○古本委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 社会保障を立て直す国民会議の重徳和彦です。
先日、委員の皆さん方と、京都大学の本庶佑先生にお会いしたり、あと、京都大学と製薬企業との産学連携の様子を調査に行ってまいりました。
やはり、産業に役に立つということは、全く何の役に立つかわからない基礎研究もあるかもしれませんが、研究者にとってもモチベーションになるというふうなことを、実は、私の地元の愛知県岡崎市の自然科学研究機構という国立の機関があるんですけれども、そこの教授をやっている友人からも聞きました。
例えば、かつて蒸気機関が発明された時期に、普及させようというときに、熱力学というものに研究者が非常に熱心に取り組んだということがあるんですね。石炭の熱が水を水蒸気に変えて、どのように一番効率的に動力に変換できるのかと。こういった基礎研究は、何の役に立つかわからないというよりは、明確に、これは必ず産業の役に立つんだ、こういう思いを持って研究者が取り組まれたということもあると聞きました。その一方で、やはり、本庶先生の言われた基礎研究、この重要性、きょう各委員から御指摘のとおりでございます。
本日、私は、お金の面ももちろん大事なんですけれども、人ですね。研究というのはやはり人が行うものであります。人の重要性について取り上げたいと思います。制度的に言うと、研究者のキャリアパスですね。人生設計というものをどう描くことができるか。この環境づくりの重要性、これを指摘していきたいと思います。
ちょっと振り返りますと、大学院の量的整備ということで、大学院生をすごくふやした、そしてドクターを物すごいふやした時期が平成の前半にあったというふうに聞いておりまして、その結果、たくさん生まれたドクターは、じゃどうしていくのかというポスドクの支援、一万人支援計画というものが二〇〇〇年には立ち上がったということでございました。
ポスドクというのは、結果的には、いろんな評価があると思うんですが、就職先がなかなかうまく見つからなかったというようなこともあって、厳しい評価にさらされているとも聞いております。結局、ポスドクを支援しても、なかなか採用先の企業が、出口が少ないということで、それを見た若手は、ドクター取得を志す学生が減少してしまって、研究人材の質の低下を招いたなんという声も聞いております。
ヨーロッパでは、企業経営者にもドクターが多いというんですね。やはり社会的に、ドクターというのは物事を突き詰める思考能力があるということが認められているということだと思うんですけれども、これに対して、日本ではまだまだそういった地位が築き切れていないのではないかということで、もしかしたらちょっと想定が甘かったのではないかなという気もいたします。
このポスドク一万人支援計画、この成果、どのように検証し、どう評価されているのか、お答えください。
○渡辺(そ)政府参考人 お答えいたします。
平成八年に策定された科学技術基本計画、これは第一期の科学技術基本計画でございますが、こちらでは、若手研究者層の養成、拡充等を図るため、ポストドクター等一万人支援計画を掲げました。これに基づき、日本学術振興会の特別研究員事業等の各種事業を活用し、支援を強化いたしました。その結果、一万人支援計画につきましては、四年目の平成十一年度に目標が達成されたということでございます。
また、平成十二年度当時としての評価といたしましては、例えば、この支援計画の対象事業のうち、実態の把握が可能な、先ほど申しました特別研究員事業の支援を受けた研究者は、採用期間終了後五年後に、約八割が常勤の研究職についており、この支援計画によって我が国の研究開発を担う人材を着実に育成してきたことが効果として挙げられておりました。
しかしながら、ポストドクター等を含めた若手研究者につきましては、平成十六年の国立大学の法人化以降、運営費交付金の削減の一方で、競争的資金、これがふえてきましたこと、さらに、同時期の教員の定年延長が法人化の時期と重なりまして、そういったことによりまして、若手教員の安定的ポストの減少、教員の高齢化などが顕著となっており、任期つき教員の割合が増加するなど、若手研究者の安定的な雇用環境の確保に課題が出てまいったことを認識しております。
