日本の刑事裁判手続きに関する国連自由権規約委員会からの勧告に対する対応状況は? H27.6.9
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○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。本日もよろしくお願いいたします。
前回から若干引き続きの部分もあるんですが、私としては、この日本の刑事裁判手続というものが国際的にどのように評価されているか、そこに誤解があるのであればきちんと説明をしていくこと、そして、もし改めなければならない部分があるのであれば、それは迅速に対応するべきじゃないか、こういうスタンスで臨んでまいりたいと思っております。
まず初めに、前々回から指摘をさせていただいておりますが、日本の刑事裁判手続に関して、昨年の七月に、国連の自由権規約委員会により最終見解というものが採択をされております。その中には、代替収容制度、俗に代用監獄と言われている制度、及び自白の強要について指摘されています。
具体的には、この委員会では、「代用監獄の利用を正当化し続けていることを遺憾に思う。」とか、「起訴前における保釈の権利や国選弁護人選任の権利がないことが、代用監獄において強要された自白を引き出す危険性を強めている」とか、「取調べの実施に関する厳格な規則がない」とか、「二〇一四年の「改革プラン」において提案された、」これは日本政府から提案されたということだと思いますが、「取調べのビデオ録画義務の範囲が限定されている」ということについても指摘をされています。
こういったことに対してフォローアップを求められていると思うんですが、この自由権規約委員会の最終見解に対する対応状況、どんな状況なんでしょうか、中山外務副大臣からお願いします。
○中山副大臣 昨年七月に行われました自由権規約についての対日審査を踏まえまして、同委員会から出されました最終見解には、御指摘のとおり、刑事裁判手続に関する勧告が含まれております。
同最終見解におきまして、刑事裁判手続に関連して、起訴前の勾留期間における保釈等勾留の代替手段の検討、被疑者の逮捕時から弁護人を依頼する権利の保障及び弁護人の取り調べ中の立ち会い、取り調べの継続時間の制限及び方法を規定する立法措置、それから不服審査メカニズムを保障すること等が勧告されております。
これらの勧告につきましては、法的拘束力を有するものではありませんが、一年以内にその実施に関する情報を我が国から提出することが求められております。これらについては、関係省庁の取り組みや見解等を外務省にて取りまとめ、文書の形で同委員会に提出すべく作業中ということでございます。
○重徳委員 この勧告が出されているわけですが、この勧告が出される前に、当然、日本国政府にいろいろと見解を求められていると思うんです。こう言われてもしようがないという部分もあるのかもしれませんが、あれだけ言ったのに何でこんな見解や勧告が出されるんだという部分もあるかもしれません。
実際にこの委員会でいろいろな問題点を指摘しても、刑事裁判手続は我が国の刑事裁判の体系の中では全体としてバランスがとれているんだとか、いろいろな説明があるわけでありまして、にもかかわらず、国際的には、場合によっては一方的な指摘かもしれません、こういった指摘がなされているんですが、この自由権規約委員会に対しまして日本国政府から、見解が出る前にいろいろと意見を述べたんじゃないんですか。
○中山副大臣 ありがとうございます。
御指摘の勧告に先立ちまして、二〇一二年四月に政府報告を提出いたしております。その中で、我が国の刑事裁判手続についての立場を説明しているということであります。
また、同報告書を踏まえた自由権規約委員会による対日審査の事前質問に対する回答の中におきましても、二〇一四年三月に、政府として、先生御指摘のように説明をいたしております。その上で、同年七月の対日審査においても、我が国の刑事裁判手続につきまして、その立場を説明したところであります。
○重徳委員 当たり前といえば当たり前ですが、いろいろな意見を申し述べる機会があり、事前質問に対する説明もなされたということでありますが、こういった主張をしてきたにもかかわらず、こういう勧告が、特に刑事裁判手続の分野に関する勧告が出されたということについて、これはどのように認識をされているんでしょうか。説明が足りなかったということなのか、あるいは、制度の見直しはやらざるを得ぬというようなスタンスなのか、つまり、指摘されてもやむを得ないということなのか、どのように認識されていますでしょうか。
