臣 今委員の方から、裁判員裁判、国民の皆さんがいろいろなことを抱えながら、大変真摯に審理に参加をし、そして結論を出しているということについて、これは大変大きな重みがあるという御指摘がございました。私もそのとおりだというふうに思っております。
そういう意味で、上訴審におきましても、国民の皆さんが裁判員裁判を通じて司法に対しての理解を深め、また信頼を向上させる、こうした趣旨でこの裁判員制度が運用されるということでございますので、この趣旨をしっかりと踏まえながら、刑事訴訟法等の法令に従って、個々別々に具体的な事件についての判断を行っているものというふうに考えております。
その意味で、裁判員裁判の存在意義を否定することには必ずしもならないというふうに申し上げましたけれども、この上訴審そのものも、こうした裁判員裁判の趣旨をしっかりと踏まえた上で、また個別具体の事件につきましての判断を行っているというふうに考えているところでございます。
〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕
○重徳委員 上訴審においてもこの裁判員の趣旨を踏まえているんだというふうにおっしゃいますが、これはもう少し個別の検証が必要だと私は思いますよ。これはまさにケース・バイ・ケースですから、マクロの数字を見ただけでは判断できない部分もあると思います。
本当に、個別にはいろいろな、先ほど申し上げましたPTSDを抱えながら、その後も本当に苦悩しながら生活している方もいる。そういう意味で、そういう方の犠牲の上に成り立っているという言い方もできると思います。そうした裁判員制度なんだということも、もっと控訴審、上級審においても踏まえてやれる仕組みが必要ではないかと私は思います。
そして、これは最高裁の方に確認しますけれども、最初に申し上げました、裁判の判決の結果が変容してきているという傾向があるということでございます。
要は、裁判官なら従来認めてきたであろう、あるいは認めなかったであろう犯罪の故意とか過失とか、そういうことについて、裁判員裁判においてはいろいろ意見が割れるというか、つまり、法曹三者、いわゆる裁判官、検察官、弁護士のプロの世界の中ではこれまでであれば常識だった故意の認定、過失の認定ということについても、裁判員の方が参加することによって、必ずしも認められるとは限らない、あるいは認められなかったようなものも認められるようになった、そういった傾向の違いというものは見てとれるんでしょうか。
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
一般的には、故意等の法律的な概念につきまして裁判員の方々が適切に判断できるように、裁判官が評議等の場でわかりやすく丁寧に説明しているところでございますが、故意の有無等につきまして裁判員がどのような意見を述べたのか、裁判員が入ったことで従来の裁判官裁判と異なる判断がなされる傾向があるのかということにつきましては、評議の秘密にわたる事項でございますし、事件は一つ一つその内容や争点が異なるため、判断の傾向について単純に比較することもできませんので、そういった点につきましては事務当局では把握しておりません。
○重徳委員 把握していないのか言えないのかわかりませんけれども、しかし、何も変わらないんだったら裁判員をやる必要もないわけですから、当然、裁判官だけの事実認定あるいは故意、過失の認定というもののあり方は、裁判員が入ったことで変わったと見るのが、変わっていないとは言えないんじゃないかと思うんですが、もう一度、いかがでしょうか。
わからないというのでは答弁になりませんので、どう見るべきなんでしょうか、我々は。
○平木最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、裁判員制度が導入されましたのは、職業裁判官のみならず、国民一般の方々が刑事裁判に参加することによって、一般市民の感覚や健全な常識が事実認定にも反映される、それがよりよい裁判につながるということが制度の目的の一つであると考えております。
ただ、具体的な事件でそういった裁判員の方々がどういう意見を述べたか、それによって故意の認定等がどう変わったのかという具体的な点につきましては、守秘義務等の問題もございますので、把握することは困難でございます。
