H25.5.16 経済産業連合審査会
「消費税は外税か内税か?」
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○富田委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 日本維新の会の重徳和彦でございます。
本日は、四月に一度、経済産業委員会におきまして質問をさせていただきましたが、同じテーマの消費税の適正な転嫁につきまして再度議論をさせていただきたいと思います。
本法案につきましては、この実効性につきましてさまざまな角度で疑義も含めて述べられてきました。私も、これまで各委員と政府とのやりとりを聞いて、やはりしっくりこない部分が何点かございます。
まず一つ目、基本的なところですが、これまで現場をよく知る委員の先生方あるいは参考人の皆様方から、あからさまに転嫁は拒否するよ、だめだよとはっきり言って転嫁を拒む、そういう事業者はそんなにいるとは思えないという意見が少なくありませんでした。ですから、単に安くしてくれとか、あるいは逆に、仕入れ先に値下げを申し出てきた場合には、どれだけ問い詰めても違法だと言えるような証拠が出てこないんじゃないかというような状況だと思います。
そこで、少し逐条的に質問させていただきたいんですが、杉本公正取引委員長に御質問したいと思います。
この法案の第三条一号におきまして、事業者が仕入れ先に対しまして、まず要件として、商品もしくは役務の対価の額を減じたり、あるいは商品もしくは役務に対し通常支払われる対価に比し低く定めたりしたかどうか、これは客観的に見てわかると思うんですが、消費税の転嫁を拒んでいるかどうかというのはなかなか判然としないのではないかと思います。
具体的に、どんな情況証拠といいましょうか物証が出てくれば、消費税の転嫁を拒んだことになるのか、過去に事例などありましたら、そういうことも含めて具体的に例を挙げてお答えいただければと思います。
○杉本政府特別補佐人 お答えさせていただきます。
消費税の引き上げに際しましては、税率引き上げ後の取引価格から消費税率引き上げ分を減額して支払った場合、税率引き上げ前の取引価格に消費税率引き上げ分が上乗せされていない場合、こういった場合は違反の疑いがあるということになるんですが、そうした場合に、特定事業者から当該行為について特段の事情があるというその説得的な説明がない限り、本法案の三条に違反するということになるんじゃないかと考えております。
例えば、本体価格に八%を上乗せした額で支払うと契約していたにもかかわらず、商品が納入されて対価を支払う際に、税率引き上げ分の三%分の値引きを要求しまして、従来どおり五%分しか上乗せしない場合、これは本法案の三条第一号に違反することになるんじゃないかと考えております。
また、例えばでございますが、原材料費の低減、こういった状況の変化がないにもかかわらず、消費税率の引き上げ前の取引価格に税率引き上げ分の三%を上乗せした価格よりも低い価格を決める、こういった場合も本法案の三条第一号に違反するといったことになると考えております。
○重徳委員 ありがとうございます。
今のお話を伺っておりましても、結果的にそういう状況が判明すればということでありますが、これはやはり相当高度な、ケース・バイ・ケースでしょうけれども、かなり微妙な判断が求められることでもあると思います。相当高度な調査能力のある方が、よっぽど力を尽くしていかなければ、個別案件に深入りをしていかなければ、なかなか難しいというふうにも思われるわけであります。
また、別の見方をすれば、よっぽどのケースでなければなかなか取り締まれないという状況は、過去の消費税転嫁とは今は状況が多少違うかもしれませんが、こういった法律が整備されない状況における公取の活動状況を見ていても、通常のやり方ではなかなか難しい実態があるというふうに、今までの委員の議論の中でも指摘をされてきたところでありますので、今回の法律をもってどれほどの成果が上積みされていくのか、現状の法体系に比べてどれほどの成果が上積みされるのかということも、これはひとえに調査能力ということにかかってくるのではないかと考えております。
もともと、六百人という優秀な人材を確保する、これをどうされるのかという点につきましては、たった今、今井委員の方から稲田大臣に御質問がございましたので、それは今私もお聞きしておりました。
いずれにしても、ちょっとやってみなきゃわからない部分もございますし、BツーB、いわゆる業者と業者の間の取引の中に深く食い込んでいくスキルというか、ある種特殊能力かもしれません、そういったものがなければなかなか難しい。一方で、六百人という数、全国で六百人ですから、これが本当に十分かということについても、これまで各委員の審議の中でも指摘をされてきたところでございますので、この点につきましては指摘にとどめさせていただきたいと思います。
次に、外税方式の特例について議論を移してまいりたいと思います。
今、委員の皆様方のお手元に写真をお配りさせていただきました。