○葉梨副大臣 足りなかったというよりは、しっかり説明はしたということだと思いますけれども、なかなか理解を得られなかった。これからも、しっかり理解を得るように発信する努力もしなければなりません。
また、この国会で審議をさせていただいている刑事訴訟法等の改正案につきましては、公共の福祉、個人の権利は保護する、そして真実を解明して適正な処罰を行うという観点からバランスのとれたものを提案させていただいているというふうに考えておりますので、慎重審議の上、この法案を通していただきまして、また、この法案の内容についてもしっかりと理解を求めていくということが必要だと思います。
○重徳委員 説明したけれども理解してもらえなかったと言うには、余りに基本的なところから指摘をされまくっていると思うんですよね。
間もなく去年の七月の見解、勧告に対してフォローアップの説明をなされるということだと思うんですが、どんな内容の説明、フォローアップを提出する予定なんでしょうか。
○林政府参考人 委員御指摘のとおり、国連自由権規約委員会の最終見解に含まれます幾つかの勧告につきましては、一年以内にその実施に関する情報を我が国から提出することが求められております。今後、それぞれの項目につきまして、関係府省間の関連する取り組み、それから見解等を外務省において取りまとめていただきまして、文書の形で同委員会に提出する予定でございます。
法務省につきましては、本法律案の取り調べの録音、録画制度の内容等につきましても、関係府省庁と協議しまして、十分な理解を得られるように、適切な説明に努めてまいりたいと考えております。
○重徳委員 今局長の、録音、録画についての説明をされるということでありますが、そもそもこの自由権規約委員会の指摘の中では、取り調べのビデオ録画義務の範囲が限定されていることが指摘されているわけなんですが、それに対してはどう説明されるんですか。つまり、実際に今、立法された、法案提出されているものがまだ限定されていることに対して問題視をされて、遺憾に思うという指摘があると思うんですが、これについては、もっとこれから広げていくんだとか、そういった趣旨のことも盛り込んでいく予定なんでしょうか。
○林政府参考人 これまでも、取り調べの録音、録画につきましては運用等で行っていること、こういったことについては説明をしてまいったところでございます。今回、法律という形で、制度として録音、録画制度ができた、そのことにつきましては、当然、しっかりと国連に対して説明をすることがまず第一であろうかと思います。
○重徳委員 制度ができたことというか、まさに今審議しているところでありますが、この制度の内容を、今回提出する法案の内容を前提として、恐らく、昨年、自由権規約委員会において、範囲が限定されているということではないかと思うんですが、あるいは、任意にやっていたということについて限定されていたと言われていたんでしょうか。今回の法案をつくることは既に織り込み済みのことじゃないですか。どうなんでしょうか。
○林政府参考人 これまでもいろいろな制度化についての議論がなされていることについては説明をしてきているかと思いますけれども、今回は、やはり、もし法律が成立したならば、こういった制度ができ上がったこと、録音する内容について、またその趣旨について、十分に説明していくこととなろうかと思います。
○重徳委員 ここは委員会であり、立法府の場でありますので、我々はまさに立法府の人間ですから、今回の法案を今後の方向性も含めてどういう形で成立させるかということもこの委員会で議論をした上で、今後の方向についても国際的に説明できるような方向で議論をしていきたいなというふうに私自身も思っておりますし、この法務委員会において議論した内容も含めて、立法府の意思も含めて、ぜひこれから自由権規約委員会の方に説明をしていっていただきたいと思います。
それから、もう一つ、前から指摘しておりますアメリカ国務省の国別人権報告書、これも、えらいことが書かれているわけなんですね。NGOがこう言ったとか、一部の専門家、法律家によるとというような、引用の発信元が適切かどうかはわかりませんが、それにしても、この米国の国別人権報告書を読みますと、例えば、国家公安委員会の規則では、被疑者取り調べのルールがちゃんとあるんだということではあるけれども、「しかし、信頼できるNGOによれば、当局はこの規則を適切に執行せず、極端な事例では、依然として被勾留者に対し八時間から十二時間に及ぶ取り調べを行い、その間ずっと被勾留者を手錠で椅子につないだままにし、強引な尋問方法を用いた。」とか、それから、検察官の録音、録画についても言及をしております。「被勾留者の自白を復唱、または口頭で要約する」、つまり、一部、自分たちの都合のいいところだけ録音、録画しているのではないか。そして、そうした「心理的な威圧感を与える手法を、裁判所は確認できないかもしれない。」つまり、裁判所の知らないところで、わからないところでそういった自白の強要が行われていて、都合のいいところだけ録音、録画をされている。
