○御法川委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 民進党の重徳和彦です。よろしくお願いいたします。
きょうは、関税定率法等の一部改正案についてですが、せっかく、関税関係ということにちょっとひっかけまして、関税法ときのう閣議決定されたばかりの組織的犯罪処罰法案との関係を少し問いたいと思います。
まず初めに、関税法の規定による脱税、これはテロ等準備罪の法案の対象の犯罪になりますか。
○加藤政府参考人 お答えを申し上げます。
お尋ねの、偽りにより関税を免れる行為等、すなわち関税法第百十条第一項または第二項の罪は、今国会に提出しております法律案によります改正後の組織的犯罪処罰法では、テロ等準備罪の対象犯罪を定める別表第四の一号、別表第三の三十四号に掲げられることになりますので、テロ等準備罪の対象犯罪となるものでございます。
○重徳委員 皆様方のお手元に資料を配付しておりますけれども、このテロ等準備罪の定義規定なるものが第六条の二に定められております。組織的犯罪集団の定義として、今回、文言として初めて、ほかに例のないこういう文言なんですけれども、「その結合関係の基礎としての共同の目的が」云々ということなんですね。
この今の脱税というものが結合関係の基礎としての共同の目的かどうかというところが問われるわけなんですけれども、一例を挙げます。輸入を業とする普通の会社、一般の会社が、あるときから組織的に脱税を計画するということになった場合、これは組織的犯罪集団に当たることがあるんですか。
○加藤政府参考人 お答えを申し上げます。
テロ等準備罪におけます組織的犯罪集団と申しますのは、組織的犯罪処罰法上の団体のうち、御指摘のとおり、その結合関係の基礎としての共同の目的が一定の重大犯罪等を実行することにあるものをいい、これに該当し得るものとしては、本法案に例示しておりますテロリズム集団のほか、例えば、暴力団、薬物密売組織等の違法行為を目的としている団体に限られます。ここまでが前提でございます。
その上で、犯罪の成否は捜査機関が収集した証拠に基づいて個別具体的に判断されるものでございますので、仮定の事案に基づいて、ある団体が組織的犯罪集団に当たるかどうかをお答えすることは困難でございますが、一般論として申し上げますと、正当な営業活動を行っている一般の会社について、通常は犯罪を実行することを目的とするものとは認められませんので、組織的犯罪集団には当たらないものと考えられます。
○重徳委員 通常という言葉がついておりますので、通常は当たらないと思うんですけれども、これまでさんざん議論がされていたように、組織の目的が一変した場合なんてよく言われておりましたが、ここで言う結合関係の基礎としての共同の目的に当たる状態になったら、この組織的犯罪集団に当たることになろう、これは個別具体のケースを見なきゃわからぬという話でしょうけれども、可能性がゼロではないという、理屈上ですよ、ゼロではないという御答弁だと思うんですよ。
それで、ちょっと確認なんですけれども、通常の貿易会社ですから、最初から脱税が目的ということはないと思うし、表向き脱税が目的ということもないと思うんですが、会社の立ち上げのときから、ここの犯罪、罪を実行することが目的である必要はないんですよね。一変した場合というのはそういうことですよね。最初から別表第三に掲げる罪を実行することが共同の目的である必要はないということを一つ確認したいのと、一変した場合なんてこれまでよく言われていましたけれども、今取り上げたケースだと脱税ですけれども、反復継続したような場合でなくてもいいんでしょうか。ちょっと今、通告しておりませんけれども、そんなに難しい問題ではないと思って質問しております。
○加藤政府参考人 お答えを申し上げます。
まず、前提として、先ほどから申し上げておりますように、組織的犯罪集団の該当性について、その個別具体的な事実関係を離れて断定的に結論を申し上げることは困難でございますので、あくまで一般論となりますが、通常の営業活動を行っている一般の会社については、税を免れることそれ自体が目的であるということは想定しがたいのでありまして、生業のために結合していると認められるわけでございます。したがって、関税法違反に当たるような行為を繰り返しているというだけでは組織的犯罪集団には当たらないというのが通常であるというふうに申し上げているわけでございます。
それから、組織的犯罪集団に当たるためには、団体の結成当初から犯罪を目的とするものでなければならないかという点についてのお尋ねでございます。