このため、文部科学省では、ポストドクターに限らず、若手研究者が安定かつ自立したポストについて研究できる環境を実現するため、多様な研究機関において活躍し得るキャリアパスを提示する卓越研究員事業の実施、これは民間企業も含めてでございます、や、国立大学における人事給与マネジメント改革の推進により、若手研究者のポスト確保を図るとともに、科研費におきまして、科研費若手支援プランの実行を通じた研究者のキャリア形成に応じた支援の強化、研究人材のキャリア支援ポータルサイト、これはJREC―INというものなんでございますが、を通じた研究者や研究支援人材のキャリア開発に対する情報の提供及び活用支援を行っているというところでございます。
○重徳委員 一定の成果と反省に立って取組を進めているということなんですけれども、ちょっと簡単に御答弁いただきたいんですが、このほど文科省で研究力向上改革二〇一九というものが策定されたということなんですけれども、今の御答弁に重なる部分は結構ですので、新しい部分があれば御紹介いただきたいと思います。
○渡辺(そ)政府参考人 お答えいたします。
先般策定した研究力向上改革二〇一九におきましては、具体的に申し上げますと、プロジェクト雇用における若手研究者の任期長期化、専従義務の緩和、それから、すぐれた若手研究者へのポストの重点化、それから、先ほど申しましたJREC―INポータルなど民間職業紹介との連携強化などによるキャリアパスの多様化、流動化といった環境整備、それから、これも済みません重なってしまいますが、科研費等の競争的資金における若手への重点支援ということを盛り込んでおりまして、これらの取組によりまして、若手研究者の研究環境の充実に取り組んでまいりたいと思っております。
○重徳委員 重要なことですので、ぜひともしっかり取り組んでいただきたいと思います。
少し話題をかえますけれども、実は、先ほど申し上げました岡崎市にある自然科学研究機構、これは、ノーベル生理学・医学賞を受賞された大隅良典先生が、かつて、十三年間、基礎生物学研究所というところで研究活動をされていたということなんですね。
これは正確な言い方かどうかわかりませんけれども、もともと東大でオートファジーという原理を見つけたということなんですけれども、東大で何だか十分な研究環境がなかったというようなことで、岡崎に来てラボを立ち上げた、こういう経緯だというふうに聞いているんですけれども。要するに、東大じゃちょっとだめなのかなということですね。東大、ノーベル賞も最近少ないし、ちょっといかぬなと思うんですけれども。
その自然科学研究機構は、ラボの立ち上げというのが、サポート体制が非常に厚いというふうに言われています。特に、きょうはお金よりも人のことなんですけれども、助教を全国から公募するときに、ちゃんと外部選考委員というのが入って、いわば情実を排して、本当にそのプロジェクトに必要な、期間限定でも、絶対そこでやりたい、そしてやる力のある、そういうサポートしてくれる方をきちっと採用する。こういう体制が、ある意味ドライに、研究の成果を上げるための人集めをされているのではないかというふうに見受けられます。
やはり研究室、ラボというのは、何十人という大きなところもあるのかもしれませんが、基本的には数人とか十人とか、その程度でしょうから、一人一人本当に大事な人材なんだと思います。
こういう意味で、ちょっと答弁の関係で、文科省に答弁いただくのは大学に関する答弁じゃないといかぬということで。
大学でも、ラボ立ち上げのときに、東大じゃだめだなんということにならないように、きちっと成果重視の人事選考の体制をとるべきじゃないかと思うんですけれども。何で東大はだめで京大なら。京大とか、名大もそうですけれども、名古屋大学も、ノーベル賞、最近多いですよね。そういうことも関係するんじゃないかと思うんですが。
そういったことも、答えられる範囲でお答えいただければと思います。
○玉上政府参考人 お答えいたします。
研究者の採用のことについての御質問ということでございまして、お答えいたしますと、御指摘のとおり、各大学は、それぞれの理念ですとか目的に基づき、多様で個性ある教育研究を推進していくためには何といっても人ということでございまして、すぐれた人材を確保し、これらの者が能力を最大限に発揮できるよう、教員の人事のあり方について改善を図っていくことが必要だと考えております。
