H25年10月30日 消費者問題に関する特別委員会
「消費者が増える高齢社会に向けて-参考人質疑-」
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○重徳委員 日本維新の会の衆議院議員重徳和彦でございます。
きょうは、参考人の皆様方、本当にお忙しい中、ありがとうございました。
私は、これから日本が高齢社会になっていく、高齢者がふえるということは、いわゆる生産年齢人口と言われる方々が相対的に減る、高齢者はいわば消費者、生産者じゃなく、もう完全に消費者の皆さんだという捉え方をすれば、まさに高齢社会というのは消費者社会だと言いかえることもできると思います。
その際に、先ほど河野参考人がおっしゃったように、やはり情報量の格差が生産者側と消費者側で余りに違うというようなことからすると、単に裁判沙汰だから嫌だ、どうかなといって泣き寝入りするだけの社会を続けちゃいけない、こういう認識に立っております。その意味で、今回の法律をまず成立させることが第一だと、河野参考人が言われるとおりだと思っております。
一方で、実際には、今回のこの法案の設計どおりにいくかどうか、やってみなきゃわからない、そういう部分があるのがこの法律だと思っております。
例えば、今回、濫訴の防止という意味も含めてだと思いますが、対象外となる損害がいろいろと規定されております。いわゆる拡大損害、人身損害、慰謝料などが除外されているわけなんですけれども、例えて言えば、五千円の化粧品を使ってお肌の手入れをしていたらお肌のトラブルが起こってしまった、その場合に、訴訟を起こしても返ってくるのはその五千円分だけであって、実際には精神的な苦痛もあろうし、仕事で何かうまくいかなかったことがある、逸失利益、こういったこともあるでしょうけれども、そういうことは対象外であるというようなことだと思うんです。
ここで河野参考人と阿部参考人にお伺いしたいんですが、要は、消費者側から見れば、浅く広く救われるかもしれないけれども、でもそこじゃないだろう、化粧品代が戻ってくればいいという問題じゃないんだという方はたくさん出てくると思います。
一方で、企業側から見れば、一人当たり五千円で済めば、言い方はあれですけれども、まず丸くおさまればいいとは思うものの、しかし、寝た子を起こすような形になって、実際には私はそれだけの損害で済んでいるわけじゃないんだというようなことで、そこからいろいろなクレームだとか社会問題につながってくるとか、まあ、実際にやってみなきゃわからないことなんですけれども、このあたりの点につきまして、この法が施行された後をどのように予想、推測されておられるか、参考までにお聞かせください。
○河野参考人 ありがとうございます。
カネボウの美白化粧品の問題もありますし、今、関西の方で起こっているメニューの偽装の問題もございます。本当に、消費者は、自分で物を見抜く目というか、そのあたりがないと、いつ何どき、どのような消費者被害に遭うかわからないというふうな状況でいる中で、例えば、今、議員の御質問になりました、化粧品を購入しました、肌のトラブルがありました、その拡大の部分というか、精神的な部分をどうするのかということなんですけれども、私自身は、そのあたりは、商品を購入するというのは、そもそもはその商品を信用して対価を支払うというところがスタートだと思っています。
つまり、最初から怪しいと思っていませんし、その商品と、それからそれを販売してくださっているというか、事業者の方を信用する。一番大事なのは、そこにあるのは、企業倫理と、それからそれに対する消費者の信頼感、それがまず第一であって、それが崩れたときにやはり訴訟になるというふうに私自身は考えます。
ですから、事業者の側がしっかりと、自分たちの被害を生じてしまったことに対して真摯に向き合ってくだされば、それはそれで、私たち消費者としても、お互いそれを十分に理解して、次の社会のために、莫大な損害ですとか賠償ですとか、そういったところには至らないと思います。とにかく、最初の対応、そこのところで、やはり次に向けて、事業者の方は、消費者に対して、消費者と一緒に前に向かっていこう、それから、私たち消費者も、そのメーカーさんならメーカーさんを信用して先に行こう、そういうふうな素地があれば、大きな課題にはならないというふうに私自身は考えます。
ただ、どうにも、拡大損害になりますとやはり認定も難しくなりますし、個々、特に、損害額確定まで時間がかかってしまうと、結局、十年も続く裁判とかになりまして、この制度が導入された本来の意味からは外れてくるというふうに感じますので、まずは、最低限のお互いの、補償というところでこの制度が進んでいってくれることを願っております。
○阿部参考人 法案の第三条の第一項、第二項にそれぞれ規定されているわけでありますが、今回の訴訟制度はあくまでも民訴手続の特例でございまして、そういう意味では、まず第一段階の訴訟で事業者の有責性を確認した上で第二段階に進む。そのときに、第二段階は、ある意味、共通性、支配性と言っておられますけれども、同じような損害がわかりやすく生じている場合でなければ処理できないわけでありますので、そういう意味では、拡大被害でありますとか人身損害とか慰謝料は、訴訟制度としてこの仕組みにはなじみにくいかなと思っております。
ただ、これだけは申し上げられると思います。化粧品の例が適当かどうかわかりませんけれども、第一段階の訴訟で事業者の責任を確認いたしますので、要は、メーカーが悪いということが確定しましたら、それに基づいてさまざまな別の手段が、訴訟も含めまして、とり得ると思います。
そういう意味では、場合によっては、人身損害、あるいは慰謝料も含めて、別途の訴訟は十分提起できるわけでありますし、何といってもメーカーの責任をこの訴訟で認めておりますので、ここは非常に、その後のほかの手段も使いやすくなるものだと思います。