これは犯罪の成否の要件でございますので、組織的犯罪集団であるかどうか、すなわち、その団体が犯罪の実行を目的として結合しているかどうかは、団体の結成当初ではなくて、当該事案の時点で判断されることとなります。その意味では、結成当初に正当な団体であったものが、その後、団体の性格を全く変えてしまって、全く異なった性格の団体となって組織的犯罪集団と認められるということもあり得ないことではないということになります。
しかしながら、そのような性格を全く変えてしまうということというのは、例えば団体の意思決定に基づいて犯罪行為を反復継続するようになるなどのことがない限り、そのようには認められないということを申してまいりました。
それで、反復継続がそれではその要件なのかという点につきましては、犯罪行為を反復継続するようになるというのは、団体が性格を全く変えてしまった、すっかり変えてしまったことの一つの考慮要素、重要な考慮要素ではありますが、一つの考慮要素でありまして、その場合に限るというふうに申し上げているわけではございません。
以上でございます。
○重徳委員 財務金融委員会なのでこれ以上はやりませんけれども、一般に言われているのは、一般の会社とか一般の団体がこの組織的犯罪処罰法案の対象になるかどうかということが大変懸念されているんだということが、これから法務委員会を中心に厳しく問われることになろうかと思いますので、ぜひ明快な答弁になりますようによろしくお願いします。
それでは、財金のテーマに戻しますけれども、麻生大臣に質問申し上げます。
先般のG20の財務大臣会合におきまして、さんざん報道されておりますのが、共同声明から反保護主義の文言が削除された、今までに何度も、近年は盛り込まれていた保護主義に対抗するという文言が削除されたということがありました。
G20におきまして、麻生大臣は、保護主義に対抗すべきという点についてどのような主張をされたんでしょうか。
○麻生国務大臣 これは世界経済のセッションの一のところだったと記憶しますけれども、少なくとも、自由貿易というものは、第二次世界大戦以降を見れば極めて明らかで、多くの国々が経済の繁栄というものを享受できた。特に、敗戦国、日本とドイツはそれが極めて顕著だったというのが一点。
自由で公正な貿易というもののルールに基づかないと、貿易というものにかかるコストというものが上がるという可能性があるので、我々としては、自由貿易というものは極めて重要なんだという点を申し上げて、我々の経済に対する貿易の貢献の強化に取り組んでいるという点に関して、これで一致をさせていただくことになって、いろいろ議論がありましたけれども、中国、アメリカは両方とも新しい財務大臣の登場でしたので、結構肩に力が入っていたような感じはしましたけれども、こういった会議の第一回目はよくある話だとは思いますけれども、いずれにしても、こういった自由貿易の重要性というものがG20の間で共有されているということは確かだと存じます。
○重徳委員 今の大臣の答弁は、要するに、広い意味で反保護主義的な、つまり自由貿易の推進ということを訴えたということであろうかと思うんですけれども、文言としての反保護主義というのは、報道によりますと草案の段階で既に削られていたということなんですが、これは事実でしょうか。
○武内政府参考人 お答え申し上げます。
声明の草案の段階で保護主義に対抗の文言が落ちていたということについてのお問い合わせでございますけれども、そのような報道があったことは承知してございますけれども、声明の草案の内容につきましてはコメントを差し控えさせていただけたらと思っております。
○重徳委員 草案は日本がつくったものではないということからそのようにおっしゃるのかもしれませんが、では、表舞台では大臣が御発言されるわけですが、事務方のレベルで、草案をつくる段階で日本からの主張というのはされなかったんですか、何かしら。
○武内政府参考人 お答え申し上げます。
草案段階でのやりとりにつきましては、これもコメントを差し控えさせていただけたらと思ってございます。
○重徳委員 反保護主義、保護主義に対抗するということについて、事務方も含めて日本国政府としてそういった主張をするべき立場にあるという認識はあるんでしょうか。つまり、草案云々と言うといろいろと、それはコメントできないということなのかもしれませんが。いかがでしょうか。
○武内政府参考人 お答え申し上げます。
事務方といたしましては、今大臣が申し上げましたように、保護主義との関係については考えているところでございます。
○重徳委員 では、もうちょっと大臣にお聞きしますが、結果として、保護主義に対抗するという文言は盛り込まれなかったわけなんですけれども、文面は文面として、日本はこれからも保護主義に対抗するという主張に変わりはないということでよろしいでしょうか。