○重徳委員 裁判所からはこのぐらいが限度なのかもしれませんが、趣旨として、健全な国民常識が入ることがそもそもの目的であり、それは、それに沿った運用がされているというふうに受けとめておられるんだと思います。
その意味では、これまでの裁判官を含む法曹三者のいわゆる常識、よくも悪くもですけれども常識というものに対して、裁判員の方は基本的には人生に一度きりの経験になりますから、いわば素人感覚、それが違う、ずれているというのは当然であり、むしろそれが期待されるということでありますね。
その結果として、恐らく、先ほどは厳罰化という結果について指摘をしましたが、しかし、その過程において、証拠に対する評価とか心証というものは、プロの裁判官と、人生で一度きりの裁判員とで随分違うんじゃないか。
よく聞きますのが、裁判員の方は、本当に、人を裁くという重大な、人の人生を左右するような、それも重大犯罪の場合ですから、場合によっては死刑だとか無期懲役とか想像を超えるような人への裁きを下さなきゃいけない、こういう立場に立たされるわけですから、当然、物すごく慎重になりますよね。誰が考えてもそうだと思うんです。
そうなると、おのずと、証拠に対する、何というんですかね、私も素人ですから言葉がいま一つかもしれませんが、証拠に対する自信が起訴をする側の検察官としてはないような場面、これは裁判員には認めてもらえないんじゃないか、そういう局面というのは出てくると思うんです。
それで、少し数字を見ていたら、資料二をごらんいただきたいんですけれども、細かい数字が載っておりますが、これは検察統計年報の数字でございます。例として、真ん中に線を引いておきましたが、殺人罪、これは未遂も含むんだと思いますが、平成十九年から二十五年にかけての起訴、不起訴、そして起訴率の数字が並んでおります。
裁判員制度が始まったのが平成二十一年でありますから、この起訴率というところに着目していただきたいんですが、平成十九年、二十年、二十一年、このあたりは五〇%前後、五二・九%、四八・九%、四八・六%なんです。ところが、裁判員制度が始まった翌年から、平成二十二年は三八・三%、二十三年は三七・一%、二十四年は三一・八%、そして二十五年には何と三〇・七%まで落ち込んでしまうんですね。
この起訴率の著しい低下、もうちょっと前までさかのぼると、もっと高いときはもちろんありましたけれども、低下していくこの勢いというのが明らかに裁判員制度が始まってから非常に急激に落ちていると見てとれるんですが、これは裁判員制度導入による影響が大きかったのではないでしょうか。いかが受けとめておられますか。
○林政府参考人 御指摘のように、未遂を含む殺人罪についての起訴率、すなわち、検察官により起訴または不起訴の処分がされた人員のうちの起訴された人員の割合、こういったものにつきましては、例えば平成十八年から平成二十五年まで低下傾向にあるものと承知しております。
しかしながら、この場合の不起訴の理由というのにもさまざまなものがございまして、例えば、犯罪死の疑いがあったことから司法解剖を実施したものの、その結果、犯罪の嫌疑がないことが判明した場合でありますとか、あるいは、被疑者の責任能力を明らかにするために精神鑑定を実施した結果、責任能力がないという判断がされた場合など、犯罪として処罰することができないために不起訴となる人員も多くございます。こういった不起訴となる人員というものについて、その増減がこの起訴率の変動につながっているものと思われます。
実際に、起訴率といいますのは、さらにさかのぼってみますと、裁判員制度導入以前におきましてもかなり変動幅がございます。時に二〇%台という年もございますし、それから六十数%台まで、大きく変動しております。
それで、それが裁判員制度導入後の傾向かと申しますと、そういった一定の傾向は見られずに、かなり大きな幅で変動しておりまして、実際に平成十八年から平成二十五年までの低下傾向と申し上げましたが、平成二十一年に実施される前からやはり低下という状況は起きておりますので、これが何によるものなのかというのは断定的に申し上げることはできませんけれども、少なくとも、不起訴になる事案というものが大きく変動する、この増減が実際の起訴率の変動につながっているのではないかと思います。
したがいまして、裁判員裁判の施行によってこの起訴率が低下したということについて、それを断定する、そのように申し上げることは、まだそういった根拠は持っておりません。
