○奥野委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。
きょうから司法取引の議論に入らせていただいているんですが、私、ちょっと前回の可視化の関係で何点か確認をしておきたい点があるので、まず初めに、可視化のことについて若干おさらいみたいな形で質問をさせていただきたいと思います。
まず初めに、可視化の例外規定です。
三百一条の二第四項第一号、第二号について前回も問題視をさせていただきましたが、まず第一号、「記録に必要な機器の故障その他のやむを得ない事情により、記録をすることができないとき。」についてなんですが、機器の故障なんというのを今どき例外規定の筆頭に挙げること自体、おかしいじゃないかということを申し上げました。
前回、局長答弁では、機器の故障等の外部的要因によって取り調べ時に録音、録画の実施ができないような場合にまでなお録音、録画を義務づけるとすると、捜査機関に不可能を強いることになるというような御答弁がございました。可視化によって、捜査側からすると、被疑者がしゃべらなくなるんじゃないか、こういう意識ばかりなんですけれども、今後は可視化をしなきゃ被疑者はしゃべらないぞという、本来、みずからの人権を守るためのそういう可視化なのでありますから、捜査機関側の都合で簡単に、不可能を強いるなんということを言うべきではないんじゃないかと思います。
ほかにも御答弁の中では、故障の発生を完全に防止することは困難ということもありましたが、故障したらまず直してからちゃんと取り調べるというのが当然ですし、それから、別の御答弁では、他の機器も全て使用中という事態もあるということなんですが、そもそも、取り調べ室が埋まっていたらそこがあいてから入るのと同じように、使える機器が全部ふさがっていたら機器があいたら使うということではないんでしょうか。
その意味で、このような規定には大いに異論がございます。本当に災害その他やむを得ない事情というぐらいに限定をして、やむを得ない場合にも、全部は撮れていないかもしれないけれども、最初はちょっと撮れていないけれども数分たったところからはちゃんと撮れているとか、そういうことならまだわかる。それから、せめて、録音、録画機器が故障していたとしても、ICレコーダーで音声だけでもバックアップはとれている。こういうように、非常に限定的にこの要件を設けるべきではないかと思うんですが、林局長、いかがでしょうか。
○林政府参考人 本法律案の例外事由につきましては、あくまでも全過程の録画義務を解除し得る場合の例外規定という形で定めておるわけです。したがいまして、やはり外部的な要因によって録音、録画の実施ができないような場合にまで録音、録画を義務づけるということについては、これは不可能を強いることとなるから、例外事由を設けようとしたものでございます。
その上で、例えば、今最後に、せめてICレコーダー等での録音というものはすべきではないかというような御指摘もございましたが、これにつきましては、今回、制度として録音、録画義務というものをつくる場合において、その場合の記録というのは録音と録画両方の機能を備えたもの、これによって記録をしておくことが、その後のいろいろな記録の内容をめぐる裁判での争いが生じにくいということから、制度としてやはり録音と録画というものをセットにいたしまして、その上で、今回の機器による記録というものを義務づけているわけでございます。
そういったことから、実際に、そういった制度としての録音、録画による記録、全過程記録というものがどういう場合に義務を解除し得るのかという観点におきましては、やはり今回のように例外事由を定めさせていただいて、外部的な事情において録音、録画が実施不可能な場合にはこの義務を解除しよう、こういった考えに基づくものでございます。
○重徳委員 今の御答弁は、最初からずっと一貫して今の御答弁のままで、一歩も譲っていない、そういう内容なんですが、私どもも立法者なわけでありますので、この点については物申していきたい点があるということを申し上げておきたいと思います。
それから、例外規定の第二号なんですけれども、これもあっさりしているんですね。「被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。」と非常にあっさりしています。供述することができないやむを得ない特別な事情があると認めるときとか、もうちょっとハードルを上げるのが普通なんじゃないでしょうか。