私は、たまたま、ある商店街を歩いていて、ケーキ屋さんでカステラが売られておりましたので、ぶらぶらと物色をしておりました。これは、何の紛れもない話なのでありますけれども、抹茶カステラ五百二十五円、それからマロンカステラ五百円という非常に絶妙な値札のついた商品が二つ隣り合わせで並んでおりましたので、思わず写真を撮ってみたわけでございます。当然、今現状は内税、総額表示方式ですので、紛れもなく、五百二十五円の方が二十五円分高いんだよということは、誰の目から見ても明らかなわけでございます。
今回の法案では、第十条一項で、外税方式を、限定期間、三年間だけとることもできるということでありまして、少し確認しましたところ、個々のお店ごとの判断であるのはもちろん、一つのお店の中で、商品が外税方式と総額方式と別々のものを同じ店の中に並べることを必ずしも禁じられていないということでございますので、これは本当に限界事例というか極論ではありますけれども、税抜きで五百円、税込みで五百二十五円、来年から五百四十円かもしれませんが、そういった商品が並ぶこともなきにしもあらずということでございます。
商品が並ぶというのはさすがに極論といたしましても、この事例とは少し別に、仮に、二つのお店が全く同じ商品を販売していて、片や税抜き百九十八円、一九八、そして、片や税込み一九八という広告を出していましたら、どちらのお店に買い物に行きたくなる客が多いと思うかということを、一般消費者の立場から、森大臣に、お聞きするまでもないようなことなんですけれども、確認的にお聞きをしてみたいと思います。
○森国務大臣 総額表示義務の特例に関する規定は財務大臣の所管でございますけれども、どのような価格表示を行うかについては、各事業者において、消費者との関係も踏まえて判断されるものと考えますが、一般論として、税込み価格の表示の方が消費者にとってわかりやすいのではないかと考えております。
こうした消費者の利便性の観点から、平成十五年度税制改正において、それまで主流であった税抜き価格では、レジで請求されるまで最終的に幾ら支払えばいいのかわかりにくく、税抜き表示のお店と税込み表示のお店で価格の比較がしづらいといった御指摘を踏まえて、消費者向け価格表示については総額表示が義務づけられることとされ、平成十六年四月から実施されているものと承知しております。
○重徳委員 既定のルールの趣旨についてお答えいただいて、私としては単に、税込み一九八の方が当然安いわけですから、普通、消費者は税込み一九八の方を選ぶだろうというふうにお答えいただけるものと思っていたんですが、そういうことも含めて今お答えいただいたんだと勝手に解釈をさせていただきます。済みません。
そういうことですから、税抜きの価格で表示した場合であっても、税抜きであって、プラス税がかかるんだよということを明確にすれば、これは外税方式を使うこともできるという特例が今回定められているわけであります。
この点につきまして、いろいろなお店に立ち入っては、どうですか、今回消費税が上がりましたらどう対応されますかという話を私も聞いて回っているわけなんです。
これはもう当然なんですけれども、例えば、一九八で牛乳を売っていました、素直に三%分値上げして二百三円になると思うんですが、二百三円で売りますというのはなかなか抵抗がある、だけれども、一九八なりの金額を外税方式で、つまり税抜きで一九八というふうにやっても、それは、プラス税が加わるということもわかりやすく明記しなければならないのが今回のルールなわけであります。
そういう意味では、お店の側からすれば、この外にさらに税がつけ加わるんだということは余り強調はしたくないものの、しかしながらうそは言っちゃいけない、うそにならない範囲で余り強調したくない、こんなような悩ましい状況が、今、小売店舗の皆様方の心境だと私は受けとめております。
そこで、麻生大臣にお伺いいたしますが、今回の総額表示義務に関する特例、すなわち外税方式を例外的に行っていい、こういう制度につきまして、小売店舗がどのぐらいこの制度を活用するとお見込みでいらっしゃいますでしょうか。お答え願います。
○麻生国務大臣 これは、重徳先生、定量的にどれくらいの店がやるだろうかというのを今私どものところでお答えすることは困難なんだと思っております。
この二つの話は、本来は、消費者側ではなくて事業者側から話が来たと記憶をしております。
例えば、アパレル業界で、全て商品に張って、その上にセロハンで薄く見えるようにしたものの中を全部張りかえるというのはとてもではありませんとか、商品がたくさん置いてあるビックカメラとかドン・キホーテとかいろいろありますけれども、そういったところのものを全部張りかえて、一年したらまた張りかえるなどというのは物すごくコストが上がります等々のお話を受けて、両方どちらでもいいということをしばらくやる方がいいのではないかということで、この話をさせていただきました。
こういう判断をさせていただいたんですが、これは、最初にこれが出てくるときから話がありまして、そのときも、外税の方がいいという方もいらっしゃいましたし、内税の方がいいという方も、初めて三%が導入されるとき、そういう話がいっぱいあったんです。
とにかく、ビールというものを外税でやったら誰が飲むんだ、この一言で決まりました、私の記憶では。確かに、ビールを外税でやられたら、とてもじゃないけれども飲む気がせぬなと、私もその話を聞いて。自民党の税調で、海外に長くいた者は、外税でいいじゃないですか、日本人は計算が早いからすぐできますよと言われて、ずっと外税をしつこく主張していたんですけれども、その一言でやめたと思って、引き下がったんです。