○重徳委員 今、林局長は変動があるんだというふうにおっしゃいましたが、きょう資料として用意しましたのは平成十九年以降ですが、もう五、六年さかのぼっても、基本的にはずっと低下傾向なんですね。
だから、さっきもちょろっと申し上げましたが、六〇%台だったときもあります。そこから低下傾向というのはわかる。二十一年までの間どういう理由で低下してきたのかというのは、それはまた局長の分析に委ねますが、そこまでの低下傾向の減少率に比べて、明らかに二十一年からは大幅に、だって、五〇%が三〇%まで落ちちゃっているわけですから、六〇が五〇になるのとは全然レベルが違うと思うんですよ。
これを断定できないというのは、断定までできなくても、関係ないとまでは言えないと思うんですが、いかがでしょうか。関係ないとまでおっしゃいますか。
○林政府参考人 この起訴率について、さらにさかのぼってみますと、例えば私どもの調べたところで言いますと、昭和六十三年とか、そういうことになってきますと、かなり、二〇%台というような年もございます。その後も、平成に入ってからも、三〇%台という年もございます。
そういった意味で、こういったものが裁判員制度施行によるものなのかということを申し上げる根拠は持っていないということでございます。
○重徳委員 全く関係ないとまでは言えないというところまでは来ていると思うんですが、この場で断定してくださいと言っても、断定はしてくれないと思います。そこまではいいんですが、しかし、やはり無関係ではないと思います。
それから、別の指摘では、これはちょっとどう認識されているかをお聞きしてみたいんですが、裁判員制度が始まってから、当然、重たい犯罪が裁判員の対象になるわけですから、何の罪で起訴するかということによっても、裁判員にかかるか、従来の裁判官にかかるかということも変わるんですね。
ですから、いろいろなケースがあると思いますが、例えば殺人未遂でもともと逮捕されて、起訴をどうするかと考えて、結局、殺人未遂では裁判員裁判になってしまうから傷害罪で起訴することにしようと。これは俗に罪名落ちと言うんですかね。法務省でそう呼んでいるかどうかは知りませんが。
そういう罪名落ちなんという現象も起きているのではないか、それも裁判員制度が始まってからそういうことが顕著になっているのではないかという指摘もあるんですが、それについてはどのようにお考えでしょうか。
○林政府参考人 今委員御指摘のいわゆる罪名落ちということにつきましては、いろいろな論文等でそれが指摘されたことがございまして、それについて、果たしてそういうものがあるのかどうか、当然、そういうことについては注目して見ておるわけでございますが、少なくとも、そういった裁判員裁判対象罪名で受理した事件を、あえて裁判員裁判対象でない軽い罪名で起訴する例というものがふえているという認識はございません。
これは、今、罪名落ちというときによく言われるのは、例えば殺人罪で受理したものが殺人罪で起訴された比率が低下してきている、恐らく、それが低下しているのは、裁判員裁判対象罪名でない処理がなされているからじゃないかということがそういった論文の中では指摘されておるわけですが、少なくとも、統計によりますと、例えば一年間で検察が未遂を含む殺人罪で受理した件数と殺人罪で処理した件数、これを比べますと、その比率は、裁判員制度導入以前から現在まで大きな変動は見られておりません。要するに、殺人罪で受理して、その処理が同じ罪名で処理されている。
それで、この場合の処理ということでございますが、処理の中には、当然、不起訴がございます。殺人罪という罪名で不起訴になった事案も含めて処理になりますけれども、もちろん起訴もございますが、起訴と不起訴を合わせて処理件数になります。この罪名ということでいきますと、殺人罪という罪名で受理した件数と殺人罪という罪名で処理した件数というのは、比較しますと、これまで、裁判員制度導入以前から現在まで大きな変動は見られていないところでございます。
そうしますと、先ほどの御質問にもかかわりますが、果たして不起訴というものがどのように推移しているのかということにもかかわってまいりまして、少なくとも、現時点において、あえて検察において、裁判員裁判を意識して、軽い罪名で、罪名落ちの形で起訴する例というものがふえているという認識は持ってはおりません。