以上です。
○重徳委員 どうもありがとうございます。
次に、ケーシーズの西島参考人にお伺いしたいんですが、きょういただいた資料で、拝見いたしますと、予算規模千四百四十八万円、八割が会費で賄っておられるということ一つとっても、これはかなり大変な運営なのだろうなと、逆に言うと、そうそうたる方々が、きちんとした方々が参加していなければ、なかなか、この適格消費者団体というものも、これまでも成り立ってこなかったのではなかろうかというふうに思われます。
これから、集団訴訟のこの仕組みが施行されて、そうしますと、どこまで広がっていくか、これもまたやってみなきゃわからないんですが、それにしても、今までよりも期待されるところからすれば、その団体の数とか、スタッフの数とかいうのもふえてこなければ、なかなかこの仕組みは持続できないんじゃないか。まして損害賠償請求という訴訟になるわけですから、そういう意味でも専門家の数も相当必要だろう。
この際に、ではお金だけの問題なのか、お金があれば幾らでも体制が拡充できるのかというと、よっぽどおいしい仕事だと思われるレベルにまでならない限り、やはりここは、社会正義の実現とか消費者の立場にきちんと立つ方々が、本当に身を粉にして働くような方々がどこまで登場するか、このあたりはもう肌感覚の話なんですけれども、今、阿部参考人も、今の十一団体は本当に信頼できる方々だとおっしゃいましたが、この後、よく懸念されるように、言葉は悪いんですが、悪質というか質の低いというか、そういう団体も出てき得るんじゃないかと思うんですが、このあたりはどのようにお考えでしょうか。推測の、予測の範囲で構いません。
○西島参考人 そうですね。私どもは、これからやはり体制等も当然補強していかないといけないというふうには考えます。ただ、先ほど言っておりましたように、当面のところでいいますと、制度が動いていくためには、情報だとか、あるいは資金面というのでいろいろな支援をいただきたいということがあります。
ただ、もう一方ありますのは、実際にやっていく人たちというのはどういう人たちなのかということを御紹介しますと、やはりそれは、消費者問題、消費者被害を何とかしたいというような方が携わっておられるわけですから、そのあたりは、私は今のところは全く心配ないというふうに申し上げたいと思います。
それから、どういう団体が出てくるのかみたいなことはおっしゃっておられますけれども、消費者被害を実際に回復したいというようなことであれば、そういう団体ということで、しっかり適格団体の要件もありますし、特定適格団体は、さらにそれに加えての要件というようなことでしっかり監督されますから、そういう意味では、私の今の知る範囲では問題がないのではないかなと。
ただ、もしそういう団体が、もうけだけというようなことで出てくるのであれば、それにしっかり対応していかなければいけないというふうに考えます。
○重徳委員 どうもありがとうございました。
最後にもう一点。今、各企業におきましては、クレームとか苦情の処理という形でさまざまな取り組みが現に行われていると思います。クレームの処理というのは、本当に一件一件、迅速的確に対応するということは、逆に企業の信頼性とかクオリティーを高める、そういう面もあると思います。
例えば、私自身も経験がありますが、自動販売機で買ったコーヒーが何か腐っていたというか非常に品質が悪かったことを苦情を言ったら、まとめて一ケース、逆に返してくれたとか。そのような対応をされると、むしろその企業のファンになったり。でも、これはいわば、その対価そのものを返してもらう以上のサービスを企業が個々にしているという見方もできるわけで、こういうことを集団的な訴訟に対して過剰なサービスをすることはできないわけであって、こういう意味ではなかなか、リコールというケースとかさまざまなケースがあると思うんです。
これは阿部参考人にお聞きしたいんですが、こういった苦情処理の実情として、リコールなどの製品のふぐあいについての周知ですとか、あるいは周知をどのように、どのぐらいのコストをかけて、どういう手段でやっていることが、ケース・バイ・ケースでしょうけれども、どんな事例があるのかということ。それから、補償している場合があれば、補償の範囲というのは本当にその商品の対価だけなのか、あるいはちょっとサービス精神で、あるいは的確なクレーム対応ということでやることも多いのか。そのあたり、みんな一緒じゃないでしょうけれども、ケース・バイ・ケースでしょうけれども、何か事例のようなものを挙げていただくことができればと思います。
○阿部参考人 例えばリコールでございますと、法的に求められるものがあれば、事業者が自主的に対応できるものもあるわけですが、非常に今各社悩んでおりますのは、顧客情報、ユーザー情報、お得意様リストでございますが、これを個人情報保護法の関係で持てなくなっている。昔であれば、誰が何を買ってどのように使っていただけるかというのは一番大事な情報でございますので、事業者それぞれ抱え込んでいたわけでありますが、何か個人情報保護法の解釈で、そういうことをしてはいけないと皆さん思っておりまして、私は違うと思いたいんですが、現実に、各社、ユーザーリストを泣く思いで廃棄した。
今、一例でございますと、例えばある温風装置ですね、大手電機メーカーがつくりました温風装置についてリコールをかけたわけであります。多大な費用をかけて広告等を打ったわけでありますが、本来であれば、顧客リストが手元に残っていれば、一軒一軒それでお訪ねして済んだわけでありますが、そういうののユーザー情報というものが今非常に扱いにくくなっている。ここは、何かいい方策があれば、御検討願えればと思います。
以上でございます。
○重徳委員 どうもありがとうございました。大変参考になる御意見でございました。本当にありがとうございました。
以上です。