○奥野委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 重徳和彦です。
きょうは、政府から提案されている外国人技能実習制度につきまして、まだ法案審議に入っておりませんが、ちょっと予習というぐらいの感じで質問をさせていただきたいと思います。
まず初めに、大臣に基本的な認識をお聞きしたいんですが、外国人の技能実習生、失踪者が非常にふえているんですね。政府からいただいている資料を拝見しましても、平成二十一年ぐらいはまだ、少ないといっても千人以上はいましたけれども、千人から二千人ぐらいという規模でありましたが、平成二十五年には三千五百六十七人、平成二十六年には四千八百五十一人と、物すごい勢いでふえています。
この失踪者の数が急増している背景を、大臣、どのように捉えていらっしゃいますでしょうか。
○上川国務大臣 研修生及び技能実習生の失踪者につきましては、平成二十二年からの五年間をとってみましても、千二百八十二人から四千八百五十一人ということで、約三・八倍に増加をするということでございまして、近年、この著しい増加につきましては、法務省としても大変重く受けとめているところでございます。
これまでの調査、数々してきたわけでありますが、失踪の動機などを調査してみますと、多数の者におきまして、技能実習に対してそもそも意欲が大変低いというようなケースもあるということもありますし、また、より高い賃金を求めて失踪しているということなども判明をしているところでございます。
○重徳委員 いろいろな動機もあるとは思うんですが、今回法案を用意されているというのも、その原因、要因に対してしかるべき対策を講じるという適切な対応になっているかどうかというところが大事だと思うんです。
これは想像しただけでもわかるんですが、そして実際聞いてみると、いろいろなケースがあるわけです。
聞いていた話と労働条件が違っていた。これは、聞き方が悪かったのか、伝え方が悪かったのか、あるいは実際受け入れ企業側がおかしいのか。この原因はいろいろなところにある可能性があります。あるいは、労働法違反ですね、残業代未払いというようなこともあります。これは受け入れ企業側がルール違反を犯しているということだと思います。それから、いろいろなうわさ、情報を聞いて、そういう失踪というか、より高い賃金に、実習先からさらに転じていこうというふうに最初からもしかしたら思っている実習生の方もいるのかもしれない。あるいは、そういうことを誘導しようとしていた送り出し機関があるのかもしれない。さらには、真面目に実習を受けようと思って来たんだけれども、途中で、既に国内に入っている実習生その他の関係者から、もっとおいしい仕事があるぜという話を聞いて、誘惑に駆られて失踪してしまう。
いろいろなケースがあると思うんですが、役所の方に事前にお聞きしますと、今大臣がおっしゃったような要因、必ずしも数字的にきちんと分析されていないのではないかなと思うんですね。失踪者が三千人、四千人、五千人に届こうとしている。だけれども、その原因というのは必ずしもきちんと数字上分析されていないような感があります。この点も、きちんと数字上も把握する努力をしていかなければならないと思うんです。
それで、次の質問に入りますが、実習の内容だとか労働条件とか労働の環境というもの、これは、通常の国内の労働者と違って、外国の労働者、外国の方ですから、現地で送り出し機関からどう聞いて、そして受け入れる側の日本の監理団体がどのような対応をして、そして受け入れ企業がどのような対応をして、これはいろいろなところでいろいろな話になっていたりする可能性も非常にあると思うんです。
実習生自身に対して、いろいろな条件について、いつ、どの段階で、どのように伝える仕組みになっているんでしょうか。
○井上政府参考人 お答えいたします。
技能実習生の受け入れの仕組みといたしましては、実習生の母国の方に送り出し機関というものがございまして、受け入れ側の日本の方に監理団体というものがございまして、この二つの機関が間に入りまして、技能実習を希望する者と受け入れを希望する者との間を取り持っていくわけでございます。
受け入れの条件、具体的に言いますと、労働条件、作業の内容でございますとか賃金の額、それから割り増し賃金のことでありますとか、あるいは賃金から控除されるもの、税金もございますれば寮費とか食費などもございます。そのようなものにつきましては、現地にいる段階で、日本に来る前の段階で、前もって、母国語によって作成した文書でそういう労働条件を明示して、それを確認の上で合意に至るような仕組みがとられてございます。
具体的に、今ごく普通に使われております雇用契約書というのがございまして、その雇用契約書が、雇用部分については予約みたいな形になりますけれども、それが、日本に上陸したいという在留の申請をするときの添付書類になります。在留資格認定証明書の申請のときの添付書類を見ますと、今申し上げましたようなさまざまなこと、雇用条件書ということが、母国語と日本語を併記したモデルの書式がございまして、それに署名をもらうというふうな形で確認をとる、その運用が現在では一般的に行われるようになっていると承知しております。