○麻生国務大臣 そのとおりです。
○重徳委員 わかりました。
国によっては、これも報道ですけれども、フランスの財務大臣なんかは、満足できる結論に達することができず残念だというコメントも述べられているようですけれども、日本の麻生大臣はそういった趣旨のコメントは言われておりませんが、まず、今の保護主義に対抗するという主張に変わりはないということでございますので、引き続きお願いしたいと思います。
関連して、けさのニュースでちょうどやっていましたけれども、安倍総理がイタリアのジェンティローニ首相との会談で、五月下旬のG7サミットで保護主義に対抗するメッセージを発表するという方針で一致をしたという報道がありました。
これも踏まえて、この七月にはG20の首脳会議もあります。五月のG7、そして七月のG20に向けてきちんと議論をして、今度こそ、国際協調のもと首脳宣言、ちゃんともう一度、保護主義に対抗するという文言を復活させるべきだと思うんですけれども、今の大臣の御答弁を踏まえて、外務副大臣の方からお願いします。
○岸副大臣 お答え申し上げます。
今、財務大臣からも御答弁がございましたけれども、先般のG20の会合におきましては、我々の経済に対する貿易の貢献の強化に取り組んでいくという点で一致をしたと承知をしております。貿易の促進に向けましたG20としての決意や、貿易が経済に果たす貢献の重要性への認識が示された、このように考えておるところでございます。
今、重徳委員から安倍総理の訪欧の際のコメントがございましたけれども、メルケル首相との首脳会談においても率直な議論が行われたところであります。自由で開かれた国際秩序こそ平和と繁栄の礎であることで一致するとともに、日欧が米国とともに協力して自由貿易の旗を高く掲げていかなければならないということを訴えかけた、このように安倍総理からも発言がございました。
今後、G20ハンブルク・サミットに向けて、日米欧がともに協力して国際社会の諸課題に取り組んでいくことがまさに重要でありまして、引き続き関係国との間で緊密に連携していきたいと考えておるところでございます。
○重徳委員 次に、一方で、これはお手元の資料の二にもありますけれども、今回のバーデンバーデンのG20の声明の中には、この第一パラグラフの中に、「過度の世界的な不均衡を縮小し、」という文言が入っております。
ムニューシン氏、アメリカの財務長官は、この文言を入れたんだということを会見でも述べられているようなんですが、このあたりの事実関係について御答弁願います。
○麻生国務大臣 過度の世界的な不均衡縮小との文言は、これはこれまでのG20のコミュニケでも同じような文章が、過去、継続的に入っていたと記憶をしております。
このムニューシンという新しい長官も、それからいわゆる米国自体がこの文章をどう受けとめたか、ちょっとそこはわかりかねますけれども、これは文字どおり世界的な不均衡というものを念頭に置いた表現であって、特定の国とか一定の国を指してやっているというわけではないんだというように理解をしております。
また、このムニューシンという長官は、少なくとも、前の長官と違って、いわゆるGS、ゴールドマン・サックスの中におられましたので、商売とか金融とか経営とかいうのに少なからず経験がある人であるというふうに、話をしていてもわかりますので、そういった意味においては、こういった問題についてよく議論をしていくということに関しては、私どもと話をしていてもこの点に関してはしっかりした哲学というか、きちんとした考え方もお持ちというのははっきりしておったように理解をしております。
○重徳委員 ちょっと大臣に確認したいんですが、今、過度の世界的な不均衡を縮小するという文言が特定の国を指す意図はないんじゃないかというふうにおっしゃったと思いますが、ムニューシン財務長官と直接接して、よく報じられているのは、中国と日本に対しては、果たして、アメリカから見ての貿易赤字を大変苦にしているという思いがメディア報道では感じられるんですけれども、大臣、直接お会いになって、いかがでしたか。
○麻生国務大臣 アメリカの対外貿易の中に占めます赤字の比率は、中国が四七%ぐらい。早い話が、二分の一は中国一国でアメリカの全貿易赤字ということになろうかと存じます。二番目がドイツ、三番目が日本、四番目がメキシコの順番だと思いますので、特定のと言った場合に日本がその中に入っているかどうかと言われると、やはり半分の中国。日本は四分の一か六分の一か、そんなものだったと記憶しますので、そういった意味では、少なくとも、今の意識というものは違っている。
それから、二月十日の日米首脳会談以降、その種の発言はアメリカから出ていないと記憶します。