こういった指摘も、この委員会で指摘をすると、いや、そんなことはないという答弁が出てくるようなテーマについても、一方的にこういった内容のものがアメリカの連邦議会では指摘をされるわけですよね。
こういったことに対する対応というのはどのようにされているのでしょうか。
○中山副大臣 先生御指摘の米国務省国別人権報告書は、米国務省が、法令に基づきまして、日本を含む各国の人権状況につきまして連邦議会に報告するために毎年作成をしているものであります。
同報告書におきましては、我が国の刑事裁判手続について、警察による同一被疑者の再逮捕、取り調べ時の心理的な強制による自白獲得、それから、取り調べ当局による選択的な録画編集等が取り上げられております。
同報告書につきましては、国連自由権規約委員会からの最終見解とは異なり、我が国からの回答が求められているものではありませんけれども、いずれにしましても、我が国の立場及び現状を適切に発信してまいりたい、そのように考えております。
○重徳委員 発信をしていくということでありますが、どういう場で発信するんですかね。発信が不十分で、逆に、NGOだとか一部の法律家からの指摘が丸々報告書に載って、それが連邦議会にそのまま報告されているわけですから、これを見た人は、日本というのはとんでもないところだというふうに受けとめられても仕方がないと思うんです。
こういったことについて、どういう場があるんですかね。発信はもちろん必要ですけれども、連邦議会での一方的な指摘に対して、当たっている部分があるんだったらしようがないですけれども、今はそうじゃないということが前提の御答弁だと思いますので、そういったことについてはどういう場を想定されていますか。
○岡田政府参考人 御指摘の国別人権報告書でございますが、国務省が作成に当たっております。
私ども、さまざまな機会を捉えて日本の取り組みについてはこれまでも説明してきたというふうに思っておりますが、まさに、執筆に当たります国務省との関係におきましては、これからどういう形で働きかけをしていくのがよろしいのか、検討してまいりたいというふうに思います。
○重徳委員 そういうのも前提として、これはまずいという認識なんですね。そこを確認したいんですが、何か余り危機感がないというか、もちろん検討はしていただきたいですけれども、この報告書のままではいけないと。だから、これは次回、いつ出るのか知りませんけれども、結構頻度高く出ていますね、毎年のように出されていると思います。早急に手を打たないとまた同じような状況が続くと思うんですが、その辺の認識というのはどうなんでしょうか。改めさせないといけない。
あるいは、テーマによっては言われっ放しじゃないんですよ。日本国政府はこれに異議を唱えたという記述も項目によってはありますし、日本国政府は云々かんぬん、ちゃんと主張しているが、NGOによるとどうだと、両側の主張が併記されている部分もあります。
日本国政府の言い分だけを全部載せてくれというところまでは、それはなかなかいかないかもしれませんが、それにしても、全く日本国政府が否定もしていない、主張もしていない、そういうふうに見受けられるような部分があるんですよね。こういったことはやはり改めさせなきゃいけないと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○中山副大臣 重徳先生が御指摘なさっておられる意味というのは、私どもよく理解をしております。日本の政府という立場でもそうですし、一個人、一政治家としても、日本の国情を正確に反映していないような現状が他国の今回のような報告書で仮になされているとしたら、それに対してしっかりと対応し、必要に応じて発信をしていくというのは、我々も相当検討しなければならないと思います。
他方で、先ほど申し上げた国連の御指摘の部分と違いまして、回答の義務というのはないわけであります。その中で、こちらからしっかりとした戦略に基づかずに回答することによって、かえってその問題が必要以上にクローズアップされて、言葉が的確かどうかわかりませんけれども、飛んで火にいる夏の虫のような状況になって、かえって、うそが、風説が流布するような形で世界じゅうに伝播されてしまう、もしくはメディアで変な形で報道されてしまうようなことがあると、それがまた、うそが広がるようなことにもなりかねないということも同時に想定をいたします。
