○御法川委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 民進党の重徳和彦です。よろしくお願いいたします。
所得税法等の一部改正案についての関連する質疑をさせていただきたいと思います。
きょう、朝から配偶者控除について議論がありました。昨年の九月、安倍総理を筆頭として、政府税調で、配偶者控除、配偶者特別控除の見直しについて、多様な働き方に中立的な仕組みをつくる必要があるという認識に基づいて議論が行われてきたはずでありますし、随分、これまでの所得控除という考え方から、場合によっては税額控除というところまで踏み込まれるのかというような期待感もいろいろあったんですが、御承知のとおり、議論は結局、控除対象配偶者の年収要件を百三万円から百五十万円というふうに少し広げる、こういうところに落ちついたということでございます。
安倍総理も、先般、先週の本会議で鷲尾英一郎議員の代表質問に対しまして、所得控除から税額控除への見直しについて幾分前向きとも受けとめられるような答弁がありました。現在、所得控除方式をとっている基礎控除などの人的控除等における控除方式のあり方については、所得再分配機能を回復する観点から、御指摘の税額控除方式も含め、幅広く検討を行ってまいります、このように本会議場において総理が述べておられます。
今回の法案における結論はもちろんわかっているわけでありますが、単に所得控除という仕組みのまま百五十万円に広げるというところから、さらに、所得控除を税額控除という形に改める、こういうところまで今後踏み込んでいくおつもりがあるかどうか、麻生財務大臣にお尋ねします。
○麻生国務大臣 先日の鷲尾議員の、あれは代表質問でしたか、質問において、総理から、人的控除等における控除方式のあり方については、所得再分配機能を回復するという観点から、鷲尾議員から御指摘のあった税額控除方式も含め、幅広く検討を行うという旨を申し上げられたんだと思っております。
この問題は、昨年末の与党の税制改正大綱の中においても、現在、基礎控除など人的控除が採用しております所得控除方式は、高所得者ほど税負担の軽減額が大きいということから、収入にかかわらず税負担の軽減額が一定となるいわゆるゼロ税率方式とかあるいは税額控除方式、また、所得控除方式を維持しつつ、高所得者については税負担の軽減額の逓減、消失させる仕組みと。
今三つ申し上げましたけれども、ゼロ税率をやっておりますのは、ドイツとかフランスがゼロ税率方式をやっておりますでしょう。それから、税額控除方式というのは、これはカナダが多分やっているんだと記憶します。そして、今の税負担の軽減額の逓減を最終的にやっていくというやり方、これはアメリカとかイギリスがやっている方式なんですが、これはいろいろなものがありますので、与党の議論というのをいろいろ踏まえながら、控除全体の見直しに関する議論の中でこの問題については丁寧に検討を進める必要があるんだろうと考えております。
○重徳委員 与党のということでありますが、我々野党もこれについては議論をさせていただいておりますので、ぜひこの国会の場において議論をさせていただきたいと思います。
そして、配偶者控除、今回、同じ本会議におきます、これは麻生大臣の答弁の中でも少し気になる発言がありまして、配偶者控除の今回の見直しは、まさにこうした課題に対応するために行うものであり、働き方に中立的な仕組みの構築に寄与するものと考えております、そういう御答弁がありました。
今回の百三万円から百五十万円へというのは、働き方に中立的な仕組みをつくるための議論には相当足りていないんじゃないか、こういう意見が多い中で、大臣から、働き方に中立的な仕組みの構築に寄与するものという御見解が述べられたわけなんですけれども、これはどういう趣旨で述べられたんでしょうか。
○麻生国務大臣 女性を含める、いわゆるパートの方々の話で、よく、年収百三万円以下となるように労働時間そのものを減らす、いわゆる就業調整を行っているというまさに現状があります。法律としては関係ないんですよ。なくても、先ほどのどなたかの質問にもお答えしましたけれども、現状があります。しかし、現場からは、年末になるとパートの方がいなくなる、これは間違いなく現状がそこにありますので、人繰りが大変だという声も御地元でも聞かれるんだと思いますが。
この就業調整問題というのは、これは、働きたくても労働時間を減らさざるを得ないという点で、働き方の選択をゆがめているという問題でもありますので、働き方に中立的な仕組みを構築するという観点からも、こうした問題を解消する必要は考えているということであります。
先日の鷲尾議員の代表質問に対して私から申し上げたのは、今回の配偶者控除等の見直し、まさにこの問題を解決するという観点から行う一つの答えなんだと思っております。
なお、税制とか社会保障制度の見直し、それだけではなくて、これは、民間企業側においてもこの配偶者手当のあり方を検討していただかないと、民間会社の方も百三万円のところになると、いわゆる給与等々において、それまでにしておくのを前提にいろいろな仕組みをやっておられるのは御存じのとおりだと思いますので、そういったことを含めて、多角的な取り組みを通じて今後こうした問題をやっていくには少々時間がかかるだろうと思っております。