○重徳委員 今局長は認識を述べられましたが、今回の裁判員制度の検証において、いろいろな数字、傾向があると思うんですが、私が見るに、一番劇的なのが起訴率の低下だと思うんですよ。先ほど、求刑を上回る判決がちょっとふえたとか、求刑どおりの判決がちょっとふえたという指摘はさせていただきましたが、しかし、一番劇的なのは起訴率の低下だと思いますよ。
罪名落ちについては、今、そんなことはないんだとおっしゃいましたが、これも数字が出ていないのでわかりません。
そこで、大臣、今回の検証に当たって、私、非常に重要なところだと思うんですが、今議論になったものについて、今すぐ出なくても、数字できちんと示した上でこの委員会で議論するべきだと思うんですが、これを出していただけませんか。こんな議論をしていても、わからないです。
○奥野委員長 大臣答弁の前に、僕もそれは非常に興味があるので、平成になってからの数字を、今議論になっている数字をばっと出して、理事会に出してくれないですか。それの方が議論しやすいよ。これはちょっと短いからね、平成十九年からだから。
そんなことを出せるか出せないかだけ、刑事局長。
○林政府参考人 私、今お答えさせていただいた中に数字も若干引用したところがございますので、そういった、もう少し長いスパンの、起訴率でありますとか、あるいは先ほど申し上げた受理した事件数とそれから不起訴も含む処理の件数とか、そういったものについては、後刻、提供させていただきたいと思います。
○重徳委員 委員長、ありがとうございます。
裁判員制度があろうとなかろうと、起訴率が余りに低下して、殺人罪は三割しか起訴していないというのは、逆に言うと、では何で逮捕したんだという話にもなります。逮捕した段階でニュースにもなるわけですから。
ですから、確かに、起訴したけれども結局無罪というのは、これはこれで重大な人権侵害だ、これはわかりますが、その前に逮捕があるわけですし、ニュース、報道によって、これは社会的制裁も十分受けてしまう。制裁というか、結局無罪で起訴されないような事件についても報道されてしまう。被疑者に対しては大変な人権侵害だって起こってしまうわけですから、起訴率の低下というのは非常に重要な問題だと思います。
今のこの低い状態がおかしい、きょうは私はそういう立ち位置から質問をさせていただいておりますが、今の状態がおかしくないのであれば、今までは何だったんだという見方もある。
いずれにしても、裁判における有罪率というのは、裁判官裁判の時代も九九%以上、そして今の裁判員裁判になってからも九九%以上ということで、有罪率はちゃんと確保しております。だけれども、それは、そもそものあり方を考えたときに、警察が逮捕しても、それは起訴されるとは限らない、起訴される率がどんどん下がっている。一方で、起訴をされたからには九九%有罪だという意味では、一体、誰が有罪、無罪を決めているんだというような感覚にも及んでしまうわけです。
ですから、正確な証拠を集めて、より正確な起訴をするというのはいいんですけれども、検察官の仕事の仕方としてそれが全然間違っているとは申し上げませんが、しかし、この起訴率が急激に低下するというのは、余りに、場合によっては起訴すべき容疑者も起訴していないんじゃないかという疑いさえ出てくるわけです。
大臣、今までの議論をお聞きになって、どう認識されていますか。これはもう全く問題ないと思われますか。
○奥野委員長 ちょっと待って。
葉梨副大臣は警察上がりなんだよね。さっきからぶつぶつ言っているから、何か言いたいことがあったら言ってもらった方がいいと思うよ、大臣の前に。
○重徳委員 では、副大臣の話を伺った上で、大臣の御見解をお願いします。
○葉梨副大臣 裁判員裁判が始まったときにはもう私は警察を退官しておりましたので、最近の状況というのはちょっとわからないところがあるんですが、逮捕された者が起訴されていないというような委員の御指摘でございましたが、この件数は、逮捕の件数ではございませんで、警察が検察に送致をした件数です。
例えば、被疑者が死亡している場合、こういったものは逮捕になりませんし、先ほども不起訴事由としてございましたけれども、責任能力が問えない、そういうような場合、これを逮捕しない場合というのも相当数あるということです。
一般的に、私が社会面で知る限りにおいて、警察が逮捕をして相当大きな問題となった事案が公判請求されなかったというような記憶は余りありません。
○重徳委員 今のお話はわかりましたが、それは、ここのところ、起訴率が下がっている理由にはならないと思うんですよ。