その一方で、前回の御答弁で、例外事由は非常にあっさりと認めている一方で、なぜこれでいいのかという理由を局長が御説明する中で、検察官側が裁判において任意性の立証の手段を失ってしまうというリスクを取り調べ官、捜査機関は負っているので、捜査機関が恣意的に運用することは困難であろうということなんです。
つまり、この間局長がおっしゃったことは、仮にこの例外規定をあっさりと適用したとしても、裁判では非常に重たい立証責任が課されるリスクがあるんだということなんですけれども、これは検察官にとっても非常な負担になると思いますね。当然に認められる例外規定だったのに、事実上裁判における立証責任が非常に重たくなる。入り口と出口でこんなバランスの悪い規定では、私は立法論としてもおかしいんじゃないかと思っております。
だったら、こうしたやむを得ない特別な事情があるんだということをあらかじめ例外規定に入れるべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○林政府参考人 今回の法律案の三百一条の二第四項第二号でございますけれども、「被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。」というふうに規定しております。
すなわち、一つには、これは、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないかどうかということがまず規定の主たる部分でございまして、これを判断、認定する事情が外部的にあらわれた被疑者の言動に限定される、このような形での規定となっております。被疑者が録音、録画を拒否するような言動をした場合に、それだけで直ちに例外に該当するわけではなくて、あくまでも、そういった言動から、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと合理的に認められる場合に限ってこの例外に該当することとなります。
したがいまして、捜査機関といたしましては、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないということを、公判でその該当性が問題になったときには、みずからの責任でこの例外事由に該当する立証をしなくてはならないということになります。
そうしますと、結局、例えば、捜査機関といたしましては、被疑者が録音、録画を仮に拒否するような言動をした場合、それだけであっさりと録音、録画をやめることができるのかと申し上げますと、そうではなくて、やはりそのためには、何ゆえに拒否するのかというようなことを相手に尋ねてみなくてはいけません。そうでなければ、記録をしたならば十分な供述をすることができないと合理的に認められるかどうかが判断できませんし、また、後にそれを立証することができません。
また、被疑者がこの録音、録画に関してさまざまな不安を持っているかもしれません。そういったことについては、必要に応じて説明をしなければならないかもしれません。
そのような説明を加えたり、あるいは被疑者に拒否の理由などを尋ねた上でも、やはり拒否するとか、あるいは録音、録画に応じにくい言動をするとか、そういった場合があって初めてこの例外事由を認定できるんだろうと思います。
そういったことは、今回原則として取り調べの全過程の録音、録画が義務づけられておりますので、実際にそういったやりとりをしていることもまた一つ録音、録画されていると思われます。
そういったことで初めて将来の公判での該当性の立証ができようかと思いますので、そういったことにおきまして、この例外事由というものにつきましては、捜査機関が恣意的に、またあっさりと認定できるようなものではないと考えております。
○重徳委員 私が言っているのは、検察官があっさりと例外を認めるということじゃなくて、この規定があっさりとしているわけでありまして、あっさりした規定である以上は、あっさりと認めることだって可能になっている、これが問題じゃないかというふうに申し上げているわけであります。
ですから、今局長みずからおっしゃいました、相手になぜ、何ゆえに拒むのかということをちゃんと尋ねる、確認をする、それから、不安を抱えている方にはちゃんと説明をするというようなことをやらなきゃいけないんだよと。それをやらなきゃこの例外規定を乗り越えることはできないんだよということを、だったら、最初から条文に書くべきだと思うんですね。
さらに言えば、本来、検察官側だけじゃなくて、弁護人が被疑者に対して、あなたの権利を守るためなんだよということをきちんと説明して、そして本人が納得する、さらに弁護人が同意をした上で例外を当てはめるというような内容にするべきではないかということも思いますが、これもまた同じような御答弁でしょうから、これは質問しません。