○重徳委員 入管局長の御説明によりますと、母国語ですから、母国の送り出し機関が主に御本人との間でやりとりをするということが実習生本人に対してのアプローチだとは思うんです。
ちょっと確認なんですけれども、どうあれ、こんなはずじゃなかったというか、実習生が、示された契約書とかいろいろな条件で聞いていた話と、実際の受け入れ企業での働き方というのが随分違うなと。それは法規違反の場合もあるかもしれないし、そうじゃなくて、何らかの取り違えとか、いろいろなことがあったかもしれない。何にしても、実習生自身が悪いんだというような場合じゃないケースもあると思うんです。
その一方で、日本に入ってきてから、仲間から、もっとおいしい仕事があるから失踪してみないかと、どんな言い方をされるのかわかりませんが、そういう誘惑に駆られる、こんなケース。
一体どういうケースが多いんですかね。もし数字的にわかっているのであれば、その辺を御紹介いただきたいんですが。
○井上政府参考人 お答えいたします。
失踪した技能実習生等につきましては、多くは不法滞在状態になって不法就労をしておりますけれども、摘発をした段階等で、聞き取り調査というものを昨年度あたりからかなりやるようになりました。
ただ、その聞き取り内容の精緻な分析ということになりますと、ちょっとまだ未熟な点がございまして、数字でばしっとお示しできないのがちょっと歯がゆいところではございますが。
より高い賃金を求めて失踪するものが比率として圧倒的に高いんですが、その中には、思っているほどもらえなかったという事例と、わかっていたけれども、もっと高いところに行きたくなったという事例と両方あって、だまされたといいましょうか、そういうのが言えない状態で我慢していて失踪する事例、昔からそういうものはちょっとあったと思いますけれども、それに対して、同国人同士のネットワークなんかで、もっといいところがありますよということでそっちに移る事例が多くなってきているという感覚は、現場の方では持っております。
○重徳委員 ちょっと分析が不十分だ、未熟であるというふうに局長が今お認めになったとおりで、何か、ちょっとまだ原因というか背景が十分把握できていないんじゃないかという印象が非常に強いです。
それに対して、今回、法案を出していろいろな制度をつくろうということなんですが、それが果たして的確な対応になっているかどうかということが法案の一つのポイントじゃないかなと思っております。
それから、次の質問に行きますが、実習生自身がいろいろなお金を、保証金という形で先に払っちゃって、それを取り返すためにもずっと働かなきゃいけないんだとか、あるいは違約金を払わなきゃいけない、だから、そうならないように我慢して働かなきゃいけない。そういういろいろな状況があるという中で、実際には、国内法上の基準省令によりますと、技能実習に関連して、送り出し機関、監理団体、実習実施機関、あっせん機関のいずれからも保証金徴収などが行われていないこと、違約金契約などが締結されていないこと、これが条件になっている。つまり、保証金、違約金の支払いというのは禁止されているんですよね。だけれども、それにもかかわらず、数的にはどのぐらいのシェアかわかりませんが、こういった問題が出ているということがあります。
この支払い禁止の実効性は、現行においてどの程度あると思っていらっしゃいますか。
それから、今出されている法案に、相手国との間でも、こういったことのないようにという、そういう取り決めを作成するということなんですが、これからの話もあると思いますが、その辺の御認識をお知らせください。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
現行の法令上の違約金等の取り扱いにつきましては、今委員御指摘のとおりでございまして、そのような約束とか現実の徴収が判明いたした場合には、その技能実習生の上陸は認めないこととしてございます。
どのようにそれを審査するかといいますと、技能実習生の受け入れをする場合には、在留資格認定証明書というものを前もって申請してもらうわけでございますけれども、その段階の提出書類として、送り出し機関と監理団体との間の契約の書面というものがございます。その中で保証金等の徴収が禁止されているかどうかということがまず一つございます。
あと、必要に応じまして、実地調査ということで、実習生が入ってきてからでございますけれども、入管が調査に行ったときは技能実習生から直接聴取いたしまして、そのようなことがないかどうかということを確認したりして、そこで判明すればそれは不正行為ということで処分をしていく、それが現状でございます。しかしながら、技能実習生の方でそれを正直に申告しないという事例も想定できるところでございます。
もう一つ、一番の問題点は、送り出し機関は外国にございますので、入管が出ていって直接調査するということはできませんし、間接的な形での問い合わせ的なものにとどまっており、その意味で、外国の送り出し機関そのものに対する調査で十分な証拠を得るというところにやはり現行法上大きな隘路というか制約があるというふうな認識をしておるところでございます。