○重徳委員 ちょっと十分理解できない御答弁だったんですが、働き方に中立的ということよりも、今回は、壁の距離が、すぐ間近に来ている壁をちょっと遠くに遠のける、こういう改革、改正のようにしか受けとめられないんですが、中立というのはさすがにちょっと言い過ぎかなと私は受けとめておりますが、この点について、大臣、もう一度御答弁お願いします。
○麻生国務大臣 パートの方々などが一定の年収以下になるように労働時間を減らす、いわゆる就業時間というものの調整問題というのは、これは働きたくても働けないという、働きたくても労働時間を減らさざるを得ないという点で、働き方の選択というのをゆがめておる問題であることはもうはっきりしていますよね。その解消には、働き方に中立的な仕組みというのに寄与するものなんだ、今回の点では間違いなくそうなっていると思います。
こうした就業調整問題と配偶者控除の問題の関係については、配偶者特別控除によって税制上の百三万円の壁というのは解消しているんですよ。解消しているんですが、他方で、配偶者控除の百三万円という水準が、いわゆる企業の配偶者手当の支給基準として適用されているでしょう、多くの企業で。あなたのおられる豊田の辺なんかはみんなそうでしょうが。こっちは全部知っていて言っているんだから。
そういったことが全部援用されていますから、そういったことで、これまた心理的な壁にもなっていますでしょう。したがって、就業調整問題の一因となっているのではないかという指摘がよくなされているところです。
したがいまして、こういった点を踏まえて今般の見直しを行っておるところですが、見直しにおける百五十万円という水準は、時給が千円で、一日六時間で、週五日勤務した場合の年収を上回るわけです。パートで働く女性の方々の八割以上をカバーする水準になっているんだ、私はそう思っておりますので、パートで働く女性にとりましては、就業調整を意識せずに働くことができる仕組みの構築に寄与するのではないかということを申し上げております。
○重徳委員 いろいろな議論の中で見解の相違もあると思うんですが、今大臣の答弁の中で、パートの八割以上の方々にとっては事実上中立的だと言えるのではないか、こういう御見解だというふうに一応受けとめましたけれども、ただ、それだけでは足りないんじゃないか、こういう意見も当然強いわけですので、これからさらに踏み込んだ議論をさせていただきたいというふうに思っております。
ちなみに、社会保険料についても、百三十万の壁とか百六万の壁というのもあります。先ほど大臣は民間企業の家族手当について言及されましたが、当然、社会保険の方も大きな壁として立ちはだかっています。これについては厚生労働省の所管だということになるのかもしれませんが、しかし、ここは、今回、税制を一つの切り口として民間企業にも働きかける以上、やはりぜひ財務省、厚労省の壁も越えて、厚労省とともに社会保険に関する壁も乗り越えていただきたいと思うんですが、大臣、その辺の御決意を述べていただければと思います。
○麻生国務大臣 これは所管が違いますので、それを財務省に越権行為でやれと言っておられるんですか。正直言って、これは財務省の所管じゃありませんから、厚生労働省の保険の話になりますので、基本的には、だと思いますので、ちょっと今の話を、おっしゃっている意味がよくわからないので、それもぴりっと越えてやり切れという意味の定義がよくわからないんですけれども。
○重徳委員 縦割りの壁というのは、私も役所にいたときから、常に、どこかの役所に所属していても、お互いに越えていかなくちゃいけないという壁でございましたので、今、財務大臣にも厚生労働省との壁を乗り越えていただきたい、こういう趣旨で申し上げた次第です。これはもう答弁求めません。
さて次に、今回の法案、ちょっと各論に入っていきますけれども、特に中小企業対策として、愛知県は全国の中では、大企業もあるということもありますけれども、比較的経済がうまく順調に回りつつあるなんということも言われますが、それでもなお、やはり中小企業の皆さんは相当な悩みを抱え、なかなか浮上することのできない、そういう苦悩の中で日々の経営をされているという声をよく聞いております。
きょうお配りしました資料一、これは、中小企業投資促進税制等の拡充でありますけれども、サービス産業においても設備投資をしたときに即時償却を認めるという内容であります。
ただ、これは制度として、今までよりは拡充されたということですから、それ自体はもちろんいいことなんですけれども、やはり、本当の現場において聞こえてくるのは、この計画の認定をするということ、あるいは、いろいろ聞けば、先進的なものでなきゃいけないとか、生産性を高めるんだとか、付加価値を高めるんだとか、こういういろいろな、これも心理面も含めたハードルがあるわけなんですね、この計画認定を受けるためには。こうした税制上の優遇というものは、私はもっともっとハードルを下げていいんじゃないか、このように思います。