そして、先ほど少し申し上げましたけれども、可視化したら被疑者がしゃべらないという発想が捜査機関側、検察側の基調にあると思うんですが、むしろ、これからは、被疑者側の権利として、可視化しなきゃしゃべらないよということも想定するべきだと思うんですね。
現に、私が以前の委員会で指摘をしました沖縄のアメリカ軍の兵士に関しては、例えば平成二十一年の読谷村のひき逃げ事件においては、実際に米軍兵は、日本のこんな密室の取り調べに応じることなんかできるかと言っているわけです。可視化もされていない、弁護人の立ち会いもない、こういうところでぺらぺらしゃべるわけにいかないと。外国から見たら、日本の常識と世界の常識は違うと思うんですよね。
そういう観点からも、むしろ、例えば今回の対象事件になっていない痴漢とかそういう事件についても、被疑者側が希望をした場合には録音、録画を義務づける、任意じゃなくて義務づける、こういう制度だって十分あり得るんじゃないかと思うんです。
検察側にとって何か不都合があるんですかね、これは。被疑者側がむしろ可視化、録音、録画を希望するというときにも、検察側の事情で、いや、それはだめだということはあるんですか。ないんだとすれば、それを義務づけたっていいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕
○林政府参考人 まず、今回、対象事件として二つの類型を定めておるわけでございますが、それ以外の事件におきまして、例えば、被疑者側、弁護人が録音、録画を求めた場合にこれを義務づけるということについてでございますけれども、これにつきましては、録音、録画を求めたというだけで本当に録音、録画の必要性が高い事件であるのかどうかということは、必ずしもそうは言えないであろうと思います。
他方で、被疑者、弁護人が録音、録画を求めた場合に録音、録画を義務づけるといたしますと、当然、弁護人といたしましては、取り調べ状況を把握、確認するために、念のためであっても、あらゆる事件で録音、録画の請求を行うのが通常であろうと考えられます。そうしますと、結局のところは、全ての事件について一律に録音、録画を義務づけるのと同様の事態となりかねないわけでございます。
そういったことから、被疑者、弁護人から録音、録画を求められた場合に必ずそれを録音、録画の義務づけとすることについては、相当でないと思われます。
その上で、検察においては、今回の制度としての対象事件以外でも録音、録画を行っているわけでございますが、そのような場合につきましては、やはり、録音、録画をすることについて、一つにはメリットであるとか、あるいは、録音、録画を求められて、それをしないとなかなか被疑者の取り調べも円滑に進まないとか、そういったことも実際の録音、録画の試行の段階では当然考えるわけでございまして、録音、録画があると必ず取り調べができないという立場に立っているわけではございません。
その意味でも、やはり、対象事件以外でも検察において罪名を限らず録音、録画に取り組んでいるのは、そういった趣旨が一つ含まれておろうかと思います。
○重徳委員 もう根本的な発想というか認識を変える必要があると思うんですね。
前の委員会で國重委員が、弁護人というのは、ひたすら、たとえこの被疑者が絶対おかしいと思っていても、全力で被疑者を守るために活動するんだと。そういう立ち位置が余りにこれまで軽んじられていたがゆえに多くの冤罪を生んできたということでありまして、やはり公明正大に、どこに出ても恥ずかしくない、そういう環境での取り調べを行わなければ本当の公正な裁判もできないんじゃないか、こう思います。
私、再三国際比較をさせていただいておりますけれども、やはり日本の刑事司法制度というものは根本的にその思想、哲学を変えていかなくちゃいけないんじゃないか、こう思います。改めて申し上げさせていただきます。
さて次に、司法取引の議論に入らせていただきます。
まず、今回は、私も最初の質疑でございますので、基本的なところを御教示いただきたいと思います。
今回は、捜査協力型のみの司法取引導入でありまして、自己負罪型は導入しないということであります。そもそも、他人の犯罪情報を提供することによって、なぜその見返りとして起訴の見送りとか軽い求刑を求める仕組みが許される、あり得るのかということ、これは法理上どのように説明できるんでしょうか。