どっちでもいいというのをしばらくやってみた方が、現実問題として事業者側にすごく負担がかかりますので、それで、正直申し上げて、今回は、ある程度混乱を招くのではないかという御意見がありますので、わかりやすくきちんと明示されるというのを条件にということを私どもの方から申し上げたという経緯であります。
〔富田委員長退席、平井委員長着席〕
○重徳委員 ある意味で、今の内税方式を続けながら消費税を上げることが混乱を招く。コストがかかる、手間がかかるという面も、もちろんそれはそれで理解をするところであります。
特に、消費者目線から見ますと、お店によって扱いがばらばらになってしまう。あるいは、三年間の時限的な措置ですから、三年間でぴたりとどこのお店も切りかえるならともかく、三年以内のいろいろなタイミングで、外税から内税にもう一回戻すということがばらばらに行われることが想定されるわけですから、ここはぴしっと、本来はどっちの方式でいくのかということを定めるべきではなかったかというふうに私は考えております。
特に、消費税はセンシティブな話なので仮の話でしかできませんけれども、本当に八%から一〇%、さらにそこからふえていくということが、有識者の中では、それはもっと引き上げなきゃだめなんだ、もたないんだということを真摯に主張されている方もいます。
この間、竹内財務大臣政務官は、現時点でその点についてはお答えできる段階にはないというお言葉ではありましたが、逆にその可能性を否定もされなかったと私は受けとめております。そういう意味では、今後、恒久的に外税方式にしていくということも検討していく必要があるのではなかったかと私は考えております。
そうでなければ、本当に中途半端に外税方式、このお店は外税、だけれども、一年間でまたもとに戻ったとか、今の写真のように、このお店はそうじゃないんですが、実際、今後、ばらばらな扱いがお店の中でもあり得るという話からすれば、やはり一律の外税、一律の内税、どちらかを堅持するべきではなかったかということも感じておるわけです。
今回の例外的な外税方式の容認につきまして、改めて麻生大臣、どのように感じておられるか、お願いいたします。
○麻生国務大臣 基本的には、消費者側の立場に立てば、やはり全部内税の方がわかりやすいとか、全部外税にした方がわかりやすいという点は私もよくわかるところなんですが、一番負担をこうむるのは、もちろんお金を払う消費者ではありましょうけれども、それを販売する側の立場に立ちますと、物すごく手間がかかって、コストだけが上がるわけですから、そういった意味では、事業者側の立場に立って考えれば、外税でも内税でもどちらでもいい、ただし、混乱が消費者に起きないようにしておくという条件だけ一つつけておきさえすれば、私は、しばらくの間というのは、ある程度落ちついていくところまでいって、みんなが外税になっていくかというと、なかなかなりにくいのかなと思います。
そういった意味では、これまで結構内税でずっとやってきておりますので、現実問題として、ある程度、二、三年とは思いますけれども、ちょっとどれぐらいの時間でいくのかわかりませんし、八から一〇に本当にまた上げることになるとか、今言われましたように一二とか、二一とか二二とかいうような話に、ヨーロッパみたいになっていくというようなことになれば、発想がまた変わってくることも考えられるでしょうけれども、今の段階でどちらかとかいうことを申し上げるべきではないと思います。
少なくとも、スタートいたしますときに混乱が起きないようにして、何となくあそこにうまいことやられたとかいうような話は避けねばならぬ、断固それを避ける努力は我々の方として最大限せねばならぬと思っております。
○重徳委員 最後に、稲田大臣に確認をさせていただきたいことがあるんです。
今の外税、内税も、麻生大臣も、消費者目線からすれば、どちらかに一本化するというのが一番便利だということはおっしゃっておるわけでございます。それから、再三言われている消費税還元セールの問題などなど、この法案の実効性といいましょうか、この法案がそもそも法律としてこういうことを定める必要があるかどうかということも、事前にはいろいろと政府内部でも検討がされたのではなかろうか。
場合によっては、法律がなくてもいろいろやれることがあって、それによってさまざまな消費税転嫁にかかわる問題を解決する可能性もあるのではないかという議論が内部的にもあったかどうか、どんな議論があったか、この点について確認をさせてください。
○稲田国務大臣 さまざまな議論があったと承知をいたしておりますが、それでも、やはり消費税を二度にわたって引き上げるに当たって、消費税の趣旨、きちんと国民が支払ってそれを社会保障として還元してもらうという消費税の趣旨と、またそのために円滑に転嫁をしなければならないという意味において、さまざまな要件、例えば、優越的地位の事業者はどういう場合かとか、禁止される行為は何であるか、また、公正取引委員会だけではなくて、中小企業庁や主管大臣もさまざまな措置がとれるということを明確にした法律をつくるということは、私は非常に意味があることであると思います。
その上で、委員御指摘のように、この法の執行に当たっての実効性をきちんと確保する体制も整えていかなければならないと思っております。
○重徳委員 質問を終わります。ありがとうございました。