ただでさえ、高齢化が進んで後継ぎがなかなか見込めない、こういう企業も特に中小はあるわけですから、この計画の認定などの要件とかあるいはその手続面とか、こういったものをさらに緩和させていくということができないのか、簡素化させていくことができないのか、こういう中小企業の立場から質問させていただきます。いかがでしょうか。
○木原副大臣 中小企業、とりわけサービス産業を含めた、そういった中小企業の設備投資を促進するという観点から、器具、備品であるとか建物の附属設備等を対象とする、商業、サービス業等を営む中小企業等の経営改善のための設備投資を支援する税制というものを設けさせていただいているところでありますが、私どもの評価といたしましては、平成二十七年度においては約五千の企業が適用を受けているというところであって、一定の効果があったものというふうに考えております。
中小企業は、地域の経済、雇用を支える重要な存在であって、重徳委員の言うとおり、非常に重要なウエートを占めているものでございます。アベノミクスを一層加速していく上でも、中小企業の攻めの投資を促進していくことが極めて重要であるというふうに思っております。
今般の税制改正においては、この中小企業投資促進税制の上乗せ措置を改組し、中小企業経営強化税制を創設した上で、対象に、器具、備品、建物附属設備等を追加することとしております。これによって、サービス業を含めた中小企業による一層の設備投資を期待しておりまして、政府としても、それをやはり使っていただくための周知を徹底するなど、しっかりと取り組んでまいる所存でございます。
なお、本税制については、生産性の向上等につながる設備投資を目的としたものであることから、一定の要件を満たすものに適用を限定しているところでありますが、委員の御指摘にもありました要件の緩和等、そういったことにつきましては、まず今般の改正の効果をしっかりと見きわめてまいりたい、そのように思っております。
○重徳委員 今まで、サービス産業以外の、従来の中では五千社がこの制度を活用したということでありますが、これはまだ始まって一、二年しかたっていないという状況でありましょうから、ここはもちろん、効果をよく見ていくというのは、今副大臣が言われたとおりだと思います。
その上で、やはり中小企業の現場において、なかなか、生産性を高めるんだなんて言ったって、ぴんとこないわけですよね。そういうところに、現場にもっと思いをいたしながら、この税制の仕組みがちゃんと活用できるように改善を重ねていく必要があるということを御指摘申し上げたいと思います。
それから、同じように中小企業の問題の一つとして最近よく聞こえてきますのは、やはり社会保険料が随分重荷だということなんですね。
本当に小さな、三人とか五人でやっている、それでも一応法人としてやっている、こういうところが法人としてやっていると、社会保険料は当然事業主側の負担もあるわけでありまして、そういった負担に耐えられないということで法人を解散して、そして個人事業者へと、個人成りというんですかね、個人成りをするような事業者も少なくない状況であります。
こういう状況の中で、結局、法人か個人か、どっちをとるかによって事業主負担があるなしという、大きくこれは違いが出てくるわけでありまして、その他のもちろんメリット、デメリットもあるわけなんですけれども、背に腹はかえられないということで、やむを得ない選択として個人成りをする、こういう事業者も出てきております。
ぜひ、社会保険のあり方も、法人だったらどんなにちっちゃくても健保、厚生年金じゃないとだめなんだ、こういう画一的な取り扱いじゃなくて、この辺は選択できるような、そういう仕組みとか、何か、こういった苦しんでいる事業者にもとり得る選択というものを示していくべきではなかろうかと思いますけれども、いかがお考えでしょうか。
○谷内政府参考人 お答えいたします。
社会保険料につきましては事業主負担を求めておりますけれども、これは、年金や医療の給付を保障して、働く方々が安心して就労できる基盤を整備することが働く方々を雇用することに伴う事業主の責任であるという観点、また、働く方々の健康の保持及び労働生産性の増進が図られることが事業主の利益にも資するという観点から、事業主に求められているものでございます。
こうした考え方のもと、就労実態の管理等を踏まえまして、一定規模の個人事業者を除く事業者に対しまして、広く健康保険と厚生年金保険を適用することとしております。
今議員御提案ありましたけれども、小規模の法人につきまして、事業主の負担軽減の観点から、任意に国保、国民年金に切りかえられるようにすべきではないかという御提案でしたけれども、これにつきましては、先ほど述べました社会保険制度のあり方の根本にかかわる問題であること、また、事業主に雇われる方の加入する保険を事業主の都合で健康保険や厚生年金から国保、国民年金に変更させることとなりまして、不利益を生ずるおそれがあることから、厚生労働省といたしましては望ましくないというふうに考えているところでございます。