だから、より適切な議論になったという意味では感謝申し上げますが……(葉梨副大臣「裁判員裁判が理由かどうかわからない」と呼ぶ)もちろん。そこは、でも、検証しなければわかりません。今マイクに入っていないと思いますので、裁判員裁判が原因だったかどうかは、そこをまさに今検証しようとしているわけですから。
逮捕と送致と起訴の関係はわかりましたが、いずれにしても、ここ数年間で劇的に起訴率が下がっているということとは今の御答弁は関係ないと思っております。
大臣、私の本論に戻りまして、起訴率がここまで大幅に急激に、裁判員裁判が始まってからこれまで五年間に下がっているということにつきまして、問題ないでしょうか、問題意識をお持ちでしょうか。お答えください。
○上川国務大臣 起訴率に着目をされて、裁判員裁判が導入された後、これが急激に下がっているという御指摘をいただいた上で、刑事局長から答弁をしたところでございますけれども、長期のトレンドの中でどのように位置づけるかということについて、数字をきちっとした上で評価をしていく、こうしたことになったかというふうに思います。
そういう意味では、私、変化してきたことに対して、どのような背景があるのかということについてやはり真摯に考えていく必要があるというふうに思っておりますので、今のようなトレンドについてのデータに基づいてまた議論をしていただきたいというふうに思いますし、そもそも、検察におきましては、先ほど御指摘ありましたが、法と証拠に基づいて個別の事案ごとにしっかりと適切に起訴するあるいは不起訴とするという判断をする、そして起訴罪名についての選択をするということ、この基本にのっとってやっていくということが大変大事だというふうに思っております。
その意味でも、御指摘いただいたということでございますので、きちっと調べて、データを出したいというふうに思っております。
○重徳委員 ぜひしっかりした議論をしましょう。今までちゃんと検討されていなかったのであれば、おかしいと思いますよ。私、ことしに入ってから、法務委員になってからちょっと調べて、おかしいなと思ったぐらいの話ですから、皆さん方が問題意識を持たないのはおかしいと私は思います。ぜひ深い議論をしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
それから次に、もう一つ、残りの時間で、裁判員の辞退率について議論していきたいと思います。
資料三をごらんください。階委員からも出席率などについて御指摘がありましたが、私は、枠で囲ってあります裁判員候補者の辞退率、辞退する方の率について取り上げますと、平成二十一年、制度が始まったころは五三%、半分ちょっとの方が辞退されていたということですが、これが年々大きくなっていまして、平成二十六年は六四・四%、三人に二人は辞退だというような状況になっております。
これは、ちょっと調べましたところ、事業における重要用務、つまり、自分が欠けたら仕事にならないんだという理由で辞退されている方がふえているというようなことなんですけれども、この辞退率アップというものが問題だと思っておられるのかどうかがこれまで役所からの説明をお聞きした中ではよくわからないんですが、辞退率が五三%から六四%までふえていること、これは問題だと捉えておられますか。刑事局長、お願いします。
○林政府参考人 辞退率の変化というものについては、当然、今後も裁判員制度が適正に運用されていく中で常に注目していかなくちゃいけないデータであると認識しております。
他方で、実際にこの辞退率がどうして上昇しているのかというようなことにつきましては、基本的に辞退を認めるか認めないかについては個々の裁判体において、裁判所において判断が行われていることでございますので、その集積ということでございますので、その理由とか原因については私どもからはお答えすることはできないと思いますが、いずれにしても、重要なデータであるというふうには考えております。
○重徳委員 これは重要だと思うんですよ。国民に参加していただくのが裁判員なんですから、辞退する人がふえてしまったら、本当により少ない人の間でしか裁判員としての審理ができないということになりますから、これは非常に本質的なところだと思うんですね。
ですから、今回、そういうこともあるので、分母を減らす話にしかならないかもしれませんが、それにしても、こういう辞退率を少しでも減らすために審理期間の長いものは除外していこうという改正が行われるのかなと最初私は思ったんですが、そうではないんですね。