ですから、幸い、日米安保の条約にも基づくような、世界でも冠たる同盟関係にある米国の議会でもございますので、今までの外交上のアセットも踏まえて、必要に応じて、適宜、必要なところと相談をしながら、ちゃんと戦略を練って、先生の御懸念を払拭できるような形でしっかりと対応してまいるように、私の方も頑張ってしっかり見ていきたいと思います。
○奥野委員長 今のは外務省だけに任せておくんじゃなくて、やはり我々議会も、あるいは法務省も、ちゃんと外務省と調整しなきゃいけないということでしょう。そういうことをぜひやってもらいたい。
○重徳委員 委員長からも御助言というか御提案がありました。
何せ、やはり日本国政府の立場の発信というのは非常に弱いと思うんですね、全般に。まして、あらぬことが流布されるかもしれないから黙っているなんというんじゃ、逆だと思うんですよね。うそや悪口を言われるようだったら、もっとちゃん言っていかなくちゃいけないのであって、こういう問題は、ほかのさまざまな日本に対する、どの問題とはあえて指摘はしませんが、いろいろな言説が日本国について言われている大きな原因だと思うんです。
やはり、はっきりと物を言う国になっていかなきゃいけない。我々議会人ももちろん頑張りますけれども、ぜひ政府の方でも、もっと言うべきは言っていただきたい。そして、改めるべきは、もちろん国内法を整備していかなくちゃいけないと思っております。
その意味で、私たち法務委員会のメンバーは、先般、原宿警察署の視察などにも行ってまいりました。国際的には代用監獄というふうに指摘をされることもある留置場の問題とか、そういったことについても、我々議員も、現場を見て理解を深めなきゃいけないということも非常に痛切に感じました。
その意味で、やはり前回、山谷委員長に申し上げましたけれども、捜査と留置は別部門にしているということを幾ら説明しても、同じ警察署の中にある二つの部門が、完全に別々ですから被疑者の人権は守られていますなんというような説明では、少なくとも、文面上そんなものを読んでも全く理解されないと思うんです。国連とかあるいは米国とか、外国の関係者に日本の現場も見てもらうとか、そういった工夫もしながら発信しないと、まるっきり文書のやりとり、口頭のやりとりでは、こういった悪い部分はずっと続いてしまうと思うんです。もちろん、もしかしたらさらなる問題が出てくるかもしれないけれども、それはそれでいいじゃないですか。
そういう思いでいるんですが、山谷国家公安委員長、いかがでしょうか。
○山谷国務大臣 御視察ありがとうございました。
我が国の刑事司法制度下において所要の捜査を遂げるためには、警察の留置施設は重要な役割を果たしていると認識しており、また、捜留分離の原則は、警察においては十分に浸透し、定着したものと認識をしております。
留置施設につきましては、これまでにも、国連自由権規約委員会委員長や副委員長の視察、また、国連拷問等禁止委員会の視察、参観を受け入れているところでありまして、今後とも、日本警察の立場、取り組みについて、国際的な理解を得られるように努力してまいりたいと思います。日本の立場、現状を発信していくように努めていきたいと思います。
○重徳委員 今、視察を受け入れている、私もそこまで事実を確認した上で質問に立っているわけじゃありませんが、逆に、視察を受け入れたということであれば、にもかかわらず、いまだに代用監獄扱いの表現をされているのは、では一体なぜなんでしょうか。なおさら説明が足りない、あるいは何かしらの取り組みが足りないということなんじゃないでしょうか。どう受けとめていらっしゃるんですか。視察を受け入れたにもかかわらず、見てもらってもまだわからないということですよね。どうでしょうか。
補足します。見てもらった上で、代用監獄だという表現で言われているわけですよね。留置場の現場も見てもらったんだけれども、いまだに、代用監獄だ、これでは捜留分離というほどの状況になっていないという、理解がされていないと思うんですけれども、何が足りないんでしょうか。
○奥野委員長 では、警察庁の沖田総括審議官、わかりやすく答えてあげてください。
○沖田政府参考人 実際の外国からの視察の際に、当然、私どもとして必要な御説明は申し上げたというふうには理解しておりますけれども、この問題については、委員からも御指摘のとおり、いろいろな立場の方がいろいろな形で働きかけを行ったり主張されている。