○重徳委員 多少楽観的にも聞こえるような御答弁だったんですけれども、もう一方で、通貨安誘導、為替に関する批判もこれまでアメリカから、特にトランプ大統領からはあったわけなんですね。
今回のこの声明には、為替相場に関する文言は今までどおりだったということで、言葉を見ればこれは一安心という感覚もあるんですが、何分、文言が、先ほどの、反保護貿易は消えているというような状況の中で、来月の、特に麻生大臣が当事者として交渉に当たられる日米経済対話、二国間交渉におきましては、再びこれから為替の問題についても圧力がかかってくる懸念は依然として消えていないようにも、というか消え切ったと思わない方がいいと思うんですけれども、大臣はいかがお考えでしょうか。
○麻生国務大臣 重徳先生の御指摘というのは、米国がG20の声明に反する行動をやるという前提になるわけですよね、今の話は。だって、G20の声明の中には今の話と全く逆のことが書いてあるわけですから。それはちょっと、あのG20の声明が意味がないんじゃないかということが言われたいのかなというような感じがしますけれども。
トランプ大統領が日本、中国の通貨安を批判したという報告がテレビやらでいろいろなされているのは知らないわけではありませんけれども、二月の十日以降、安倍総理とトランプ大統領との間の首脳会談以降、少なくとも、この種の話に関しては、我々ではなくて担当の財務省、財務官レベル等々で、コミュニケーションという言葉を使われていたと記憶しますが、緊密な議論をしていくということで合意をされておりますし、今回、その話の確認をムニューシン本人ともしておりますけれども、その点に関しても、両方とも意見がちゃんと伝わっておるということが確認をできていると思っております。
また、為替政策につきましては、先ほども申し上げましたけれども、従来からG20の合意の中でこれはもうきちんと盛り込まれておりますし、今般の共同声明でも書かれておりますので、これは米国もコミットしておるということでもあろうと思いますので、御指摘のような懸念は当たらないと思います。
ただ、この種の話は常に出てくる話ですから、為替というのは、市場、マーケットにかなり依存している部分が多いので、いろいろ上がったり下がったり、それはボラティリティーとかいろいろな表現をしますけれども、過剰な変化が、上下に動き過ぎますと、これは経済に与える影響も極めて大きいと存じますので、そういった意味に関しては、きちんと両国間で連絡をとり合って、為替というものが安定している状況に保つように努力するというのは、ずっと続けておかねばならぬところだと思っております。
○重徳委員 最後にお尋ねしたいんですけれども、やはり、保護主義に対抗するという文言が一つ消えたとか、ある意味、少し外堀を埋めているという捉え方もできなくはないと思うんです。現に、ライトハイザー次期通商代表は、農業分野に関しては、次は日本が標的だという発言もあります。
そこで、やはりTPPを通じて、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールといった国々は、日本とも協調して、アメリカはひっくり返してしまったかもしれませんけれども、TPPの枠組みというものにこだわっていこう、こういう思いを共通して持っている国々であります。日本単独の二国間の協議ももちろんやむを得ない面もあるかもしれませんが、今言ったようなTPP推進に力を合わせてきたこうした国々との連携を持って、より強い交渉態度で臨んでいくというやり方も大いにとっていくべきじゃないかと思うんですが、大臣のお考えをお聞かせください。
○麻生国務大臣 先週、チリでしたかで開かれておりますTPP閣僚会議において、TPPの持つ戦略的もしくは経済的な意義というものの再確認がこのチリでされておりますので、少なくとも、今後のTPPの進め方につきましては、各国が緊密に意思疎通を図った上で対応していくことが重要であるということが再確認をされておるところであろうと思います。
いずれにいたしましても、今後、日本とアメリカが主導で、いわゆる自由で公正な市場というものをアジア太平洋地域に広げていこうという話を、これは日米共通の目標のもとで、ペンス副大統領との間でやることになるんだと思いますが、いずれにいたしましても、日本にとりまして最善の枠組みというものを頭に置きながら議論を進めていくというのが大事なことだと思いますし、そういった意味では、TPP、長い時間かけて合意をされたというものは極めて大事な財産だと思いますので、そういったものを含めて対応していきたいと考えております。
○重徳委員 着実な積み重ねも必要なんですけれども、多くの日本国民が一方で心配もしていますので、ぜひ、これからも慎重に手がたく交渉を進めていただきたいと思います。
以上です。