これまで五年間、百日超えあるいは百三十日ぐらいの審理日数に及んだ、そういう裁判もありました。それは確かに国民、裁判員の方にとっては大変な負担だったかと思うんですが、そういうこともあって、仕事があるから、忙しいから、自分がいなくちゃ仕事にならないからということで辞退する人がふえている、そういう分析になっているにもかかわらず、では、それをどう捉えているのかというのは、重要な数字だとか注目すべきところだとおっしゃいながら、だけれども、粛々と今までどおりやっていきますと。
特に今までは問題にならなかったけれども、これから、一年二年かかるような裁判が出てくるかもしれない、それに備えて今回の改正規定を置くなんというのは、全然、課題に対する対策、対応になっていないんですね。今回の制度改正は、何だか、何をやっているんだか、わからないんですよ。
むしろ、私の感覚では、そんな、期間が長くかかる、一年も二年もかかるような重要な裁判こそ、何人辞退されてでも、とにかく裁判員にちゃんと入っていただいて裁くべき裁判なんじゃないか、こういうことだって言えると思うんですよ。だけれども、それは、何か全然かみ合った制度改正になっていないと私は思います。
大臣、今回の改正、長期のものについては除外するという改正、一体何のための改正なんでしょうか。今までの御答弁は、それはそれで耳にしておりますが、今申し上げたような観点で、両面ありますね、辞退率を下げるためには余り長いものはどけておこう、辞退率を下げるためなのかどうか、それからもう一つは、いや、それよりも、重大な事件なんだからむしろ除外するべきじゃないんじゃないか。その両面、意見があると思うんですが、この点、どのようにお考えなんでしょうか。
○上川国務大臣 裁判員裁判の趣旨に照らして考えてみますと、やはり裁判員裁判にできるだけ多くの国民の皆さんに参加をしていただく、そして司法に対しての信頼を高めていく、そうした趣旨にのっとってこれまで五年強取り組んできたわけでございまして、この中には、先ほど御指摘の百日を超えるような、非常に負担の大きい事案もあったというふうに思っております。
そういう中にあっても、国民の皆さんが本当に真剣に審理に参加していただくということ、こうしたことの事例の積み重ねの上で裁判員制度そのものもさらに前進していくことができるのではないか、こう思うところでございます。
ただ、余り過度な負担、超過度な負担になってしまう……(発言する者あり)失礼しました、意味するところは御理解いただきたいと思いますが、そうした負担を強いるようなことになりますと、裁判員裁判そのものに対しての非常に逆な反応が出てきてしまうということもあり得るということでございまして、やはり裁判員裁判が持続的に成長していくためにも、さまざまな御意見を踏まえながら、今回につきましても、円滑な、また適正な運用を図るという趣旨に照らして、長期につきましての判断をお願いしているところでございます。
例外的に対象事案から除外できる規定ということにつきましては、これまでもさまざまな御議論をいただいたところでございますが、今回、著しく長期の審判の場合についても、本来の趣旨に照らしてしっかりと対応していくということが必要ではないか、これはあくまで例外中の例外ということでございますので、そうした観点から御判断をいただきたいというふうに思うところでございます。
○重徳委員 超過度のものは除外する、これはわかりましたが、辞退率についてはどのように捉えておられますか。
今局長からは、何か煮え切らない、重要な数字で注目すべきなんだけれどもそこまでだというような御答弁でしたけれども、これは問題だと思いませんか。全く問題ありませんか。どのように捉えていらっしゃいますか。
○上川国務大臣 やはり辞退をするという意味においては、正当な理由があろうかというふうに思います。
ただ、できるだけ多くの皆さんに参加をしていただくための環境整備でありますとか、あるいは理解を深めていただくための法教育も含めて、きめ細かな対応をしていき、環境整備をしていくというのは非常に大事なことだというふうに思っておりますので、どういう要因によって辞退率がどうなるかということもそうでありますが、全体としては、参加をしやすいような環境整備ということについてはさらに力を入れていかなければいけないというふうに思っております。
○重徳委員 つまり、問題なんですか、どうなんですか。