○林政府参考人 現行の刑事訴訟法上、検察官には広範な訴追裁量権が認められております。すなわち、刑事訴訟法二百四十八条におきましては、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」と規定されておりまして、証拠上犯罪事実が認定できる場合でありましても、検察官の裁量により公訴を提起しないことが認められております。
また、審判の対象である訴因の設定につきましても、検察官の専権であると解されておりまして、判例におきましても、検察官が、事案の軽重、立証の難易等諸般の事情を考慮して、犯罪事実の一部により、または訴因事実を選択して訴追することを認めております。
今回の合意制度は、こういった広範な訴追裁量権を背景といたしまして、被疑者、被告人の事件についての処分の軽減等を行うことを可能にするものでございまして、被疑者、被告人が他人の刑事事件の捜査、公判に協力したことを、検察官が、刑事訴訟法二百四十八条にも規定されております犯罪後の情況といたしまして、被疑者、被告人に有利に考慮いたしまして、これを訴追裁量権の行使に反映させることができる、こういったことを法理論的な根拠とするものでございます。
○重徳委員 基本的な理屈は一応わかりますが、これまでも、つまり現行制度上の検察官の訴追裁量権の一環として、さまざまな、いわゆる情状酌量といったようなことが認められてきたということだと思います。
今の御説明をもうちょっとかみ砕いて言うと、例えば、この被疑者は十分に反省しているとか、また初犯であるとか、あるいは余罪も認めているということもあるんですかね、そういうようなことを考慮して訴追するしないというようなことも判断できるのが今の制度だということなんですね。
ちょっと確認なんですけれども、今私が申し上げました、反省しているとか、あるいは余罪も認めているなんというのはむしろ自己負罪型でありまして、他者の犯罪の捜査協力をするということも現行法上の協力をしたということに当たるということなんですが、現行法上も、任意というか、裁量の範囲内では捜査協力型が認められているというふうに理解してよろしいですか。それを改めて制度化させるということなんでしょうか。
○林政府参考人 今回の合意制度を考える上で、合意に至る手続でありますとかその効果、こういったものをこの制度で定めております。そういった手続の側面と、結果的に、これまで現行法におきまして、量刑の判断に当たりまして、犯罪後のいろいろな情況というものを考慮されて実際の量刑がなされております。
そういった意味において、その後者であります、量刑の部分で答えさせていただければ、これまでの現行の刑事訴訟の裁判の中でも、例えば、共犯者がおりまして、自分のことのみならず、共犯者の事件の解明、あるいは自分の犯罪組織の関与に関する解明、こういったものに対する貢献をその者に有利に解してその量刑に影響させる、こういったことは、当然、刑事裁判の現場では行われてきたものと考えます。
他方で、では、そういったものに至るまでの、協議をして合意をして、その合意の手続としてどのようなものを定めるか、そういった手続についてはこれまでの刑事訴訟法には存在しておりません。
○重徳委員 ここでちょっと一つ大臣にお尋ねしたいんですが、今の現行制度との関係でいうと、自己負罪型であろうと捜査協力型であろうと、検察官の訴追裁量権の範囲内として、一応、その範囲内ではあると認められてきたものであるということなんですね。
そういう中にあって、先ほど黒岩委員への大臣の御答弁の中でも、まず捜査協力型を導入して、必要に応じて段階的に自己負罪型も検討するというような趣旨の御答弁がありましたが、今既に捜査協力型だろうと自己負罪型だろうとやっているわけなんですよね、言ってみれば。
なのに、なぜ捜査協力型だけ今回手続化して、自己負罪型はこれから追ってという話になっているんでしょうか。
○上川国務大臣 ただいま御質問の合意制度には、二つ、捜査・公判協力型と自己負罪型があるということでございます。この捜査・公判協力型につきましては、主として組織的な犯罪等の解明を目的とするということでございます。また、自己負罪型につきましては、主として事件処理の迅速化を目的としている、こう指摘されているところでございます。
今回、証拠収集方法として特に必要性が高いと考えられる捜査・公判協力型の制度をまず導入しようということでございますが、昨今の事犯、財政経済犯罪、あるいは薬物関係の事件ということでございますが、組織性の高いところでなかなか真相解明に至らない、こういう事案が非常に深刻化しているということにも鑑みまして、まず初めて導入するものとして捜査・公判協力型の制度を導入し、先ほども答弁させていただきましたけれども、自己負罪型の制度につきましては、この新しい制度をまず導入した上で手続をしっかりと運用していくということでありまして、その上で、必要に応じて、そのような制度について、我が国の刑事司法制度に対してどのような影響を及ぼすかということもしっかりと見きわめながら、検討を行っていくことが妥当ではないか、こういう判断でございます。