私どもは代替収容制度という言い方をしておりますけれども、代用監獄制度というような言い方をされる方もいらっしゃいますし、そうした中で、結果的に、私どもの主張がそういった米国等の関係機関の文書の中には十分反映されなかったということでございますので、今後とも、関係機関と協力しながら、さらに積極的に受け入れるべき必要があればそれはぜひ受け入れまして、実態等につきましても、よりよく理解していただけるように御説明等してまいりたいというふうに考えております。
○重徳委員 きょうは可視化のテーマでの議論なので、代用監獄の話を余り長々とやるつもりもなかったんですが、しかし、代用監獄というのは、国際用語にもなっているような、非常に重大な人権侵害だという象徴的な言葉でありますから、日本がまさにそれをやっていて、そしてまさにその日本語が世界にダイヨーカンゴクという言葉で象徴的に取り上げられているという状況は解消しなきゃいけないと思うんです。
だから、本当にこの捜留分離の原則というのが、山谷委員長は十分浸透、定着しているということですが、それは、警察の組織の中では当然浸透していますし、定着していると思うんですが、こういったことは何のためにやっているかというと、やはり国際的な部分も含めて、人権を守るというか、人権にちゃんと配慮している国であることを示すためにやっているわけですから、何か自己満足のような状況に陥っているんじゃないかというふうにも受けとめられます。
ここは、もちろん、いろいろな論者がいて、幾ら言っても通じない相手もいるのかもしれませんけれども、しかしながら、もっときちんとした主張を発信していただきたいと思います。
その意味で、今度は上川大臣にお尋ねしたいんです。
前回、取り調べの時間の配慮に関する警察の規則、あるいは最高検察庁の通達というものがあるという御答弁があって、その上で、上川大臣から、国内外問わず、実態を公表し、理解を求める、つまり、やることをちゃんとやっているんだということを御答弁されました。その意味内容を確認したいんですけれども、これは、例えば、明文化してちゃんとフォローアップの中に入れていくとか、そういうことなんでしょうか、どうでしょうか。
○上川国務大臣 先回の御質問を受けて、取り調べが適正に行われなければいけないということで、検察当局として取り組んできた方策ということについて、平成二十年に、最高検察庁次長検事の通達という形で、取り調べに当たっての一層の配慮に関しまして、例えば、刑事施設等において定められている時間帯に就寝、食事、運動または入浴ができるよう努めること、あるいは、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜または長時間にわたり被疑者の取り調べを行うことを避けること、また、被疑者の取り調べにおきましては、少なくとも四時間ごとに休憩時間をとるよう努めること、こうした定めを通知いたしまして、これに従って取り調べの適正確保に努力するようということで指示をしてきたところでございます。
各現場の中で取り調べの適正の確保に努めてきたことにつきましては、例えば、平成二十四年に、いわゆるB規約の報告におきましても、その通達の内容及びそれに従った運用を行っている旨の報告をするなどしてきたところでございます。
この通達を受けて、運用の中でしっかりと適正に実施しているということについては、不断にチェックをしなければいけない。これは、国際的に報告するためにということのみならず、実態としてもその通知にふさわしい取り組みがなされているということを絶えず確認していくということが大切である、そういう旨で、私、答弁をさせていただいたところでございます。
同時に、海外に対しての説明におきましても、そうした旨の説明ということについても含めていくべきではないかということでありまして、ここのところは、関係府省庁と協議の上で適切な対応をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○重徳委員 もう少し厳密にお聞きしたいことがあるんです。
昨年の自由権規約委員会で指摘されたこととして、取り調べの実施に関する厳格な規則がないことに懸念を表明すると。それから、勧告の中にも、取り調べの継続時間に係る厳格な制限及び取り調べの方法を規定する立法措置を求めると。立法措置というのは、国際的に、日本で言う法律のことかどうかはわかりませんけれども。