○重徳委員 制度のたてつけはそのとおりであることは、それはもちろん重々承知の上でありますし、個人成りを選択する事業主さんも、それは法人の方が、例えば従業員だって、社員も集めやすいし、それから事業承継の対策といいましょうかね、そういう制度だってあるわけでありますし、株式会社何々というのと個人事業主、看板がそもそも違いますから、社会的な信用力なんかも大きく違うわけでありますが、それでもなお、そういった個人成りを選ぶ、選ばざるを得ない、こういう実情があるわけでありますから、建前と言ったらいけないですけれども、事業者としての責任とか社員に対する健康、おっしゃるとおりだと思います、しかし、それでも本当に背に腹はかえられない、このままでは立ち行かない、こういう思いが現場にはあるんだということを認識していただきたいんですが、真逆の聞き方をします。
こういう個人成りをするという事業者は、どういう事情、どういう理由でそれを選んでいるんだというふうにお考えでしょうか。ちょっと審議官の言葉で語っていただけませんでしょうか。
○谷内政府参考人 お答えいたします。
今議員御指摘になりました、小さな法人の方がさまざま事情を勘案して個人成りになられる例があるという御指摘がありましたけれども、個々の会社にとってはいろいろな事情があると思いますので、自分自身は事業経営をした経験が余りございませんので、こういった事情にあるからということは、この場で申し上げることはなかなか難しいと思います。
例えば、社会保険の場合でも、小さな事業所の場合は協会けんぽに加入することになる会社が多いと思いますけれども、そういった協会けんぽにつきましては、財政基盤が脆弱でありますことから給付に国庫補助を行っておりまして、保険料負担の軽減を図っておりますので、そういったところも活用していただければというふうに思っております。
○重徳委員 正直な感覚で今述べていただいたと思いますが、ぜひ、国の所管省庁としても、より現場に近いところの声も酌み取りながら、いろいろな制度の可能性を検討していただきたいと思うわけでございます。
次に、法人の役員の給与についてなんですけれども、これは法人税法で定めがあります。法人税法三十四条の役員給与の規定があるんですが、給与の額というのは一旦決めると、その年は一年間金額を変えちゃいかぬというか、金額を変えない限り損金として算入できる、よっぽど理由がない限り、その給与の額を変えちゃいけない、変えた場合には損金算入できなくなる、こういう仕組みがあるわけであります。
今、この法人税法に基づく政令では、当該法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりされた定期給与の額の改定、つまり、経営が著しく悪化した場合には、この定期給与の額を改定しても損金算入できる、こういう仕組みになっているということなんですが、これも、細かいことを言うように聞こえるかもしれませんが、経営が悪化したら、役員の給与は当然下げざるを得ないと思います。そのときに、そういう理由があるから損金算入だ、ないから算入じゃないんだというような、理由を公式に求められるほど、法律や政令に定めるような規定じゃないんじゃないか、こういう声があるわけです。
つまり、経営の状況に応じて役員の給与は変動する、下げざるを得ないときは特にそうですね、下げざるを得ないんだ、これはもう当然のことでありまして、そういった理由をきちんと明らかにしない限り損金算入ができない、これはちょっとおかたい仕組みになっていること自体どうか、こういう声があります。
若干、細かい質問のように聞こえるかもしれませんが、このあたり、政令、法令に定めることなく自由に、もっと自由度を持った、つまり、この辺の規制をなくすという考えがないでしょうか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。
いわゆる法人税法三十四条に規定しております役員定期同額給与についての御質問でございます。
先生御案内のとおり、役員報酬につきましては、恣意的な税負担の調整のために利用される懸念もあるということで、法人税法三十四条で、一定の基準を満たさない役員報酬について、損金不算入ということをきちんと明定しているところでございます。
定期同額給与につきましては、毎月といった、定期に同額を支給する役員報酬の損金算入を可能としているものでございますけれども、政令に委任することで、例えば毎年所定の時期に行う改定ですとか、役員の職制上の地位の変更に伴う臨時改定ですとか、また、御指摘がございましたとおり、経営の状況が著しく悪化したことなど、業績悪化に伴う改定などによりまして役員報酬を改定する場合には、改定前後を通じて定期同額給与として取り扱い、損金算入を可能とするという旨が定められておりまして、冒頭申し上げましたとおり、恣意的な税負担の調整のために利用される懸念との均衡を図っているということでございます。
○重徳委員 午前中の時間が来ましたので、ここまでとしたいと思います。
ありがとうございました