○重徳委員 ただ、その捜査協力型というのは、他人のことを、他人をあげつらうと言うとあれですが、そういう制度なわけですから、今回、先ほどまでずっと議論しておりました、可視化によって冤罪を防止するんだという趣旨からすると、何か逆を行っている感もあるんですね。順序として自己負罪型の方が、自己負罪型だって、余罪を認めたりするわけですから、真相解明機能は十分あると思うんですね。
この自己負罪型を今後追って検討する。確かに組織犯罪で薬物とかいろいろあるのかもしれませんが、そこを先にやってしまうことで、今回、冤罪防止ということのための刑訴法なのか、また新たなリスクを生んでしまう刑訴法なのか、何か、その目的が非常にすっきりしないものになるんですね。
しかも、可視化によって冤罪を防止するというのは、明らかに国民的にも、課題があってそれに対する問題解決だというのがはっきりしていますが、この司法取引というのは、かなりイマジネーション、私のような門外漢からするとイマジネーションの世界で、一体何が起こるのかわからないというような感じがいたしております。
もし慎重にやっていくということであるとすれば、まず自己負罪型を先にするという考え方も十分あったんじゃないかと思うんですが、それでもだめだというのはどういうことなんでしょうか。
〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕
○林政府参考人 今回、法制審議会において、この制度の問題、そういう制度について議論をされていたわけでございます。当然、その際には、捜査・公判協力型のみならず、自己負罪型ということも念頭に置いて議論がなされました。その意味において、初めから、捜査・公判協力型だけを目指してこの制度の議論がなされたわけではございません。
その上で、自己負罪型ということにつきましては、主として事件の処理の効率化というものを目的とするものであって、一般的に、自己の犯罪を認めるかどうかということを協議の合意対象とすると、まずは否認して検察官と交渉した方が有利な取り扱いが受けられるという事態、こういったことを招く結果となるのではないかとか、あるいは、被疑者にその結果大きく譲歩せざるを得なくなって、結果としてその事案の解明、真犯人の適正な処罰というものを困難にするのではないか、こういった意見も数多く見られまして、今回、自己負罪型についてはこれを採用することなく、捜査・公判協力型でこの制度を始めるということになったものでございます。
○重徳委員 ちょっとこの点はもう少し私も研究をして、また理解を深めていきたいと思っております。
きょうは、消費者庁の川口次長にもお越しいただきました。
実は、消費者庁が所管している公益通報者保護法という法律があるんですね。これは、趣旨としては、この公益通報ハンドブックによりますと、
国民生活の安心・安全を損なうような企業不祥事は、事業者内部の労働者からの通報をきっかけに明らかになることも少なくありません。
こうした企業不祥事による国民への被害拡大を防止するために通報する行為は、正当な行為として事業者による解雇等の不利益な取扱いから保護されるべきものです。
「公益通報者保護法」は、労働者が、公益のために通報を行ったことを理由として解雇等の不利益な取扱いを受けることのないよう、
にするものであるというものなんですね。対象となる通報対象事実というのは、「犯罪行為又は最終的に刑罰につながる行為」を言うわけであります。
だから、この公益通報者保護法の趣旨は、犯罪行為を明らかにする、暴くということ以上に、国民、消費者の利益を守る。
具体的に言えば、例えば牛肉偽装事件がありました。場合によっては、それに手を染めてしまったような従業員が、いや、こんなことを続けてはいけない、この会社の悪い体質を世に、明るみに出さなきゃいけないということから通報する、通報したことをもって解雇だとかそういうことにならないようにする、そういう制度なわけです。
これは若干、やはり司法取引というのは非常に空想の世界という感じがするんですが、例えば、本来であれば、世の中に犯罪行為だというふうに暴かれて、そして人が逮捕されてというような大問題になる前に、内部の人間が通報をして、つまり、この公益通報者保護法の枠組みの中で、消費者の利益のために通報する方が先であるべきですね、消費者にとっては。一刻も早くそういったことを適正化するという意味では、それがより利益になるんです。