これに対応してフォローアップの意見をこの夏に出すということですが、これまで最高検の通達なんというのは既にあったわけだから、言ってきたんじゃないかと思うんですが、今回、では、それ以上に何を求められているのか、そして何を訴えていくのかということを知りたいんですけれども、どうなんでしょうか。つまり、この自由権規約委員会の指摘は当たっていると言わざるを得ないんですか。そうすると、通達とかそういうのではまだ足りないんでしょうか。それとも、どう言えばこの部分が解消できると認識されているんですか。
○林政府参考人 この部分につきまして、例えば取り調べに関する時間についての立法的な措置、制限というものについては、実際の、現在の身柄拘束期間という中での取り調べということで、これを立法としてさらに制限するということについては検討しておりませんし、そういう形でお答えするのは困難だと思います。
いずれにしても、現状、それに対して取り調べというものが適正になされるための措置が、例えば検察あるいは警察において、どのような形で内部的な規制のもとでそれに沿った適正な取り調べが行われていくかということを十分に説明させていただくというのがまず基本になろうかと思います。
○重徳委員 それでは、最後の質問になりますが、前回、林刑事局長から、取り調べへの弁護人の立ち会いの場合の問題として、例えば、弁護人が取り調べに介入して取り調べ官の質問を遮ったりすることが可能になり、必要な説得、追及を通じて被疑者からありのままの供述を得ることは期待できず、弁護人の助言によって被疑者が質問の一部または全部に対して黙秘する中で、被疑者の供述が真実であるのかどうかということを判断することも困難となって、取り調べというものが現在の姿を全く変えてしまうことになるといった意見が法制審の中で出てきて、その結果、弁護人の立ち会いというのは難しいんだというような御説明がありました。
この点も、可視化されていない中で弁護人がやたら遮る、やたら邪魔をするということでは何も供述が引き出せないじゃないかということはわかるんですが、余りに過剰な弁護とか不当な妨害というものは、可視化されている中であれば、逆に、今回の可視化というのは取り調べる側の不当な取り調べを牽制するものであるというような機能が専ら議論されていますが、逆に弁護側も、余りにアンフェアに被疑者を、不当に守るというのも変な言い方ですけれども、そういったこともやり過ぎじゃないか、こういうことも含めて白日のもとにさらされるわけですから、そういった意味で、本当にフェアな取り調べが行われるためにもこの可視化というものが資するのではないか、こうも考えるんです。
弁護人の立ち会いを、今まではほとんど取り合うこともなかった議論を、可視化ということによって第一歩が踏み出せるようになるのではないかという考えもあると思うんですが、この点、どのようにお考えでしょうか。
○林政府参考人 前回、取り調べへの弁護人の立ち会いに関しての意見として、実際に取り調べの過程で、弁護人から質問の一部を遮ったり、あるいは一部、全部に対して黙秘する、こういったような介入がなされるということが一つの取り調べのあり方全体の性質を変えてしまうという意見があったということを御紹介させていただいたところでございます。
もちろん、これに録音、録画というものを考えたときに、今先生言われた、弁護人のそのような行為自体も、行き過ぎた行為については制約を受けるのではないかということでの御質問だと思いますけれども、今申し上げたような意見は、弁護人が取り調べに立ち会うことを制度として設けるとした場合に、その取り調べの場における弁護活動として、遮るとか黙秘を勧めるとか、そういったことについては、当然正当な弁護活動として予定されるということを前提として出ている意見でございます。
そうしますと、やはり録音、録画制度が導入されたといたしましても、弁護人として、ある意味立ち会いが認められたことの結果として、そういった正当なものとしての弁護活動を行うということを前提として考えますと、結局、録音、録画制度が導入されていたとしましても、やはりそれは、取り調べの性質というものについては大きく変えてしまうだろう、このように考えておるところでございます。
○重徳委員 最後にしますが、取り調べの姿を変えるのは、変えると思うんですよ、弁護人が立ち会うなんて今までやっていないわけですから。でも、それが問題ということじゃなくて、それによって、裁判、真相究明、そういったことがおかしくなるということが問題なわけですから、正当な弁護活動をやって何の問題があるんだという意見に、今の御答弁ではちょっと持ちこたえられないんじゃないかなということを指摘させていただきまして、きょうの質問を終えさせていただきます。
ありがとうございました。