さっき、階委員への御答弁の中では、これを評価するには何か時期尚早であるというような御答弁を耳にしたんですけれども、これは五年間やって、ずっと辞退する人がふえている、出席する人が減っている、もうずっと同じ傾向なんですから、これは評価しようがなくはない、これはどう評価してもこういう傾向でしょう。
これは今回改善すべき大きなテーマだと思いますよ。大臣、いかがですか。
○上川国務大臣 辞退率についての着目でございまして、これが大きく低下しているということについての所見ということでございますが、個別事件において裁判所が判断をする、その結果として、こうしたことになっているということでございますので、私自身、そのことについて所見を申し述べるということについては差し控えさせていただきたいというふうに思うところでございます。
この制度そのものが発展していくことができるようにしていくためには、先ほど来申し上げましたとおり、さまざまな環境整備について、そして参加しやすい取り組みということについては、やはり、いろいろな総合的な運用の中での改善ということもございますので、そうした面でも努力をし続けなければいけないと思います。
○重徳委員 この委員会に入ってから、何か、答弁責任者が誰なのかよくわからない場面が多くて、所見を差し控えるとおっしゃいましたが、でも、今回の法案を提出されているのは上川大臣なんですから、ここで逃げちゃいけないと思います。
時間も近づいてきておりますので、最後に確認なんですが、今回の改正の契機となりましたのは、前回、最初の法律におきます附則の検討規定ですね。三年たったら検討して、所要の措置を講ずると。だけれども、今回は、そういう規定はないんですか。
だって、大臣は、さっき所見を差し控えるとおっしゃいましたけれども、階委員に対しては評価するのは時期尚早だというようなこともおっしゃいました。だったら、これから先、運用しながら、当然、検討、見直しをするべきじゃないですか。今回の法案に検討規定はなぜないんですか。もう見直さないんですか。義務的に、これは立法府の意思としても、検討をしなければ、こんなきょうみたいな議論では、もう全然、課題が幾らあっても、問題ないと答弁せざるを得ないですね、だって今回改正しないから。
だから、やはり、ちゃんと課題を課題として捉えて、国会でも審議して、それに基づいた結論を出すというのが当然であって、今回も、当局からは問題はないような答弁があっても、それは改正した案になっていないんだから、そう答えるしかないでしょう。
そこまでは百歩譲って理解するとして、立法府の意思としては、やはり、検討して見直すということは、必ずこれはまた三年とか期限を決めて見直すべきだと思うんですが、まず、政府当局として、なぜその検討規定を今回は置かないんでしょうか。
○上川国務大臣 裁判員裁判そのものにつきましては、国民の皆さんの関心も大変高いものでありますし、また、司法の仕組みにつきましても大変重要な制度であるというふうに認識しているところでございます。
今後につきましても、その施行状況を十分に注視しながら、必要に応じまして、制度上あるいは運用上の措置の要否も含めまして検討をしてまいりたいというふうに考えております。
○重徳委員 その程度の御答弁しか最初から期待しておりませんでした。この委員会における答弁はもう期待外ればかりです。
そして、今回、これはもうコメントで終わりにしますが、九五%を超える裁判員がこれを貴重な体験だったと肯定的な評価をしているなんていう超自己満足なことが、裁判所が出している検証報告書に書かれているわけですね。「国民の誠実さ、公的な機会への参加意識の高さ、新しいことがらに対する知的な関心と理解力の高さが確認できた」といって、これはまあ、すばらしい日本国民ですよ。そう思いますが、それに対応する裁判所も法務省もなっていないなと私は思います。
きょうは、本当に言いたいことはまだ何時間でもありますが、時間が来ましたので、以上とさせていただきます。
ありがとうございました。
○奥野委員長 重徳君の質疑はこれで終わりますけれども、政務官、法務省、最高裁判所、よく調整して、必要なデータ、結果のデータをうまく整理して、確度の高いコメントが言えるならばそれも記述して、理事会へ出してください。
あさっての朝、理事会だったと思いますから、そのときまでに出してください。ぜひよろしくお願いします。
午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。