ところが、しかし、自分も手を染めてしまった以上、逮捕されるかもしれない、逮捕されてからこの組織的な犯罪行為について司法取引の世界で証言をした方が自分個人の利益になる、こんなような誘因があると、一刻も早くこの事態を明らかにしなきゃいけないという社会的な要請に反して、刑事事件になるまでそれが明るみに出ない、こんなこともあるかもしれない、そういう趣旨の質問なんです。
その意味で、公益通報者保護法をもっと強化しないと司法取引に負けてしまうんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○川口政府参考人 お答え申し上げます。
公益通報者保護法の立法当時の趣旨につきましては、先生ただいま御質問の際に御説明いただいたとおりでございますけれども、この法律は平成十八年に施行されたものでございます。
ただ、その後の施行状況ということを申し上げますと、平成二十四年度に消費者庁で調査を行いました実態調査がございます。これにおきまして、中小企業あるいは労働者における制度の認知度が十分とは言えないということが判明しております。このため、昨年度、全国各地で消費者庁におきましてシンポジウムを開催し、制度の意義、重要性を、中小企業を含めて幅広く周知するということをしております。
それから、公益通報に関する実情や実態をもっと把握しながら実効性を高めていくことが重要というふうに考えまして、ヒアリングも行ったところでございます。
これを受けまして、今月十六日から、新たな検討会、公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会の開催を始めたところでございます。この中で、事業者等の通報処理体制の整備促進、支援策を検討するとともに、公益通報についてさまざまな要件等ございますが、制度の課題、論点の整理を行いまして、その解決の方向性について検討する、こういう趣旨で検討会の開催を始めたところでございますので、制度の周知啓発とともに、制度の実効性向上のための方策について検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。
○重徳委員 私は消費者特別委員会の理事をしておりますが、今国会はほとんど消費者特別委員会は開かれておりません、法案もないし何もないということで。ちょっと川口次長の出番をつくらなきゃいけないと思って、きょうお呼びいたしたんです。
これから検討するという御答弁しかなかったんですが、具体的にもっと保護を手厚くするべきだという意見も各方面から出ていると思うんですね。認知度が足りないだけじゃなくて、やはり仕組みも不十分である、こういう指摘も出ていると思うんですが、そういったことにどういう方向で対応しようとしているのか、御紹介いただけませんか。
○川口政府参考人 お答え申し上げます。
そもそも制度の認知度が低いという問題につきましては、中小企業あるいは労働者を中心にしっかり周知をしていくということでございます。
これまでの意見のヒアリング等、制度そのものの課題といたしましては、公益通報者保護制度につきまして、論点としてどういうものを認識しているかということでございます。
公益通報の主体が労働者に限られているということをどう考えるか。あるいは、通報の対象事実の範囲につきましてどういうふうに考えるか。現在、法律で例示をした後、政令により限定列挙する方策をとっておりますが、こういうものがどうか。あるいは、三カ所に通報することになっておりますが、どういう場合に保護されるのかという要件が狭過ぎないのか。あるいは、外部通報先の範囲について、処分をする権限がある行政機関などとなっているわけですけれども、これについてどうか。あるいは、通報者保護に係る効果ということで、先生が先ほど御紹介いただきましたように、解雇の無効等を定めているわけでございますが、こういうものがどうか。
などなどの論点につきまして、もう少し緩和すべきではないかという御意見を各方面からさまざまな形でいただいているところでございます。
○重徳委員 私は、最終的に裁判なんかになる前に解決する手法というのは幾らでもあると思いますので、その方が消費者の利益になる、国民的な利益になるということでございますので、公益通報者保護法についてもずっと追いかけていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。