そこで、今回、技能実習制度全般の見直しをするに当たりましては、送り出し国との間で二国間の取り決めを結びまして、その中で、各送り出し国の政府において自国の送り出し機関についてしっかりと監督してもらうような仕組みにしていこうと。つまり、送り出し機関の適格性を審査する仕組みをつくっていただきまして、しっかり審査していただくし、運用されましたら不正があるかどうかを調査していただいて、不正があるようであればしっかり排除してもらう、そのような二国間の取り決めを結んでいくようにしてまいりたいと考えておるところでございます。
もちろん、国内でできることとして、監理団体でありますとか実習実施者の方に、相手国機関との確認とか実習生本人との確認、そのようなことはきちんとするようにさらに徹底してまいるような仕組みを明確に定めていくようにしたいと考えております。
○重徳委員 ありがとうございます。
これは、私も、恐らくここにいらっしゃる委員の皆さんも、それぞれの御地元で、全国で十七万人もの実習生がおられるわけですから、いろいろな問題、トラブルなどもお耳に入っているんじゃないかなと思っております。
そういう中には、保証金とか違約金というのは国内法でもきちんと定めている内容でありますが、ちょっとこれはまだ確認できていないので、確認してみなきゃいけないと思っていることなんですけれども、国によっては、政府機関あるいは公的機関が労働者に、手数料という形なのかどういう形かわかりませんが、一定の負担をさせるような仕組みがあるというようなことも聞いております。
国によっていろいろと制度が異なると思いますので、何にせよ、送り出し機関とか監理団体に対するお金の負担がかかっているんだとしても、最終的には実習生に負担が行くということになりますので、結局、アメリカの国務省の報告書なんかにもありますように、これは事実上の人身売買だとか搾取しているんだとか、そういうような指摘を受けるようなことにもつながりかねません。実際、去年の米国の報告書で指摘を受けているわけですね。
やはり、国際間で、政府間で、相手の国だからちょっとよくわからないから踏み込めないというような状況は、実際には日本国内での問題に直結しており、また人権問題だというような批判も受けて、結局、日本の国益を損ねるようなことになりかねない、こう思っております。
今、事務の方にもお願いしておりますが、各国の送り出し機関などに対する金銭面の負担の仕組みというものは、よくよく調べて確認していかないと実効性のある取り決めにならない可能性もありますので、この点、ちょっと私も今後確認していきたい、確認しながらまたこの辺は詰めていきたいなと思っております。
そして、もう一点、これはよく言われることなんですが、これこそ本質的な話でありますが、この技能実習制度というもの、現場の企業においては、とにかく人手不足だ、できるならばできる限り安い労働力というものが手に入ったらいいな、こういう思いに駆られるのは、ある意味、企業としては当然のことであります。
そのニーズに対して、あくまで技能実習という制度であるものですから、いわば国際貢献ですね、海外への技能移転ということを目的とする制度というたてつけになっているものですから、どうしてもギャップがあるんですね。ジレンマの中でこの制度は運用されてきた。ここまでは、多くの皆さん、ある意味しようがないかな、しようがないけれどもこういう制度なんだという面もあると思うんです。
ただ、今回、やはり一部の不正な、非常に劣悪な労働環境に置かれているような実習生がいる、こういう問題に対応するためにさまざまな義務づけというものをしようということになっているんですが、これは本当に、何でしょうね、役所がやるからしようがないのか、日本は特にそうなのかわかりませんが、何か悪平等というか、悪い方に合わせていろいろな書類の提出だとかいうことを求める。ですから、本当に真面目に、しかも規模だって小さい監理団体も多いです、受け入れ企業だって小さなところも多い、そういうところにも、悪い、ひどいところと同じような余計な手間やコストをかけるような仕組みになりかねないと思うんです。
まず、今回の法案の中身の説明を含めてですけれども、こういったギャップ、そして本来の技能実習としての運用がなされていないことに対してどのような対応をされようとしているのか、この点について御答弁願います。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
技能実習制度は、委員御指摘のとおり、技能等の開発途上国への移転を図ることによって経済発展を担う人づくりに協力することを目的とする制度であるということで、我が国の技能移転を通じた国際貢献ということで重要な意義を有しているものでございますので、この制度を安価な労働力の確保策として使うものは、それは制度の趣旨に沿った運用とは言いがたいものでございます。
実際、この制度につきましては、送り出し国や実習生本人から、その国の人材育成に貢献しているとの評価も高いものでございますので、制度の趣旨に沿って適切に運用されれば、これは国際貢献としての意義が大いに認められるものでありますから、運用が趣旨と乖離しないような適正化策を講じることが重要でありまして、その上で制度を積極的に使っていくことが望ましいとの考えを政府として持っているところでございます。