特に、選考方法でございますが、委員今御指摘のように、専門分野の閉鎖性を打破するということ、教育研究の活性化をするということ、各大学の学部の御判断でございますけれども、学外、学部外の専門家による評価、推薦を求める、それから教員選考の参考にするなどの工夫が有効であると考えております。現に、例えば、御指摘もございますけれども、応募の段階で既に、公募要領において、適任者がいない場合は採用はしませんよ、又は再公募しますよというようなことを指摘している例も実はございます。
また、さらに、若手教員が安定的に研究に専念できる環境を実現するためには、既に、研究費ですとかスタートアップ経費の措置ですとか、そういう支援人材の配置等の取組が有効と考えておりまして、さらに、私どもの方では、今、二月に国立大学法人等の人事給与マネジメント改革に関するガイドラインというものを策定をいたしまして、引き続き、人事給与、特に評価などをきちんと、大学がいろいろ変わるためには評価が大変大切でございますので、人給マネジメントの改革を促してまいりたいと考えております。
○重徳委員 何で東大がだめかということにいまだ言及いただけなかったんですけれども、ちょっと大臣、もし私見があれば、この点ちょっと、最後の問いですので、まとめてお答えいただければと思いますが。
これから策定される予定の第六期科学技術基本計画というのがありますね。そこにやはり、きょう申し上げました、ドクターのキャリアパスのこととか、あるいはラボ立ち上げのときの人事選考のこととか、そしてさらには、日本の研究水準を上げるには、やはり日本人だけじゃなくて外国人にももっともっと、いわゆる高度人材に来ていただけるような環境をつくらなきゃいけないと思うんですね。そのときには、外国人、その本人の処遇はもちろんですが、これはもう家族を連れて、みんな、いいね日本はと言ってもらいながらいい研究ができる、これは本当に大事なことだと思います。
そういう意味で、家族の生活とかあるいは子弟の教育環境、これはまだまだ不十分だという声が非常に多いんですけれども、こういった外国人の研究環境も含めて国家戦略に位置づけるべきだと思います。
何で京大、名大ばかりで東大はだめなんだということも大臣から私見があれば、それも含めてお答えいただければと思います。
○平井国務大臣 東大は東大で大変頑張っている分野もあるので、だめだとは私は全く思いません。
優秀な外国人の研究者や留学生の受入れ、定着に向けた取組は、第五期科学技術基本計画でも入っておりました。
これを受けて、海外から優秀な人材を我が国に呼び込むため、例えば、外国の若手研究者を招聘する外国人特別研究員事業、世界トップレベル研究拠点プログラム、WPIにおいて、生活環境の整備、これは、競争的資金の申請支援とか必要な情報の英語化とか宿舎の整備等々、外国人子女への教育環境整備などを実施しています。
また、六期の科学技術基本計画の検討に向けては、四月十八日に開催した総合科学技術・イノベーション会議において、有識者議員より、世界から優秀な人材を引きつけるアカデミックエクセレンスのハブを構築するなど、我が国の知の多様性と包摂性を増進すべきといった意見があります。
それの上に、日本に住みたいという方々、最近、日本の文化に対して大変な共感を持っている方々も多いし、これからチャンスは来ているなというふうに思います。総合的な対策で海外のいろいろな優秀な人材を日本に招き入れたい、そのように考えます。
○重徳委員 ぜひ取組を進めていただきたいと思います。
科学技術予算というのは、本当に数兆円規模で非常に大きな予算なんですけれども、どう使いこなすかというのが、本当に精通している、現場のわかる国会議員がまず少ないと思うものですから、かつて、それこそ、小渕先生の御尊父であられる小渕恵三総理のときに、小渕内閣のときに、有馬朗人東大総長を文部大臣に登用するなんということをされて、そういう研究現場がわかった方を登用するということで大分改革も進んだんじゃないかと。
これもきょう時間があればお聞きしたかったんですが、時間が来ましたので、その点、ちょっと指摘をしまして、終わらせていただきたいと思います。
本日はありがとうございました。