そこで、制度の趣旨を徹底するために、今回法案を提出させていただいておりますが、その中では、新たに技能実習計画というものの認定制という制度を設ける、また監理団体については許可制にする、そして制度を管理運用する機関として外国人技能実習機構というものを設立する、さらには技能実習生保護のための罰則の整備その他の保護の措置も充実させる、そのような適正化策を盛り込んだ法案を提出させていただいているところでございます。
法務省といたしましては、厚生労働省その他関係機関と連携いたしまして、この法案に基づく適正化策を充実させまして、開発途上国等に対する技能等の移転による国際貢献という制度本来の趣旨に沿った適正な運用を確保してまいりたいと考えております。
○重徳委員 認定制度、許可制度、そして技能実習を一定程度済ませたら試験をするというさまざまな仕組みが課されることになるんですが、繰り返しになりますが、不適正な運用をしている団体、企業に対してはそれは必要なことなのであろうと思うんですが、そうでないところに対しまして、ちゃんとやっているところに対して余計な負担というふうにとられるわけでありまして、これは本当に誰のためにもなっていないと言うと言い過ぎかもしれませんが、平等といいながら、頑張っているところがもうやれなくなってしまうようなことにもなりかねないと思うんです。
一部優良な団体に対する取り扱いなんかも、受け入れ期間を延ばすとか、受け入れ数をふやしていいよというインセンティブのようなことも仕掛けとしてあるようですが、そもそも、優良な団体は、これまでどおりでいいよというか、そのままやってくださいというような、団体そのものに対する認定の仕方というような考え方もあるのではないか。
あるいは、技能実習生も単なる安価な単純労働者では本来ないわけなんですが、それでもやはり能力や質の高い人材であれば、企業なら、当たり前ですけれども、そういう人だったらできるだけ長くいてほしいし、もっと人材育成の投資というものもして育てていきたいと。だけれども、どうしても三年だ五年だというところが限度になっているから、肝心の人材育成というところにも力が注がれないというような、これもジレンマがあると思います。
一方、政府は、高度人材であれば、本当の学術上の、学歴上の高度人材であれば労働力として受け入れるというような制度もあるんですが、本当に地元の企業のニーズに合って、しかもこの人ならというような人であっても一律に送り返さなきゃいけないというような、そこもギャップになっていると思うんですね。
ですから、最後にお尋ねしますが、優良な団体、あるいは特別に認められた、十七万人いる中でもこの人ならというような人はちょっと別な扱いをするとか、そういった少しずつの地道な取り組みというものが本当の意味での国際間の理解にもつながっていく、そして現場のニーズにも応えていくことができると思うんです。
ちょっと大きな質問になってしまっていますが、この点について、現状でお答えになれることがあればお答えいただきたいと思います。
○井上政府参考人 お答えいたします。
優良な団体あるいは優秀な実習生に対する優遇措置といいましょうか、それにつきましては、今回の法案の中で、新たに三号の実習というもの、今までの三年にプラス二年をするというところにつきまして、まず一つ、そういう形があらわれていると思います。
すなわち、実習期間を二年間延ばせる、三号に行けるのは、優良な要件を満たしました監理団体が、優良な要件を満たしました実習実施者のもとで、さらに試験に合格して技能が確認された優秀な実習生についてだけできるということで、要するに、ちゃんとやって技能がちゃんと習得される、きちんと技能の移転のためにやっている、そういう適正にやっているところに集約されていくような一つの仕組みとして構築しているところでございます。
ただ、委員御指摘のように、では、その五年を終わった後で帰らないようにするのはどうかということになりますと、まず、この技能実習制度は、最初に申し上げました目的から、技能の移転による国際貢献でございますので、一旦は御帰国いただいて国で活躍していただくということが前提の制度でございますので、本制度の中においてそれ以上のことをすることには限界がございます。
あとは、労働者の受け入れの全体のあり方についての御議論と関連してくると思いますが、その点につきまして、我が国政府の基本的な受け入れのスタンスは、専門的、技術的分野は積極的であります。分野につきましても、今回、入管法の改正法案で御提案申し上げていますけれども、介護福祉士の資格を取った人については新たな在留資格を設けようということで、専門的、技術的分野を少し枠を広げるようなこともしてございますが、さらに、そのほかのところをどうするかにつきましては、政府全体でこれから検討していくべきことでございまして、ただ、法務省が非常に密接な関連を持ってございますので、積極的にその検討に参画してまいりたいと考えております。
○重徳委員 終わりますけれども、ちょっと言い方は悪いですが、しゃくし定規な制度になっていることが原因となって、最初に申し上げました失踪者をふやすような結果にも結びついていると思うんです。本当に現場のニーズに合った制度になっていきますように、私どもとしてもさまざまな提案をさせていただきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。
ありがとうございました。